嫌悪の果てに   作:黒糖煎餅

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結末の書きたいシーンとシチュを考えていたら気づけば一週間。亀更新で申し訳ありません。ここから3〜4話くらいで便利屋がなぜ、影響を受けていないのかを深掘りしていきたいと思ってます。


提案

無言のままに夜半を歩き、漸く便利屋の事務所へと到着した。ムツキは欠伸をしながら部屋に戻り、モモトークには詳しい話は明日。とだけ。歩き疲れた私は充てがわれた部屋へと戻り、もう一度布団に潜る。

不信感が拭えたわけでは無かった。心の内には、彼女たちに対する疑念が、チリチリと燻っている。けれど、今は彼女たちを信じることしかできなかった。

「…寝るか。」

時刻はとうに2時を回っている。

不安な気持ちをグッと抑え込み、私は瞼を閉じる。

歩き疲れた私の意識は、瞬く間に暗闇へと落ちてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。

差し込む陽光に眉を顰め、ゆっくりと体を起こす。壁に掛けられた時計は、朝の9時半を指し示していた。

ポロン、とモモトークの通知が響き、端末を確認する。

『起きたら事務所の方に来て』

とのことで、事務所の方へと向かう。

「…おはよう、ムツキ。」

「おはよ、先生。みんなあっちの応接室のほうにいるからさ、そっち向かうよ。」

「うん。」

ムツキの後ろにつき、応接室に入る。

「待っていたわよ。先生。」

応接室の椅子に座っていた彼女たちの姿が見える。

「おはよう。」

「おはようございます。先生。」

「おはよう、先生。…無事でよかった。」

そう言うと、カヨコは儚げな微笑みを溢す。目元にはうっすらと隈が浮かんでおり、心なしか血色も悪いようだ。

「カヨコ…昨日は、酷いことを言ってしまった。ごめんなさい。」

「先生は悪くないよ。…私の方こそ、先生の気持ちも何も考えずに酷なことを言ったと思う。ごめんなさい。」

「いや、カヨコは何も悪くないよ。私が、君たちを信じられなかっただけだ。私の心が弱かったから。」

「でも、戻ってきてくれた。私は、それだけで十分だから。」

それじゃ、私は朝ごはん作ってくるよ。みんなお腹空いたでしょ。

そう言い残して、カヨコは席を立ってキッチンへと向かう。

カヨコが席を立ったのを見たアルは、ひとつ息を吐いた。

「それじゃあ、ここからが本題よ。先生。私たちの庇護下に入りなさい。」

「…ありがたい提案だけど、意図を聞いてもいい?」

アルはコーヒーを啜り、ゆらゆらと波打つ水面を眺めている。

「今、先生を取り巻く状況は異常よ。それは、先生自身が身をもって知っていると思うけれど。」

それは、そうだ。首肯して、アルに話の続きを促す。

「先日、風紀委員から連絡が来たわ。先生の首を差し出せば、これまでの規律違反は全て不問にする、と。」

「私にも覚えがある。2日前の話かな?」

「ええ。それで、話を聞けば他の不良生徒たちや問題行動を起こしている部活動の連中まで駆り出しているみたい。温泉開発部とかね。そこまでして、貴方の首を獲りたいだなんて、どんな意図があるのかが分からなくて…実際に風紀委員に会ってみたのよ。流石に、取引を持ちかけた相手を襲うことはないだろうと思ってね。」

「…それで、なんて言っていたのかな。」

「平常だったと思うわ。話し方も、態度も。いつも通りすぎてこちらが毒気を抜かれる程度には。…ある一点、先生の話題が出た時の反応以外では、だけど。」

アルは再びコーヒーを口に含む。言いにくそうな態度から、おそらく芳しくない反応だったというのは想像に容易い。

「…苛烈だったわ。一体何があったら、あんな風になるのか、不思議なくらい。」

「わたしとハルカちゃんの方でも、色々探ったの。アビドスの子たちを通じて、トリニティのほうにもコンタクトをとってね。…アビドスも、トリニティも、ほとんどの生徒は…少なくとも、主戦力級が先生排除のために動いてる。」

「…それを先導している生徒は?」

「ゲヘナは風紀委員が筆頭ね。規律違反者に対しての恩赦を引き換えに、先生討伐に動き出しているわ。」

「トリニティは、ティーパーティー…その中のパテル分派が筆頭らしいよ。他の派閥は積極的…ってわけじゃないけど、助力は求められなさそう。裏では色々きな臭いっぽいね。アビドスはほとんど全員が敵対的だったよ。特に、ホシノちゃん。先生の話をしてた時、目が笑ってなかったから。」

思っていたより、状況はずっと悪いらしい。

接点を持っていないレッドウィンターの生徒たちの状況は分からないが、少なからず、キヴォトス内の最高峰とも言えるほどの戦力が、私に対して敵意を持っていることになる。

「取り敢えずの要注意人物はこんな所ね。全員を完全に把握できているわけじゃないけれど、少なくとも、先生が一人で動くのは危険なのは分かるかしら。」

「…そうだね。」

「だからこその提案よ。私たちは恐らく唯一…いえ、他の例外がいるのかもしれないけれど、先生に対して敵対心を持たないかつ、集団として一定以上の練度を持つわ。先生を守るためにはうってつけだと思うの。」

アルの言葉はそこで途切れる。まるで、私からの言葉を待つかのように。

「…分かった。けど、こちらの質問にも答えてほしい。君たちの提案を受け入れるかは、その話の後にしよう。」

 

「…分かったわ。私たちに答えられるのならば、答えましょう。」

 

「…ありがとう。それじゃあ…」

 

 

 

君たちがなぜ、異常性の影響を受けていないのかを教えてほしい。

 

そう言うと、アルは顔を強張らせる。

ゆっくりと息を吐いて、ムツキとアイコンタクトを取ると、ゆっくりと頷いた。

 

「これは…あくまで推測の域を出ないわ。」

「それでも構わない。」

「…それは、その…」

アルは目線を逸らした後、目を失せながら言った。

 

 

 

「私たちが、先生のことを好きじゃ無いからよ。」

 

 

 

「…は?」

 

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