もう時間がない。
「嵐山駐屯地の一角を借りれて助かりました」
父上がここの指揮官みたいな人と話している。
僕はいつでも出れるように強化装備を着てその上に上着を着る形になっている。
「唯依姉、久しぶりだね」
同じく強化装備の上から上着を羽織っている唯依姉に話しかける。
「結局は2人とも戦場にでちゃうね」
「僕は自分の命の次に唯依姉が大事だから」
唯依姉は昔からずっと一緒だった。
計画に行くまでは。
「私じゃいさなを守れないよね」
「それはわからないけどそんなことになっていたら2人とも死ぬね」
機体の性能的にも無理だもん。
ハンガーには天津風、不知火改2 瑞鶴が13機ぐらいいた。
もうみんなは出るころだろう。
「せつなさんたちの見送りに行くけど…父上もいるよ?」
父上と会えるのはこれで最後かもしれない。
そんなことないって信じているけどね。
「一緒に行く」
手をつなぎながら歩いていく。
父上は司令官みたいな人と話していたが僕を見ると時計を見て司令官に礼をして離れていった。
そして父上は僕たちのほうに向かってくる。
「大きくなったな、唯依」
「父上もお変わりなく」
唯依姉は嬉しそうな顔と声でいっぱいだった。
これで不安が少しでも消えればいいけど。
「父上、天津風はどうにか持って帰ります」
「そんなことは期待していないよ。生きて帰ってくればいい」
父上は寂しそうな笑顔…でも声は悔しそうでもあった。
「いざというときは唯依姉を守ります」
「頼むよ、唯依を」
顔を見合わせて笑い出す。
あぁ、こんなに僕は怖いんだな。
こんな状況で無理やりにでも笑いたいぐらいには。
「もはやいさなは唯依の殿方だな」
「意中の相手でもいれば応援しますけどこっちに近づいてきたら怒ります!」
唯依姉も静かに笑っていた。
でもその目には涙が少し浮かんでいる。
「父上、時間ですか。せつなさんもいるから送るよ」
そういってみんながいる車の方向に3人で歩いていく。
「よければ母上も拾ってもらえると嬉しいのですけれど」
父上にはいつも見せない態度でお願いしてみる。
「きっともう避難しているよ。私よりも強いだろうから…生き延びるはずだし一応我が家を教えているからね。東京に帰るころにはいると思うよ」
最後は涙声であった。
「せつなさん…生きて帰るから泣かないでね」
そしてせつなさんも泣いていた。
別に死ぬって決まったわけでもないのに。
顔と目を真っ赤にして泣いている。
「では!第4試験中隊所属第2小隊、命令をする!生きて会いましょうね!」
敬礼のまま動かない。
みんなも敬礼を返してくる。
せつなさんは顔をあげられずに汚い敬礼にはなっているけどそれでもいい。
敬礼をやめるとみんながやめる。
そしてそのまま行ってしまった。
すると雨が降り始めた。
「道路が整備されているから大丈夫だろうけどこっちは大変だね」
視界が悪くなる。
それは嫌だ。
「運が悪いね、唯依姉」
「そうだね」
建物に小走りで移動しながら話す。
「そういえば小隊のみんなは」
「いるよ、みんながちがちだろうけどね」
実戦ができるレベルギリギリの衛士を投入するんだ。
そしてそれを自覚できている衛士だしそれは怖いだろう。
「まぁ、後方寄りになったしまだまだ大丈夫じゃない?」
建物に入ってブリーフィングルームに向かう。
嵐山駐屯地よりも前線に部隊が展開している。
急いでしたので怖いけど流石にすぐには抜かれないだろう。
「唯依姉、しばらく2人で寝ようよ」
「ふふふ、まだまだいさなは子供だね」
お姉ちゃんらしい笑顔を見せながら頭をなでてくれる。
「そりゃぁ、可愛いお姉ちゃんがいるんだから!甘えないとね」
そういってブリーフィングルームではなく休憩室に目的地を変えた。
休憩室に入るとそこにはあのみんながいた。
名前忘れちゃったかも。
「みなさんいきて…そりゃ死ぬ場面ないか」
そういうとそこにあった椅子に座ろうとした。
