蘇りし神皇帝竜―ゴッドカイザー―   作:衛置竜人

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祝・ジェノザウラー発売25周年&リアライズモデルジェノザウラー発売記念で書きました


30MSのソウレイ、かわいいですよね


外伝『白蒼の虐殺竜 前編』

 

 

 

 

とある山中にある川辺、快晴の天気の中で10代半ばか後半辺りのやや小柄で華奢な少女が鼻歌交じりに一人で釣りをしていた。

その隣には一機のゾイドが昼寝をしているかの様に丸まって伏せた状態となって待機している。現在、この少女とゾイドの一人と一機だけ付近に他に誰もいない事から彼女がゾイド乗りでこのゾイドは彼女の愛機である事がわかるだろう。尤もこの光景を見た者はこのゾイドのパイロットがこの様な年端もいかない少女だということが信じられないだろう。

何せこの少女の愛機はゴドスやコマンドウルフ、モルガやヘルキャットという扱い易い機体などではなく、エースパイロットですら容易には乗りこなせない代物と呼ばれる程かつ人によっては物騒にも見える機体である。

 

"ジェノザウラー"

 

ガイロス帝国が開発したティラノサウルス型ゾイドであり、その外見と機体性能から小型・高機動型デスザウラーとも呼ばれる存在である。ガイロス帝国に配備された通常機は紫色のフレームに黒い装甲を持つのだが、この少女のジェノザウラーは黒いフレームに頭部から尻尾の装甲が白で四肢の装甲が青く、頭部の武装や爪、肩との放熱フィンが金色という第一次大陸間戦争までのへリック共和国軍の一部の機体が採用していた共和国Mk-2カラー…その中でもゴッドカイザーと呼ばれるティラノサウルス型ゾイドを彷彿とさせるカラーリングである。

 

 

少女達がいる山中の川は惑星Zi、西方大陸にある。この大陸は各地に古代文明の遺跡が眠っており、その失われた技術(ロストテクノロジー)を巡ってガイロス帝国とへリック共和国が進出し、西方大陸戦争…エウロペ戦役とも呼ばれる戦いが起きた大陸である。

その西方大陸戦争も戦乱の舞台をガイロス帝国の本拠地たる暗黒大陸ニクスへと移した事もあって暗黒大陸戦争の開戦と共に終戦を迎え、西方大陸は共和国軍が事実上制覇したのだった。

 

 

西方大陸戦争の終結から月日が流れたZAC2109年5月…へリック共和国とガイロス帝国から分裂したネオゼネバス帝国による第二次中央大陸戦争が停戦を迎えて1ヶ月が経過したものの、世間は長い対戦の混乱から回復しきれておらず、戦争の終結を未だに認めない過激派の者達やらどさくさに乗じた盗賊やらが各地で活動していた。

その影響はこの西方大陸の地にも多少影響を及ぼしており、そういった者達が遺跡荒らしをしていたりするようだ。

この少女はこのジェノザウラーと共に各地を転々としながらそういった者達を退治したり輸送任務の護衛を務めたり乗り捨てられて野生化してしまったゾイドの討伐などを請け負う傭兵である。

少女は釣り上げた魚を調理し、串に刺すと焚き火で焼き始める。ジェノザウラーは頭部の砲門に留まった鳥が煩わしかったのかそれとも糞を頭に落とされるのが嫌だったのか頭をブルブルと小刻みに震えさせて追い払うと欠伸をするかのように空に向かって口を開いた後、再び頭を伏せた。

魚がこんがり焼けたのを確認した少女は串を手に取り、ふーふーと息を吹いて少し冷まさせると小さな口で魚を頬張る。途中水を飲みつつ魚を完食すると焚き火の火を川から掬った水で消火して身体を思いっきり伸ばした。

