────ガコンガコンガコンガコン
脳裏に響く音。
────キリキリキリキリキリ
締め付けられる。
────メキャッ
ついには頭蓋が開かれる。
己の四肢を掴み、固定し、とある機械に設置した
嘲るような、憐れむような、悲しむような、楽しむような、何かよく分からない感情を携えたアレは。何を望んで何をして何をするのかが分からない、アレの事を多少知っているが故にこの行為になんの意味があるのかが。
「実験という意味がある」
────グリュ
左目が取られた。右目も取られていく。既に痛みは無い、と言うよりは痛みを感じるための脳そのものが無い。なのに何故かこの身は思考することが出来ている。
「
────ジョギン……ジョギン
目はなくなったはずなのに見える景色に大きなハサミが己の肉を剥いでいく様子が映る。骨だけになっていく己の身になんの感慨もなく、あぁ……減っていく、という思考のみが浮かぶ。
「既に感情の削ぎ落としが始まっているようだな。いや、予想していたとはいえ自身が
────ズリュ……
内臓が引き出される。その様はミイラを作っているようで……いや、ミイラだったら肉と皮を残すはずだ、だが今目の前に存在するのは骨だけ。
「よし、下処理は終わり。君の思考も問題なく稼働している、ソウルの方も問題なさそうだ」
自身の体から鳴る嫌な音が一時的に止まる。目と思考を高速で動かすがどうにもソウルとやらはこの体を扱う程の力は無いらしい。
「地下世界を見つけられるとは思ってなかったから急拵えではあったが何とかなったな。一先ず君のソウルをコチラへ移そうか」
コトリ、とその音ともに目の前に差し出されたソレを見る。それは形だけならハートであるが、どうやら何かをしまえる容器でありアレの言葉通りならソウルをしまうものらしい。
ソレを骨だけとなった体の横に置いてある機械へセットしていくアレ、確かこの機械は己が連れてこられた時に使った機械だ。つまりあれはソウルに関する機械というわけで。
「これはソウルの器。我々人間が持つソウルをある
機械が作動していく。それと同時に己の中にある大事なものが抜けていくような感覚に襲われる。
「それで今の君はソウルを内に秘めてはいるが、器に穴が空いている状態だ。そのままだと死んでしまうのでね……代わりにこれを外殻とすることで君のソウルを保護することが出来る」
気づくと己はソウルの器とやらの中に居るようだった。意識のみがあって、それ以上も何も無いが。声だけは何故か聞こえる。
「それで後はこれをこの骸骨にセットすれば君は新たに骨となった不老の肉体……いや、肉体はおかしいか……そう、そう!体が手に入る!オホン、気にしないでくれたまえ。かれこれ数年は生身の人間と話したことがないんだ、君が相対していた俺はただの機械だから、カウントはしないでおこう」
己が浮く、いや持ち上げられたのだろうか?
「でだ。君を体にセットして終わり……というのも味気ない。そこで君にはプレゼントを用意してある」
プレゼント……?
「今まで私が犠牲にしてきた人間達のソウル、その断片を注ぎ込んでみようと思う。君のソウルは外殻が無い状態だったせいで減っているしね、丁度いいだろう?」
あぁ、確かにソウルは足りていない。器の中でちゃぷんと音が鳴る程度には隙間ができている。もはや今の己には抵抗する術がないし、するような感情すらない。その補填ができるのならば──問題なし。
「合意は得られたということで早速──」
その前に。
「ん?何かな?」
一体何人分なんだ?
「……ざっと数えて、3000人より上かな?赤子から抽出した分とか含めればそこまでいくね」
……そうか。
「じゃあ入れてくね、彼らが残してくれたソウルはほんの微量だ、問題なく全て入るだろうさ。君なら自我も残ったままで居られるだろう、だって……3人目のケツイのソウルを持つものだからね。じゃスタート」
ソウルの器が何かに嵌められる感覚がする、蓋が開けられる感覚がする。
───────────混ざるような、感覚が──する。何人モノ記憶が混ざり込む。
あ あ あ あ あ あ あああ あ ああああああああああ あああああああああ!!!!!!
