カロリーを消費して戦う女の子って良いよね。   作:H-13

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八百万千の代わりに誰かを外すことも考えましたが、原作20人は変わらず在籍させることにしました。




第3話

雄英高校ヒーロー科A組出席番号20

 

それが八百万千の学生証に書かれた情報である。八百万百は出席番号21。つまり席順が順当ならば百は千の背中を物理的に見て生活する日々をある程度は送ることになりそうだ。

 

ギリギリに起きてトーストを口に咥えながらの電車通学…そんな学生らしい通学は、当たり前ながら八百万家には無いものである。

 

成金坊っちゃまがリムジンで正門の前に横付けする様な品の無い登校はしない。事前に話を通した上で裏口を空けておいて貰い、目立たない防弾設備バッチリの魔改造一般車での登校。下校時も来賓用の広い駐車場スペースの一角を一時的に借り、運転手が二人の帰りを待つ。そんな毎日になる予定だ。

 

百は右顬辺りから飛び出る特有の髪の毛と重力に逆らう扇の様に広がった毛先。

 

千はシンプルにザックリと短くした上にウルフカットが施された涼し気な見た目。

 

共に艶のある真っ黒な髪と手入れされた肌。千よりも百の方が洗練されているのは仕方の無いことだろう。

 

入学式にガイダンス。今日の予定はそれだけだ。広い敷地は慣れているが脚を踏み入れたのは今日が2回目。学生証と同じく事前配布されていた地図を片手に漸く彷徨えば、時間に余裕を持ちながら『1-A』の教室を発見できた。

 

180を超える身長を持つ千ですら手を伸ばし背伸びをして漸く入口枠に手が届くバリアフリーサイズ。感心しながらガラガラと入口を開けば、既に登校して居る5.6人の瞳が反射的に二人に注がれた。

 

「おはようございますわ。」

 

無言で脚を踏み入れた千と違い、百が一言。それだけで皆からのおはようの言葉と、席から軽く腰を上げる者まで現れる。

 

「おはよう、これから宜しく。」

 

簡潔に、必要な言葉を並べる千。人付き合いが苦手であったり、何かある訳では無い。ただ、緊張しているだけなのだ。

 

「俺は尾白、尾白猿夫。こちらこそ宜しくな?…えーと………」

 

「八百万千だ。こっちは百。双子でね。」

 

「双子で雄英ヒーロー科!?凄いなぁ。ンン、百さんも宜しくね。…千さんってさ、何か武術やってるよね?気配?オーラみたいなモノ凄くて。」

 

「琉球空手を少しだけな。」

 

「少しでこうはならないでしょ。あんまり詳しくない俺でも分かる。……初対面で不躾だけど、手…見せてもらってもいいかな?」

 

「手ぐらい幾らでも見せるが……楽しいのか?」

 

「とても!」

 

キラキラとした少年の瞳が部位鍛錬により硬く、太くなった指や拳に注がれる。男女の会話というよりも武術家同士の会話。自己紹介を貰った時にチラリと視たが、いい体幹と身体をしているのは見て取れた。大きく揺れる尻尾が個性なのだろう。良く鍛えられている。

 

荷物を勝手に千の分まで置きに行っていた百は、蛙の様なシルエットの女の子と話す様子が目端に写る。

 

「どんな鍛錬をしたらここまで……?」

 

「私の個性は自己強化系の癖に耐久性だけは上げてくれないクソ仕様だ。その代わり再生能力があるんだが…まぁ、単純に言えば部位鍛錬で無理やり拳を粉砕して個性で再生しながら鍛えた。」

 

「やば。」

 

「まぁ、言葉だけで分かるやつには分かるだろうな。幸い外傷は殆ど消えている。太い骨もこの拳も嫌いじゃない。」

 

実に語彙力が無くなっている尾白の呆けた様な返答には、大きな頷きと共に言葉を返す。

 

