「……ただいま」
初日というのにとても疲労感が溜まっていた。
母親が校長という衝撃的な展開のせいでその後に
何をやったのかはほとんど覚えていない。
自己紹介みたいなのとこれからよろしくー!
みたいな挨拶したような気がするけど……
あ、ノノミさんから金色の定期……というか
全車両乗り放題のゴールドエクスプレスチケット
を貰ってた。……もしかしてノノミさんって
超大金持ちだったりするのかな……
ってそれよりもホシノ母さんの事だよ。何なの?
前に「ツキノちゃん、お母さんは先生なんだよ」
って言ってたけどまさか自分の通うことになった
学園の先生だとは思わないじゃん。世間が狭い
とかそういうレベルじゃないって。それも校長
なんてサプライズにしては度が過ぎてるよ。
親がそんな偉い人で誇らしい!とかそういうの
じゃなくてただただ恥ずかしいよ。だってさ、
毎日が授業参観みたいなものなんだよ?
「お帰り。入学式はどうだった?」
「もう散々だよ。いきなり母親が校長っていう
とんでもない事実を知らされたからね」
「そんなに驚いてくれたんだね。うへへ、隠した
甲斐があったねぇ」
「心臓に悪いから学校に行く前に教えてくれたら
良かったのに……ってどうしてホシノ母さんが家に
居るの!?入学式とちょっとした挨拶だけの私より
先に帰ってきてるのはおかしくない!?」
「そりゃあ私は大人だからね〜ワープの一つや二つ
出来て当然だよ」
「そんな訳ないじゃん!?……あっ、もしかして
お父さんに頼んだんでしょ!?歩くの面倒だから
っていつもそうしてるもんね!!」
「うへーバレちゃったかぁ。私の為にって特別な
転送装置を用意してくれたんだー」
「ほんっとお父さんはお母さんに甘いよね!!
私のお小遣い交渉は教育上よくないって毎回
ダメって言ってくるのに!!」
「そりゃあ私と旦那さんは相思相愛だからね。
……あ、でもツキノちゃんの事も大好きだよ。
出張で入学式に行けないってガン泣きしてたけど
さっき制服姿の写真を送ったら『家宝にします』
って喜んでたからねそのくらいツキノちゃんの事
を大切に想ってくれてるんだよ」
「……嬉しいけどちょっと気持ち悪い。でも
それなら私にもその転送装置を使わせてよ」
「それはダメ。旦那さんから
『通学も青春。今のうちに満喫しておかないと
後悔しますよ。なのでツキノは使用禁止です』
って言われちゃってるんだ」
「むぅ……けち」
「まあまあ。ほら、ノノミちゃんから定期を
貰ったと思うし電車で通学した方がいいよ」
「確かに貰ったよ。でもこんな金色の定期なんて
知らないんだけど。なんか太陽と三角?みたいな
マークも入ってるし」
「それは世界で5枚しか発行されてない定期だよ。
んでそのマークはアビドス自治区在住って証」
「へぇ……なんで金色なの?」
「特別感があるから!……っていうのは冗談で。
ネフティスグループって知ってる?」
「うん。5年くらい前にキヴォトス中の列車運行
を乗っ取……強奪した会社だよね」
「そうそう。その会社の社長の娘がノノミちゃん
なんだよね。いやぁ……私の後輩がそんなに偉い
人だとは思わなかったよー」
「……何なの?校長だったり社長の娘だったり。
母さんの知り合いってやばい人しかいないの?」
「やばい人以外にもいるよ。例えば……」
「例えば?」
「……もうすぐ夕飯が出来るから制服脱いで椅子に
座って待っててねー」
「やっぱりやばい人しかいないんだ!?」
どうしよう……私の高校生活に早くも不穏な影が
見え始めてきてるような気がするよ……周りの大人
がやばい人だらけなんだもん……
そんな不安が募る中用意された夕食を母と囲み
いただきますと手を合わせた後に食べ始める。
ごく一般的な家庭料理を堪能しつつ他愛のない会話
をしていると突然母に
「ツキノちゃんはどの部活に入るの?」
と問われた。部活かぁ……
