ZAC2109年2月某日、暗黒大陸ニクスの大地を走行するあるグスタフの姿があった。牽引しているトレーラーに搭載されているのは2機の大型ゾイド…それぞれバーサークフューラーとライガーゼロの改造機である。
バーサークフューラーの方は装甲のカラーリングが青と白、黒で彩られ、各部のスラスターや四肢の爪は金色となっている。この青白の竜鬼という異名を持つ機体の背中にはバスタークローを含むパックパックの代わりにデュアルスナイパーライフルを装備し、両腕にも銃火器類が装備されている事から近接格闘戦よりも銃撃戦に特化させている事がわかる。
"ブラストフューラー"…それがこのバーサークフューラー改造機の名前である。命名したのは現在のパイロットであるユキ・マイヤであり、この個体の穏やかな気性から"
これは想定している相手がゴッドカイザーリバースである以上、いくら格闘戦用の装備を纏わせても元から近接格闘戦に特化したゴッドカイザーリバースには部が悪すぎると判断したからだ。
一方、ライガーゼロの改造機"ライガーゼロゼイバー"は
「駄目元で使わせてって頼んだけど、流石にキングライガーやハウンドソルジャーの持ち出しはNGだったね」
「いやいや、やっと再生産まで漕ぎ着けた貴重な機体だからいくらテストパイロットとして関わってはいてもそりゃそうなるわよ!」
とユキの言葉にライガーゼロゼイバーのパイロットはツッコミを入れた。
彼女の名はルミナ・ライゼス。ユキと同じくZOITECのテストパイロットであり、様々なゾイドに乗るユキとは異なり彼女は四足獣型高速戦闘ゾイドを専門としている。
ユキは個人的な感情も絡んだ事であるので最悪一人だけで行くつもりだったのが、その事を同僚達に話すと真っ先にルミナが心配でほっとけないからという理由でついていく事を決めたのだ。何を隠そうルミナはユキの事が好きで自分の妹の様に思っており、ユキもルミナの事はもう一人の姉の様な存在として慕っているのだ。ユキにとってZOITECで一番信頼出来る人物は彼女だ。
ユキはルミナの付き添いが決まるとルミナが得意な四足獣型高速戦闘ゾイド…最近操縦したキングライガーかハウンドソルジャーをサポート機として使用許可を駄目元でサルベージ機体の修復・再生産計画の責任者に求めたが、責任者も貴重なゾイドだからという理由もあって流石に首を縦には降らなかった。その代わりに持ち出し許可が降りた機体こそ装備テスト用のライガーゼロであるゼイバーである。
「まぁ、キングライガーやハウンドソルジャーは流石に駄目だろうなぁとは思ってたし、本命のゼロゼイバーを持ち出せただけでも結果オーライかな。フューラーとライガーゼロは兄弟機だからそれなりに相性も良いだろうし」
「そこまで考えてたの?」
「うん、ルミナがついてきてくれるって名乗り出た時から」
この少女は何処まで考えていたのやら、とルミナは思った。普段の彼女だけを見れば楽天的だったり能天気に見えたりするだろう。明朗快活と言えば聞こえが良いかもしれないが、それは彼女のほんの一面に過ぎない。この少女は幼い頃から色んな物を見てきた…それには人の醜い一面も含まれている。
ZOITECのキナ臭い一面にも感付いているし、一部の男性職員達が自身に身体目当てで邪な感情を抱いている事にも気付いている。
だからこそ彼女は同僚や上司に対してですら腕前や仕事を信用はしていても人柄まで信頼している訳ではない。それを知っているのはルミナを含めてごく僅かであり、ルミナはユキにとって数少ない心から信頼している人間だったのだ。
「ありがとう、着いてきてくれて」
「ほっとけないもの、リラもそうだったけどアンタもアンタで放っておいたら何をしでかすか分からないし」
「そうかな?」
「そうよ」
ルミナの言葉にユキはクスッと笑みを浮かべる。
「それで、ゴッドカイザーリバースを奪還してそれからはどうするのよ?」
ルミナは改まってユキに問う。ゴッドカイザーリバースがユキにとって
「ん~どうしよっかなぁ…」
「もしかしてそこは考えてないのかしら…?」
「まずは奪還が最優先だからね。うーん、そうだねぇ…あっ、このまま二人と3機で夜逃げでもする?」
