おしゃれにしたのはじぶんだけど
僕たちがいる嵐山駐屯地の出番はこの京都防衛線の中で見れば最後の方
つまり陥落前が一番この駐屯地に負担が来る。
相当後方だからね。
そして斯衛の主力からも少し外れている。
でも僕はそれよりももっと前から情報収集をしなければならない。
そのため嵐山駐屯地の中で最も最初に動くのはうちの部隊だ。
そしてそれが今来た。
「神戸を過ぎて、さらに進軍中。これを迎撃中」
第2防衛ラインから最終防衛ライン。
ただあっち、南側はは陸軍と斯衛の主力だ。
なので手薄なはずの右翼から偵察する。
命令は後方の父上からもらう。
つまり司令部とも話しているはず。
「第4試験中隊第2小隊、出撃命令。準備だ」
セシル、伊歩姐に話をする。
2人は頷く。
着替えはもう終わっている。
機体のチェックだけだ。
「唯依姉、いってくる」
「帰ってきてよ」
唯依姉、そんな心配そうな顔をしないで。
近寄ると手を広げてきたので抱きしめあう。
唯依姉も昔と違って体ちょっとがっちりしたなぁ
満足したのか30秒くらいしたら離してくれた。
「ん、だいじょぶ」
そういって天津風のいるハンガーに歩き始めた。
「それにしても意外と持っているかもね」
こっちに来てから8日たっている。
アメリカ軍の支援が強いのもあるのかもしれない。
「第7艦隊の艦載機とかもいろいろ働いてくれているらしいし」
「でも核の使用を許さない日本政府には反感がありそうだね」
セシルは懸念点を述べる。
その通りだと思う。
今更、核の使用なんて、と思うのだが。
核地雷でも使えばよかったのに。
「とりあえず削るだけ削って帰るよ!」
「伊歩姐、気合入りすぎ」
そして3人の各機体の前に着いた。
今は朝。
光が入ってちょうどよくかっこいい。
「準備できたら出撃、兵装は満載。武器構成は決めたものを」
この防衛戦では同じ武器構成を使い続ける。
補給が難しいからだ。
特殊な弾薬などを使うなら同じものをいっぱいストックするのがいいと考えたからだ。
天津風に乗り込む。
すでにシステムは機動済み。
あとはエンジンの起動だけを待てばよかった。
「装備は突撃砲4、長刀2、BETA用装備NO3、パイルバンカー」
パイルバンカーは簡単に言えば釘打ち機である。
対人装備があるならBETA用も作る。
中央の担架装置につけるが以外と重いし振り回されやすくなる。
それは仕方ないかもしれない。
使い捨てではないとはいえ、限られた耐久性能だし難しそうだ。
「長刀も74式じゃないし、予備は2振り…慎重に使わないと」
長刀だってあの長刀だ。
依姫をもとにしたやつ。
唯依姉は信義を持ってらしい。
母上に託して取りに戻るって言っているらしいよ。
うれしいけどなんか悲しい。
「ブーメラン隊、出撃!」
カタパルトに乗った天津風は急激に速度を得る。
でもいつもよりも鈍い、重い。
フル装備なんて久しぶりだからちょっとならさないと。
「巡行モード、オートパイロット」
ルートを設定、推力は自分で決める。
一番左のスロットルレバーを80パーセントぐらいのところまで押し倒す。
天津風はやる気満々だ。
オートパイロットは地形追従とかただ姿勢制御をする…とかが普通だろう。
でも、天津風。こいつは命を吹き込まれた鉄の騎士。
騎士、というより武士みたいなものだが。
天津風のオートパイロットはこいつが操縦する。
そして感じる、やる気満々だ。
僕もこの機体の事をわかっていると信じているのだろう。
「初陣だ、グッドラック!天津風」
