それはそれとして、今回はなんでカヨコがまともなままなのか、と言う説明パートですね。
いらねぇ?うるせぇ。
簡単に言ったら0には何をかけようが0のままなんだよ!ってことです。
追記
数学クソ雑魚おじさんなので例で出した先がわかりません。
訂正しようにも解がわからないので、ざっくり
0に1かけようが100かけようがゼロだろうがよぉ!
って感じで見といてください。
すみません。
夜も半ば。大抵の生徒はすっかりと寝静まり、閑散としたシャッター街には古ぼけた街灯がちりちりと明かりを灯していた。
「…ここか。」
黒服に指定された場所へと到着した私たちは、ムツキとハルカを外で待機させてから古ぼけたオフィスに立ち入る。
「…クックック、思いのほか、早い決断でしたね。先生。」
「こっちの腹は決まった。決行は早いに越したことはないだろう。」
「迅速な決断、痛み入ります。では…」
黒服がソファから立ち上がり、徐に服を弄る刹那。アルとカヨコが飛び掛かる。
アルは黒服を取り抑え、カヨコはその眼前に拳銃を突きつけている。
「昼間の話を聞いた。貴方が…貴方たちが今回の原因だと聞いた。それは事実か?」
「…クックック、盗み聞きとは。どうやら躾のなっていない…」
「黙れ。こちらが聞いたこと以外答えるな。もう一度聞く。この事態は、お前が原因なのか。」
ぴしゃりと黒服の言葉を遮り、より一層銃口を近づける。声は平静を装っていたが、視線は研ぎ澄まされたナイフのような鋭利な殺気を放っている。黒服もそれを感じ取ったのか、素直に口を開いた。
「…事態を起きた発端という意味では、私にあるでしょうね。」
「…お前がっ!」
拳銃を握るカヨコの手が怒りからか、激しく震える。今にも突きつけられた銃口から銃弾が飛び出してしまうのではないかと思うほど、カヨコの表情は荒れ狂う怒りに支配されていた。
「カヨコ、銃を下ろして。アルも。」
「でも、先生…。」
「いいんだよ。黒服を痛めつけ…殺したところで、事態は解決しない。だから、そいつを離してやってほしい。」
「…ッ!」
カヨコは渦巻く怒りを吐き捨てるように深く息を吐き、銃口を降ろす。アルも私の言葉に倣って、黒服の拘束を解除した。
「すまない。だが、この子たちも事態に困惑している被害者だから。許してやってほしい。」
「…いえ。貴方が被った被害に比べれば、塵芥の様なものでしょうから。それでは、話し合いを始めましょう。」
「あぁ。」
四者が席に着く。自己紹介もそぞろに、禍津日神の破壊するための計画会議が始まった。
予め周知しておいた事もあってか、概要や作戦の大まかな方針についてはとんとん拍子で話が進み、詳細を決める前に小休止を挟むことになった。具体的な編成等を組む段階になったタイミングで、カヨコが腰を上げた。
「ここからの話だと、二人も呼ばなきゃいけないでしょ。ムツキたち呼んでくるよ。ついでに、飲み物も。社長、何がいい?」
「コーヒーをお願い。」
「はいはい、いつもの甘いやつね。先生は?」
「私はブラックコーヒーで。無かったらカヨコのと同じので良いよ。」
「分かった。…貴方は?」
「おや、私にも買ってくださるのですか?」
「…さっきのお詫びとでも思っておいて。それで、何にする?」
「そうですね…ブラックコーヒーか、無糖の紅茶があれば。」
「わかった。それじゃあ社長、一旦任せるよ。」
「えぇ。いってらっしゃい。」
「さて、と。ひとついいかしら?」
カヨコが退室して間も無く、アルが口を開く。
「どうしたの?」
「先程の話の中で気になる点があるのよ。」
「ふむ…なんでしょうか。」
「件のオーパーツ…禍津日神の効果が人の想いの澱みに巣食う事でその想いを歪める…それは間違いないのかしら。」
「えぇ。恐らくは。」
「…今回の場合、好意につけ込んでいる、と言う認識は共通しているわ。私たちの情報収集でも、苛烈な生徒は基本的に先生と深く交流があった生徒たちだったから。けど、不可解な点があるのよ。」
「…確かに、そうだ。」
きちんと思い返してみれば、確かに不可解な点がひとつある。
「ふむ…教えていただけますか?」
「まず、私たちは先生に何も害意が無いことよ。貴方の説明だと、好意…つまりは先生のことを好ましく思う生徒たちが先生に害意を向けていることになるわよね?」
「えぇ。」
「私も…ムツキも、ハルカも。少なくとも先生に向けての好意はあるの。けど、貴方の説明の通りなら、私たちも先生に害意を向けていないと仮説が成り立たないのではないかしら?」
「ふむ。…続けて。」
「私たちの情報収集で得た結果と、カヨコ…さっきの子ね。あの子は、私たちとの決定的な差異があったから。」
「ほう?」
「…あの子は、先生のことが好きなのよ。異性として、ね。他の子たちも、そうだったわ。いずれも、先生へ敵対的な態度をとった生徒たちとの共通点。先生への恋慕が、カヨコと私たちを除く全ての生徒の共通点じゃないか、って私たちは考えていたのだけど…でも、貴方の話だと、カヨコもそうじゃないのかしら?」
「ふむ…」
黒服は思案げな表情を浮かべながら、口元を手のひらで覆い隠す。暫くすると、ふむ、と呟いてから再び口を開いた。
「確かに、鬼方女史が先生への敵対的な姿勢を見せない理由が分かりませんね…」
「でしょう?あの子だけが例外なのが、何故なのか…それが分からないの。」
考えは纏まってはいませんが、聞いていただけますか?