「今日はいい天気ですね」

少女はジェノザウラーの鼻先を優しく撫でる。ジェノザウラーは気分良さげに喉を鳴らすかのヨウニ短く唸るが、何かを感じたのかすぐに頭を上げる。

「どうかしました?」

そう訊ねる少女に対しジェノザウラーは身体を起こし、乗れと言わんばかりにコックピットを開ける。

ジェノザウラーの意思を察した少女はコックピットに乗り込み、少女が乗ると共にコックピットは閉じる。

コックピットが閉じた後、モニターにカメラが捉えた映像が映し出される。

「コマンドウルフ…?それにあれは…?」

コマンドウルフが何かを追尾・攻撃している。しかしそのコマンドウルフ達のコックピットは無人かつキャノピー部分をよく見ると本来はない筈の目があるのだ。だが、それ以上にそのコマンドウルフ達が交戦している存在は少女からしてみれば異質だった。その存在は例えるなら巨人だ。大きさはジェノザウラーに匹敵するか僅かに大きい。その巨人は機械的な見た目であり、脚部や肩にタイヤが付いている。

巨人がコマンドウルフ達に追われている…モニターに映し出された光景はそんなところであり、巨人は左脚部を負傷しているのかその動きは引き摺っているかのようにぎこちなかった。しかもコマンドウルフ達の進行方向には小規模な集落がある。もし仮に人里に降りてきたりしたら…犠牲者が出る事だけは彼女としては何としても避けたかった。

「いってみましょう、ジェノザウラー」

少女の呼び掛けにジェノザウラーは応えるかの様に天高く咆哮し、近くの木々に留まった鳥達が驚いて一斉に飛び立つと共に動き出した。

 

ジェノザウラーは本来、オーガノイドシステムを搭載した最初のゾイドである。

西方大陸北部のオリンポス山の山頂に所在する古代遺跡から発掘された古代ゾイド人が遺した未知の技術であるOS(オーガノイドシステム)はゾイドの心臓部であるゾイドコアを活性化させ、戦闘力・敏捷性・回復力その他を向上させるのだが、その活性化の方法がゾイドコアを凶暴化させるというものであり、搭載されたゾイドは凶暴化するのに加えて操縦系統を介しパイロットにもその感情が流れ込み悪影響を及ぼすという代償をもたらすのだ。

しかもOSを搭載されたゾイドは意図的に心を曲げられた事からシステムを憎悪しており、その感情がさらにOSの効力を増大させるという悪循環に追い込まれている上に凶暴化を解消する事はOSその物を外さない限り不可能である。

出力を制限すればパイロットへの負担と凶暴性をある程度抑えられるものの、当然戦闘力は低下する。

尤もOSは悪い面ばかりでなく応用する事で絶滅した或いは絶滅しかかっているゾイドを復活させられるというメリットが存在している。これらの点を踏まえてガイロス帝国の若き皇帝ルドルフは新規の製造・開発も含めたOS搭載機の廃止を決断、共和国もこれに同調するものの、ネオゼネバス帝国は引き継ぎOS搭載機の製造・開発を続けたのだ。

 

ジェノザウラーというゾイドはプロトタイプである完全野生体ベースのプロトレックスの難点であったシンクロ率の問題で安定せず、パイロットの精神コンディションが機体に直結するという点をOSで常時凶暴化させるという逆転の発想によって機体をある意味安定させていた。

しかし、ジェノザウラーの初期生産機は従来のゾイドを遙かに凌ぐ戦闘能力と引き換えにゾイドの感情がパイロットに流れ込み、パイロットの性格に悪影響を及ぼすなど操縦性の悪さが問題となり、OSにリミッターをかけた量産型は操縦性と安定性が向上した代わりに主力機相応の性能を誇るとはいえ戦闘能力は初期生産機より低下してしまっている。

更に発展型のジェノブレイカーは操作性が更に悪化して乗りこなせるパイロットは一握りという有り様であり、プロトレックスをブラッシュアップした後継機であるバーサークフューラーのロールアウトでジェノザウラーも旧式となってしまったのだ。

 

そう、この様にジェノザウラーは本来はOSの搭載を前提としたゾイドである。しかし、このゴッドカイザーを彷彿とさせるカラーリングのジェノザウラーは他の個体とは異なりOSは搭載されていない…正確に言えば搭載されてはいたが、少女の前の持ち主によって外されたのだ。

