ジャンク品として入手したHMMバーサークフューラーを共和国MK-2カラーで塗ってみたところ、ものの見事に惚れてしまいまして…筆がノって書いてしまいました。公式ファンブック5巻の内容にちょっと触れているのと独自解釈多めなので予めご了承しださい。
ZAC2099年、ガイロス帝国摂政のギュンター・プロイツェンの策略で勃発したヘリック共和国とガイロス帝国による第二次大陸間戦争はZAC2102年に中央大陸デルポイを征服したプロイツェン直属の部隊である鉄竜騎兵団によるネオゼネバス帝国の建国という結果で幕を閉じ、間を置かずへリック共和国とガイロス帝国の連合軍とネオゼネバス帝国による第二次中央大陸戦争が勃発した。
東方大陸の企業であるZOITECやZi-ARMSも介入したこの戦争はZAC2109年1月にネオゼネバス帝国二代目皇帝であるヴォルフ・ムーロアが共和国のレイ・グレックとの戦闘の末に消息不明となった件を受けて帝国が成り立たないと悟ったネオゼネバス帝国軍総司令代理ズィグナー・フォイアーがへリック共和国軍総司令官ロブ・ハーマンと会談した末に停戦に至り、ネオゼネバス帝国は実質的に解体された。
これで全てが終わった…という訳ではない。戦争裁判が残っている上に停戦を受け入れられない者達の制圧など後始末が残っている。共和国というより連合軍派のZOITECとネオゼネバス帝国派のZi-ARMSの対立も続いている。
そしてそれはこの少女にも言える事だった。
ZAC2109年2月…停戦から約1ヶ月しか経っていない中、暗黒大陸ニクスの某所にて2機のゾイドが交戦していた。一機はガイロス帝国ゼネバス派閥が開発し、ネオゼネバス帝国の旗艦でもあったティラノサウルス型ゾイドであるバーサークフューラーの改造機である。バスタークローが外されてデュアルスナイパーライフルに換装されており、そのカラーリングは嘗ての第一次大戦間戦争までへリック共和国軍の一部の機体に採用されていた所謂"共和国MK-2カラー"で彩られている。
対峙するもう一機のゾイドもまたこのバーサークフューラーと同じく共和国MK-2カラーで彩られているが、こちらはより近接格闘戦を意識した武装になっている。バスタークローを抜きにしてもバーサークフューラーの格闘戦能力は高い方だ。しかし、相手もバーサークフューラーがベースになっている上にダークスパイナーとの戦闘を前提とした近接格闘戦に重点を置いていた存在だ。
「流石はゴッドカイザーリバースだね…格闘戦に持っていかれたらこっちが負ける…!」
RPZ-19RE ゴッドカイザーリバース…へリック共和国とガイロス帝国、ZOITECが共同開発したティラノサウルス型ゾイドにしてバーサークフューラーや凱龍輝の姉妹機となる機体。初号機は凱龍輝よりも先にロールアウトしたものの、共和国が荷電粒子砲などのビームを吸収できる凱龍輝の量産を優先した為、この機体の量産は当時見送られ、戦争末期になって仕様変更された上で1ダースも満たない1桁という少数ながらも量産化が決まった機体である。
彼女が対峙しているのは共和国やZOITECの管理下にある量産機ではない。先の戦争末期に消息不明となったオリジナル…初号機そのものだ。
彼女の目的はこのゴッドカイザーリバース初号機を奪還すること。此方にはサポート役もいるとはいえ性能面ではゴッドカイザーリバースの方が上だ。特に相手の得意領分である格闘戦に持ち込まれたら彼女とフューラーに勝ち目はない。
それでも彼女はフューラーと共にこの目的を果たさなければならないという強い意思を抱いていた。何故ならば、彼女…"ユキ・マイヤ"にとってゴッドカイザーリバースは姉"リラ・マイヤ"の忘れ形見だからだ。
マイヤ姉妹がこの青白のフューラーと出会ったのはZAC2103年の事だ。
ネオゼネバス帝国とZOITECの交渉が決裂し、共和国とZOITECが結託する事になったタイミングでマイヤ姉妹の祖父であり共和国の老兵であるアガド・エリムダが本機を伴ってZOITECの研究施設を訪れたのだ。
