ISGジェネレーション   作:京勇樹

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前哨戦

直哉達が出撃する少し前、アリーナでは

 

「なんなのよ、アイツら……入ってきたってのに、何もしないなんて……」

 

と呟いたのは、一夏の隣に移動した鈴である

 

鈴の視線の先には、現れたジンクス15機と、ガンダムスローネの3機がジッと宙に浮いていて、その静寂が不気味だった

 

「鈴、下がれ」

 

鈴が構えていると、一夏が淡々とした口調でそう言った

 

すると、鈴はジンクスやスローネに視線を向けたまま

 

「なに言ってんのよ! アンタが下がりなさいよ!」

 

と一夏に言った

 

だが、一夏はGNソードⅢを展開しながら

 

「はっきり言って、邪魔なんだよ……それに、SEだって少ないだろう?」

 

と言った

 

一夏に邪魔と言われて、鈴は傷付いたが、SEに関しては当たっていた

 

僅か数回の攻撃で、鈴のSEは半分を割っていた

 

「だからって、アンタ残して引けるわけが!」

 

鈴は反論するが、一夏は気にせず

 

「来たか」

 

と言った

 

その直後、一夏が出てきたピットのハッチが吹き飛んだ

 

「なに?!」

 

鈴が驚いて視線を向けると同時に、煙を突き破って直哉達が出撃してきた

 

「一夏、大丈夫か?」

 

「ああ……どういう訳か、アイツら攻撃してこなかったからな」

 

直哉が問い掛けると、一夏は淡々と答えた

 

「そうか……一夏、リミッターの解除許可が降りた」

 

「了解……リミッター解除!」

 

一夏がリミッターを解除した瞬間、機体の駆動音が高い音に変わり、更には両肩のGNドライブから大量のGN粒子が吹き出し始めた

 

その光景を見て、鈴は驚いた表情を浮かべて

 

「リミッターって……どういうことよ?」

 

と呟いた

 

しかし直哉は、その呟きを聞き流して

 

「鈴、あのピットまで引け」

 

と、自身達が出撃してきたピットを指差した

 

「ちょっ!? アンタまで何言ってるのよ! 相手の方が数が多いじゃない! だったら、一人でも多く居たほうが!」

 

直哉の言葉を聞いて鈴が抗議するが、直哉は僅かに視線を向けて

 

「鈴、さっきのビームを見てなかったのか?」

 

と問い掛けた

 

「どういうことよ?」

 

質問の意図が分からないのか、鈴は首を傾げた

 

すると、直哉は今も空いているバリアーの穴を指差して

 

「さっきのビーム……アリーナのバリアーを易々と貫通してきたんだぞ?」

 

と告げた

 

「だから、それがな……っ!」

 

途中まで言いかけて、鈴はようやく察したようだ

 

アリーナのバリアーは、ISの絶対防御と同等の防御力を誇っている

 

そのバリアーを貫通してきたということは、《ISの絶対防御すら貫通する》ということだ

 

そして、絶対防御が有ったからISはパイロットの安全性を保証してきた

 

その絶対防御すら貫通するということは、パイロットの命の保証はないということである

 

それを理解して鈴が固まっていると、直哉がもう一度ピットを指差して

 

「早く引け、死にたいのか?」

 

と言うと、鈴は機体を翻してピットへと向かった

 

そのタイミングで、ジンクスに動きがあった

 

「直哉、来るぞ!」

 

カオルがそう言うと、直哉は視線をジンクスに向けて

 

「この戦いは乱戦になる……IFFは切っておけ」

 

と告げた

 

「「「了解!」」」

 

「り、了解!」

 

直哉の言葉を聞いて、一夏、弾、ジュリの三人は躊躇いなく頷くが、カオルは僅かに動揺していた

 

IFF

 

正式名称は、敵味方識別装置

 

これは、各機体から発されているビーコンから、戦域にいる機体の内、どれが味方か敵なのかを識別するための装置である

 

そしてこの装置があると、もし自機の攻撃の射線上に味方が居ると、味方誤射を防ぐために攻撃が出来ないようにする働きもあるのだ

 

そのIFFを切るということは、味方が射線上に居ても攻撃が可能となり、《味方誤射の危険性が飛躍的に上がる》ということだ

 

その事を意識して、カオルの呼吸は荒くなった

 

すると、ジュリが近づいて

 

「カオル様、彼らを信じてください」

 

と言ってきた

 

「ジュリ……」

 

「彼らは幾度となく、死線をくぐり抜けてきました。その戦いの中で、彼らは何回も乱戦を経験し、その全てを生き残ってきました……それに、この程度の数の差は、彼らにとっては大した脅威ではありません……一年戦争、星の屑戦役、そして、第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦……その全ては、今以上の数の差でした。ですが、彼らは生き残ってきました……その彼らを信じてください」

 

ジュリが言い終わると、カオルは少ししてから

 

「分かった」

 

と頷いた

 

そして、カオルとジュリが視線を向けると、15機のジンクスがバリアー付近から一夏達と同じ高度まで降下し、ビームライフルを構えた

 

その直後

 

「全機散開《ブレイク》!」

 

と直哉の号令が響き渡り、それと同時に一夏達は全員バラバラの方向に離れた

 

その直後、先ほどまで各員が居た場所に赤い閃光が殺到した

 

場所は変わって、ピット内

 

そこでは、箒達が備え付けられているモニターで、一夏達の戦いを見ていた

 

「動きが速い……」

 

「普段とは桁違いですわ……」

 

「凄い連携ですね……」

 

簪やセシリア、セツコ達はモニターに映っている戦闘を見て、素直に感嘆していた

 

だが、箒は拳を強く握り締めて、自身を強く自制していた

 

本当ならば、今すぐにでも何らかの方法で応援したい

 

だが、以前に一夏から『何か気に入らないことがあっても、深呼吸して、落ち着いて考えろ』

 

という言葉が脳裏によぎった

 

だから箒は、一回大きく深呼吸をして

 

(別に応援ならば、どこでも出来る……だから、私は一夏を信じる! 一夏を信じて、ここで待とう!)