結果として乗りこなせるかは別として誰でも搭乗・操縦が可能だった他のジェノザウラーとは異なり、この個体は自身が認めた者しか操縦はおろか搭乗すら出来ず、認めていない者が無理に乗ろうとすれば拒絶してコックピットを開けないばかりか振り落とすなど安定性が失われたものの、機体の性能は内部の調整や腕部の爪(ハイパーキラークロー)脚部の爪(ハイパーストライククロー)をストライクレーザークローへ変更するなどの改修の甲斐もあって通常機を上回る性能を獲得している。

そして、この少女はそんなジェノザウラーが認めた今生きている人物の中で唯一の存在であるのだ。

 

 

巨人が"連中"に見つかってしまったのは偶然であり、運が悪かった。"彼"は自分の能力と奪取した試作品の小型スペースブリッジを駆使して自身を生み出した"連中"の元から脱走した後、宇宙各地を転々とした末に偶々この惑星Ziへと流れついたのだ。

しかし、この惑星Ziでは"連中"が別件で活動している最中であった為か捕捉されてしまい、3ヶ月にも及ぶ逃走劇を繰り広げる羽目になったのだ。しかも現在、左脚部とバックパックのスラスターはコマンドウルフが放った貫通弾の命中によって負傷しており、飛行が上手くできないどころか移動速度が大幅に低下している。ビークルモードであるトラックに変形(トランスフォーム)すれば速く走れるが、それでも万全な状態より速度は落ちている上に彼のビークルモードはそもそも小回りがロボットモードと比べて利かない為、この山中だと不利に働くのだ。

コマンドウルフの数が10機程度なら彼は戦って姿を眩ませるだろう。しかし、連中が投入したのは倍の20機にも及ぶ。負傷して万全でない今は逃げた方が捕まる可能性が低いのだ。

コマンドウルフの1体が背中のロングレンジライフルの標準を、更にもう1体がAZ120mmグライドキャノンの標準を彼に定めたその時、コマンドウルフ達にとって思わね乱入者が攻撃を仕掛けてきた。

その2機のコマンドウルフの背面武装の側面に何処からか飛んできた砲撃が着弾したのだ。

砲撃が飛んできた方角を探るコマンドウルフ達だったが、その主は空から現れた…そう、ジェノザウラーである。ジェノザウラーは一番重装備だった個体(チャージウルフ)の上に踏み潰すかの様に着地すると脚部のストライクレーザークローを発光させ、首元に突き刺して切断して仕留めるとその頭を蹴り飛ばしてボマーユニットを装備した個体へ命中させる。

多くのコマンドウルフ達は思わぬ乱入者たるジェノザウラーに砲門を向ける。

『何か見たことない装備の奴もいる…』

と少女は呟く。因みに少女が指摘した個体には長距離狙撃で大型ゾイドを倒しうるレールガンなどを装備している。"この"惑星Ziには存在しない筈のコマンドウルフRGC(レールガンカスタム)である。

そのコマンドウルフはヘッドギアを装備するとレールガンを展開してその標準をジェノザウラーに定めるが、他の個体の相手をしていた巨人が腕に装備した二連装のブラスターをノールックで発砲して妨害する。ジェノザウラーはその隙を突くように他の個体からの攻撃を振り切ってレールガンを装備した個体の側面に周り込むとロングレンジパルスレーザーライフルを発砲してレールガンを破壊すると尻尾で叩いて転倒させる。

ジェノザウラーは転倒したコマンドウルフを踏みつけながらアタックユニットを装備した個体の内の1機に接近し、発光させたストライクレーザークローでアタックユニットを破壊し、更にストライクレーザークローから発生させた衝撃波をもう1機のアタックユニット装備個体に命中させる。

巨人はジェノザウラーが助けてくれたと認識したのかジェノザウラーを背後から狙っていたバイキングランス装備個体に対し肩アーマーの二連装砲を発砲して牽制しつつ距離を詰めて片手剣と斧で切り裂く。

同胞が次々と1体と1機にやられていく中、コマンドウルフ達は突然攻撃を中断し、頭を失ったりなどして動けない個体は動ける個体に引き摺られながら何処へと去っていったのだった。