アガドは部隊の仲間と共に一般部隊に配属されていたバーサークフューラーの鹵獲に成功、当時機体を失っていたアガドがこの機体のパイロットを務める事になった。アガドはグランドカタストロフ前はゴッドカイザー乗りだった人物であり、このバーサークフューラーに何処かゴッドカイザーの面影を感じ取った事から機体のカラーをゴッドカイザーを彷彿とさせる塗り替えたのだ。
「金色の塗料が足りてたら稲妻模様も入れてたんだがな、まぁこれも悪くはねぇ」
とガハハと笑うアガド。
「お爺ちゃん、バーサークフューラーってバスタークローが付いているよね?この子にはないよ?」
とユキはアガドに疑問をぶつける。
「ん?あぁ、捕獲した時に邪魔だったからブッ壊しちまったな」
「付けないの?」
と訊ねたのはリラだ。
「あの武器は確かに優秀だろうが俺には何か性に合わねぇ。操作が面倒くさそうだしそれに…」
「「それに?」」
「重火器積んだ方がカッコいいからだ」
そう答えた祖父の気持ちもユキは何となくわかる気がしたという。ユキのゾイドの好みは祖父譲りの様だ。
このバーサークフューラーはその後の装備開発や機体開発に大きく貢献し、この機体をベースに新型ゴジュラスを作るという話も挙がったぐらいだ。セイスモサウルスのロールアウトによって戦況は悪化し、共和国軍が中央大陸からの撤退を決断した事でこの話は白紙化された。
また、撤退が始まる前には外宇宙からの来訪者であるチブル星人メイクスの一派の手によって改造されたダークスパイナーのゾイックアデプトテレイター化個体であるダークスパイナーイフリートによってマイヤ夫妻を筆頭に多数の死傷者が出てしまうという事件も起きており、リラを初めとする生存者もこの撤退作戦に合流して東方大陸へと帰還している。
時は少し遡り、マイヤ夫妻とリラが中央大陸へと出発した頃、アガドとユキは暗黒大陸ニクスの某所へと訪れていた。
グスタフに牽引されているトレーラーには護衛役として青白のフューラーが座って待機しており、ユキはフューラーを撫でたり戯れたりしていた。バーサークフューラーのベースとなったティラノサウルス型野生体は気性が荒い事で知られているのだが、この個体はどうやら他の個体に比べて穏やかな気性の様だ。
目的地に近付くに連れてゾイド達の機影も肉眼で確認出来るようになり、フューラーはユキとの戯れを中断して顔を上げる。ユキもそれに合わせて視線を目的地で待機しているゾイド達に向けた。
この地はガイロス帝国の領内なので当然ながら配備されているゾイドもガイロス帝国所属機ばかりである。金色のセイバータイガーにビームガトリングが装備されたアイアンコングなどもいたが、ユキとフューラーの目を惹いていたのは真紅の装甲に包まれたティラノサウルス型ゾイド…ジェノブレイカーだ。
「ジェノブレイカー…初めて見た…」
ジェノブレイカーを乗りこなせるのは真のエース級のみ。それにガイロス帝国は皇帝のゾイドへの負担が大きすぎるオーガノイドシステムの廃止を決断し、共和国もこれに賛同した事もあってオーガノイドシステム搭載機はその数を減らしているのだ。今現像しているオーガノイドシステム搭載機は廃止前に製造された機体やネオゼネバス帝国が製造・運用している機体のみである。
「あのジェノブレイカーに付いているのは…ブレードライガーのレーザーブレードか?」
とジェノブレイカーを観察していたアガドはそう呟いた。
目的地に到着したアガドとユキ達をガイロス帝国の兵士達と彼らを統べる幼き皇帝である。
「へリック共和国特務少佐アガド・エリムダであります」
とアガドは一行を代表してガイロス帝国の皇帝と兵士達に敬礼し、ユキも遅れて敬礼する。ガイロス帝国の兵士も彼らに敬礼で答える。
「御苦労いただき感謝します。エリムダ少佐」
「こちらこそお会い出来て光栄です、ルドルフ陛下」
