「じゃーねー」
すっかり仲良くなった僕たちは東京駅で別れた。
彼女らは憲兵や護衛を連れて。
僕たちはせつなさんと父上と一緒に。
ここからは家までは車だ。
隊の人が来るらしい。
「巌谷さん、でしたか」
「もう君も仲間だ、敬語じゃなくていい」
「お言葉に甘えますよ」
仲間か…。
どれだけこれから失うのだろう。
いや、身内には手を出させはしない。
もう…。
それが友軍だとしても。
「ほら!乗れよ」
「はい」
車に乗る。
「暇なんですか?鎧衣さん」
中にいたのは鎧衣さんだった。
5人乗りで後ろは僕とせつなさんと父上でパンパンだ。
「そんなわけないだろう。いさな、知っているか?この人偉いぞ」
「篁、わかったから。いさな君」
「はぁ」
「予算は自由だ。取り付けてきた。存分に」
「わかりました」
「では」
そういって変な帽子をかぶりどっかにいった。
「父上…前に行ったらどうです?」
「むぅ、わかったよ」
外を見ていたらあっという間についた。
質素だが立派な屋敷があった。
「旧綿月家屋敷」
「そうだったんだ」
「今は我々の家だ。帰るべき」
京都はどう思っているんだ?
今の父上の言葉…。
胸騒ぎが少しした。
「きれいだね」
巌谷さんは少し懐かしそうに見ている。
「久しぶりだなぁ。ここで愚痴を言いあっていたなぁ」
なんできれいなんだろうと思っていたら答えを言ってくれた。
「私がしました」
「っ!?」
「私が部屋を整えたりとか」
そう!何を隠そう僕の副官せつなさんだった。
「家事ができる!?」
「そりゃぁそうですよ!」
「意外」
「ひっど!」
「今から行くよ、木更津基地」
「ここからどれくらい?」
「1時間弱」
「ほーん」
「ほら、行くよ」
また車に乗る。
せつなさんは隣で寝ている。
何ならこっちにもたれかかってきそうだ。
「疲れているのは僕だけじゃないのか」
自分は大人にならなければならない。
せめてみんなのいる前では。
でも、せつなさんには心配をされるかもしれない。
無理しているのでは? と。
「あなたがするなら僕もする」
かたく決意した。
木更津基地は工事がされていた。
地下に格納庫を作る工事だ。
2個小隊程度の格納能力が欲しかった。
ほんとに予算が大変そう…。
そして工事は一部分だけだ。
滑走路や格納庫は健在だ。
ここは帝国軍と斯衛軍の共同基地。
「立派だ」
「計画はこの建物と地下。地下は工事中だから設計とかエンジン試験とか先にやろう」
「あい」
部屋に入ると30人ほどの人がいた。
軍服姿もいれば作業服の人もいる。
「凪雲いさな大尉です」
敬礼をする。
この5日間で恭子様に叩き込まれた最低限の礼儀だ。
「巌谷だ」
「篁です」
どんどん自己紹介をしていく。
「若い人は少ないな」
「ベテランばっか引っこ抜いてきたからな!」
「よろしくお願いします!」
深々と頭を下げた。
「早速ですがえーっと」
「斯衛軍第0軍第404戦術機評価隊の発足です」
「0軍!?」
「参謀本部…というかこれの計画って参謀本部さえ知らないと思いますよ」
「ふぁ!?」
唐突にせつなさんから聞かされる。
「精々知っていて煌武院様程度かと」
「あと帝国の情報省」
「あーーー、鎧衣さまか」
僕はあの人がすごいことを今実感している。
「まずはエンジンテストですが…その前に!」
「前に?」
「えーっと皆さんここは休んでもいい職場です」
「??」
「なので家に帰って寝てまた来てください」
「「「「「「「――――」」」」」」」
みんながシーンとした。
「お気持ちはありがたいですが心が高ぶって」
「職人魂…わかりました、エンジンテストを19時から」
「なぜです?」
「エンジンの炎が見たいから」
エンジンノズルや馬力とかも見たいし。
「大尉…何を」
「いさなで結構」
「いさな君は何をしたいの?」
「人にも勝てる、BETAにも勝てる。つまり絶対に負けない戦術機」
「冗談じゃないんだな?」
「はい!!!」
「俺は杉下だ。よろしくな!坊ちゃん」
一番リーダーっぽいおじさんに言われた。
エンジンを持ってきて固定機具に固定する。
そしてネットやらいろいろやって作業は完了した。
「噂では帝国工廠、技研で開発したはいいものの推力が高すぎて意味がないと言われた代物です」
「へーー、すごそう」
「その名もフェニックスエンジン」
「かっこいい」
そういわれながら最終点検とホースの確認が行われていく。
多分現場の指揮は杉下さんがやっていたのだろう。
せつなさんが僕を地面に押し付ける。
「結構離れているから大丈夫だよ、せつなさん」
「いさな君、なめないほうがいい」
「…そんなに?」
完了の合図がきたので制御係に手を回す。
すると目の前のエンジンの音が聞こえてきた。
「聞こえます―」
「何を言っているのかわからない!」
口パクだけは見えた。
相手も同じようだ。
いきなり後ろからヘッドホンをつけさせられる。
「いいですか?」
「片耳だけ外す」
そういって片方だけを外す。
「今は温めている状態です。アイドリング」
「ふんふん」
せつなさんは結構声を張っているようだ。
「今から回しますよー」
するといきなり音が高くなり始めた。
そして風の轟音も聞こえてくる、
「これが一応ミリタリー推力」
「これより上の
「
さらに炎が出始める。
青白い炎に見とれてしまった。
「これがAB?」
「そうです、ここからロケットエンジンをつけます」
左の杉下さんに目配せをせつなさんがすると手に持っていたスイッチを杉下さんが押した。
さらに炎が伸びていく。
「これは私でも想定外です!」
髪の毛がめっちゃくちゃになりながら僕を抑えている。
「杉下さん!」
彼を向くと笑顔で立っていた。
僕も笑顔になっていた。
こいつならやれる。
重武装でも軽々動けると。
ABは必要ないかなと思いつつもロマンを感じた。
というかABで無理やり速度上げられて燃費も少し良くなるかもという考えです。
あっているのかなぁ。