理由は少女には分からぬが、方角からして人里ではないのは確かだろう。一方の巨人は警戒を怠らずコマンドウルフ達が去っていった方角をずっと見据えている。

撤退したコマンドウルフ達の姿が目視で確認出来なくなった後、ジェノザウラーのコックピットが開いた。パイロットの意思に従っての事だ。

「あの、大丈夫ですか?言葉は通じますか?」

と少女はジェノザウラーのコックピットから巨人に訊ねる。

「…助けた事には礼を言おう。だが、何故助けた?」

どうやら巨人は少女の言葉を理解出来たようで、同じ原語で話しかける。

「放ってはおけなかったですし、あのコマンドウルフ達がもし人里に降りて悪さをしたら大変な事になるからです。それに貴方、怪我をしているみたいでしたし」

少女は巨人にそう返答し、巨人はそこまで見ていたのかと驚いたが、左脚部が痛むのか右膝を着いてしまう。少女はジェノザウラーのジェノザウラーのコックピットから飛び降りて巨人に近寄ろうとするが

「俺には関わらない方が身のためだ」

巨人は右手を少女に向けて制止させる。

「その状態でどうするっていうんですか?」

「自己修復能力でその内回復する…」

立ち上がろうとする巨人だったが、先程の戦闘によるダメージが残っているのか立ち上がれず再び膝を着いてしまう。自己修復機能があるとはいえ完治にはそれなりに長い時間を要するだろう。

「あの、私に診させてください」

少女はまず巨人の左脚に駆け寄り、ジェノザウラーもついていく。ジェノザウラーが背負っていたコンテナを降ろすと少女はそのコンテナを開け、手袋を着けて懐中電灯と工具箱を取り出すと巨人の左脚を照らし始めた。

左脚の裏側の銃痕…その奥に留まっている貫通弾が光を鈍く反射させている。少女は弾丸を摘出すべく巨人の左脚裏側の装甲を捲ると駆動系と思わしき部位に不発弾が突き刺っていた。

「ちょっと痛いかもしれませんが我慢しててくださいね」

少女は巨人にそう言うと工具箱から大きめのプライヤーを取り出し、慎重に弾丸を掴むと落とさぬようゆっくり摘出し爆発しないよう慎重に地面に降ろす。

そして改めて弾丸が突き刺っていた部位を懐中電灯電灯で照らして状態を確認し、工具を手に修理を始めた。その間、ジェノザウラーは身体を伏せた状態で敵襲に備えて辺りを警戒するかの様に見渡しながら待機し、巨人は少女の様子を無言でじっと観察していた。

 

 

 

 

一方、その頃…ジェノザウラー及び巨人と交戦していたコマンドウルフ達は主の元へ帰還し、待機状態となっていた。

その主は人間ではない…かの巨人よりも大柄な体格でショベルとサソリの鋏が融合したかの様な形状の腕に先端に航空機のキャノピーらしき物と砲塔が着いたサソリの尾の様な物が腰辺りに生えており、脚部はキャタピラがついている。クインテッサ星人メイクスの配下であるトランスフォーマーの1人、ダークスコルポノックである。

「メイクス様、申し訳ございません。"MFS-3"ですが、作戦中に乱入者が現れ態勢を立て直すべく一時撤退をさせました。現在、ヘルキャットが監視中です」

『想定外の事態が起きた以上、仕方あるまい。そう気に病むな。で、乱入者は何者だ?』

「ジェノザウラーです。近辺にいたゾイド乗りでしょう」

『ジェノザウラーか…既にサンプルは我らの元にある機体だが…捕獲するかどうかはお前に任せよう。それとガルトラードベースも破棄する事になった』

「"LGETX-01"ですか」

『あぁ、そうだ。あの"失敗作"と一行の目的はあのバーサークフューラーの改造機の言葉を踏まえればゴッドカイザーリバースだろう。幸いにもLGETX-01のデータベースには記録されていない基地は多く存在している上に現在進行形で建造中の基地もあるから問題ない。お前は引き続きMFS-3の"Gチャンバー"の確保を最優先にしろ。Gチャンバーが回収出来ればMFS-3そのものはどうなっても構わない。