アガドはガイロス帝国の皇帝であるルドルフ・ツェペリンと握手を交わす。
「まさか第一次大戦間戦争の英雄が自ら駆けつけるとは思いもしませんでした」
ルドルフが下がった後、そう言って握手を求めてきたのはルドルフの腹心であるカール・リヒテン・シュバルツ中佐である。
「物が物でありますからな、シュバルツ中佐殿」
シュバルツから差し伸べられた手をアガドはそう答えながら握手を交わす。
「こちらは自分の孫娘のユキです」
「ユキ・マイヤです!ZOITECでテストパイロットをしております!」
ユキは本物の皇帝達を前に緊張しながら頭を下げる。
「それでは参りましょうか」
ルドルフの呼び掛けに一行は目的の場所へと向かった。
一行が進むのは谷底に沈んだ廃墟の中だ。
「我々がこの機体を発見したのは全くの偶然でした。付近で部隊が行動中に地震が発生し、グランドカタストロフで失われたと思われていた施設を発見しました。彼らかの報告を受けて近くにいた我々も自ら出向き、そこで発見された物を見て言葉を失いました」
この廃墟は元々がガイロス帝国の軍事基地だった施設である。しかしグランドカタストロフの発生によって施設は谷底へ崩れて飲み込まれてしまい、記録からも抹消された失われた場所となってしまったのだ。
現在のガイロス帝国がこの廃墟を発見したのは全くの偶然だった。
西方大陸戦争で消息不明となったジェノブレイカーとそのパイロットを捜索していた時、モルガ等の機体で構成された別動隊が偶然にも地震で露出した廃墟の入り口を発見、モルガで掘り進めたところある機体の残骸を発見し、近くでジェノブレイカーとそのパイロットを拘束していたシュバルツとルドルフに報告したのだ。現在でもモルガやイグアンといった小型機が作業を続けている中、一行は目的の物の前まで到着した。
「まさか、また会える日が来るとはな…」
とその機体…嘗ての愛機たるゴッドカイザーの残骸を目の当たりにしたアガドは涙を流しながらそう呟いた。
ゴッドカイザーを初めとする機体の残骸はへリック共和国とガイロス帝国、ZOITECの三者間による事前協議の末に東方大陸へと運ばれる事になる。ZOITECが管理する事になった理由としては中央大陸の戦況が悪化しているのとネオゼネバス帝国の手に渡る事を恐れた事、今これらの機体を復活させられる可能性が一番高かったのがZOITECだからだ。
機体の残骸は数日がかりでサルベージされ、アガド達が乗ってきたグスタフが牽引していたトレーラーに乗せられていく。
その様子をユキはフューラーと一緒に眺めている。フューラーの短い腕では手伝いは出来ないしモルガやイグアンなどの小型機ほど小回りが利かないからだ。アガドはジェノブレイカーのパイロットと話をしている。
「何を話してたの?」
パイロットとの話を終えたアガドにユキは訊ねる。
「色々、な。ワシの知り合いのライガー乗りの事は話しただろ?」
「グランドカタストロフ前はキングライガーに乗ってて今もお爺ちゃんみたいにパイロットをしてるっていう?」
「あぁ、そいつが最期に乗ってた機体がブレードライガーだったんだ。そいつはブレードライガー共々デススティンガーと戦って死んだが、後に発見されたブレードライガーの残骸にはレーザーブレードが付いてなかったそうだ。最後にアイツの姿を見た奴がジェノブレイカーと戦ってて部隊から離れていったと聞いたんだが…」
「もしかしてそのレーザーブレードって…!」
ユキはあのジェノブレイカーが装備していたレーザーブレードの出所を察した。
「アイツの意志は若きパイロットが引き継いだようだ」
そう呟くアガドの表情は何処か満足げだった。
今回サルベージされた機体はゴッドカイザーの他にハウンドソルジャー、キングライガー、ガルタイガー、ジークドーベルの計5機種である。
これらの機体の実物を見るのはZOITECの職員の中でも初めてだという者が殆どだ。
無理もない…グランドカタストロフから役50年もの歳月が過ぎており、これらの機体の製造技術等は
