すごく
「ハルトウィックとサンダークの誘いとはいえまさかソ連に来るなんてね」
船、僕らは渡良瀬に乗り今度はソ連に向かっていた。
「ほんとだよ。なんでこんな寒いところに来なきゃならねえんだ」
「弐型が取られたらまずいでしょって話だよ」
伊歩姐は隣で寒そうにしながら近づいてくる大陸に目を凝らす。
渡良瀬は割と速いからすぐ着いた。
随伴している輸送船は辛いだろうに。
「夕呼せんせからも守れって言われたからね。
いきなり決まった運用試験。
きっと巌谷さんとかいろいろな人が決めたのだろう。
そこは皆さんに任せて僕は衛士として、亡き家綿月の当主としてしっかりとしていればいいのだ。
「それにしても唯依姉、ユウヤといきなり仲良くなってさぁ!あの島から!!!」
隣にいるせつなさんに愚痴る僕は多分ニコニコだろう。
自分でもわかる。
「ふふふ、やきもちってやつですよ。いさなくん」
「うるさいよ!もう!まぁ不知火は任せれるようになってうれしい限り」
接岸作業に入った渡良瀬、輸送船。
ユウヤたちは前入りしているみたいだ。
こっちは北海道を経由したりでちょっと寄り道をしていたし。
「それにしてもソ連の実戦試験、僕たちはどう動けばいいかわからないのが困りどころ」
「それはそうですね。どちらかというと弐型の試験がメインですし」
僕たちを腐らせていいのかとも思うけれども弐型とレールガンがあれば人類はもっと強くなれる。
「弐型、俺たちが守ればあとはやってくれるはず。電磁投射砲はすさまじい威力を持っているからね。だからこそ発射直後の時は最大限のカバーをする。1個小隊だけどどうにかできるはずだ」
僕と伊歩、セシルとCPからの繰り上げの山城さん。
CPなんて隠れ蓑使わなくてもいいとは思うけどね。山城さんこの部隊来て人が変わったかのようにオラオラ系になったし。伊歩姐のせいだ。
それでも支援側の強襲掃討を担当してくれている。
彼女らの不知火改だって日々アップデートされつづけている。
今でも一級品どころの強さではない。
それは天津風も同じだが。あの驚異的な可動域とエンジンパワー、洗練された空力と突撃砲を4つ持って行っても長刀が2本使えるという積載能力は対BETA戦だけなら他の戦術機の追従をほぼ許さない。F-22の対ステルス戦は電子戦で抵抗はできるはずだ。
「とりあえずその時その時でいくかね!」
ソ連についてもなにもすることはなかった。
出撃までは
それまでずっと機体整備ばかりやっていてつまらなかったのだがブリーフィングは嫌いだ。
それでも行ったが
「本当になにもなかったんだよね、トラブルメーカーユウヤ君」
「そうだな」
なんかありそうな返事をされたがブリーフィングは始まり背筋を伸ばしドゥール中尉を見る。
「観測衛星からの情報に変化が見られた」
とはじまった。
衛星写真を見ているとエヴェンスクハイヴからでてきたBETA群に押されたほかのBETA群が
こちらに向かってきているようだ。
説明によれば師団、または軍団規模のBETAが来ると言っている。
「アルゴス試験小隊には共同作戦として極東の精鋭、ジャール大隊があたる」
指揮官が立ったのでこちらも立つ。
「ジャール大隊を預かるフィカーツィア・ラトロワ中佐だ」
めっちゃ背の高い白髪?銀髪の女の人が出てきた。
これ伊歩姐より背が高いか?
とりあえず休めを取ったのでこちらも休めをとる。
階級は一個上。
「では説明に入る」
と言われたが僕にとってはなんといえばいいのだろうか。
これが普通なのかと感じてしまう。
戦力が整いちゃんと前線も構築できる余裕がある。
それに比べてあの時はといつも比較してしまうのだ。
そして、レーザー級がいない。航空爆撃なんていう言葉が出てきたから察したがなんだ物量だけならレールガンで何とかしてくれそうだが。
「アルゴスの配置は中央か。上下崩れたらきつい場所にいるもんだ」
ほかの試験部隊も配置を言われたが我々は呼ばれない。
口をはさみたくはないけれども。
いやあとで聞こうかと思った矢先に呼ばれた。
「第118戦術機甲試験小隊は全試験小隊のバックアップにあたってもらいたい。特にアルゴス試験小隊のバックアップを主にしてほしい。そのほうが貴官らもうれしいだろう」
ふん。
なんだか嫌なおばさんというかなんでそんなに牙むき出しなんですか?