最初は酷いものだった。個性をほんの少し解き放つだけで筋肉がちぎれる。骨が砕ける。内蔵に折れた骨が突き刺さった回数は最早覚えていない。飯を食って、身体をぶっ壊して再生して。また飯を食う。ため込めるカロリーのキャパも今よりずっと少なかった。吐きそうだった。だけれど一度胃に入れてしまえばきちんとカロリーに変換してくれるいい身体だ。血と胃液が混ざったものならば何回も吐いたが、食べた飯を鍛錬で1度も吐いたことは無い。

 

 

さて。

 

 

遅刻しない時間帯に教室に到着しただけで、もう直ぐ集合の時間である。千と尾白も含めて思い思いの面子でわいわいガヤガヤと騒がしくなる教室。

 

…ん?と千が教室前の扉辺りを見やる。あの男いつ入って来た?

 

「友達ごっこがしたいなら他所へ行け。ここはヒーロー科だぞ。」

 

鍛え上げられた隠形。多くのことを学べると言っていた師の言葉は間違っていなかったらしい。

 

「席について静かになるまで9秒掛かりました。合理性に欠けるね。」

 

「俺は相澤消太。1-Aを担当することになる。宜しくね。…それじゃぁ早速、コレ着てグラウンドに出ろ。多めに見て15分な?」

 

 

 

寝袋の中から取り出した生暖かそうな体操着を見て千は判断を早まったかと一瞬だけ思ってしまった。

 

 

 

「これから個性把握テストを行う。」

 

 

「個性把握テストぉぉ!?!?」

 

「入学式とガイダンスだったよね今日!?」

 

 

「そんな暇ある訳ないでしょ。雄英高校は自由が売り。俺たち教師側も然りだ。」

 

 

相澤先生の口が止まることはなく個性禁止の体力テストへの不合理さを愚痴りながら、ホログラムに映るのは何処の中学でもやったであろう普通の体力テストの数々。

 

「八百万、…あ~千、ボール投げの最高記録は?」

 

「92」

 

「個性使って投げてみろ。」

 

 

投げ渡されたボールの感触を片手で感じながら白円の中に入る。何処からか舌打ちが聞こえてきたが意図的に無視して、全身に個性を巡らせる。

 

『個性解放40%』

 

抉れる足元。残像が見える程に靱やかで力強いフォームで投げられたボールは一気に加速して飛んで行く。

 

相澤が手元の計測器に刻まれた数値を皆に見せる。「784m」

 

 

個性無くては出る事の無い大記録にまたわいのわいのと盛り上がる生徒達。されど、面白そうという中学生を引き摺っている言葉が出た瞬間に、また先生の雰囲気が変わる。

 

「ヒーローになる為の3年間をそんな温い精神で過ごすつもりか?では…トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し除籍処分としよう。」

 

 

理不尽の権化である。敷地内に足を踏み込んでまだ2時間と経たないのに、荷物を纏めて1人帰らせられる事実。

 

最下位になるつもりは毛頭無い千ではあるが、この調子で行けば卒業出来るのは5人か、10人か。相澤消太がガチで言っていることを肌で感じ取っているからこその武者震い。

 

「八百万は抉れた所直しておけ。他は出席番号順に50m走からやるぞ。」

 

こうしてヒーロー科B組及び他学科の生徒が入学式を取り行っている時間でA組の個性把握テストが行われた。

 

 

 

 

 

 

 

「除籍云々は君たちの全力を引き出すための合理的虚偽だ」

 

各競技の記録を元に点数として可視化され、それを元にした順位がホログラムによって可視化された。

 

嘆く者、歯軋りをして千を睨み付ける者。立場は分かれどもこうして21名の生徒が今後雄英高校ヒーロー科1-Aとして活動していくこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

八百万千

50m走:3.97秒

握力:866kg

立ち幅跳び:12.50m

反復横跳び:72回

ボール投げ:784m

上体起こし:67回

前屈:69cm

1500m走:八百万百と同率一位

 

総合1位

 

八百万千の体重は個性把握テスト開始時100kg前後であり、カロリーを溜め込めていた場合全体的に記録が伸びた可能性がある。

 

 

 

 

 


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