ところが問題も発生した。ゴッドカイザー以外の機体は比較的状態も良かったので修復・再生産の目処が立ったものの、ゴッドカイザーに関しては修復が不可能なレベルで状態が悪く、コアやメモリーバンクが生きていたのが奇跡なレベルだったのだ。
それでも何とか甦らせてやりたい、ずっと谷底で埋まっていたゴッドカイザーに再び地面を踏み締めさせてやりたい…修復担当班の誰もが、そして何よりアガド自身がそう願っていた。
そんな時、アガドはふと思った…フューラーに何処かゴッドカイザーの面影を感じた事、ガイロス帝国から提供されたティラノサウルス型野生体のコアとバーサークフューラーの部品が今此処にある事、共和国から大型ゾイド開発ノウハウの提供もあった事…それらの事実からアガドはある考えに行き着いた。
フューラーをベースにゴッドカイザーを甦らせる…ゴッドカイザーリバースの開発である。
ゴッドカイザーリバースの初号機の開発は順調に進んでいった。ZOITECの持てる技術とへリック共和国・ガイロス帝国の技術を惜しみなく投入する事でゴッドカイザーは形を変えて甦ろうとしていた。
他の4機の修復も順調に進んでおり、マイヤ夫妻もビデオ通話で報告を聞いて実物を見るのが楽しみである事とリラにはサプライズとして秘密にすると言っていた。
しかし、マイヤ夫妻の望みが叶う事はなかった。ダークスパイナーイフリートの襲来によってマイヤ夫妻はリラの目の前で命を落としたのだ。訃報を聞いたユキはアガドの元で一晩中泣き続け、アガドも彼女の頭を撫でて自身も娘夫婦を失った悲しみに暮れていた。
更に追い打ちをかけるかの様にZAC2106年にセイスモサウルスがロールアウトし、結果的にネオゼネバス帝国がクック要塞を陥落させた事によって共和国は対セイスモサウルス用のゾイドの開発を最優先事項とする事を決定したのだ。このゾイド…凱龍輝の開発の為にキングライガー等の修復・再生産計画は一時中断となり、ゴッドカイザーリバースの量産計画も中止となった。
ある日の夜。ユキは既に寝静まっている中、アガドはフューラーと起動前のゴッドカイザーリバースを眺めていた。ゴッドカイザーリバース初号機は一先ず完成はしており、後は試験起動と稼働をするのみ。
機体達を眺めていたアガドだったが、突然咳き込んだ。
「ワシももう長くはない、か…」
アガドは自分でもわかっていた。自分の命が老い先短い事を。
「なぁ、フューラーよ」
アガドに呼び掛けられたフューラーは振り向き、視線をアガドに合わせるかの用に姿勢を低くして頭を下げる。
「ワシの命も長くはない。ワシにとって心残りは両親を喪った孫娘達だ。ユキの事をお前に託して良いか?ユキはお前の事を出会った時から気に入っているし、お前さんもユキに懐いているようだからな」
アガドの言葉を理解しているのかフューラーは任せろ、と言わんばかりに頷く。
「そうか…任せたぞ、フューラー」
ユキとフューラーは出会った時から殆どずっと一緒にいた。機体の試運転が終わると何時もフューラーの元へ行き、フューラーとの時間を出来るだけ確保しようとしていた。フューラー自身も自身を慕うユキの事を気に入っており懐いていた。このフューラーに穏やかな性格ではあるが、懐いているのは長い時間一緒にいたアガドとユキくらいだ。
グルルゥ…とフューラーが短く唸る。ユキの姉…リラの事はどうする?と言わんばかりだ。
「リラの事か…リラのやろうとしている事は察しがつく。リラは昔から変に真面目で根に持つタイプだからな…生き残った自分を責めると共におそらく仇討ちに出るだろう。一緒にいてやれなかったワシが出来るのはアイツをリラに託す事だ。それがワシに出来る償いだ」
アガドは今も起きている職員達を呼び出し、自分の意向を伝えた。自分が死んだ後、フューラーはユキに、ゴッドカイザーリバースはリラに託すと。
翌朝。アガドの意向により中央大陸撤退組が来る前にゴッドカイザーリバースの試験起動が行われる事になり、担当の職員とユキ、フューラーが見守っている。