奴が奪取して組み込んだ体内のスペースブリッジが再度使用可能になるまであと1ヶ月…使用可能になる直前で油断したタイミングで仕掛けろ』

「了解」

返事を返した後、ダークスコルポノックは通信を切り、MFS-3という機体コードで呼ばれたあの巨人の捕獲の為の準備を進めるのだった。

 

 

 

 

 

少女は巨人の左脚の応急修理を終わらせると次はバックパックのスラスターに突き刺った弾丸の摘出と破損部位の応急修理にかかった。巨人が座った状態でもうつ伏せの状態でも自分の身長では手が届かないと判断したのかジェノザウラーの腕に跨がった状態で作業を行っている。

無言でも作業を続ける少女に対し巨人はある人間の姿を重ねていた。"今の姿"で生まれる前、何時も自分に声をかけ、戦闘中で危険であるのにも関わらず駆けつけて自分を命懸けで修理した人間男。彼は自分の意思を尊重してくれた。だからこそ"同胞(息子)"と海の底で眠りにつこうとする前に自分も彼を仲間の元へ返した。彼は今どうしているだろうか?それを知る術は今の自分にはない。時のゆりかごの中で永遠の眠りに就いた…筈だったのに気付けばこの姿になっていた。眠りを妨げたメイクス一派(アイツら)に怒りと憎しみを抱いた巨人は小型スペースブリッジを奪取して自分の身体に組み込み、メイクス一派の元から脱走した。

行く宛もない…ただメイクス一派から逃げる為の旅。故郷が何処にあるのか彼のデータベースに残されていないからわからない…そもそも自分が本体から分裂した存在である事は理解していた。だからこそ故郷の場所が分かっても戻るつもりはないのだ。

「―あの、応急修理は終わりました」

巨人が気付いた時には少女は既に応急修理を終えていたようだ。

「あ、あぁ。そうか」

「どうかしたんですか?」

「いや、考え事をしていただけだ」

巨人の考え事について少女はそうですか、と返して詮索はしなかった。

「動きはどうでしょうか?」

少女の言葉に巨人はまず左脚を動かす。動きそのもののは問題なくスムーズに動く。今度は立ち上がって歩いて動きや負荷状況を確認する。まだ違和感は少し残るものの応急修理前と比べれば痛みは引いていており、動かす事に支障はない。これなら自己修復機能と合わせてすぐに戦闘に支障がないレベルまで回復するだろう。

バックパックのスラスターの動作も確認する。こちらはまだ使用は出来ないが、応急修理なしの場合と比べて早く使用可能な状態になるまで回復するだろう。

「あぁ、問題なく動ける。完治までの時間も短縮された。感謝する」

「それなら良かったです」

少女は安堵の笑みを浮かべ、ジェノザウラーも良かった良かったと言わんばかりに唸っている。

「深入りするのは失礼だと思いますが、どうして貴方はコマンドウルフに襲われていたのですか?」

「あれはただのコマンドウルフではない。メイクスが作り出した量産型ゾイックアデプトテレイターの試作品だ」

「メイクス…?」

「俺を蘇らせた…いや、今の俺を作ったクインテッサ星人という宇宙人(エイリアン)という奴だ。奴はゾイドの汎用性の高さなどに目をつけ、そこへある金属生命体の金属細胞と細胞レベルの融合を果たした事で超人的な身体能力と有機生命体の弱点たる寿命なき肉体、毒や病原菌(ウィルス)への強い耐性を獲得した金属細胞融合型不老有機生命体(アデプトテレイター)にゾイドへの変身能力を付与した生体兵器…ゾイックアデプトテレイターを生み出した。

ゾイックアデプトテレイターはこれまで大量生産に難があった上に元々備わっている自我を抑えて反逆しないようにする為には擬似OSユニットと呼ばれる物体が必要だったが、奴は様々なゾイックアデプトテレイターによる検証の末に擬似OSユニットなしで指示通りに忠実に動く量産型を生み出す事に成功した。それがあのコマンドウルフどもの正体だ。尤も性能は従来のゾイックアデプトテレイターの方が上だが…数が多ければ厄介な事に代わりはない。