「それ、本気なの?」
「どうかなぁ~」
「冗談だと言ってくれないかしら…?アタシらがお尋ね者になるわよ」
「私達の事を知らない地で自給自足も悪くないかなって思うんだけどなぁ」
「時々アンタが怖く感じるわ…」
とため息を吐くルミナ。仮に冗談だとしても心臓に悪い。フューラーは完全にユキの持ち物となっているが、ゼロゼイバーはあくまでもZOITECの所有物である。そうなれば追われる身になるのは確実であり、捕まったらそれなりの処罰が二人に下るだろう。
二人がそんな会話をしばらく続けた後、身体を伏せていたフューラーとゼロゼイバーが頭を上げた。まるで何か気配を感じ取ったかの様だ。
「フューラー?どうかした?」
ユキの問いかけにフューラーは頭を下げてコックピットを開ける。まるで乗れと言わんばかりだ。
「うん、わかったよ。フューラー」
フューラーの意思を汲み取ったユキはコックピットの乗り込み、コンソールが降りてコックピットが閉じるとモニターに周囲の景色が映し出される。
「アタシらも行くわよ、ゼロゼイバー」
ルミナの言葉にゼロゼイバーも従うかの様に頭を伏せてコックピットを開き、ルミナが乗り込む。
ユキは通信回線を開いてグスタフのパイロットに近くの基地まで帰るように伝えた。自分達が生きて帰れる保証がない事も考慮しての事だ。ガイロス帝国には事前に伝えている…何も連絡がなかった場合、自分達は死んでいるだろうと。
フューラーとゼロゼイバーは感じ取った気配を辿りながら大地を進んでいく。気配が近付くにつれて犯人にやられたと思わしき機体の残骸が多く発見されている。パイロットも死に絶えているようだ。
『これはゲーターにレッドホーン、レドラーにアイアンコング…』
『あっちにはセイバータイガーも…酷い有り様ね…』
発見された機体を横目に二人は呟く。ある機体は真っ二つに裂かれ、ある機体は荷電粒子砲でやられたと思われる大きな穴が開いており、またある機体には3本の爪痕が残されている。
『間違いない、ゴッドカイザーリバースだ』
ユキはそれらの機体に刻まれた傷…特にアイアンコングやレッドホーンに刻まれた3本の爪痕から犯人を断言する。
辺りを用心深く見ながら進んでいるとある地点からフューラーとゼロゼイバーが唸り出した。
『近付くにいるみたいね』
『うん、行こう』
二人はスピードを上げて先へと進んでいく。二人が進行方向上にはサルベージが終わっていない廃墟の一つがある。入り口には作業用のモルガやイグアン、輸送用のグスタフの残骸が転がっている。大破してからまだ時間が経っていない。二人は年の為に周囲の基地との通信回線を開くと共に捉えた映像の送信を開始して廃墟へ足を踏み入れた。
廃墟はフューラーやゼロゼイバーが入ってもまだまだ余裕がある広さがある。
2機がサーチライトで周辺を照らすとそこにいたのは
『…お姉ちゃん…!?』
死んだ筈のリラ・マイヤの姿だった。二人は目の前にいる人物の姿が信じられなかった。ゴッドカイザーリバースが消息不明になったあの日、現場で発見された首から下が残された遺体がDNA鑑定の結果、
一つはリラのクローンであるという可能性。頭だけは見つからなかった為、何者かに持ち去られてそれを元に作られたクローンではないかというものだ。
もう一つはサイボーグの類いではないかというもの…頭だけを発見されなかったのは必要な部位がそこだけであり、だからこそ持ち去ったのではないかというものだ。
死んだ筈のリラを前に警戒する二人に
「ようこそ淑女諸君」
と言いながら姿を現したのは2メートル近くはあろうパワーローダーを身に纏ったタコの様な形をした人間より大きい頭を持っている生命体だ。
『何者なの!』
ユキはブラストフューラーの腕に装備された銃をその生命体に向けて問う。ユキはこの生命体が姉を殺し、亡骸を弄んだ存在でないかと疑っている。
「此処まで辿り着いた貴様らには特別に教えてやろう。我が名はメイクス。この宇宙の外からの来訪者だ」
『宇宙人って事ね』
ルミナの言葉にメイクスはそうだと言って肯定する。
『目的は何!?』
ユキの質問にメイクスはこう返した。
