書類仕事で書けなかった
「お、男の子……?」
「五人目の……」
「男の子……」
シャルルを見て、クラスメイト達は呆然としていた
しかし何かに気付いたのか、直哉達は耳を手で塞いだ
その直後
「「「「「キャアアアアアアァァァァ!」」」」」
女子達の黄色い悲鳴が上がった
その声量は凄まじく、窓ガラスにヒビが入った程だ
もちろんそんな声量となると、手で防ぎきれる訳がない
直哉達は全員、耳鳴りに襲われていた
しかし、興奮している女子達が気づく訳なく
「凄い美形!」
「織斑君や神崎君達とは違う、構ってあげたくなる系!」
「同じクラスで良かった!」
「お母さん! 産んでくれてありがとう!」
「アイエエェェェェェ!?」
「ネタが来たわ! 今年の夏は直哉×シャルルよ!」
後半は大分怪しいが、女子達は一様に興奮していた
もちろんだが、真耶が落ち着くように促している
だが、落ち着かない女子達にイラついたのか千冬が机を叩いて
「静かにしろ! もう一人が紹介出来ないだろうが!」
と声を張り上げると、一瞬にして静かになった
千冬のカリスマ性、恐るべしである
千冬は静かになったのを確認すると、シャルルの隣に居るもう一人に視線を向けて
「自己紹介しろ、ボーデヴィッヒ」
と自己紹介するように、促した
そこに居たのは、シャルルと同じように男子の制服を着ているが、小柄な体躯に腰辺りまで伸びた長い銀髪
そして、左目に着けた黒い眼帯が特徴の少女だった
「わかりました、教官……」
ボーデヴィッヒと呼ばれた少女はそう言うと、一歩前に出て
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
と名乗った
それ以外喋らなかったので、真耶が
「お、終わりですか?」
と問い掛けると、ラウラは
「名乗るだけで十分だ」
と答えた
すると、まだ耳鳴りに襲われているらしい一夏を見つけて
「貴様が……っ!」
と怒声を滲ませると、スタスタと一夏に近寄って右手を振り上げた
「貴様なんかが……っ!」
ラウラがそう言って、右手を振り下ろした
その直後、ラウラの視界は180度回転した
「なに……? がはっ!?」
驚いたのも束の間、ラウラは背中から床に叩きつけられた
「一体、なにが……っ!?」
何が起きたのか分からず、ラウラは困惑しながら目を開けて、絶句した
なぜならば、眼前には自分を押さえつけている一夏が首筋にナイフを当てて、更には、銃口を向けている直哉と弾の姿が有ったからだ
「なに、お前……?」
「名前からして、ドイツ人みたいだが……今のが、ドイツなりの挨拶か?」
「だったら、もう二度とドイツには行きたくないわな」
順に、一夏、直哉、弾である
三人はそう言うと、ラウラを冷たい殺気が籠もった目で睨んだ
ラウラは何とか耐えていたが、その殺気が予想外だったのか、動けないでいた
すると、千冬が手を叩いて
「お前達、そこまでにしておけ。時間が無くなる」
と告げた
千冬の言葉を聞いて、三人はゆっくりとだが、ラウラを解放した
すると、ラウラは立ち上がってから、一夏を睨んで
「貴様が教官の弟など、認めるものか……っ!」
と言うと、空いている席へと向かった
三人はそれを見送ると、自分達の席へと座った
女子達は事態の推移について行けて無かったが、そのタイミングでチャイムが鳴った
すると千冬が
「織斑、神崎、五反田、アスハ。デュノアの面倒を見てやれ。同じ男だろ」
と言うと、教室を去った
千冬の話を聞いたからか、シャルルが四人に近寄ってきて
「皆、僕のことはシャルルって……」
と何かを言いかけたが、それを遮るように直哉が手を振って
「そんなんいいから、走る!」
と言ってから、シャルルの手を掴んだ
「ひゃっ!?」
直哉に手を掴まれたシャルルは軽く悲鳴を上げて、走り出した直哉達に続いて走り出した
そして、直哉はこの瞬間には、ほぼあることを確信していた
すると、シャルルが困惑した様子で
「ねえ? なんで、いきなり走り出したの?」
と問い掛けてきた
「まず、次の授業がアリーナでの実習なんだがな、俺達男はアリーナにあるロッカーで着替えることになってるんだ!」
「それに、俺達はIS学園じゃあ、数少ない男だろ? だから、休み時間になると……!」
と一夏と弾が立て続けに説明すると、前方に数人の女子達が現れて
「居た、織斑君達よ!」
「それに、噂の転校生も居るわ!」
「者共、出逢え、出逢え!」
とまくし立てた
その直後、前方後方合わせて、三十人近い女子達が現れた
その光景を見て、直哉達は思わず
「「「「ここは何時から武家屋敷になった!?」」」」
と突っ込んでいた
しかし、そうしている間にも、女子達は挟撃してくる
それを見て、直哉は空いている手の親指で窓を指差して
「お前ら、ルートB!」
と指示を出した
次の瞬間、一夏が窓を開けて
「レッツ、ダイビング!」
と飛んだ
それに続いて
「おっ先!」
「カワバンガー!」
とカオルと弾も飛んだ
「え!? えっ!?」
まさか飛ぶとは思わず、シャルルは驚愕した
その隙に、直哉がシャルルを背負って
「ホップ、ステップ、ジャンプ!」
と、三人に続いた
「ウソおおおぉぉぉ!?」
シャルルは叫びながら、直哉に強く抱き付いた
次の瞬間、四人は一斉に何かを上に向けた
それは拳銃のような見た目だが、先には大きな吸盤のような物があった
そして、四人は一気に引き金を引いて、それを射出
放たれたそれは、太いワイヤーと共に一気に伸びていき、校舎の壁にくっついた
四人が使った道具
それは、ワイヤーガンである
四人は降下しながら、ワイヤーガンを操作
すると、ワイヤーガンから火花が散りながら、四人の降下速度は一気に遅くなっていき、そのまま地面にゆっくりと着地した
そして、四人がワイヤーガンを再び操作してワイヤーを巻き取っていると、我に帰ったらしいシャルルが
「いきなり飛ばないでよ! びっくりしたよ!?」
と抗議した
すると、四人は笑いながら
「いやぁ、悪い悪い」
「あそこで捕まると、確実に遅刻してたからな」
「そしたら、千冬さんの出席簿攻撃を喰らうんよ」
「それだけは、マジに勘弁なんだ」
上から順に、直哉、一夏、弾、カオルだ
四人は立て続けに言うと、時計を見て
「っと、幾らショートカットしたからって、のんびりは出来ねえな」
「走るぞ!」
と言うと、目的地たる第4アリーナに向けて駆け出した
こうして、トラブルは途絶えない日々が繰り返される