ユーコン
「巌谷さん、本当にいいんですか?」
「いいんだ、姉さんを助けてやってくれ」
「わかりました!!!」
敬礼をし退室しようとする。
「待て、いさな君。もしも君の身辺になにかあれば私にちゃんと報告しろよ」
「はて?」
「事後じゃ遅いからな」
今回父上はこない。
杉下さんが多分一番ベテランというか偉い枠になる。
でも階級上はこっちが上だ。
「父上は具合が良ければいいですが」
「気にしないほうがいいぞ。それに昨日ちゃんと別れられただろ?」
昨日、実は父上の病室に行ってきた。
父上は…数年前の明星作戦で出撃、撃墜された。
僕が救出したから一命はとりとめた。
でもそこからずっと具合が悪い。
「これでもリハビリとか治療とか頑張っているんだ。だからお前も仕事をしよう」
「わかってる、おじさん」
「では行って参ります」
こうして立場的には斯衛だけど国連軍に派遣という形にした。
日本独自にその開発基地に入る。
ボーニングが黙っているわけはないのでそこは少し協力することになっているが。
もう2週間とか前かな?
もっとかもしれない。
唯依姉を守る。
そしてほかの国の機体のデータをとる。
空力データとか新型用、そして無人機のためのデータ集め。
「それにしてもいさな君はよく寝れるなぁ。おじさんはもう寝れねえよ」
轟音が鳴り響く輸送機で寝れるなんて子供でもきついかも
国連に貸してもらったムリーヤも結構でかいしうるさい
「少しいろんなことを思い出したかったから」
「もうそろそろユーコンが見えてきますよ」
コックピッドにいた僕は乗り出して見ようとするが身長が足らない。
あと少しなんだけど。
なんか轟音が聞こえる。
そんな風に感じた。
すると
いきなり揺れて頭を打ち付けてしまった。
「なになに!?」
パイロットが答える。
「演習空域を逸脱した機体2機がこちらに異常接近中!」
「機体は守る!分解せずにコンテナに搭載しておいたのが良かった!」
「でも背面ですし!そんな無茶な!」
「行ける!天津風なら、行ける。機長!90度どちらかに傾けて!」
「では左を!しかしそんなこと!」
「もうわかった?Good luck!!」
右側の入り口を開ける。
機長はわざと高度を下げてくれているみたいだ。
まだ気圧とか云々は大丈夫。
風圧は凄いけど。
「行きますよ!1・2・3!!」
左に90度傾ける直前に入り口から外を出て機体の左に立つ。
「天津風遠隔エンジンスタート。コンテナリリース」
コンテナが落ちていく。
そこから現れるは黒い機体。
ムリーヤから飛び降りてその機体へと向かう。
「エンジンはちゃんと回ってる!信じるぞ!!天津風!」
もう片方のコンテナのパラシュートが開いているのを見てほっとする。
そもそも頑丈だし中身は部品だし
それでも大切にしないといけないな
天津風が一気に近づいてきて手で僕をつかみ取る。
「コックピッドハッチオープン」
コックピッドが開き僕をシートへと押し込む。
「そうだった、今は強化装備を上着の下に来てるんだった!」
上着を脱いでいるとモニターに高度計が出てくる。
網膜投射装置をまだつけていない!
「あと少しだから!待ってて!」
上着を脱ぐ。
新しく買ったいい上着
それを脱ぎ捨てバッグを定位置にしまい刀を差しそしてシートに座る。
対地接近警報が鳴り始めてる!!