「簡単な話だ。ゾイドの確保だ。我はゾイドを兵器として評価している。そこにもう一つ、生体兵器を掛け合わせればより素晴らしい生体兵器になる…だからこそ必要なのだ…優秀なゾイドというサンプルが」
『もう一つの生体兵器…?』
ルミナの言葉にメイクスは続ける。
「金属細胞と細胞レベルで完全なる融合を果たしたことで超人的な身体能力にあらゆる病原菌への耐性、細胞そのものが永久機関となる事で有機生命体最大の弱点である寿命がなくなった金属細胞融合型不老有機生命体…アデプトテレイター。優秀な生体兵器だが、単体では所詮人間サイズの兵器でしかない。外部ユニットを用意してもそれが大破してしまえばそれまでだ。
ならば、アデプトテレイターそのものが巨大兵器へ変身すれば良い。
ゾイドへの変身能力を付与した生体兵器…戦闘機械獣変身能力付与式金属細胞融合型不老有機生命体…ゾイックアデプトテレイターだ」
メイクスの言葉でユキはある存在が脳裏に浮かんだ。両親の仇であり、リラとゴッドカイザーリバースによって討伐されたダークスパイナーイフリートだ。あの機体には未知のテクノロジーが使われていた。
『じゃあ、目の前にいるお姉ちゃんとあのダークスパイナーイフリートは…』
「察しが良いな。その通り、ゾイックアデプトテレイターだ」
『この廃墟に現れたのもゾイドの残骸を回収する為かしら?』
「正解だ。此処に眠るのはグランドカタストロフで失われたと言われるゾイドだ。全く、自然災害には憤りを感じる。この様な高性能な機体を失わさせてしまったのだからな」
メイクスの背後をフューラーとゼロゼイバーはサーチライトで照らし、そこに眠る残骸に二人は言葉を失った。
『オルディオスにガンギャラド…』
ユキが2機の名前を呟く。嘗ての第一次大陸間戦争で運用され、最強の空戦ゾイドであるギル・ベイダーに初の黒星を付けたへリック共和国軍で最強クラスだった空陸両用のペガサス型ゾイドであるオルディオスとその対抗機としてガイロス帝国が生み出し、状況に応じて機動力に長けた飛行形態と格闘能力を発揮する地上形態への可変機能を有したドラゴン型ゾイドであるガンギャド。
2機ともグランドカタストロフで元になった野生体の絶滅と生産技術の喪失によって再生産不可となった強力なゾイドである。
あれらがメイクスの手に渡ればろくな事にならない―二人はそう判断した。
『アンタの好きにはさせないわ!』
『私のお姉ちゃんを返せ!』
臨戦態勢を取るフューラーとゼロゼイバーにメイクスは不適な笑みを浮かべてリラに指示を出した。
「やれ」
その一言でリラの首に装備された首輪…擬似OSユニットが発光し、リラはシステムで操られた状態で変身コードを発する。
「―ゾイドオン、ゴッドカイザーリバース」
その後、リラは光の繭に包まれ、光の繭は何重にも重なって大きくなった後、ゴッドカイザーリバースへと姿を変えた。
驚きで言葉を失う二人だが、それで立ち止まって隙を見せていればこちらが一方的にやられる。そう判断したユキはすぐさま
『ルミナ!』
ルミナに呼び掛ける。ルミナはユキが言わんとする指示を察すると
『煙幕噴射!』
追加装備のスモークディスチャージャーから煙幕を噴射、2機はサーチライトを消灯して外へ出る。いくら大型ゾイドが何機も入る程に中が広いとはいえ戦闘するにはいささか狭く、そのままでは近接格闘戦に特化したゴッドカイザーリバースの独断場だ。だからこそ二人は屋内ではなく屋外で戦うことを選択したのだ。
ゴッドカイザーリバースは尻尾を振るって煙幕をかき消すと外へ出た2機を追って外へ出るのだった。
ゴッドカイザーリバースがまず発見したのは背を向けて距離を取るフューラーだ。ゴッドカイザーリバースは各部のスラスターと腰の二連装ブーストディスチャージャーを噴射させて一気に距離を狭めようとするが、フューラーはデュアルスナイパーライフルを展開、砲身を後ろに向けて二発発砲し、発砲と同時に左足を軸にして右足のスラスターのみを噴射してゴッドカイザーリバースの方へ向く。しかしゴッドカイザーリバースは弾道を読んでいるのか回避はせず、メタルZiクローで砲弾を切り裂いた。
「流石はゴッドカイザーリバースだね…格闘戦に持っていかれたらこっちが負ける…!」
