ISGジェネレーション   作:京勇樹

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エピローグ 軌跡

「テレビの前の皆さん。今私達は、歴史的瞬間に立ち合っています」

 

と言ったのは、マイク片手にカメラに語っている女性アナウンサーだ

その女性アナウンサーが居るのは、なんと月面に建設された都市である

 

「あの第三次世界大戦……通称、亡国戦役から約10年……今この時、世界初の月面都市。フォン・ブラウンが開かれました。最初は、世界初の恒久月面研究所だったここが、約七年で十万人近くが住む街に発展しました……そこまでに、幾つもの難関があり、それらを乗り越えてきました」

 

女性アナウンサーはそう言いながら、少し歩いた

そこはどうやら、歴史館になっているらしい

何枚もの写真が貼ってあり、その中の一枚には眼鏡を掛けた水色の髪の少女が写っている

 

「それらの解決には、あのソレスタル・ビーイング号の量子コンピューター……スピリッツが関わっています。スピリッツと幾多の科学者達が力を合わせ、様々な困難を乗り越えました。そして今日、世界初の月面都市となりました」

 

女性アナウンサーはそう言って、宇宙が見える窓から外を見た

そこに見えるのは、漆黒の宇宙だ

 

「さて、そんな今日は特別ゲストをお呼びしました。先の戦役を調べているジャーナリスト……黛渚子さんです。どうぞ」

 

と女性アナウンサーが呼ぶと、眼鏡を掛けた長い黒髪の女性

黛渚子(まゆずみなぎさこ)が入ってきた

その渚子は、女性アナウンサーの隣に座った

そして、頭を下げながら

 

「皆さん、初めまして。フリージャーナリストの黛渚子です」

 

と自己紹介した

そして、スタッフが用意した椅子に座った

すると、女性アナウンサーが

 

「それでは、黛さん。先の戦役……亡国戦役のことをお伺いします」

 

と問い掛けた

その問い掛けに、渚子は頷いた

すると、女性アナウンサーは

 

「亡国戦役で、その存在が露になった亡国機業ですが……この組織は、何者なのでしょうか?」

 

と渚子に問い掛けた

すると、渚子は

 

「亡国機業を一言で表すと、死の商人と言えます……それも、ただの死の商人ではありません。裏で各国の政府とも繋がりが強かった、最も歴史のある死の商人です」

 

と言った

それを聞いて、女性アナウンサーは

 

「歴史のある死の商人……ですか」

 

と言った

渚子は、それに頷き

 

「私が調べた限りでは、第二次世界大戦末期から存在していたようです……」

 

「そんなに昔からですか?」

 

女性アナウンサーの問い掛けに、渚子は頷いた

そして

 

「そんな亡国機業と戦う者も居ました……ですが、その亡国機業の実戦部隊に排除されていたようです……しかし、亡国戦役である一つの傭兵部隊が戦っています」

 

と言った

それを聞いた女性アナウンサーは

 

「その傭兵部隊とは?」

 

と渚子に問い掛けた

すると渚子は、机の下から一枚のフリップを取りだし

 

「MSを有する傭兵部隊……スピリッツです」

 

と言って、それを裏返した

そこには、二隻の白亜の艦の写真が貼ってあった

 

「彼等は二十以上のMSを有し、様々な戦闘に参加……その全てを、生還してます」

 

「なるほど……凄腕なんですね」

 

渚子の説明を聞いて、女性アナウンサーはそう言った

その言葉に、渚子は頷き

 

「はい……しかも彼等は、弱き者のために戦い続けてきています……旧IS学園攻防戦、第一次、第二次オーブ攻防戦、旧IS学園離脱戦、EU離脱戦、グランド・ゼロ戦……これらの達成困難と呼べる戦いを、全て成功に導いています」

 

と説明した

それを聞いて、女性アナウンサーは頷きながら

 

「戦闘のエキスパートですね……」

 

と言った

その言葉から、素直に感嘆しているのがわかる

 

「その彼等の中には、有名な人物が居たことが分かっています……それは、織斑一夏、神埼直哉、五反田弾です」

 

渚子がそう言うと、女性アナウンサーは

 

「その三人は確か、亡国戦役前に一躍有名になった方々ですね……ISで初めて、男で扱えると……」

 

と言った

そして、渚子は頷き

 