ゴッドカイザーリバースのコックピットにはアガドが乗り込んでおり、起動に向けて準備をしている。
『こちらは何時でもOKです』
職員からの通信にアガドは了解、と返す。
「目覚めてくれよ、ゴッドカイザー…!」
アガドはコンソールを優しく撫でながら声をかける。
『こちらアガド。ゴッドカイザーリバースを起動する!』
アガドは職員に通信を行うとゴッドカイザーリバースを起動させる。
コアが活性化し、各部にエネルギーが行き渡り、目に光が灯るとゴッドカイザーリバースは自分が健在である事と蘇った事を知らしめるかの様に大きく咆哮し、一歩また一歩とゆっくり格納庫を歩く。
職員達が歓喜に包まれる中、コックピット内にいるアガドは涙を流しながら誰にも聞こえぬ声で呟いた。
「すまなかったな…すぐに助けにいけなくて…ずっと谷底で埋まっていて辛かっただろう…」
思い浮かぶはガイロス帝国に愛機共々捕まった際にグランドカタストロフが発生した時、敵味方関係なく施設から脱出した事だ。
あの日からアガドはずっと後悔していた…真っ先に谷底へ呑み込まれてしまったゴッドカイザーを救い出せなかった事、あの日からゴッドカイザーの事を忘れられなかった事。
アガドがパイロットを続けていたのは嘗ての愛機に再び会うためだ…パイロットを続けていれば再び暗黒大陸へ行くチャンスがあるかもしれないと思ったからだ。
「なぁ、ゴッドカイザー…ワシの孫娘を…リラの事をお前さんに頼んで良いか…?目の前で両親を喪ってしまい仇討ちを望んでいるだろうアイツの支えになってくれないか…?」
アガドの言葉にゴッドカイザーリバースは唸って答える。
「ありがとう…ゴッドカイザー…」
感謝の言葉をゴッドカイザーリバースに伝えたアガドは笑みを浮かべる。その腕は力を失っていってコンソールから離れて垂れ下がる。
最期、アガドの脳裏に浮かんだのは並んで並走するフューラーとゴッドカイザーリバースの姿だった。
ZAC2109年2月某日の東方大陸、ZOITECが保有する屋外テストフィールド。雪が残るこの場所を縦横無尽に疾走する複数の機影があった。
RPZ-15 キングライガー…シールドライガーの後継機であり、グランドカタストロフで生産技術が失われた機体の一つであり、グランドカタストロフ後のキングゴジュラスの技術を巡る戦いでも磁気嵐対応型へ調整を施されて戦線に投入されたこの機体は西方大陸戦争開戦時には現存せず再生産も叶わないだろうと言われていた。それが今、復活を遂げたのだ。
現在疾走しているのは修復された個体とその個体を元に再生産を行った試験再生産型の2機である。
修復個体は当時のカラーリングのままである一方で試験再生産型の2機はどちらも当時とは異なるカラーリングであり、それぞれ異なったカラーリングとなっている。
雪の中から飛び出してきたターゲットをある時は頬に装備されたメガバルカンで、またある時は鬣に装備されたレーザーブレードで、またまたある時は修復・再生産時に改修されて装備されたストライクレーザークローで、はたまたある時は尻尾のビームニードルで撃破していく。
その様子をシュバルツは双眼鏡を使って眺めていた。
ZOITECの格納庫の一つに先程のキングライガー達が帰ってきた。同じ格納庫の中にはハウンドソルジャーも数機待機している。
キングライガーの内の1機のコックピットハッチが開き、操縦していたユキがヘルメットを外してコックピットから降りる。彼女は身体を伸ばすとキングライガーの鼻先を撫でて
「お疲れ様」
と声をかけ、暫くするとフューラーの元へ駆けよっていった。
「ただいま、フューラー」
フューラーはユキの手が届く範囲に合わせて頭を下げ、ユキはフューラーの鼻先を優しく撫でる。ユキにとって至福の時間だったが、職員の一人から呼び出されてその時間もすぐに終わってしまった。内容は面会希望者が来てるというものだ。