と呟くユキ。ゴッドカイザーリバースとはリラが亡くなる前に何度か模擬戦をした事がある。そこでユキはゴッドカイザーリバースの性能とリラのゾイド乗りの技量を思い知った。機体の性能もゾイド乗りの才能もリラとゴッドカイザーリバースの方が上…しかも今ユキ達が対峙しているのは物理的に機体と一つになったリラとゴッドカイザーリバースだ。機体を自分の身体の様に動かせるのに対しこちらは操作と実行にどうしてもタイムラグが生じてしまう。だが、ユキとフューラーは単独で戦っている訳ではない。
フューラーが両腕のAZショットガンで牽制している隙にゼロゼイバーは谷の上から側面のAZ超電磁ブレードを展開させると腹部のコンパクトイオンスラスタと背面のイオンターボブースターを噴射させて滑空しながらAZ対空速射砲とAZ4連ショートレーザーガトリングを発砲しつつ前脚の爪―ストライクレーザークローを発光させ
『ストライクレーザークロー!』
そこから衝撃波を発生させてゴッドカイザーリバースへ放った。ゴッドカイザーリバースは集中砲火と衝撃波を受け身体を一瞬よろめかせるがすぐさま体勢を立て直して尻尾のメタルZiテイルブレードをゼロゼイバーに向けて振るうと同時に荷電粒子砲発射態勢に入る。荷電粒子砲の標的はフューラーであり、フューラーもアンカーを展開して荷電粒子砲発射態勢を取る。ゼロゼイバーは後ろ足で着地した瞬間に腹部のコンパクトイオンスラスターの噴射を補助として使用しつつジャンプしてメタルZiテイルブレードを回避、フューラーとゴッドカイザーリバースは同時に荷電粒子砲を発射して撃ち合いとなる。ビーム状に発射された荷電粒子はぶつかり合って数秒後に爆発を引き起こす。爆風に呑まれる中、ゴッドカイザーリバースは各種スラスターと二連装ブーストディスチャージャーを噴射させてフューラーとの間合いを一気に狭めるが、フューラーは屈むとゴッドカイザーリバースの下顎がデュアルスナイパーライフルの砲身に届いた瞬間に折り畳む。デュアルスナイパーライフルの砲身はそのままゴッドカイザーリバースの下顎を殴って折り畳まれ、追い討ちをかけてAZショットガンを連射しつつ再度デュアルスナイパーライフルを展開して右肩の付け根を狙って発砲し、ゴッドカイザーリバースの右腕が地面に落ちる。更にゼロゼイバーがゴッドカイザーリバースの背中に飛び掛かって三連ビームキャノン砲を噛み千切ってメタルZiテイルブレードが突き刺さる前に離れる。
「ほう…二体がかりとはいえなかなかやるな」
3機による戦いをメイクスは遠目で眺めていた。操作レバーなどを介さず自分の身体として直接動かすゾイックアデプトテレイター化個体のゴッドカイザーリバースに対し性能では劣っている筈の2機が見事な連携で押していっている。
このままではゴッドカイザーリバースが負ける、そう判断したメイクスは背後に控える巨人達へ振り向く。巨人達はすべて同じ形状であり、そのカラーリングは黄緑と紫、ガンメタリックで彩られている。
「トキシトロン部隊、奴らを鹵獲しろ」
トキシトロンと呼ばれた巨人達はメイクスからの指示を受けると変形を開始、ボンネットタイプのセミトレーラートラックのトラックヘッドへと姿を変え、荷台にはタンクローリータイプのトレーラーが牽引される。その数は9体、ただ1体だけ他の個体から1テンポ遅れて変形を完了させ、トキシトロン部隊はゴッドカイザーリバースに加勢すべく行動を開始した。
リラが目の前で両親を喪って復讐心と
何と言って声をかければ良いか分からなかったというのもある、身内だからこそ姉の根に持つ性格を理解していたのもある、自分が言ったところで止まらない頑固者だというのを分かっていたというのもある、自分も両親を殺した存在が憎かったというのもある、逆の立場だったら自分も死んだ人間は戻ってこないとわかっている上で同じ事をしていたかもしれないというのもある。
色んな理由が混ざりに混ざった結果、ユキは姉を止められなかったし止めなかった。
目的を達成できれば
姉を力強くでも止めていれば今でも隣にいてくれただろうか?もしかしたら何時の日か立ち直ってまた笑顔を見せてくれるようになっただろうか?