いやおばさんじゃなくてお姉さんぐらいに見えるけどもさ。
少し反応に困っている僕を置いてどんどん会議は進んでいく。
「以上だ。解散」
解散したみんなを尻目に僕はバッグを強くつかんだ。
出撃はその数日後だった。
第118小隊は一番最後の出撃する隊だった。
「出撃する。ブーメラン隊、タキシングの許可を乞う」
「タキシングを許可する。誘導路を通り発着場に向かえ」
ステータスチェック。移動を始めながら床下のパネルを出す。
「天津風、チェックリストスタート」
System check
サークルがいろいろなチェックリスト項目の周りを回り始める。
次々と緑になっていくチェックリストを見て安心する。
オールグリーン、戦闘態勢。出撃準備ヨシ。
「アルゴスは先に出ている。小隊各機、急ぐぞ。オープンチャンネルは無視しておけ」
さっきからジャールのガキたちがうるさい。
僕が寝れないぞ。
「天津風、アラートチェック」
アラートが鳴り始まる。いろいろな警報機が鳴りモニターや目にいろいろな警告が写された。
「コンプリート」
「もう戦闘は始まる寸前だってさ。くそ!ソ連軍め!急行するぞ」
なにかがおかしい。なんだ
「データリンクを見せろ、あとブーメラン1ブラストオフ!!」
発進しながらデータリンクをみる。
おかしい。なんでいきなりBETAの振動をキャッチ
何で気づかなかった。ずらされていたとしてもデータリンクで僕たちはいつ来るかぐらい察せれたはず。
「火力が足りない」
「CPより各機へ、BETA上陸までのカウントダウンが開始」
「CPへ!このままだと突破されるぞ!戦車が少ない!各機!
アフターバーナーに入れる。
燃料は持つはずだ。いやどれくらい来るかわからないから怖い。
拡張ユニットの追加補充が基地まで戻るからわからない。
「頼むぞユウヤ。99式ならいける!あとは奴らが邪魔しなければ!」
「いきなりテストするでしょうね」
「ユウヤならやってくれると信じよう!テストパイロットだからな!別れよう。4は僕と手薄なところを、2・3はアルゴスの護衛だ!散開!」
僕たちはデータリンクで敵を見つつ進路を決めていく。
「北がきついか?右翼側だなそちらにいくぞついてこい!4!」
北のBETAがアルゴスの目の前にいる機甲師団に干渉したら戦線が瓦解する。
いやもとから瓦解しかねない戦力!
僕たちがいなかったらすぐに消し飛んでたぞ
「俺たちを増援か何かだと勘違いしているのか!?まぁいい!」
全速力で穴を埋めに行く。
アルゴス小隊の前が一番敵が厚い。でもレールガンを信じて無視。
「北がイーダルだったなぁ!4!ならバオフェンだ!アルゴスの南に行くぞ!」
「了解!」
返事をもらった直後。
振動センサー??警告音が耳に入る。
モニターには何やら通知が来ていた。振動センサーからだ。
前に敵でもいるのか?
警戒せねば。
そこまで前線に近くはないと思っていたのだけど。データリンクはあまりしたくないし。どうしましょう。
「落ち着け山城、どうにかなるよ。そこのジャール!加勢は必要か?」
「必要ない、貴様らの支援など!中央の奴らの支援でもしてろよ」
バオフェンもジャールも実戦を経験している。さすがに穴がない。
やはり中央か。進路を変えつつアルゴス1のマーカーを注視する。
頼まれてくれ。たのむ。99式!
「故障か?地面に接地するたびにセンサーが少し反応してる」
「センサー?それは振動ってことなの?」
山城が少し心配そうに聞く。
「うーん。そうだけど気にしないでいいよ。そろそろ海岸だよ。戦場が見える」
目に見える情景が一部分を勝手にズームしてくれる。そこに見えたのは後退していく戦車とそのせいでさらに後退していく戦術機たち。
いや見捨てようとでもしているのだろうか。やはり戦車は足りていなかった。重砲もかもしれない。機甲師団が足りていないんだ。レーザー級がいないから効果的なはずなのに。
「通信回線、天津風早く!!ユウヤ!」
声を掛けた時にはもう発射準備がされていた。僕は見誤った。いやレールガンの怖さを、実情を今ここで思い知ることになる。あれは安全のため。
回線をつないだ瞬間に僕はユウヤに声をかけた。その声は届かなかった。
蒼い線。蒼い線が海岸を薙ぎ払っていく。あれが!あの兵器が我が国の秘密兵器。あれさえあればBETAだってやれる!国を守れる!なんならハイヴだってッ!!!
「4!ここはいらないみたいだ!バオフェンもジャールも思っていたよりも強い。僕たちの支援なんていらなかったな。2・3!聞こえてるな!RTB!」
僕はソ連での初めての戦いに参戦せずそのまま終わった。
すぐに最後のそして最大の攻勢があるなんて知らずに。
基地に戻ると機体の整備だけをしてブリーフィングに向かう。
いや、ジャールのあの隊長に個人的に会いに行く。
そしてサンダークにも。あの違和感は確かめなければならない。
ユウヤを、99式を褒め称える現場の中に入りながらも話を聞き始めた。
そしてデータをもらえた。そのデータを解析し終わる前にそのデータは意味がなくなった。