嫌悪の果てに   作:黒糖煎餅

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ここまで書いて漸く半分行かない位ってマ?
計画性皆無の亀更新無能文字書き、黒糖煎餅です。
曇らせが好きだと言う原動力だけで書いてる。
あと感想見ながらニヤニヤしておりますので、気軽に感想いただけると気持ち更新速度が上がるやも知れません。
これからも何卒よろしくお願いします。


二者択一

「…先生、聞いてる?」

カヨコが不思議そうな顔をしてそう言った。

ムツキたちも含めた作戦会議が始まって大凡30分。

作戦行動の立案については、慣れているであろうカヨコが仕切り、それ以外の提案はアルやムツキ、ハルカたちが適宜行っていた。襲撃をするポイントについては黒服とカヨコが擦り合わせを行い、作戦内容を詰めていく。

…つまりは、私の土俵外だった。

「勿論。私の口出しできる分野じゃなかったから、黙ってたけど…」

「なら、いいよ。最終的な意思決定は先生にあるから、しっかり考えておいて。」

そう言うと、カヨコはまた作戦会議へと戻った。

さまざまな意見が飛び交う中、私はカヨコの立案した作戦について思い返す。

大まかに2案出されたそれは、つまりは私の生存率をある程度下げることで可及的速やかに事態の解決に動くものか、私の生存を第一に考えて緩やかに進行するものか、と言うことだった。

ふむ、と顎に手を添えて思案を続ける。

安牌を取るべきであれば、後者の作戦を執るのが定石だろう。便利屋の長所といえば熟達した連携だ。カヨコによる作戦の適宜変更…それを速やかに、円滑に行いつつ、互いのアイコンタクトでアドリブに特化した奇襲による作戦遂行力。それを最大限活かすのであれば、私を含め便利屋の面々が一つの集団として動くのが得策かと思う。けれど、それは敵対する組織が単一、並びに実力の拮抗していることが条件だった。大量の蜜蜂が雀蜂を殺しうる様に、ある一定の数を超えた烏合は、卓越した個や集団を容易に殺し得る。しかも、相手は烏合と呼ぶにはあまりに強い。確実に作戦を遂行するメリットよりも博打的な策を打って、デメリット覚悟で一気呵成に決めるほうが良い。それこそ、前者のような…二手に分かれて、私のいる方に生徒たちを集中させ、その間に残り半数の生徒を使ってカイザーの隠匿する禍津日神を破壊する。この場で出せるであろう最適解は、どう見てもそちらだった。

しかし、そう簡単に踏み切れない理由があった。

単純な話だ。火力が足りない。平地や屋外であればアルやムツキは大層活躍できるだろうが、短射程のカヨコ、ハルカは屋内、街頭などの交戦距離の近い戦闘でこそ真価を発揮する。無論、2人とも屋外でも撹乱やサポートをする能力には長けている。2人の力があったほうがいい、というのも事実なのだが…

「…先生、どうしたの?」

訥々と溢れる思考を、カヨコの声が遮った。

「いや、考え事。立案してある作戦、どっちを選ぶべきなのかを考えてたんだ。…因みに、カヨコはどっちがいいと思う?」

「確実性、安定性を取ろうとするなら、全員が固まって動く方かな。…って言いたい所なんだけど。正直、カイザーの私兵と生徒たちを相手にするのは厳しいと思う。挟み撃ちにされたらその時点で詰みだし、他の生徒…特に、ミレニアムの子たちかな。彼女たちなら、先生が気づかないうちにGPSとかつけててもおかしくないでしょ?今の時点で襲撃がないから、そのセンはほぼあり得ないとしても…防犯カメラのハッキングで何処にいるかの目星は付けられる。映像に映らないなら、監視カメラの無い区域にいるっていう目星もつけられる。ミレニアムの組織を単独で相手取るならまだ、対処自体は可能だろうけど…トリニティとゲヘナみたいに険悪な関係の学校もないから、最悪の場合は、他の生徒と連携を取られることも考えなきゃいけないし。」