両親に祖父、姉を立て続けに喪った彼女だったが、最初は悲しみこそすれど一晩も経てば気持ちを切り替えて明るく前向きに振る舞っていた。本人曰く何時までも悲しんでくよくよしてても死んだ人間は帰ってこないという至極真っ当な理由ではあるが、周りからは何処か無理しているかの様にも見えて心配だという。
面会希望というが話は一体何なのか…以前にもあった縁談なら話を蹴って逃げるかなどとユキは考えていた。自分には早いというかそもそも興味すらない。自分は出来る限りはゾイド乗りでいたい…それが今の彼女の考えだ。
「失礼します」
ノックをして部屋に入るユキを迎えたのはシュバルツだった。ユキとしてはゴッドカイザー等の残骸のサルベージで顔合わせをして以来だ。
「お久し振りです、シュバルツ中佐!」
「元気そうで何よりだ、ユキ・マイヤ」
シュバルツはユキと握手を交わし、ユキはお茶を用意してそれをシュバルツに差し出す。シュバルツはお茶を一口飲むとこう切り出した。
「まずは御悔やみを言わせてほしい。ご両親とアガド少佐、そしてお姉さんの事は残念だった」
「ありがとうございます、中佐」
シュバルツもマイヤ夫妻とアガド少佐の訃報は当時聞いており、リラが音信不通になった後に頭がない死体として発見された事も当然報告は受けている。ただ戦争の混乱も拭えない今は多忙な身であるが故にユキに直接会って言う機会を中々取れなかったのだ。
「ガルタイガーやジークドーベルの調子はどうですか?」
「あぁ、問題ない。先の戦争で我が軍も大きな打撃を受けて防衛に回せる戦力も最低限という有り様だ。だからこそ今回の件は感謝している。兵士達も幻となっていた機体を目の当たりにして士気が上がっている」
「いえいえ、私達は仕事をしただけですしあの子達は貴殿方の物ですから」
謙虚なものだな、とシュバルツは心の中で呟いた。
「―さて、そろそろ本題に入りましょうか。貴殿程の方がこの小娘とただただ世間話をするためにこんな"キナ臭さもほんのり香る"企業の工匠に来た訳ではないですよね?」
そう訊ねるユキには何処か鋭さも感じていた。
「キナ臭さ云々は聞かなかった事にしておこう。実際君に会いに来たのはある機体について話をしなければならないからだ。二週間程前に我が軍のある部隊が廃墟と化した軍の施設をまた発見したが、程なくしてその部隊は音信不通となり、捜索隊が現地に向かうと部隊は壊滅し、廃墟も何かを回収した後だったのかもぬけの殻だった。現場に残されていた機体の残骸から修復・再生出来た記録映像がこれだ」
そう言うとシュバルツはある映像をユキに見せ、其処に映っていた機体にユキは自分の目を疑った。
「ゴッドカイザーリバース…!」
そう、記録映像に映っていたのは姉の忘れ形見であり謎の勢力との戦いの後所在が掴めなかったゴッドカイザーリバース初号機だったのだ。改良型アタックブースターを装備していないが、そもそも初号機は謎の勢力との戦いで改良型アタックブースターを欠損させており、現場に残骸が残されていたのをユキはこの目で確認している。この映像を見てユキのやる事は決まった。
「シュバルツ中佐、ニクスでのゴッドカイザーリバースの捜索・捕獲を私にやらせてください」
「君ならそう言うだろうとは思っていた。そもそも止めても行こうとしただろう」
シュバルツの言葉は図星だった。ユキは最悪自分とフューラーだけでもニクスへ行って協力なしでゴッドカイザーリバースを奪還することも考えていた。
「それにゴッドカイザーリバース初号機を回収しただろうと推測されるかの謎の勢力の事も現段階ではあの映像しか情報がない。もしかしたら何か手掛かりを掴めるかもしれないと考えている。我々も出来る限りの協力はしよう」
「ありがとうございます、シュバルツ中佐」
こうしてユキはフューラーと共に暗黒大陸ニクスへ再び足を踏み入れる事になった。姉の忘れ形見であるゴッドカイザーリバースを謎の勢力から奪還する為に。
To be continue…