蘇りし神皇帝竜―ゴッドカイザー―   作:衛置竜人

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ブロックスユナイト #4『勇者』

 

 

 

 

ある所に一人の少年がいた。彼は正義感と善意の塊の様な性格で、優れた容姿とカリスマ性も相まって強い信頼と高い人気を持っていた。完璧超人にも見える彼だが、本人も気付かぬ難点もあった。

人生そのものや人間関係において挫折した事がないからか精神面は子供っぽく自分の正義が常に正しく絶対であると信じて疑わず、自分の非を認められないどころか他人の価値観を受け入れられなかったのである。

更に人の善意を無条件で信じては良い様に利用され、自分にとって不都合な事態に直面すれば他人に責任転嫁して自分の行いを都合良く正当化する悪癖があった。

 

こうなった原因の一人である彼の祖父は弁護士としての自身の体験談を語る際にはまだ幼かった彼を気遣って意図的に美化した表現を使い、現実的な体験談は彼がもっと年を重ねてから話すつもりでいたもののその前に急死してしまい、彼の両親や師でもある幼馴染みの祖父は社会に出ればいつかは挫折を味わい失敗を経験して成長するだろうと静観していた。

 

しかし、異世界召喚という予想不可な事態の発生によって挫折・失敗を経験するどころか最悪の事態へと至ってしまう。

風見ヴェールヌイ…アデプトテレイターとなる前に家族を護りたいからとはいえ人を殺し、家族や戦友を失いながらも戦い続けてきた清廉潔白とは程遠い彼とは真逆の価値観を有する存在の出現。自身を遥かに上回る人の理から離れた存在たる彼女に彼は遠く及ばぬばかりか殆ど関わっていないにも関わらず無自覚だったご都合主義という本性を見透かされてしまったのだ。

 

そんな化物な彼女ですら唐突に現れたレギオンの軍勢には勝てなかった。目前で無情にも殺されるクラスメイト達やトータスの人々の姿、そしてあれほど強大な力を有し確固たる信念を持っていた風見ヴェールヌイすら勝てなかったマザーレギオンの姿を目の当たりにした彼は漸く自身の愚かさに気付き、少しでも多くの人々を救わんとした。皮肉にもレギオンの襲来によって彼は漸く"勇者"として相応しき存在となれたのだ。

 

出来るだけ多くの人々が少しでも生き延びられるように風見ヴェールヌイ一派と和解・共闘の道を選んだ彼は目の前で風見ヴェールヌイ達アデプトテレイターや金属細胞への高い適合性を有した一部のクラスメイト達がメイクスに連れ去られた後も少しでも人々の希望にならんと残された者達と共に戦い続けたのである…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まるで西部劇のガンマンの様にカイゼルアーマーオプティマスとバイオティラノは距離を取って攻撃するチャンスを狙っている。

数十秒か数分か、先に沈黙を破ったのはバイオティラノの方だった。肋骨のリブ・デスサイズを展開してオプティマスを貫こうとするがオプティマスは寸前で身を屈ませて回避すると右腕のアーマーでリブ・デスサイズを弾くと顎下を狙って思いっきり蹴り揚げる。

激しい衝撃にバイオティラノは一瞬よろめくものの直ぐに態勢を立て直し、オプティマスに噛み付かんと突進する。オプティマスはバイオティラノの両顎を掴むと無理矢理閉じようとするも押し倒されてしまい、バイオティラノは1度頭を持ち上げてオプティマスの頭部を狙って噛み付こうとするがオプティマスの蹴りで阻まれてしまい、オプティマスはアオバの制御による二連装ショットガンとテイルアサルトライフルでの牽制砲撃を浴びせつつバックパックのスラスター噴射によってバイオティラノの正面から脱出する。

飛行するオプティマスに対しテイルジャベリンを振るうバイオティラノだが、オプティマスは紙一重で回避、右側のリブ・デスサイズのアームの関節部を左腕のサンダーソードで切り裂いて距離を取る。

アームの破損によって右側のリブ・デスサイズの動きは鈍くなったが未だに使用可能であり、元の個体よりスペックは大幅に劣化しているとはいえバイオゾイドの頂点に君臨する存在である事に変わりはないと言わんばかりの頑丈さを有していた。