「シート固定、天津風発進!!」
磁石の力で椅子に僕を固定し最大出力で地面から離れる。
「危ない危ない」
コンテナを手でつかむ。
「いつもより身軽だからね、長刀2本だけだもん!」
新しくなった試製零式長刀
正式化はされていないけどそれでももうそろそろ正式になるはず
コンテナをフルブーストで持ち上げる。
「基地まで運んでじゃ遅いからもう少し高度を上げてあとはパラシュートだね」
天津風の答えはYES
レーダーにはもう敵機が映っている。
もう1機なんか絡まれかけている。
でもこの仕事が終わってからでも間に合うっしょ。
「このくらいだね、敵機補足。レーダーロック」
コンテナから手を放し落下しながらミリタリー推力で敵に向かう。
「勧告は出したほうがいいよね。でも仕方知らないや」
正規の軍人だけど正規の訓練は受けていないからね。
「翻訳機能使って、こちらは斯衛軍派遣部隊である。貴機らは我が部隊の進路上で模擬空戦をしている。また演習空域を逸脱している。すぐさまに着陸しろ。さもなければ実力行使に出る」
責任問題?相手が悪い。
全部悪い。
「あと数十秒で部隊が通るためあと10秒を期限とする」
あと10秒で追いつく。
派手にドッグファイトしてるな。
「だめみたい。巌谷さんに怒られちゃうな。とりあえずエンゲージ」
後ろのロシア迷彩を先に落とす。
落とし方はしらん。
力づくだ。
模擬専用装備なんてない。
だから素手だけ。
「最初から全力だよ。いや力試しで少しは手を抜くけど、リミッター限定解除」
ソ連機を追従し始める。
でもなぜかかみ合わない。
まるで動きがわかるみたいになぜか気持ち悪い。
攻撃しようとするタイミングがばれてる!?
長刀使うしかなくなる。
余裕がない。
どうしようもない。
輸送機がすぐそこまできてるのに。
仲間がすぐそこまでいるのに
守らなきゃいけないのに、あと少しでこいつらが!
もういい
アメリカ機からつぶす。
イーグルっぽいけどなんかちょっと違和感がある。
こっちは隙を見せてそこから逆転しようとする感じも少しわかる。
でもこの機体を甘く見すぎている。
上昇にベクトルが向くタイミングで少し速度が落ちる。
しかもなんか追加でついてる背中のブースターとかで推力は高くなっているだろう。
普通にイーグルより。
だからそれに頼ろうとするし振り回されそうにもなる。
それもわかる。
そこにさらに過剰すぎるエンジンパワーを持つ天津風が突っ込む。
「短刀を構えてる!!もらってくよ」
短刀だけ奪い取ってしたにいちおう蹴っておく。
邪魔だからね。
あとはソ連機?だけ。
「これ第3世代?なんか動きだけ見ていれば段々わかるようになってきた」
エンジンパワーとかいろいろと頑張っているみたいだけど天津風には勝てない。
空中で突きを繰り出す。
それをよけて突撃砲で撃とうとしてくる
そこに左足が蹴りに入る。
「やっぱり体になじんだもんだなー。どんだけ戦闘データ溜まってるんだろ」
通常の戦術機では考えられない関節の可動域を持つこの機体ならねじ伏せられる。
「とりあえず沈黙。RTB」
お前らと違って空力や重量配分、何もかも計算されてそれでこの身にそれを刻み付けてるんだ。
イーグルを無理やり上に引っ張ったって届きませんよーだ。
「ユーコンタワー、こちら斯衛軍―――――」
「これで全機格納庫に収容したね。お疲れ、ここからは現地の士官にいろいろ聞いて。先に来てる斯衛軍整備兵とか来てもらってるし英語もわかるでしょ?少しは」
「あとは天津風の整備ですよ。まーた派手に動かして」
「ごめんごめん。あと僕が衛士ってことは言わないでおいて」
「はいはい」
杉下さんと簡単な会話を済ませ僕はある人の元へと向かうことにした。
こんだけ大きな基地なんだ。
地図もらって正解だったぜ。
あとは乗せていってもらう車だけど。
「おーい!そこのジープ!!乗せてってー―!!」
英語は叩き込まれたから通じるはず。
「こんなガキなんで基地内にいるんだよ!」
なんかちょっとアジア系の少女が答える、というか吠える。
「お前もだろ、ここまで乗せてくんない?」
地図を指さすと少しその2人は驚いていた。
「あー、俺たちもいく場所だ。乗ってけ」
金髪系のお兄さんが答える。
僕はドアを開けてジープに乗り込んだ。
「いろんな戦術機が置いてあるねー」
「君も戦術機が好きなのかい!?うれしいなぁ」