「はい、その通りです……彼等も、数多の戦闘に参加しています。IS学園在学時には、銀の福音追撃戦、旧IS学園攻防戦……その腕前から、彼等もスピリッツの一員だったことは確実です」

 

と言った

 

「学生でありながら……ですか」

 

「はい……調べたところ、彼等は一度行方不明になっています……恐らくですが、彼等を誘拐したのは亡国機業で、それを救出。指導したのが、スピリッツだったかと思われます」

 

女性アナウンサーが首を傾げると、渚子はそう言った

 

「そして彼等は、亡国戦役を駆け抜けました……しかし、この10年……彼等は姿を見せていません」

 

渚子はそう言ってから、宇宙を見た

 

「彼等は今、何処に居るのか……それは分かりません……しかし、何処かで誰かが助けを求めれば、彼等は必ず助けてくれるでしょう……そんな彼等を表す言葉は、英雄です」

 

「英雄……ですか?」

 

女性アナウンサーの問い掛けに、渚子は頷いた

 

「弱きを助け、強きを挫く……彼等はどんな困難な依頼だろうが、助けるためならばあらゆる手段を尽くして、成功に導く……この世界初の宇宙戦……グランド・ゼロ戦……彼等は、それすらも勝っています……あのソレスタル・ビーイングの中には、大量の中性子ミサイル……そして、核爆発を利用したレーザー兵器。ジェネシス……そして何より、投入された数多くのMS……それらを、全てはね除けて、彼等は世界を救いました……そんな彼等を、英雄と言わずになんと言えましょうか」

 

渚子の言葉に、女性アナウンサーは納得したように頷いた

そして、渚子は視線をカメラに向けて

 

「しかし、そんな彼等の出番は終わったのかもしれません……後は私達が、平和な未来を作っていく……今度は間違えずに……歪な政策も制定せずに……それが、平和への一歩だと、私は思います」

 

と言った

そして、撮影終了後

 

「お疲れ、渚子」

 

と先程の女性アナウンサーが、渚子に声を掛けた

実を言えば、この女性アナウンサーは渚子の嘗ての同級生だったのだ

しかし、女性優遇制度に馴染めずに、オーブに移民した過去がある

 

「お疲れ、京子」

 

渚子はそう言いながら、その女性アナウンサーとハイタッチした

すると、女性アナウンサーは

 

「びっくりしたわよ。10年前までは、インフィニット・ストライプスに勤めてたのに、気付けばフリージャーナリストだもの」

 

と言った

すると、渚子は

 

「あの戦役で、多くの人々が亡くなったわ……たった一年間だったのに、10億人近くが亡くなった……そして、それと同等に行方不明者も居るわ……無関係じゃ、居られなかった……それに何より、あの子が……薫子が……帰ってきてないもの」

 

と言った

それを聞いて、女性アナウンサーは

 

「薫子ちゃんが……」

 

と胸元で手を握り締めた

そう

スピリッツで整備士として活躍していた薫子だが、実は渚子の妹なのだ

しかし、渚子はそのことを知らない

 

「けど案外、ひょっこり帰ってきそうなのよね……あの子、昔からそういう運は強いから」

 

「そう……」

 

渚子の言葉に、女性アナウンサーは頷いた

その時、渚子の携帯が鳴り

 

「ごめんなさい」

 

と一言謝ってから、渚子は携帯に出た

そして、少しすると

 

「本当ですか!? ありがとうございます!」

 

と渚子は、頭を下げた

そして、携帯を仕舞うと

 

「それじゃあ私は、アメノミハシラに行くわね! カオル・リオ・アスハ代表とアポが取れたから!」

 

と言って、鞄を持った

それを聞いて、女性アナウンサーは

 

「分かったわ、いってらっしゃい」

 

と渚子を見送ったのだった

そして数年後に、渚子が出版した一冊の本

《亡国戦役史実》は、一躍ベストセラーとなる

しかし、その本には誤りがあった

それは、巻末に書いてある一文

 

《彼等は戦争を終わらせる傭兵であり、英雄。そんな彼等を、私は未来永劫、称える》

 

スピリッツは確かに傭兵だが、英雄ではない

彼等は、戦士

それも、誇り高き戦士

そんな彼等は、今日も戦場を駆け抜ける

ここではない、何処かの戦場で……

人類のために……




実は、スピリッツは異世界に行ってたりしなかったり……
あいとゆうきのおとぎばなしの世界に
人類を助けに……
三周目の少年と共に
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