<Good luck>
指定されたポイントに到着する。
「しばらく待つよ。相手が来ていないからね」
エンジンをアイドリングに。
一応、すぐに戦闘状態になれるぐらいの温度を維持しながら機体を放熱する。
「正面も来るかもだから注意、音紋センサーの波形に注意」
「警戒態勢、陣形は単横陣」
ブーメラン2・3が展開
そしてそのまま停止。
周囲を警戒しながら休憩をし始める。
「ちょうど2つの軍団の中間にいるからいないかもね」
このままいなければ予定通り南側の軍団を右後ろから狩っていきそのまま帰投する。
もしいれば遅滞戦闘。
量が多ければ撤退。
そんな感じ。
「あと20分でこなければ予定通りだ。それまで寝るっ!」
天津風は今の会話を聞いてタイマーをセットしてくれた。
とことん休んでやる。
「起こしてね」
なにかあった時にね。
「なんもなかったか。BETA戦にしては生ぬるい。もっとこう!やばーいみたいなのを想像していたよ」
結局、現れなかった。
そのため、予定通り作戦決行
「作戦名はうーん、落ち葉!」
エンジンをアイドリングから80パーセントへ。
戦闘陣形。
「システム・戦闘モード」
巡行モード用のスロットルは引っ込みHUDの表示が変わる。
この作戦で大変なのは後続の処理。
いわば列に割り込む形になるために高速で敵をさばいていかないとならない。
「拡張ユニットの弱点だな。ぎりぎりまで持ってから切り離す」
カーボンエッジ装甲を拡張ユニットが覆う。
これが弱点の1つになったのである。
「やれやれ」
割り込みをしたら一気に逃げながら戦う。
何度考えてもおかしい作戦だ。
そうは思わんかね?
でも、やるしかない。
というかやりたかった。
「斜めに入ってから一気に行くぞー!ブーメラン2・3、先に行け!」
BETA軍団らしきものをキャッチ。
僕は後ろのほうを止める。
ロケットポッドを斉射する。
「これからが本格的だな」
戦闘態勢
BETAの大群は想像してたのよりも多かった。
レーザー級の照射がないだけましだが。
でも
「っち!」
舌打ちをしながら懐に一気に入り込もうとする。
触手が機体をとらえようと迫ってくる。
「でも!」
ローリングシザースのような機動で触手中心にして回り触手を回避する。
後ろに触手の先が伸びていくがその周りを回り続ける。
「ふふーん!絡まったな!」
機体についてこれずに後ろで触手たちが絡まり始めた。
それを見逃さずに一気に肉薄する。
関節部に120ミリを4発撃ちこんでまた隣の方に
それを繰り返すのである。
「舐めるな!!僕を!」
機体が重くてもこれぐらいは余裕だ。
崩れ落ちる数々の要塞級をみて戦意をさらに奮い立たせる。
「ブーメランリーダーより2・3、どうだ?」
36ミリを下にいるやつらに喰らわせながら2人の元に戻ろうとする。
「いい感じ!もう少しそっちをお願い!」
お代わりをお願いされた。
レーザー級が来る前に逃げたいけど!
それでもやる。
36ミリをリロードしながら心に決める。
後ろからくる
小型種に取りつかれる前にさっさと場所を変える。
「潮時だね、拡張ユニットパージ!」
天津風を、解き放つ。
今まではゆっくり目に飛んでいたが一気に平均速度を上げる。
パイルバンカーを準備する。
両手に持って見えてしまった要塞級に叩き込んでスイッチを入れる。
それだけで要塞級の腹に穴が開く。
一応120ミリを入れてから離脱する。
パイルバンカーをコッキングして新しい火薬とくぎをもとの位置に戻す。
次はあの要塞級!
