「今まで、お疲れさまでした。そしてこれからもがんばってください」
みんなの前で僕は礼をする。
「はい!こういう環境で働かせていただいてありがとうございます」
あちらも礼で返してきた。
「坊ちゃんは環境が甘すぎですよ」
「クックック」
みんなで笑っていると父上と巌谷さんが大きな箱を持ってきた。
「いさな君がお皿を買ってきたぞ」
「「「お…皿!???」」」
「そう、お皿。裏には小さく隼って書いてあるよ。天津風もね」
みんなは驚いているが僕はいい贈り物だと思っている。
え?そういうことじゃない?
「そうですか…」
「変に目立たないしいいかなって思ったんだけど…どう?」
少し心配になってきた。
もっと豪華なものとか言ってそう。いやそれはないか…。
みんないい人だもん。
「いえ、非常にいい贈り物です…」
1人が零すように言った。
それからみんなが静かになった。
「ほら!みんな!悲しそうにならないで…」
かくいう僕も涙声になりそうだが…。
2年間という長い年月をかけてみんなで作ってきたんだ。
それは寂しくもなる。
「今度は主力機なんだろ。お前たち!」
父上と巌谷さんも元気づけようとしている。
「そうだよ!もう!神みたいに強い機体作っちゃって!!!武の神ぐらい!」
「そうですね…」
「俺たちもがんばらないと!でも、主任とか坊ちゃんもですよ!」
みんながだんだん顔が晴れてくる。
「でも、頼むから天津風よりは強いの作らないでよ!こっちの面子潰れちゃうヨ…」
「「「「「「ふふ、はははは!」」」」」」
お金かけまくりの機体が負けたら怒られるっていうか殺される。
そのあとはいろいろな思い出話を語りながら貴重な新鮮な本物の料理を食べたりしていた。
本物のお酒もね…。
だから…
「坊ちゃん!これお酒ですよ!」
手に持っているグラスを奪い取るおっさんが一人。
「えーーー、別にいいじゃん!」
「昔よりも生意気になりましたねぇ」
それを聞いてみんなまた笑った。
もう大爆笑。
いつまでも子供扱いできると思うなよ!といいたいが多分…事実だ。きっとこれからも子供だろう…。僕は。
「煙草とか吸ってみたい―」
「こんなに臭い煙吸いたいか??」
「いや」
自分で子供っぽいということを証明してしまった。
「坊ちゃん、あなたはいつまでも、いえ。いつまでもはよくないけどあなたは背伸びしなくていいんです。あなたはいつまでも甘えれるんですよ?年下にはやめておいたほうがいいですが…。でも、あなたは立派な大人になってください」
少し泣きながらこういうことも言われた。
みんな泣いていた。
そしてこれにはもう一つの意味があることがあとでわかった。
それは大人になってください。
そのままの意味でもあるし生きろということ。例え俺たちが死んでもあなたみたいな人がいれば日本は立ち直れる。そういう意味だと思う。だけど気づくのはまだ先だ。
「いつかわかってくれますよね」
少し小さな声でそう言われた。
「意味なら分かっているさ!!」
「ふふ、強がりですね…」
そう言ってからはまたみんなで話し始めた。
僕はそっと格納庫に向かった。
そこには管制ユニット2つと
跳躍ユニットがあった。1ペア。
最近、最後の最後で完成したもの。
曲線などが多すぎて作るのが困難だったり管制ユニットを先に作ったりしてで後回し状態だった。
「天津風、その土台」
少し触りながら思い出していた。
いろいろなことを。
「みんなの思いがあるからこそ死ねないな」
まるで戦場に出た人が言うことだ。
だから僕は言っちゃいけない気がする。
でもいつか行くんだ。
「その時は、天津風と…時雨。よろしく頼むよ」
そういってまたあの部屋に戻っていった。
戻るとそこは苦笑いをしているせつなさんと伊歩さん。
そしてみんなで肩を組みながら歌っているみんな。
そして部屋はお酒臭かった。
別にお金はいいんだけど結構みんな酔っぱらっていた。
このままだと明日までに出れなくてずずずって引きずりそう。
「もうそろそろ皆さん解散にしましょう!どうせみんな生きているんだから会えますよ」
「そうだな。お開きにしようか」
そういって巌谷さんは肩を外した。
行くものとそうでないもので列を作った。
「今までありがとうございました」
そう言って互いに礼をした。
そしてみんな少しずつ散っていった。
「片づけは我々がしましょう…」
片づけは残るもので始めた。
ただ僕はお酒とかダメなので見ていた。
すぐに飽きて外に出たが。
「星が、綺麗だ」
いつかこの空を飛べたら。
自由に。
「平和な、何もない空をみんなで飛びたいなぁ…」
少し泣きながら部屋に戻った。
「では片付けも終えたので帰りましょう。どうせ行く者たちは格納庫で少しだけ見てから帰るでしょうし」
彼らの熱量的にもお別れがしたいはずだ。
そっとしておこう。
「またいつか。変態さんたち」
僕たちも該当しそうだが…。
10月中頃 1996