軍本部に到着すると、三人はジュリ達に付いていった
「はぁ……完全に、俺達が知ってるオーブだよ」
「ああ……」
「すげぇな」
と三人が感嘆していると、ある大きなドアの前に到着して
「ここに、ウズミ様達が待っているわ」
とアサギが言うと、マユラがノックして
「ウズミ様。三人をお連れしました」
と言った
『入りなさい』
「失礼します!」
ドア向こうから促されて、アサギは入ってから敬礼した
それに続いて、マユラとジュリ、カオルが入り、最後に三人が入った
部屋の奥
大きな机の向こう側に、その男性は居た
白髪混じりの髪に、蓄えられた顎髭
何よりも、優しさと強い意思を兼ね備えた瞳
オーブ連邦首長国代表、ウズミ・ナラ・アスハ。その人だった
「ウズミ様……」
「久しいな……君たち」
ウズミがそう言うと、三人は頷いてから
「はっ……自分達としては、大体一年半ぶりです」
「まさか、お会い出来るとは思いませんでした……」
「本当に……お久しぶりです」
と涙を滲ませながら、ウズミに一歩近づいた
すると、ウズミも机を回って三人に近づき
「私もまさか、この世界で君たちに再会出来るとは思っていなかったよ」
と言いながら、ウズミは三人と順番に握手した
そして、ウズミに促されて三人は部屋の中央の応接ソファーに座った
そして、三人の反対側にウズミとカオルが座り、アサギ達はウズミ達の背後に立った
「まず話しに先立って、君たちに是非会いたいという人物が居る」
ウズミがそう言うと、三人は眉をひそめて
「自分達に会いたい人……ですか?」
と直哉が首を傾げると、ウズミは背後に立っていたアサギに顔を向けて
「彼を呼んでくれ」
と言った
すると、アサギは頷いてから入ってきたのとは別のドアに向かって開き
「入ってください」
と入室を促した
そして入ってきた人物を見て、三人は口を開いて固まった
入ってきたのは、短く切りそろえられた金髪に、右目辺りにある火傷が特徴の男性
その名も、グラハム・エーカーだったからだ
「え、エーカー少佐!?」
三人が驚愕で立ち上がると、グラハムは肩をすくめながら
「オーブでは、三佐と言うそうだ」
と言った
すると、三人は敬礼しながら
「失礼しました。エーカー三佐!」
と謝罪した
グラハムもそれに対して返礼すると、ウズミの隣に座って
「しかし、この世界で君たちと再会出来るとはな……乙女座の私は運命を感じずにはいられんよ」
と言った
相変わらずの言い回しに、三人は笑みを浮かべた
そして、三人は改めてソファーに座った
「それで、お話とは一体?」
直哉が問い掛けると、ウズミは頷いて
「君たちは、今のこの世界の有り様をどう思うかね?」
と三人に問い掛けた
三人は数秒間沈黙すると、代表してか直哉が
「女尊男卑によって、酷く歪んでいると思います」
と告げた
ウズミは直哉の言葉を聞いて、頷くと
「ISの登場により、世界はこぞって女性優遇制度を設けた……確かに、それによって女性の立場は上がったかもしれん……だが、今度は男性が蔑まれるようになってしまった……」
ウズミはそこまで言うと、窓の方に視線を向けて
「男だから、男が作ったから……そういった理由で意見や発明が否定されて、理不尽な理由で職を失う者も多く居る」
ウズミの言葉は事実だった
ISが登場して、早十年
女性優遇制度もあって、女性の就職率は飛躍的に高まった
だが反対的に、男性の失職率も飛躍的に高まっている
その理由の大半が、上司になった女性が気に入らないという理由でクビにしているのだ
それにより、路頭に迷ったり、犯罪に走る男性が急増している
「だから我々オーブは女性優遇制度を設けず、そういった男性達や女性優遇制度に馴染めない女性を受け入れている」
それは、事前に情報収集をしたので三人も知っている
オーブはこの世界で唯一、女性優遇制度を設けていない、むしろ禁止している国である
それが理由なのか、度々女性権利団体が抗議しに来るが、全て言いくるめられて帰っている
閑話休題