右に見えた要塞級に目をつけて一気にスロットルを上げる。
フットペダルを踏みこんで一気に近づいて叩き込む。
スイッチを入れる。
120ミリをお腹にいれてあげる。
触手は避けるのが楽だ。
僕はあることを考えていなかった。
「パイルバンカーの耐久値がない!?あと1発!?」
ステータスに出ていたのはもう壊れかけという事。
パイルバンカーを背中に戻す。
黒い機体は後ろの要塞級に目を合わせる。
触手が伸びてくるが地上すれすれで一気に右だけフットペダルを少し緩めてずらしてから
触手の上に出る。
その上から重量をかけて一気に高度を落とす。
そしてパイルバンカーのスイッチを押せば
担架装置から触手に伸びていたこっちの
長刀を構えて兵装担架に突撃砲が4丁ぶら下がっているになる。
そこから120ミリを撃って離脱する。
この時点でパイルバンカーは放棄。
初戦で使いつぶすという予想は当たった。
「これで軽くなった!これでもうふんだんにやれるね!」
奴らの足元を縫うように飛行する。
周りにいるやつは細切れに。遠ければ36ミリでミンチだ。
それより遠ければ何もできない。
実際は単独で敵陣に突っ込んで荒らして帰ってくる
というかもともとそんな感じだったのに戦いたかったから、生き残れるという自信があったからこんな作戦をすることになった。
後悔はしていない。
「ここからが大変だな」
「ブーメラン1!後ろは任せた!」
僕の役割は後退しながら前と後ろの敵を倒し続けること。
簡単に言えば手当たり次第、すべての敵を駆逐する。
弾が切れるまで。
でも天津風は単体での継戦能力に長けている。
というかそうした。
不知火改寄りも負担を増やすのは普通だろう。
突撃級が迫ってきても足をばねのように使って下がってから一気にブースト。
後ろをとって36ミリを撃ち込む。
カーボニックアクチュエーターのおかげだ。
4丁の突撃砲なら消費が多すぎる。
2丁を基本的に使いながら2丁は予備で取っておく戦術に切り替える。
つまり主軸を長刀にする。
試製長刀 月光
兵装担架装置から長刀を受け取る。
突撃砲は預ける。
「推進剤の残量を気にしろ!2・3はもっと早く行ってくれ!」
BETAの腕や触手、さらには足。
すべてをよけながらすべてを殺していく。
「リミッター限定解除!天津風!システム、戦闘巡行モード」
推力を基本設定をして戦うモード。
これで常時最大推力とかもやろうと思えば行ける。
そして今は50パーセント。
普通ならすぐに死ぬ。
でもこっちは足をうまく使って速度を落とさずに切り刻む。
「まるで、悪魔とダンスしているみたい」
36ミリは積極的に足を狙うようにし始めた。
120ミリは使わない。
「くっ!殲滅範囲が狭くなってる!やっぱり無理か」
36ミリを突撃級や要撃級にあてていく。
警報が鳴りやまずに耳を襲う。
月光を逆手に構えて覚悟を決める。
「ブーメラン2!先頭だ!3は援護!」
伊歩姐の兵装の弾薬が切れかけている。
長刀を今は使っていて僕と同じく節約状態。
対してセシルは精度がいいからかわからないが弾薬は比較的残っている。
「あと少しだから!あと少しで味方の防衛ラインにたどり着くから!」
ブーメラン隊は今、敵を無理やり分断している。
たった3機で。
さすがにその分断している面積は狭いが、1機に対してならそれは膨大なはず。
要塞級の触手が数本伸びてくる。
タイミングを合わせてバックブースト。
後ろから振り上げられる要撃の腕を避けてさらにその腕に触手を当てる。
前に少し強めのブーストをして腕もろとも触手を斬る。
「36ミリ残弾少量!急いでくれ!」
僕だけが取り残される図になりかけている。
2人でどうにか切り開いてはいる。
でも、遅い。
「わかった!あと少しの距離!2・3は僕の援護!持ちこたえて!そっちに行く」
アフターバーナーを使って前との差を詰める。
さっきと違って攻撃警報が鳴り響くがそんなのはわかりきっているしよけ切れる。
「あっ!!」
彼女らが倒したであろう要塞級に足を引っかけた。
前に転ぶ姿勢。
自動補正による姿勢制御をしよう天津風を無理やりその動作を
そのままロケットブーストをさせる。
ロケットブーストをさせている間に一瞬で次の動作を予約した。
それは跳躍ユニットを限りなく前に向けること。
一気にHUDの高度計が回る。
レーザー初期照射!