「これは先程の小型より厄介だな…」

『同じ場所を狙おうにも…』

オプティマスの脳裏に語り掛けてきたのはアオバだ。

『あぁ、他の装備が厄介だ…』

2人が考えている通り、バイオティラノの装備はどれも強力で単騎で破壊するのは困難だ。

『あの、さっきから気になってたんですけど…』

『どうかしたのか?』

『あの胸辺りの光っている奴、コアっぽくないですか?』

アオバの推測は正しい。バイオティラノの胸部に輝く物体…そこはバイオゾイドコアであり、バイオティラノのみならずバイオゾイドの弱点でもある。バイオゾイドの原点(ルーツ)となった機体の段階からこのコアは何故か剥き出しになっていた。

メイクスの技術力ならこの剥き出しの弱点をカバーする事も可能ではあったが万が一何らかの理由で自分の支配下から逃れた場合に物理的に始末出来るようバイオゾイドコアの露出はそのままにしていたのである。

『私も同じ事を思っていた…だが、彼処をピンポイントで狙うのは厳しいだろう』

『やっぱりそうですよね…』

『だが、私に良い考えがある。碧羽、奴の気を逸らす事を頼めるか?』

『は、はい!貴方の指示なら』

『一回分離する。分離後、方法は任せるから奴の気を逸らして欲しい。私が奴の元に潜り込む』

『わかりました、チェンジマイズ解除!』

碧羽の言葉と共にオプティマスとゴッドカイザーBRは分離、オプティマスはトランステクターとの一体化を解除すると怜の姿となり、その間にゴッドカイザーBRは各火器からの砲撃をバイオティラノの周辺を走りながら浴びせる。

この砲撃がバイオティラノに全く効かないのはゴッドカイザーBR(碧羽)も承知の上、ただバイオティラノの気を自分に向けさればそれで良いだけだ。

バイオティラノの機動力は高速ゾイドをも捉えられる。しかしゴッドカイザーBRの方が小回りが利く上にそもそもブロックスゾイドはいざとなれば自らのボディをパーツ毎に分離して再構築する事も可能だ。

ゴッドカイザーBRはバイオティラノの攻撃を華麗に回避しつつ砲撃を続け、万が一攻撃が当たりそうになれば自らのボディを敢えて分離させて攻撃を回避し、バイオティラノの背中で再構築すると先程損傷したリブ・デスサイズの右アームに発光させたストライクレーザークローによる一撃を浴びせ、左のリブ・デスサイズによる攻撃が当たる前にボディを分離して攻撃をやり過ごす。

その隙に怜は全力でバイオティラノの下側へ潜り込むと

「アデプタイズ!オプティマスプライム、トランスフォーム!」

と直ぐにトランステクターと一体化し、アッパーでバイオティラノの首を思いっきり殴った。

足元に急に巨大な物が現れたばかりか強い衝撃を首に受けた事でバイオティラノの身体は一瞬仰け反り、その隙を逃さんと言わんばかりにオプティマスはバイオティラノのバイオゾイドコアをコンバットソードで斬り裂いた。

アーマーに覆われていないコアの表面にダメージを与える事が出来たのだが、そこから見えた物にゴッドカイザーBR(碧羽)は絶句した。

「ヒトの…脳ミソ…?」

バイオティラノのバイオゾイドコアの内部にあった物…それはポッドの中に入った人間の脳髄だった。

『その声…もしかして龍賀か…?』

バイオティラノから聞こえてきた声。その声にゴッドカイザーBR(碧羽)は聞き覚えしかなかった。

「…天之河…どうしてそんな事に…!?」

バイオティラノに使われた人間の脳髄…それは碧羽のクラスメイトであった天之河光輝のものだった。

バイオゾイドコアにダメージが入った事によって天之河の自我がバイオティラノの行動に介入出来るようになったからかバイオティラノは行動を阻害されているかの様に震えたまま動かない。

オプティマスはバイオティラノから距離を取り、ゴッドカイザーBRの隣に並び立つ。

『俺達は敗北した…宇宙からやってきた怪獣…連中がレギオンと呼んでた怪獣とエヒト達のボス…メイクスに…。アデプトテレイター達がメイクスに捕まった後も俺達は戦い続けた…少しでも人々が生き延びる希望の為に』