【記憶が混ざる】
【
【こいつを殺したいと思った】
カタと音を鳴らして立ち上がる。四肢は問題なく動き今まで身を横たえていた場所から降りる、視線を後ろへと移せばそこには手術台のようなものがあり、血まみれになっていた。ただ既に乾燥しきっているので手術(?)後からしばらく時間が経っていることが伺えた。それと手術台以外物がなかった、機械もなく恐らくアレが回収したのだろう。
次に本来なら心臓がある場所へ視線を向ける。そこにはやはりと言うべきか器があった。ソウル、それが俺の今の全てだ。色は赤をベースに所々斑点のように色が変化している。青、黄、緑、オレンジ、水色、紫。他にもピンクや、白、黒といった色も混ざっている。数多の人間のソウルとやらが混ざっているのは間違いなく、記憶には知らないけど知っているという奇妙な感覚がある記憶が存在していた。
「は」
その様子に自嘲するように息を吐き出すと音が出た。思わず手を喉元にやるもそこには骨しかなく。再度息を出すように喋ると──
「あ」
出た。喋れる、もう二度と喋れないのだと思っていたのに、喋れるのだ。これもソウルとやらの力か。
「あいうえお」
喉の調子を確かめながら出す。なんというか機械音声のような感じになっている。生身の時とは全然違う声だ、これも混ざった影響だろう。
次に部屋の様子を見る。全体的に血なまぐさい匂いがしていて、ホラー映画の様相だ。手術台にのみライトアップがされていて、視線を部屋の奥へ向かわせても暗くてあまり見えない。一応ドアらしきものがあったのでそちらへ向かう。
「開く、か」
問題なく開く、少しだけ開いたドアの先を見やるとどうやら明かりがあるようで多少見やすかった。ただ電球が切れかけているのか不定期に光が消えていた。
少し動きを止めて聞き耳を立てても……何かしらの音もなし。これで隠れている奴がいるとかだったら終わりだが、一応問題なさそうだ。
ドアを開けて視界に入る光景は、アパートかマンションの中だろうか。非常に荒廃しており足元にはよく分からない布の残骸や金属の棒などが落ちている。己が今まで居た場所はマンションの一室であったのだろう、なら外に出る事は可能だろうな。
出口を求めて歩き出す。階段を見つけることが出来た、その隣には一応エレベーターがあったがやはりと言うべきか電気は通っていないので動くことは無いだろうな。
コツコツと、自身の足の骨から鳴る音が響く。時折チューチューという音が聞こえるから鼠なども居ることは分かるが、それ以外は特になんの音もない。
しばらく降りていると1階にたどり着いた。そこは先程と変わらず荒廃している、ただ先程以上に荒れている。土なども散乱しており時折靴跡らしきものが見えるので人が出入りしていることが伺える。まともな人間ならここには来ないだろうな、そう思えるほど荒れている。ロビーに辿り着いたので外の様子を見ようと今や止まってガラスが割れている自動ドアへと歩みを進め──違和感がそこにあった。
ここまで降りてくる上であらゆるものが乱雑に置かれていたはずなのに、それらだけは丁寧に折り畳まれて置かれている。机もどうやら新品らしく綺麗で、今この空間においては場違いな物だ。
机に近づき上に乗っているものを確認する。何かしらのファイルと上下の服……それとピンクのスリッパ、だろうか?何故スリッパなんだ。とりあえず服を着ることにした、幾ら骨になったと言えど多少の羞恥は残ってい──いや、糧となった彼らが補ってくれたと言ったところだな。
白地のシャツに、縦に白線が入った黒のズボン。それに青色のパーカーだろうか、何故か妙にしっくりくる。最後にピンクのスリッパを履いて終わり、少し軽めに動いてみても違和感は無い……いや、スリッパはなぜずり落ちない?少し奇妙ではあるが今更奇妙なことが増えても気にすることでもなし。
「後はファイルの中身か」
ファイルを手に取りぱらりと中身を軽く流し見するように開く。あまりよく分からないことばかり書いてあるが要約すると、
・被検体(恐らく己の事)はモンスターと人との中間の存在
・被検体は魔法で重力や短距離転移やマークをつけた場所への長距離転移が可能
・被検体は魔力を直接骨に変換することが可能
・被検体には専用装備[ガスターブラスター]が配備される。
・[ガスターブラスター]は被検体の魔力を用いることで無限に増える事が可能
・感情が強ければ魔力は高まる
・便宜上魔力と言っているが魔力なんて言うものは存在しない。一種の基準である。
……随分とファンタジーだな。しかし魔力なんてないと言っているが、便宜上魔力と呼ぶのか。
あと直接骨に変換することができるとはどういうことだろうか。後で検証してみよう、ガスターブラスターとやらも気になるところだ。
最後に、ページの一番後ろを開く。そこに書かれていたのは己の名前だろうか、既にこの身が人ではなくなっているから別名義を欲していた。丁度いいこの名前を頂くとしよう。
「今日から俺は──オイラは