そんなものっ!
少し高度を下げながらも一気に最大推力。
一瞬、マッハを超えそうな速度が出たがすぐに減速する。
急激な機首上げとそこからの斬撃動作によって。
「ブーメラン2・3は続けぇ!!」
がむしゃらに前にいるBETAどもを駆逐していく。
それを2が広げて3が後ろのケアをしながら飛ぶ。
戦闘時間は1時間もないだろう。
それでも常時ずっと自分たちしかいない戦場にいた。
自分で孤立してそして荒らして帰ってきた。
これはそう!
威力偵察だ!
クソみたいな戦場で孤立して帰ってくる!
威力偵察の一番やってはいけないタイプだろう。
「スコーピオン隊!少しでいいからラインを上げろ!司令部からの達しだ!」
味方の無線が聞こえる。
帰ってきた。
要塞級がいてちょっと苦しそうだがそれでも我々のために戦線を少しだけあげてくれている。
「2は帰投、3は少しだけ荒らしてから帰るぞ!」
伊歩姐は前衛をやったせいでぼろぼろだった。
多分どこかしら損傷しているだろう。
武装だって長刀だけになっている。
弾薬が底を尽いていた。
「120ミリは温存したせいで余っているからねっ!3!右側を!僕は左側!」
射線に入らないように注意しながら要撃級や突撃級を長刀で斬りながら要塞級に近づく
近づいてそのまま120ミリを連続で叩き込む。
「推進剤、まだまだあるな。でももう無理だね」
兵装がもうだめだ。
長刀以外使い物にならない。
「スコーピオン隊!ありがたい!ブーメラン2を先に行かせたから通らせてくれ!」
「どこの部隊だ!敵の中から出てくるなんて!」
笑いながら、ただそこに8割の恐怖が見えていた。
「ブーメラン隊、斯衛第4試験中隊第2小隊!もう一度言うが本当に感謝している」
「こちらも貴隊の援護で楽になった!感謝するよ」
「スコーピオン隊、そちらの部隊は?」
要塞級が倒れていくのを横目に見ながら月光を振る。
逆手二刀流。
対BETAの僕の剣術。
というか戦術機の時の剣術。
カーボンエッジ装甲とこれを合わせて使う。
そのかわり労力がすさまじい。
でも破壊力はある。
それを証明した。
はず。
武御雷に役立てられているといいけど。
「ブーメラン3、もういいよ。RTB」
スコーピオン隊とすれ違いで離脱する。
そしてそのまま嵐山駐屯地まで歩行と跳躍噴射を混ぜながら帰る。
さすがに燃料も弾薬も使いすぎた。
「ブーメラン隊!無事です!」
コックピッドから降りて敬礼をする。
整備士はどんな顔をしていると表現すればいいのだろうか。
なんかもうごちゃまぜだね。
そして唯依姉の元に向かう。
「唯依姉!帰ってきたよ!」
天津風を見てそれから無言で抱きしめてくれた。
もう疲れたから寝る。
唯依姉に体を任せて意識をなくす。
「あの若い声をした隊長のあの部隊…冥土の土産にちょうどいいな!」
スコーピオンリーダーが静かに言う。
BETAの大群の中からBETAの体液を全身に浴ながら長刀で手当たり次第すべてを消すあの
部隊長。
そしてその部隊そのものがおかしい。
練度とかそういう域を超えている。
せめて、どんな作戦内容だったか聞きたかったな。
そしたらもっと…考えるのをやめよう。
彼らと同じく半狂乱で目の前の敵を撃ち殺し続けるのみだ。
我々はそういう部隊だからな。
彼らとはもう次元が違う。
我々は守るだけが取り柄だよ、君たちと違ってね
8月12日
月光の元ネタは夜間戦闘機 月光