「クラスのみんなや先生は…」

『ある者は殺され、ある者はメイクスに捕まった…最後に残った南雲も俺の目の前で殺された…そして俺はこの様だ。俺だけじゃない…ゾイックアデプトテレイターの適性がなかった人達は脳を取り出されてバイオゾイドに搭載された…生体ユニットとして』

天之河の告白にゴッドカイザーBR(碧羽)はそう…と呟いた。いくら関係が良好ではなかったとはいえクラスメイトが無惨にも殺されたり脳髄を引き摺り出された末に生体ユニットとして使われたと聞かされれば流石の碧羽も良い気分などしなかった。むしろメイクスへの怒りが沸くばかりだ。そしてそれはオプティマスも同様である。

『龍賀…俺が間違っていた…俺はトータスに召喚された時にイシュタルから勇者として戦って欲しいという要求を受けてしまった…そしてみんなを巻き込んだ末に取り返しがつかないどころじゃない事になってしまった…もっと彼女の言葉を…風見ヴェールヌイの言葉を聞き入れていれば…謝って済む事じゃないが謝らせてほしい…済まなかった…』

「…確かに巻き込まれましたしその末にこうなってしまいました…ですが、こうなる事なんて誰にも予想出来なかった事です。それに私は誰に協力する事もなく戦いから逃げる事を選んだ…結果はどうあれ人々を救おうとした天之河に文句を言う権利はないです」

『そうか…なぁ、龍賀…一つ頼んでも良いか?』

「何ですか…?」

『バイオゾイドに積まれてから俺達は自分の意思に関係なく奴らの命令に従わされてしまう…今だってそうだ、抑えてはいるがもう持たない』

そう語る天之河の自我が反映されているのか否かバイオティラノの目から涙の様にオイルらしき物が零れ落ちる。

『だから…俺を殺して欲しい…もう誰かを傷付けたくないんだ…!』

天之河の悲痛な思い…その思いを受け取ったゴッドカイザーBR(碧羽)は数秒の沈黙の末に

「わかりました」

と答えた。返答と共に天之河の制止を振り切るかの様にバイオティラノは再び動き出し、左側のリブ・デスサイズをオプティマスとゴッドカイザーBRに向けて伸ばすが2人はそれぞれ回避しつつカイゼルアーマーオプティマスへと合体。オプティマスはパワーライズキャノンを収束砲撃形態に変形させるとリブ・デスサイズをコンバットソードで受け止めて抑えながら砲の先端にエネルギー粒子を収束させ完了と同時にコアを狙って発射しようとするが発射寸前にバイオティラノの右手の振り払いによって標準がずれてしまい砲撃はリブ・デスサイズの左側アームに命中する。だが、オプティマスも碧羽も計算済みだった。

オプティマスの右腕に装備されたテイルアサルトライフルの標準は碧羽の意思によってバイオティラノのコアに向けられている。バイオティラノは残った右腕でテイルアサルトライフルを掴もうとするが天之河の最期の抵抗からか思うように動かせない。

『安らかに眠ってください…』

碧羽の言葉と共に放たれたテイルアサルトライフルによる砲撃は

『ありがとう…』

天之河の言葉の直後にバイオティラノのバイオゾイドコアの内部に命中、天之河の脳髄が入ったポッドは爆散し、バイオティラノは胸部と口、目から煙を吐きながら力を失って倒れ伏した。

カイゼルアーマーオプティマスは合体を解くとそれぞれ碧羽と怜の姿となり、倒れ伏したバイオティラノに対し静かに黙祷を捧げた。

 

 

 

 

 

バイオティラノを撃破した翌日、オルクス大迷宮の第200階層目にあるオスカー・オルクスの住処。個々に辿り着けるのは最後の試練を突破したした者か既に攻略して証を手にしている者とその同伴者のみ。

怜と碧羽は最後の試練を突破した者としてこの地に足を踏み入れる事が出来たのだ。

バイオティラノ…いや天之河へ黙祷を捧げた後、2人はこの地に足を踏み入れ、碧羽のクラスメイトであり風見ヴェールヌイの友人であった南雲ハジメが遺していた指輪型のアーティファクトである宝物庫や数々の物資を確保した。

