入部体験が終わった後、ツキノはアヤカの家に
誘われて着いて行きました
「初めて乗ったけど……ミレニアムの電車って
ハイテクなんだね。最先端って感じがする」
「他の自治区よりも化学が発展してるからね。
安全性は皆無だけど」
「そうなんだ。……それって駄目じゃない?」
「キャッチコピーは『科学の発展に犠牲は……』
だからね。仕方ないのよ」
「ミレニアム怖い……」
「確かツキノはアビドス自治区なのよね?
そっちの電車はどんな感じなのかしら」
「全身金色で十六夜先生が運転していて痴漢が多発
してる電車だよ」
「なにそれ怖い」
放課後の他愛のない会話に少し青春を感じつつ目的
の場所に向かう二人。
「友達の家に行くのってなんかソワソワするね」
「私も同じよ。友達を家に呼ぶだなんて初めての
事なんだから。親にどんな反応されるか全く予想が
つかないもの……」
「そうなの?」
「ええ。一時期ストーカー紛いの子がついてきた
くらいだから……」
「……流石キヴォトスだね」
「そうね……そろそろ駅に到着するわよ」
「もうそんな時間が経ったんだ……ミレニアムの
技術力ってすごいんだね」
「私的には速さよりも安全性の方が大事だけどね」
「まあね」
電車を降りてICカードを改札に……あっ、また
勝手にお金がチャージされてる……何も言わずに
こんな事されると怖くて仕方がないよ。
「えっと……大丈夫?」
「あ、大丈夫だよ。ちょっと動揺しただけ」
「そう? ならいいんだけど」
「ちなみにアヤカの家までどれくらいかかるの?」
「徒歩5分くらいね」
「駅近なんだ。良いね」
そんな中身のない会話をしながら徒歩5分の
人通りが多い道を通って馬鹿デカくてセキュリティ
が異常に厳重なマンションのエレベーターに乗って
目的の階に向かっている。
「ここが私の家よ」
「3803号室って何? 高くない?」
「ミレニアムだからね。38階くらいは普通よ」
「ごめんその価値観にはついていけそうにないよ」
「そう……まあいいわ。今開けるから待ってて。
……既に開いてる? とりあえず入っていいわよ」
「えっ大丈夫なの?」
「多分」
「えぇ……」
「だ、大丈夫よ。お父さんはともかくお母さんは
昔冷酷な算術使いとか魔王とか言われてたらしい
からそう簡単に負けないわよ」
「アヤカのお母さんって一体……」
「とにかく入って。案内するわよ」
「あ、うん。お邪魔します」
初めて入る友人の家はなんて言うか……愛されてる
のが伝わってきた。普通ならアルバムに入ってる
写真とかも額縁に飾って廊下に並んでるし……
入学式の写真とかも既に飾ってある。
「ねえ、これって」
「……あんまり触れないでもらえると助かるわ」
どうやらアヤカにとっても恥ずかしいものみたい。
微笑ましいものなんだけどね。
「それとこの床に脱ぎ捨ててある女性用の私服って
何があったの? 結構エグい下着とかもあるけど」
「ああ、それは多分お父さんがお母さんを玄関付近
で襲った時に脱がしたやつだから気にしないで」
「怖」
「昔からそうなんだけどさ、お母さんって何度も
頼み込んだら断りきれないのよね。そのせいで
いつもお父さんは調子に乗るの繰り返し。でも
不倫とかはしないし純愛らしいから上手くいって
今に至る。要するに相思相愛なのよ」
「それは良い事なんじゃない? 一途って今の
ご時世なら重宝されると思うよ」
「そうね……ただ……時折親子太ももサンドを
強要されるのがしんどいわ」
「仲睦まじいようで何よりだよ。私の家は……
いや私の家も似たような感じだった」
「ツキノも大変ね……一旦部屋に行きましょうか」
「リビングの方から何かを打ち付ける音と女性の
声が聞こえてくるんだけど」
「触れないで」
「うん」
家でもよく聞く音を気にせずにアヤカの部屋に
入ると何故か緊張してきた。……どうしよう。
なんだか落ち着かないなぁ……
「えっと……まずは今日一日ありがとう。ツキノの
お陰で入学体験巡りが楽しかったわ」
「私も楽しかったよ。……まあ、個性的な部活しか
なくて結局無難なところにしようと思ってるけど」
「そうね。百合園部とかは狂気だったもの……」
「うんうん。百合を否定する気はないけど私が
求める普通の恋愛とは違うからね」
「普通の恋愛?」
「うん。実は私、昔に……」
過去編に入る流れの中、ガチャリと部屋の扉が開く
音が聞こえたと思えば息の荒い女性が部屋に入って
きた。アヤカと同じ紺色? の髪をした女性だ。
「アヤカ、帰ってきたら一言くらい言いなさい。
いつ帰ってきてたの?」
「お母さんとお父さんがリビングで※※※してる
時だよ。昼からお楽しみのようで」
「おた……!? 違うわよ!! あれは……ほら、
リモートワークで疲れている所をマッサージして
貰ってただけよ!! 本当よ!?」
「その言い訳も936回目だよ?」
「うっ……ところでそちらの子は?」
「私の友達だよ」
「初めまして。小鳥遊ツキノって言います」
私は親子の間で交わされていた情事についての会話
は聞いていないフリをしてアヤカのお母さんに挨拶
をした。何処かで見た事があるその女性は途端に
動揺し始めたかと思えば大きな声で
「ちょっとあなた聞いてください!