話を戻すが、メイクス一派の目的は俺というより俺の体内にあるGチャンバーだ」

「Gチャンバー…?」

少女の言葉に巨人は胸部を開く。其処には中に左右から円柱で繋がれた球体が入った容器が輝いていた。

「複数存在する地球の1つに生息していたとある巨大生物を元に人間共が作った兵器…そのDNAコンピューターをメイクスが解析・複製して様々な技術を投入して作り上げた動力炉だ。

メイクスはこのGチャンバーを人造のトランスフォーマー…セイバートロン星を発祥の地とする変形能力を有する金属生命体のクローン体に搭載しようとした…しかし、俺の前に作られた個体はどれもGチャンバーに適合できず、MFS-1は機体が融解し、MFS-2は獣の様に暴走した後、スクラップになったという有り様だった。

そこでメイクスは敵対するとあるトランスフォーマーのクローン体を作り、それにGチャンバーを搭載した。しかし漸く安定したと思われたMFS-3()は自我を獲得して体内に搭載しているスペースブリッジを使って連中の元を脱走した」

「どうして脱走したのですか?」

「連中が気に入らなかったからだ。俺に宿った自我はかの兵器の記憶が元になっている…同胞と一緒に眠りに就いた筈が気が付けば見知らぬエイリアンの手によってこの姿にされていた。確かに俺はかの兵器そのものではなく言わば分裂した存在だ。だが、勝手に生み出して道具として利用しようとする事に怒りと憎しみを抱いて脱走した」

「じゃあ、これからどうするんですか?」

「さぁな。故郷の地球が何処にあるのか俺のデータベースにはないから分かるないしそもそも俺はオリジナルそのものじゃない…だから行く宛もない旅を続けるだけだ。尤も体内のスペースブリッジの使用には制限がかかっている上に再度使用するにはあと1ヶ月はかかるからこの星から出られないがな」

巨人の言葉に少女は考え込み

「でしたら、僕とジェノザウラーがそれまで護衛をするのはどうでしょうか?こう見えて傭兵なんです」

と巨人に提案した。

「言った筈だ。俺には関わらない方が身のためだ」

「もう既に関わってしまっていますし、それに完治していない状態でまた襲ってきても逃げられる保証はあるのですか?」

少女の言葉は図星だった。仮にまた襲ってきた場合、逃げられる保証はないだろう。それに旧式になってしまったとはいえジェノザウラーはゴジュラスやアイアンコングともやり合える程の高性能な機体であり、戦力としては申し分ない。

「…金はないし報酬も払えないぞ」

「それは分かっています。分かった上で、です」

少女の言葉に巨人は思考を巡らせた上で

「…短い間だが、世話になる」

と少女に頼る事にした。

「あっ、自己紹介がまだでしたね。僕はソウレイ。ソウレイ・アミナです」

「俺は―」

名乗りかけた巨人だったが、ふとある事を思い出した。自分はそもそも"オリジナル"ではなくメイクス一派も機体番号であるMFS-3と呼ぶか後に別目的で量産されたLGETX(トキシトロン)シリーズのベース機体という意味で単にプロトタイプとしか呼ばれていないのだ。

「名前はない…連中からは機体番号かプロトタイプとしか呼ばれていないからな」

「プロトタイプですか?」

「俺はGチャンバー試験機たるMFSコードの機体としては3号機だが、あるトランスフォーマーのクローン体としては最初の個体になるらしいからな」

「そうでしたら"ゼロ"は如何でしょうか?ありきたりかもしれませんが…」

「いや、それで構わない」

「それでは宜しくお願いします、ゼロさん」

「さんは必要ない」

「分かりました、ゼロ」

「あぁ」

 

 

 

 

これが白蒼のジェノザウラー乗りの少女―ソウレイとMFS-3改めゼロの出会いである。

 

 

 

 

To be continue…

 

 

 

 

 

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