鈴が編入してきて一週間が経った
その日の放課後
「あたしと部屋、代わって」
鈴は一夏達の部屋にやってくるなり、そう切り出した
鈴の言葉を聞いて、箒は頬をヒクつかせながら
「……理由を聞こうか」
と問い掛けた
すると、鈴は得意気に
「箒が一夏の幼なじみって理由で同じ部屋ならさ、アタシにもその権利があると思うのよね」
と言った
それは今から少し前
一夏達がセシリア達と一緒に訓練して終えた後に、一夏が
『さてと、箒帰るぞ』
と言ったのを、鈴が聞いて
『今の、どういう意味よ?』
と一夏に問い掛けた
すると、一夏は不思議そうにしながら
『俺と箒が幼なじみだからか、寮だと同じ部屋なんだよ』
と答えた
すると、鈴はこめかみに血管を浮かばせて
『幼なじみだったら、いいわけね?』
と言うと、脱兎の如く走り去った
それを一夏達は首を傾げて見送ると、帰路についた
そして、今に至る
「で、どうなの?」
鈴が再び問い掛けると、箒を額に人差し指を当てながら深々と溜め息を吐いて
「私達の一存で代われる訳がないだろう……ここの寮長の許可を得たら、代わってやってもいい」
その箒の言葉を聞いて、鈴はニッと笑みを浮かべて
「OK、待ってなさい! すぐに許可を貰ってくるわ!」
と言うと、部屋から出ていった
一夏はそれを見送ると、箒に視線を向けて
「お前……何気に酷いことを言ったな。千冬姉が許可するわけ無いだろ」
と言った
何しろ、一年生寮の寮長は一夏の姉
織斑千冬なのである
一夏の言葉を聞いて、箒はフッと笑って
「ああ……だから言ったんだ」
と言った
その直後、何処からか悲鳴が聞こえてきて、一夏と箒は合掌した
そして約一時間後、巡回していた山田先生が寮長室の前で無残に倒れている鈴を発見
その後、鈴はあてがわれた部屋へと搬送された
そして時は経ち、二週間後
一夏はアリーナのピットに居た
理由はこれから行われる戦闘
学年別クラス代表戦の為である
クラス代表戦はその名の通り、各クラスのクラス委員同士の一対一による戦いである
そして、このクラス代表戦はトーナメント形式で行われ、優勝したクラスには、豪華な景品が与えられるのだ
そして、一夏はパイロットスーツに着替えると、ピットの壁に背中を預けて目を閉じていた
すると、直哉が
「一夏、時間だ」
と告げた
「あいよ」
直哉の言葉を聞いて、一夏は軽く勢いを付けて姿勢を直すとカタパルトに歩き出した
その直後、一瞬にして機体を展開
そして、カタパルト台に足を固定した
すると、箒が近寄って
「一夏……勝ってこい!」
と激励した
一夏は右手の親指を立てると、スキージャンプのように膝と腰を曲げて
「織斑一夏、ダブルオーライザー・セブンスソード……行きます!」
と言うと、カタパルトの勢いを使って空へと飛び立った
そしてアリーナの中央付近には、一夏の初戦の対戦相手
鈴が居た
鈴が纏っているのは、中国の第三世代IS
肩らへんに二つの
「こうして一夏と戦うのって、初めてよね」
「ああ、ISを使って戦うのはな……」
鈴の言葉を聞いて、一夏は頷きながら肯定した
ゲーム等では何回か戦ったが、ISを使って戦うというのはいくら何でも初めてである
そして、一夏と鈴が武装を構えた直後
『試合開始!』
ゴングが鳴り、一夏と鈴は同時に動いた
鈴は両手に持った青竜刀を同時に繰り出し、一夏はそれを右手のGNソードⅢで受け止めると、膝蹴りを鈴の腹部に叩き込んだ
「ガフッ!? っ……のぉ!」
鈴は強制的に息を吐き出されたが、すぐに右手の青竜刀を横凪に振るった
だが、一夏はそれを側転の要領で避けると同時に回し蹴りを放った
鈴はその蹴撃をなんとか左手の青竜刀で防ぐが、威力に負けて吹き飛ばされた
それで一気に距離が開き、鈴はその間に呼吸を直しながら、内心で舌を巻いていた
(一夏……強過ぎる!)
鈴は一年前に中国に帰国した後、僅か数ヶ月で代表候補生になり、それと同時に専用機が与えられた正しく天才児である
だが、そんな彼女にとっても、一夏は格上の相手だった
何時もだったら、相手に勝つビジョンが浮かび上がる
だが一夏相手では、そのビジョンが全く浮かばなかった
(それに、一夏が使ってるのって……ガンダム……だよね?)
鈴は一夏達がガンダムにハマっているのを知っており、対戦ゲームで何回か戦ったことすらあった
だが彼女が知る限り、ガンダムはアニメやゲームといった、所謂二次元の話であった
しかし、今の一夏が纏っているのは確かに、ガンダムタイプだった
(一体、二年の間に何があったの……)
鈴はそう思うが、すぐに気を持ち直して
「中々強いわね……でも、私だって負けないわよ!」
鈴はそう言うと、一夏を睨んだ
その時、一夏は嫌な予感がして右半身になった
その直後、一夏の背後の地面に見えない何かが当たり、土煙が起きた
「今のは……」
「よく避けたわね」
一夏が驚いていると、鈴は笑みを浮かべた
「こっからは、本気よ!」
鈴はそう言うと、両手に持っていた青竜刀を連結させて、バトンのように回して一夏に迫った
場所は変わって、ピット内
「今のはなんだ!?」
「今のは、中国の第三世代武装、衝撃砲ですね」
箒が疑問の声を上げると、それに答えたのはセツコだった
「衝撃砲?」
「空間を圧縮し、その衝撃を砲弾として放つんです。衝撃故に、目視は不可能。しかもあの様子ですと、砲撃はほぼ360度撃てるみたいですね」
虚が説明すると、箒は目を見開いた
「なんだと……」
箒が俯くと、直哉がモニター画面を見ながら
「よく見ろよ……当たってるか?」
と言うと、箒は視線をモニター画面に向けた
そこでは、鈴の衝撃砲を一夏は全て避けていた
再び変わって、闘技場
「どうして当たらないのよ! この《龍砲》は見えない筈よ!」
鈴が苛立った様子でそう言うと、一夏は避けながら
「そんな闘気丸出しで撃ったら、避けるのは簡単さ……幾ら見えないとはいえ、所詮は直線的にしか放たれない……つまり、闘気が強くなった瞬間に動けばいい」
一夏はそう言うと、右手のGNソードⅢを構えて
「鈴、少し本気で行くぞ……」
と言うと、一気に距離を詰めた
鈴は衝撃砲での迎撃は無理と判断して、青竜刀を構えた
次の瞬間、一夏は《ソレ》を感じ取り、攻撃を変更
鈴を蹴り飛ばすと、自身もその勢いを使って一気に離れた
「くっ……!」
鈴がなんとか態勢を立て直した直後、アリーナのシールドバリアーを突き破って、先ほどまでいた場所に極太の赤黒いビームが降り注いだ
「なっ!?」
「この粒子ビームは!?」
鈴は純粋に驚愕の表情を浮かべ、一夏は驚愕の表情を浮かべながらも視線を上に向けた
すると、穴の空いたシールドバリアーを通って、十数機の機体がゆっくりと降りてきた
これが、一夏達の戦争の幕開けだった