黒服はそう言うと、私たちをゆっくりと見回した。アルが首肯し、私もそれに倣う。黒服はその様子を伺い、それでは、と口火を切った。
「…禍津日神は、人の想いの澱みに巣食う穢れを増幅させます。今回であれば恋慕が根底にあり、かつそこから滲み出す憧憬や狂愛…或いは、偶像崇拝的な想い。それらそれぞれに、禍津日神が作用するのであれば必然、鬼方女史も小鳥遊ホシノを筆頭とした、敵対的な生徒になっていたことだと思います。ですが…彼女に、その好意に、裏がなかったのならば、と考えると、全ての辻褄が合うのではないでしょうか。」
「…どう言うことかしら?もっと簡潔に言ってもらえるとありがたいのだけれど。」
「…ふむ。それでは、数式で表してみましょうか。(10+5)x…回答は分かりますか?陸八魔女史。」
「…………」
「陸八魔女史?」
「ちょっと待って!えっと、分配法則を使って…10x足す5xだから…」
15xね!
「……正解です。」
悩みに悩んだアルのドヤ顔に、呆れた様子を隠そうと必死な黒服がなんとか言葉を口にした。
「やったわ!」
嬉しそうに頬を綻ばせるアルには申し訳ないが…
「アル、この一件が終わったら補習しよっか。」
「…えぇ、それがよろしいかと。」
「なんでよ!?」
「…まぁ、今はいいや。それで、黒服。話を続けてくれる?」
「えぇ。そうしましょうか。」
黒服は肩をすくめ、再び口を開いた。
「…今の数式の場合、10を先生への恋慕としています。xはすなわち先生への恋慕から派生した想い…憧憬や狂愛。そして、5はなんとなく適当に入れた数字ですので、難しいことは考えず単純に、禍津日神の影響として考えて頂きたい。つまり、他の生徒であればxにさまざまな値が入る、と言うことです。先の式であればx=5であれば、15かける5…すなわち、75が解となりますが…このx…つまり、先生への憧憬などを持ち合わせていない、と考えると、どうなりますか?」
「解が0になる…?」
「えぇ。勿論、鬼方女史が先生への敵意を無理やり押し殺している場合も、無きにしも非ずかとは思いますが…まぁ、そうだとしても、とても簡単な話です。」
「誰よりも貴方を対等に見ていて、誰よりも貴方を愛している。鬼方女史は、貴方を…先生を先生としてではなく、ただ一人の人間として、愛しているのでしょうね。」
くつくつと笑う黒服の声が鬱陶しかった。
表情からは窺えないが、内心では爆笑しているだろう。この一件が終わったら、1発…いや、ついでに何発か殴ってやろう。そう心に決める。なんなら、今回被害を被った生徒達にも殴って貰おうか。こいつにお灸を据えるなら、それくらいで妥当だろう。
怒りとは別の意味で真っ赤になってしまった顔を手で扇いでいると、漸くカヨコが部屋へと戻ってきた。傍にはハルカと、ムツキが待機している。
「社長、先生。戻ったよ。…?二人とも、なんで顔が赤いの?」
「…なんでもないよ、カヨコ。」
「え、えぇ。なんでもないわ。ただ、カヨコが先生のことが大好きってはな、し…。」
突然話を振られたアルが、思わぬところでボロを出した。
よくよく見ると顔は真っ赤になっており、友人の恋慕の大きさを知ってしまったせいか、激しく動揺してしまっているらしい。
「…はぁ、空いた時間で作戦詰めててくれると思ってたんだけど…そんな話してたの?まぁ、それならさっさと作戦を考えよう。その為に、ムツキとハルカも連れてきたんだしさ。」
対して、当の本人であるはずのカヨコは飄々としている。
人数分に用意し直した椅子をムツキとカヨコにあてがって、ノートを持ったカヨコは私の隣に座る。
「カ、カヨコ…?」
「何?作戦を考えるなら、この方が効率がいいでしょ。書き留めたメモも、隣なら一緒に見れるんだし。」
ふい、とカヨコはそっぽを向いてしまい、そのまま作戦会議を始めてしまった。髪から垣間見えた耳が、朱色に染まっている。
(言わない方が、身のためだな…)
平静を装っているカヨコに特に突っ込むでもなく、つつがなく始まった作戦会議に、私は耳を傾けることにした。