そこで気づいた。
みんなが暗い顔だってことに。
「なるほどね、みなさんもかいな」
唯依姉はこんな場所にいたのか。
そりゃ息苦しいわ。
こんなんじゃ寝れない。
休憩室にはソファしかなさそうだった。
「ゆいねえーー、寝よー」
僕だけがゆったりとしていた。
「怖くないの?」
「怖い怖くないじゃないけど、生きて帰るのが目標だから」
元気そうな容姿の…安芸さんに言われる。
こんな人じゃなかったはずなんだけど
「怖いのは分かるけど、もうやだから。自分の大切な人を死なせるの」
「だからなんでそんな余裕そうなの!!」 「あなたと違って失っている人だっているのよ!」
頭がぐちゃぐちゃになりそうだ。
いろいろとそうやって言われて。
「暗示でもかけて戦場に行くよりはましだろっ!みんな目を覚ましてよ」
「あんたがそんなにげんきだからわかんないんでしょうけどね!!」
「君みたいな子はまだわかっていないんだよ!」
やめて
うるさい
下に見ないで
みんなに死なないでっていっても…
死にたくない
唯依姉と寝させて
もうなにもみたくない
けっきょくはこうなるんだ
みんなしんでいくんだ、こんなかんじょうで
もう静かにしてくれよ
「そもそもあんたは今まで血反吐を吐く思いしたことあるの!!」
「あんたなんて努力じゃなくて才能でしょ!!」
うるさい
うるさい
ねむいんだよ
ねさせてよ
もう、黙って
立ち上がりながら背中のホルスターのUSPを抜いてセーフティを解除
天井に銃口を向ける。
「黙れ、うるさい。俺より年長者が、武家がめそめそすんじゃねえよ」
引き金を引く。
耳当てをしていないみんなにはうるさく聞こえたのだろうか。
呻きながら突っ伏していく。
唯依姉だけは平然と、いや茫然としていた。
薬莢の落ちる音が鮮明に聞こえる。
「俺だって、怖いさ!しかもあんたたちよりも前で戦うだろうね!」
唯依姉は何も動かず泣き出した。
「だから、みんなも死なないでね」
そういって唯依姉と一緒に寝始めた。
ソファに2人でぎちぎちになりながら。
抱きしめあいながら
そして夢の中に入る。
夢の中でも動けるもんだな。
そして感じてしまった。
何もない空間に、誰もいない空間にその言葉を吐く。
ぼくはとっくにくるっているのかもしれないね。
「いさな君、戦場に出るんだね」
「私だって望んでない!」
私たちはなんでびくびくしているのだろう。
私たちよりも小さな子供は戦場に出る覚悟ができているっていうのに
私の弟を見習わなければ
でも、休憩室に着いた瞬間に寝るなんてね。
驚いた。
やっぱり怖いんだね。
覚悟していても。
もう、逃げたいっていう気持ちをすごく感じる。
そうして私もいさなを抱きながら眠りに落ちた。
何もない。
夢と認識するのに少し時間がかかった。
「こんにちは」
黒いセーラー服、赤いネクタイのようなスカーフ
「えっと、こんにちは」
「僕は、春凪時雨。君は?」
「篁唯依です」
その少女は手を差し出してくる。
私は恐る恐る握る。
「君が今回のいさ君の相棒なんだね。」
彼女の声と話し方は身にすっと入るかのような優しさを感じた。
「今回?」
「うん、前はいなかったよ。その前はいたけどね」
髪飾りの宝石を弄りながら答えた。
「あなたは何者なの?」
「私はいさ君の妻でBETAで力の源で親友で、そして今までずっと寄り添ってきた彼の武器」
少女は悲しい笑顔で答えてくれた。
いろんな情報が脳を駆け巡る。
「いさ君を頼んだよ、相棒さん」
「待って!教えてください。あの子はどんな力を持っているの?」
いさなの武器なら、力の源なら。
わかっているはず。
「今までの世界から外されたもの、それがいさ君の肩書かな。じゃあね。また会えると…いいな」
そういって彼女は消えた。
すぐに私は目を覚ました。
誤字報告ありがとうございます!
あといいましたよね?たしかですけど
僕は提督だって