「そして私は近い将来、ISが原因で戦争が起きると予想している……」
ISが原因の戦争
それは、三人も予測していた
失職した男性達が、男性権利の復活を理由に暴動を起こした例すらある
「だからこそ、私は戦いに備えた……戦いたくはない。だが、だからといって、戦いを否定するのも、愚かだ……」
ウズミはそこまで言って、視線を三人に戻した
「そこで、君たちに頼みがある」
「自分達に頼み……ですか?」
ウズミの言葉に、三人はクビを傾げた
三人としては、ウズミの頼みというのが予想出来ないのである
ウズミは三人をジッと見てから
「オーブに力を貸してはくれまいか」
と言った
予想外の言葉に、三人は目を見開いた
「なぜ、我々に?」
一夏が問い掛けると、ウズミが
「オーブには優秀なパイロットが少ない……それに、不安要素がある」
ウズミはそう言うと、背後に立っていたアサギに視線を向けて頷いた
すると、アサギも頷いてからウズミの机に向かって、机の上から茶封筒を持って戻ってきて
「これを」
と直哉に渡した
「拝見します」
直哉はそう言うと、茶封筒を開けて中から書類を取り出して眺めた
「
直哉達が書類を眺めながら呟くと、ウズミは頷き
「女性優遇制度が広がっているこの時代に、何を考えてテロ組織に居るのかは分からないが……彼女たちは世界中からISを奪っている。最近では、イギリスから最新鋭機のサイレント・ゼフィルスを奪っている」
ウズミが言ったIS強奪は、書類にも書かれてあった
アメリカからは、第二世代のアラクネを奪っていて、他にも世界中から奪っていることが書かれてあった
「もちろん、タダでとは言わない……まず、君たちにはオーブ軍の特佐の階級を用意できるし、君たちの機体の部品を供給する用意もあるし、君たちのバックボーンにもなろう」
その提案は、三人にとって魅力的だった
三人は二年振りに帰ってきたばかりで、記録や活動の為の基盤が不足している
もし、自分達の機体データが何らかの方法で奪われた場合、三人は奪った国を攻撃する覚悟はある
だが、バックボーンの有る無しでは、成功率や色々な面で有利に働く
それに何より、三人はこのオーブを守りたいと思っていた
まず、ジェネレーションワールドでは一度、自分達の力不足もあって、オーブを守りきれなかった
それに、軍本部に来る途中で見た街中は笑顔に溢れていた
日本ではなかなか見られなかった、女性も男性も関係ない幸せそうな笑み
「……此方からも、提案があります」
「なにかね?」
「自分達の機体データを、公開しないでほしいんです」
直哉はそこで一旦区切ると、ウズミを見つめて
「自分達の機体ははっきり言って、オーバーテクノロジーの塊です……特に、動力機関はその最たる物。もし公開されたら、何が起きるかわかりません。ですから、情報を秘匿してほしいんです」
GNドライブ、常温核融合炉、熱核融合炉
これだけでも、今の世界の技術を越えている
もしそれらを手に入れた場合、世界各国はすぐにISに転用するか、兵器に転用し、下手したら戦争に発展するだろう
三人はそんなことを、望んでなどいなかった
直哉の提案を聞いて、ウズミは頷き
「それは構わない……私も、無用な争いは避けたい」
と承諾した
それを聞いて、三人は互いに顔を見合わせてから立ち上がり
「我々、フリーMS部隊スピリッツ所属、トライアド隊は、オーブ代表、ウズミ・ナラ・アスハ殿の依頼を引き受けます!」
と言いながら、一糸乱れぬ統率で敬礼した
直哉達のその言葉を聞いて、ウズミは満足そうに頷き
「ありがとう……君たちならば、安心出来る」
と言った
「微力ながら、オーブに尽くします」
三人はそう言うと、再びソファーに座った
そして、この後にウズミから依頼料として、三人がオーブに居る時は最大級のもてなしと、オーブ内ではあるが、エレカーの免許証の配布や、特佐の階級。三人の機体の互換部品の供給。そして何よりも、特佐階級に相応しい給料が払われることになった
ふふふ……
予測できなかったでしょ?
彼が出るとはね!