「……って部活紹介って明日じゃん。今聞かれても
答えようがないよ」
「そうだったね。ちなみに私のおすすめは……」
「待ってネタバレしないで。明日の楽しみに取って
おきたいからまだ言わないでよ」
「そっか。あ、困ったら掛け持ちも出来るからね」
「考えとく」
そんなこんなで夕食を食べ終えてお風呂に入り
パジャマに着替えたところでベッドにダイブした。
色々調子が狂わされる一日だったけれど明日から
本格的に始まる高校生活に昂っていた。
「あ、ミレニアムクエストの続きを……」
「ダメ。2日連続で遅刻したら許さないよ」
「けち。寝る前の楽しみだったのに……」
「寝不足になったら授業についていけなくなって
大変な思いをするんだよ?」
「……はいはい。ちゃんと寝るから」
やっぱりホシノ母さんは過保護すぎるよ……
まだ22時だよ?そう簡単に寝れるはずがZZZ……
「快眠だったよ!?」
「良かったね」
「なんならまだ七時半だよ?余裕ありすぎだって」
「んーでも早くしないと電車に間に合わないよ?」
「……あ、そうじゃん!!2日連続で遅刻ギリギリ
は不味いから早めに家を出るね」
「はいはい。あ、これお弁当ね」
「ありがとう。行ってきます」
「行ってらっしゃい」
よーし今度こそ電車に間に合いますように!
……って意気込んだのはいいけどなんだか昨日
よりも余裕がありすぎて呆気なく間に合ったよ。
「……でも私含めて五人しか居ないんだけど」
「アビドスから電車通学する学生さん自体が
殆ど居ませんからね☆」
「あ、ノノミさん」
「今日は電車に間に合ったようですね〜ほらほら
早く乗ってください〜」
「はい。……あれ、もしかしてノノミさんが運転
するんですか?」
「はい〜朝のこの時だけ私が担当してます☆」
……やっぱりこの人も普通じゃない。私の周りの
大人達は超人しか居ないのかな……これ以上深く
考えない方がいいのかも……そんな事を考えつつ
電車に乗り込んで扉が閉まり発車した……途端に
誰かが背後に立っている気配がした。それと同時
にお尻を撫でられた。身体はピクンと反応し、
その快感を受け入れようとしていた。
「ちょっと……何して……」
「ん、痴漢」
「そんな堂々と言っていいの……?」
「大丈夫、この車両には他に誰もいない。到着
するまで触り放題」
最悪だ。この子最悪だよ。初めての電車通学で
痴漢される事なんてある?人ガラッガラなのに?
え、何?なんか匂い嗅がれてるんだけど……
……ダメだ、この手つきが癖になる前にやめさせ
ないと私が持たない……
「私は砂狼アオバ。同じクラスだよ」
「なんでこのタイミングで自己紹介を!?」
「ツキノには色々お世話になるから。クラスメイト
としても……それ以上に」
「ちょっと待って!私にそっちの趣味はないの!」
「ん、なら趣味になるまで襲うね」
ダメだこの子話が通じない。……あれ?なんか
息が荒くなってきたような……もしかして私……
「……って騙されないよ!?さっさと離れて!!」
「っ……ん、R-15タグがあればこれ以上の事が
出来たのに。残念」
「痴漢から始まる百合なんてある筈ないでしょ!
やるとしてもせめてちゃんと考えてよ!」
「……つまりムードが良ければ?」
「やらないよ!?」
このアオバとかいう変態が同じクラスって本当?
……ああでも自己紹介の時に見た気がする。
だとしても襲ってくるとか怖いんだけど……
「まさかと思うけど他の子も襲ってるの?」
「ツキノだけ」
あーこれ完全にロックオンされてる。波瀾万丈
にも限度があると思うんだけど?
「……とりあえず今後とも宜しく」
「あ、うん……宜しく?」
手を差し伸べられたので握手するのかな?と思い
同じく手を伸ばしたらアオバの手は私の胸に
吸い寄せられるように着地した。むにゅむにゅと
服越しに揉まれ「ん、Dカップ」と嬉しそうに
触っているアオバに対し私は全力のビンタを
喰らわせた。この変態が!!