 

と決意すると、モニターに視線を向けた

 

そのタイミングで、甲龍を解除した鈴が駆け寄ってきて

 

「一夏は……一夏は大丈夫なの!?」

 

と声を上げた

 

「む、鈴か……一夏ならば大丈夫だ」

 

箒はそう言うと、モニターを指差した

 

箒に言われて鈴が視線を向けると、丁度一夏のダブルオーライザー・セブンスソードが一機のジンクスを真っ二つにしていた

 

そんな一夏機を一機のジンクスがライフルで狙うが、それは弾のビームライフルによって撃破された

 

更に、その弾機に一機のジンクスが、ビームサーベルを抜いて接近してくるが、それは直哉の機体のライフルによって撃破された

 

それらの連携に、鈴は凄い……と呟くが

 

「アイツら……人が乗ってるのに、平気で……」

 

と言葉を失っていた

 

なにせ、彼女達が知る限り、ISというのは人が乗らないと動かないからだ

 

その時

 

「……あの敵機……無人機みたいだよ?」

 

そう言ったのは、いつの間にかハッチ付近から外を見ていた簪だった

 

「無人機ですか?」

 

虚が驚いた表情でそう言うと、簪は頷いて

 

「あの敵機から、生態反応が確認されない……間違いなく、無人機」

 

と言った

 

「だけど、無人じゃあ動かせない筈よ!?」

 

鈴がそう言うと、セシリアが

 

「ISはまだ、未完成の技術の塊ですわ……どこかの誰かが、無人機システムを開発しても、おかしくはないですわ」

 

と語った

 

そんな間にも、一夏達は見事な連携でジンクスを次々と撃破していった

 

だが、そんな中で、一夏と直哉が、お互いの背後に居たジンクスをお互いにビームライフルを向けて撃破した

 

それを見て、箒達は目を見開いた

 

「待って、IFFはどうしたのよ! IFFが機能してるなら、攻撃出来ない筈よ!?」

 

「確かに……今のは、完全に互いに背後の敵でしたね」

 

鈴が驚愕していると、虚が同意した

 

「IFFはカットしたみたいですわね」

 

「ええ……こういう乱戦下では、邪魔だと判断したんでしょう」

 

セシリアの言葉に、セツコが同意を示した

 

そんな間にも、今度は直哉の背後に居たジンクスを弾がビームライフルで撃破した

 

それを見ていた簪が

 

「明らかにお互いを信頼し、動きがわかって動いてる……あんなの、実戦を積まないと無理……」

 

「実戦だと?」

 

簪の言葉を聞いて、箒は簪に視線を向けた

 

すると、簪は無言で頷いてから

 

「殺し合い……まさしく、命懸けの戦い……」

 

と言った

 

簪の実家

 

更識家は、《対暗部用暗部》という、日本を裏から支えてきた古くから続く家柄である

 

そしてそんな家柄故に、更識家は幾たびも危険な戦いを潜り抜けてきた

 

それは、簪や簪の姉

 

現更識家頭首

 

更識楯無も例外ではない

 

だから簪には、直哉、一夏、弾の三人が戦場を駆け巡ったのが分かった

 

そして、戦っているのはなにも、直哉達三人だけではない

 

三人には劣るが、カオルとジュリの二人もジンクス相手に善戦していた

 

カオルはその手に持った日本刀

 

ガーベラストレートでジンクスを真っ二つにし、ジュリはそんなカオルを撃とうとした一機のジンクスを両手に持ったビームライフルとビームマシンガンで蜂の巣にした

 

そうやって五人は次々とジンクスを撃破していき、あっという間にジンクスは全滅した

 

それは、管制室でも見ていた

 

「凄いですね……あっという間に、15機全て撃破しましたよ」

 

「ああ……だが、まだ三機残っている」

 

千冬の視線の先には、今まで静観を保っていた三機

 

ガンダムスローネの姿があった

 

千冬は、それぞれの機体をジッと見つめて

 

「あのダークブラウンは遠距離型で、オレンジは近接型。ワインレッドは、さしずめサポート型と言った所か」

 

とそれぞれの機体の特性を把握した

 

そして、千冬の見立ては正解だった

 

ガンダムスローネアインスは、遠中距離を重視した機体で、ガンダムスローネツヴァイは白兵戦を重視

 

ガンダムスローネドライは、そんな二機のサポートが主目的である

 

その直後

 

「織斑先生、三機が動きました!」

 

真耶がそう言った直後、ガンダムスローネ達はゆっくりと降下を始めた

 

ここからが本番だと、千冬は直感した

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