「義父が戦術機開発しててね」
「そうなのかい!ところでどの戦術機を?」
「日本だよ、瑞鶴とか不知火とか」
すると優しそうだけどなんか静かなおにいさんが舌打ちをした。
「どしたん?」
「すまないな、こいつは日本が嫌いでね。日本の血が入っているんだけど」
振りむいて答えてくれるその人。
「日系アメリカ人だ。アメリカ人」
「なんで嫌いかはさておき名前は?」
「ユウヤ・ブリッジス」
ユウヤね。
いい名前してるじゃん。
「僕は凪雲いさなだよ、よろしく」
僕は手を差し出すと嫌そうに握手はしてくれた。
「いいカタナだな」
整備兵のお兄さん、金髪のね
が僕の刀をみて驚いている。
「この銃もいいでしょ」
背中のホルスターから抜いたUSPを見てさらに驚いている。
「君何者?」
「姉の護衛かな。ここに来たのは」
「姉って?」
「会わせてから話す」
それにしてもこの小娘
強化装備を着ているから衛士か。
そしてこのユウヤ、こいつもシルバーウィングだっけ
衛士だな。
「これってイーグルの強化版?」
さっきと同型の強化版イーグルを指さす。
ボーニングが頑張っているんだろうな。
「そうだそうだ、これってなんだ?」
さっきの整備兵がともに聞く。
この感じは多分この小娘がさっきのイーグルの衛士か。
彼女に聞いてるんだからね。
そしてこいつ偉そうだな。
「そんなことも知らないんだな。下っ端だからな」
こいつ本当に偉そうだな。
「っていうかごめん。名前2人とも教えて」
「ヴィンセントだ」
金髪の男が答える。
「そっちは?」
「タリサだよ。イサナ」
めんどくさそうに答えるタリサ。
年齢は僕より上だろうか。
年齢は全体的にちっちゃいからわからん。
「でタリサはこの機体の衛士なんだ」
「さっき落とされてたけどな」
結局こいつか。
やっぱり
「あの黒い機体不気味で怖くて気持ち悪いんだよ。赤野郎も同じだ」
「そう?黒色に赤い線でしょ。僕見てたもん。輸送機から」
という体にしておこう。
これでバレたら面倒くさそう。
「俺たちも輸送機から見ていたけど危なかったぞ!ほんとうにユウヤがやってなかったら」
「俺が回避行動をしなかったらぶつかってたかもな」
わざと口に出してタリサを責めるユウヤ。
「まぁまぁ、ところでヴィンセントとユウヤってアメリカ軍だよね」
「そうさ!アメリカ軍の中のエリートだよ」
「どこから来たの?」
「グレームレイク…あーーエリア51」
あそこか。
本で読んだことある。
都市伝説とかあるやつだ。
そして新兵器ばっか作ってるとこだ。
「ふーん、すごいじゃん。」
「なんだそこ。なんかの暗号か??」
タリサは凄さを分かっていないみたいだ。
こいつマジでバカかよ。
「そんな田舎から来たのかよ。いやぁそんな基地知らないね」
「おいおい、エリア51を知らないのかよ」
「知らないも何も片田舎の辺境基地だろ」
こいつまじで知らなすぎだろ。
アメリカ嫌いの僕でさえ2人に同情しちゃうね。
「俺らはその最強の先進兵器研究施設からきた戦闘技能研究部隊から来たんだ。感謝してほしいぐらいだね」
「さっきのやつみてたか?あんな
こいつマジで人のことを見下すな。
すっごいいやだ。
「でも負けてるじゃん」
「いや!五分五分までもっていってたぞ!」
はぁ、こいつまじで。
っていうかユウヤはもしかしてそこの衛士だったのか。
そりゃ強そうだ。
「ウィングバッジ。もしかしてお前はその何とか部隊の衛士だったのか?まぁ精々ここで負けて涙でも絞られな」
今更気づいたんだ…
もはや口が閉まらない。
建物が近づいてきてみんな降りたのでついていく。
前を歩いているタリサとヴィンセントが口論している。
ユウヤは僕の少し前を歩いている。
まるで僕を守るかのように。
「大丈夫だよ、守ってもらわなくても」
「ん?そうか。まぁ手をつなぐくらいはやってやるぜ」
手を差し出してくるユウヤを僕はどんな目で見ればいいのだろう。
さっきまで日本嫌いって言ってたのに、ほんとはいい奴なのか?
「ん」
手を握り返しタリサとヴィンセントの後を追う。
すると目の前にでかいおじさんが出てきた。
多分中東かなぁ
「イブラヒム・ドーゥル中尉だ。転任早々大変だったな」
左手で僕の手をつかみながら敬礼をするユウヤとちゃんと敬礼をするヴィンセント。
「最前線にようこそ」
それを見た僕はまたなにをおもえばいいのかわからなくなった。
最前線ね。
ただいま