宝物庫の中で自動修復装置が働いていたのか宇宙船の修復は完了しており何時でも出発出来る状態ではあるが、(オプティマス)は碧羽の気持ちの整理がついてからにしようとまだ出発していない。

親しい友人などではなかった上に他ならぬ本人からの介錯の頼みとは言え碧羽は改心した知り合いに向けてトリガーを引いたという事実に変わりはない。人付き合いは苦手としつつその本質は心優しい事は付き合いが短いレンも理解していた。

それに戦争で多くのディセプティコンの命を奪ったオプティマスとは違い碧羽は元々戦争とは無縁だった…気持ちの整理は必要だろうと怜は昨日彼女に休むように言ったのである。

(勇敢なる少年達よ、安らかに眠れ…)

怜は簡易的な墓の前で天之河、そして南雲ハジメに改めて黙祷を捧げる。宝物庫を入手した時、怜は南雲ハジメが生前遺していた記録映像も発見しその場で再生した。

南雲ハジメが語ったのは風見ヴェールヌイとの出会いやこの実験惑星T-02(トータス)に飛ばされた時の事、そこからの冒険とレギオンの襲来を発端とする最期の戦いの事と自身の胸の内についてだ。

『本当なら…帰りたい…故郷に帰りたい…でも、僕一人だけ此処に籠り続ける訳には行かないから…だから、これはもし此処に誰が訪れた時に、必要としているだろうその人に託します』

涙を流しながら見知らぬ誰かに託す南雲ハジメ。彼もまた敬意を払うべき"勇者"であると怜は思い、この地を再び訪れる事はないだろうとはいえ簡易的な墓を建てたのだ。

暫くの沈黙の後、住処から碧羽が出てきた。

「もう良いのか?」

怜の言葉に碧羽は覚悟を決めたのか真剣な眼差しで

「はい、ご心配をおかけしました」

と返す。そして彼女もまた簡易的な墓に黙祷を捧げた。

 

 

 

オルクス大迷宮から出た2人は宝物庫から宇宙船を出してそれに乗り込む。2人だけが乗るにしては広すぎるが些細な事だ。

最後にスキャナーで生存者が他にいないか生体反応を調べたものの、人間族も魔人族も亜人族も反応はない…この地には魔物以外は自分達しかいないと出た事で怜は宇宙船を発進させた。行き先は碧羽の故郷である第56太陽系の地球だ。

「あ、あの怜さん…」

「どうかしたのか?」

「あ、ありがとう…ございます…私、全てじゃないんですが前世の記憶を思い出したんです…前世の私は難病を抱えて生きる希望もなかったんです…でも、ある日、テレビの中で貴方の活躍を目にして勇気付けられたんです…少しは頑張って生きてみよう、少しでも悔いのない人生にしようって…結局悔いは残ってしまって…急にごめんなさい、変な話をしてしまって…意味が分からないですよね」

「いや、変な話じゃないぞ。君の擬似OSユニットにハッキングを仕掛けた時、その、君の記憶が流れて来てな…」

筒見えだった…その事に碧羽は恥ずかしくなったのか顔を赤くして丸くなる。

「私こそすまない、故意ではないとはいえ勝手に君の記憶を見てしまった」

「い、いえ…お気になさらず…」

碧羽の言葉に怜も気まずそうにそうか、と返すしかなかった。

「それはそうと良かったのか?首についた擬似OSユニットは外さなくて」

怜が指摘した通り碧羽の首には擬似OSユニットが装備されたままになっている。権限は(オプティマス)にある上に擬似OSユニットがなくともカイゼルアーマーオプティマスへの合体は可能ではあるのであってもなくても問題はないのだが…

「はい、私は貴方の物ですから…」

と答える碧羽に怜は

「物と言うな、君は仲間であって物ではない」

とまるで口説くかの様に碧羽の頭を撫でながらそう告げた。

「あ、あの怜さん…いえオプティマスさん、これから宜しくお願いします」

「あぁ、こちらこそ」

握手を交わす2人を乗せた宇宙船は第56太陽系の地球へ向かって順調に進んでいたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その第56太陽系の地球。

荒れ果てた道を進む一台のセミトレーラートラックの姿があった。その車体は漆黒で染まり、トレーラーには青と白のストライプにサイバトロン(オートボット)のエンブレムが輝いていた。

 

 

 

To be continue…

 

 

 

 

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