「もう一方の作戦は?」

「…実現は難しいかな。荒唐無稽な話なんじゃないか、って思う。先生を守るための作戦で、先生の守りを薄くする時点で、これを作戦と呼んじゃダメな気もするし。それに、四面楚歌とはいえど先生を守るためにリソースを割ける方が良いと思うけど…」

「でも、危険性は同じだよ。どちらの作戦も、生きるか死ぬかだ。…それに、守るための戦いは、君たちの心を蝕んでいく。最初のうちはいいかも知れないけど、私の疲労や君たちの物資…長期になればなるだけ、作戦遂行力は落ちていく。それなら、多少…いや、大博打になるかも知れないけど、一気に作戦を決めたほうがいいと思う。」

そう言うと、カヨコはため息をついた。

「…分かってた。うん、先生だもんね。…でも、その先は地獄だよ。先生が逃げ果せるかもわからない。戦力の分散した私たちが、カイザーの私兵を制圧できるとも限らない。生きるか死ぬかじゃない。どう苦しんで死ぬか、そう言う話になる可能性だってあるんだよ。」

「…火力が足りないなら、他所から持って来ればいいんだよ。幸い、1人だけ。信頼できる生徒がいるんだ。」

「その人がいたら、どうなるの?」

「少なくとも、作戦の成功率は格段に上がるよ。屋内戦闘と計略…どちらも、彼女の十八番だからね。」

「…分かった。じゃあ、そうしよう。元々、作戦の決定権は私たちには無いしね。明日、その子を交えてもう一度作戦を擦り合わせよう。」

「わかった。決行は明後日の夜更け。それまで、ゆっくり体を休めておいて。」

そう言うと、便利屋の面々は力強く頷いた。

 

 

 

便利屋の面々が帰宅の準備を整えている最中、不意に黒服から声をかけられた。

「先生と鬼方女史。お二人に渡したいものがありますので、こちらへ。」

手招きする黒服のもとへ歩みを進めると、黒服は二つの弾倉を取り出し、それぞれに渡した。

「…これは?」

「聖遺物の一つです。それぞれに、神秘が宿っています。鬼方女史に渡したものは、神秘を殺す弾丸です。禍津日神の破壊には必須ですので。」

ちらりとカヨコを横目に見ると、恐ろしいものを見たかの様に、微かに震えている。

「カヨコ、どうしたの?」

「…ううん、何でもないよ。それじゃあ、私は皆の所に戻るから。」

「そう?じゃあ、後で。」

そう言うとカヨコは真っ青な顔をしたまま、部屋を出た。

「…なるほど、手に持つだけでも嫌悪を感じるほどなのですね。」

「何の話だ?」

黒服はこちらをちらりと見やり、肩を竦める。

「神秘を殺す…つまりは、キヴォトスにおける生徒たちの天敵なのですよ。あの弾丸は。自身を…友を殺し得る。それを本能的に察したのでしょう。神秘の蒐集を目的としていた故、我々は使用することはありませんでしたが…もし、我々が使用していたのなら…生徒のうちの何人かは今、キヴォトスにはいなかったことでしょう。」

「…お前が理性的なやつで良かったよ。で、私に渡したコレは?」

「シルバーバレット…祈りを込めた銀の弾丸。その逸話は、先生も一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。」

「…あぁ。確か、狼男を倒した逸話、だったかな。」

「えぇ。その逸話から転じ、物事を打開する物に対して、シルバーバレットと呼称されることが増えましたが、これに宿る神秘は、それと同じ…いえ、少々異なりますがね。」

死地へ赴く貴方への、せめてもの餞別とでも言いましょうか。と黒服は言う。

「…それは、撃った者の祈りを遂行する弾丸です。それは、貴方の命を救い…或いは、生徒の命を脅かす凶弾ともなり得る。先生。貴方ならば、きっと有用に使いこなすことでしょう。…使わないのが、きっと一番良いのでしょうが。」

そう言うと、黒服は恭しく一礼すると、私に背を向けた。

「それでは、また後日。」

そう告げて、黒服は扉を出て行く。

 

「…また後日、か。」

 

「先生。もう行くよ。」

ぼうっと虚空を見つめる私に、カヨコがそう呼びかけた。

「…あぁ。今、行くよ。」

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