アヤカが友達を家に連れてきました!」
と明らかにテンションが上がっている……
隣には顔を真っ赤にして俯いているアヤカを見て
ああ、さっき言ってたのはこういう事なんだって
納得したけど喜んでくれているし良いと思うよ。
「なんだよユウカ。今賢者タイム中だから
昨日からずっと煽って遊んでる絶壁狐に連絡
してるってのに……」
「またそんなくだらない事をしてたんですか!?
いえ、それよりもあっちを見てください!」
「ん? おーアヤカ帰って来てたのか。じゃあ
今日の親子太ももサンドを……そっちの子は?」
「私の友達」
………
「ユウカ今すぐに赤飯を用意するぞ!」
「えっあっはい!」
あーこれは親バカだね。間違いないよ。だって
友達が遊びに来ただけで普通こんな祝うかな?
私の家でもケーキを焼くくらいで……こっちも
大概だったわ……何なのキヴォトス、親バカ
しか居ないのかな?
「もう! そんな事しなくていいから!
早く部屋から出て行ってよ!」
「何言ってるの!? お祝いは必要よ!!
アヤカが友達を家に連れてくるだなんて初めて
の事なのよ!?」
「それくらい普通の事じゃん! 大袈裟なの!」
「連れ込むのが男じゃなくて俺は安心したよ。
百合なら大歓迎だからな」
「ばっ……百合に興味なんてないから!
お母さんに昔の制服着せてそういうプレイをする
お父さんとは違うの!」
「げっなんでそれを……」
「『先生呼びしないと焦らし続けるぞ?』って
気持ち悪いことを言ってたじゃん」
「うっ……まさか聞かれていたとは……だが
ユウカがしたいって誘ってきたから
仕方なくそういうプレイをだな……」
「はぁ!? あなたが何度も土下座して頼んで
きたから渋々付き合ってあげたんですよ!?」
「ユウカもノリノリだったろうが!!
あんなに甘い声で甘えてきた癖に!!」
「何ですって!? もう知りません! 今夜は
ご飯抜きです!」
「なっ……それは酷すぎるだろう!?」
「人のせいにするなんて最低です! 反省して
ください!」
「……魔王のくせに」
「なにか言いましたー?」
「夜は寝かせねえぞって言った」
「……そんなので私の機嫌が直るなんて私も
甘く見られたものですね」
……あー。この一家なんとなく分かったよ。
凄く仲がいい家族だね。父親が変態なのは私の
家も変わらないし……
「……ごめんねツキノ。私の親って変なの」
「そんな事は……あるかもしれないけど。でも
幸せそうな家族で良いじゃん」
「……それは否定出来ないわね」
「あ、そうだ。ツキノちゃんだっけ? アヤカの事
を頼むよ。ただし友達としてな。それ以上の関係は
まだ許さないぞ」
「えっ? あ、ああ。分かりました……?」
「早く出てってよ!」
「はいはい。……ちなみにお赤飯は?」
「いらない!」
……なんか嵐みたいな人達だったなぁ。でもこれで
ようやくアヤカと落ち着いて話せて……
「……ねえ、ツキノ。百合ってどう思う?」
「えっ」
「普通の恋愛とは違うけど……そういう形の愛も
認められるべきだと思うのよ」
「まあ……そうかもしれないね」
「そう、よね……」
……あれ、何この雰囲気。ちょっと良くない気が
するんだけど。
「ごめんなさい。変な事を聞いたわね。忘れて」
「あ、ああうん」
「……今はまだその時ではないもの。それよりも
さっきの続きについて聞きたいわ」
「そうだね。でも面白い話じゃないから無理に
聞く必要はないよ」
「気にしないわ。むしろ話してほしいの」
「分かった。じゃあ少しだけ長くなるけど……
私が普通の恋愛に拘る理由を教えるね」
次は
す
っ
っ
ご
く
くだらない過去編です。浅堀します