しかしそれはもしもの話でしかない。姉は無惨に殺されたばかりかその死すら愚弄された。本当なら姉の形見を取り戻すだけだったのに…変わり果てた姉とその愛機を前に肉親である自分が出来る事は介錯して苦しみや屈辱から解放してやる事だとユキは思っていた。
それ故ににルミナに対し申し訳なさを抱いていた。言ってしまえば今回のゴッドカイザーリバースの件については私情を挟んでいる。いくら自分が一番に信頼出来る人だとはいえ彼女を巻き込んでしまった。身内を立て続けに亡くして天涯孤独となった自分とは違い彼女には離れて暮らしているとはいえ家族がいる。もし彼女の身に取り返しのつかない事が起きてしまったら彼女の家族に合わせる顔がない。
自分についてきてくれた事には感謝しているがこれ以上は巻き込む訳にはいかない…だからこそゴッドカイザーリバースと一体となった姉を介錯して楽にした後は自分の命と引き換えにしてでも単身で
「私もお姉ちゃんの事は言えないかなぁ…」
と呟くユキ。ユキは自分自身でもわかっていた…姉だけでなく自分も壊れている事を、ただ理性で蓋をしていただけである事を。
しかし、その覚悟も思いも踏みにじられる事になる…他ならぬメイクスの差し金によって。
ゴッドカイザーリバースを仕留めようとするフューラーとゼロゼイバーに対し攻撃が降り注ぐ。
『攻撃!?何処から!?』
ルミナがモニター越しに目にしたのは此方へと向かってくるタンクローリーの車群…そう、トキシトロン部隊である。トキシトロン部隊は人型のロボットモードへと姿を変えると1体だけ機体が震えて他の機体から遅れながらも肩アーマーを展開させ、ゼロゼイバーとフューラーに向けてミサイルを浴びせるかのように発射する。フューラーとゼロゼイバーは直撃を回避するのだが、ミサイルが爆ぜた時に生じた緑の煙が辺りに充満すると異変が生じ始めた。
2機は動きを止め、まるで苦しんで悲鳴を上げているかの様に吼えたのだ。
『フューラー!?どうしたの!?』
『ゼロゼイバー!しっかりして!』
とユキとルミナは呼び掛けるが、動くのも辛い2機はとうとう膝をついてしまう。更にモニターもノイズが走った末に切れてしまった。
外で何が起きたのか理解できない2人。しかし、そんな2人に追い討ちをかけるかの様にトキシトロン部隊は1体を覗いてフューラーとゼロゼイバーのコックピットを無理矢理抉じ開け、2人はトキシトロン部隊によってコックピットから引き摺り出され、その直後にフューラーとゼロゼイバーは地面に崩れ落ちてしまった。2人はこの煙で咳き込んで言葉も発する事も出来ないばかりか血を吐いてしまった。
一方のゴッドカイザーリバースは煙の中でも問題ないかのように平然と立っている。
「ゾイックアデプトテレイター化個体を相手によく戦ったな」
2人に呼び掛けてきたのはメイクスだ。
「お前らを始末しようと思ったが、気が変わった。お前らもゾイックアデプトテレイターにしてやろう。成功する保証はないがな」
メイクスがそう言う中、2人の意識は朦朧としていた。そんな中でユキはこれが毒ガスの類である事を察すると共にトキシトロン部隊のある機体の挙動に違和感を抱いていた。毒ガスミサイルを発射する際に1体だけ震えてミサイルの発射が他の機体から明らかに遅れていた…その様子がユキにはまるでメイクスからの指示に抵抗しているかの様に見えたのだった。
フューラーとゼロゼイバーからの映像通信が途切れた後、近くの基地で待機していたガイロス帝国の部隊が駆けつけたのだが…彼らが到着した時には毒ガスは既に消えていた。メイクスやトキシトロン部隊、更にオルディオスやガンギャラドの残骸、そしてフューラーとゼロゼイバーの姿は何処にもなく唯一残されていたのはユキとルミナの首から下が残された遺体のみだった。
しかし2機が残した通信映像は貴重な情報源であり、へリック共和国とガイロス帝国、そしてZOITECは謎の勢力改めメイクス一派からの防衛の為に引き続き新型ゾイドや改造ゾイドの開発を続ける事になると共にこの映像は関係者のみ閲覧出来る機密情報となった。だが、この映像はスパイの手を通してZi-ARMSの元にも渡る事となった。
また、この日の後もゾイドとパイロットが音信不通となり、パイロットの死体のみが発見される事件が時折発生したのだが、一部のパイロットの遺体は首から下が残されていたとされる。
この現象は後にゾイド乗り達の間で"ゾイドの神隠し"という都市伝説として囁かれるようになるのだった…
To be continue…