ISGジェネレーション   作:京勇樹

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タッグ戦

トーナメント第一試合

直哉&シャルロットペア対ラウラ&箒ペア

その試合会場たる第一アリーナには、すでに両ペアは居た

 

『直哉、作戦は?』

 

『シャッフルで行くぞ』

 

『了解』

 

直哉とシャルロットが作戦を秘匿回線(プライベートチャンネル)で手短に話し合っている間、ラウラは不満そうな表情を浮かべて

 

「あの男ではないのは残念だが、どうせ大したことないんだろう。防御重視らしい全身装甲(フルスキン)に乗っているんだ……軽く叩き潰してくれる」

 

と呟いた

それを聞いて、箒はあの無人機襲撃事件での活躍を言おうとしたが、口を閉じた

箝口令を思い出したのだ

箒とて年頃の少女

外出が制限されるのは勘弁なのだ

それにハッキリ言うと、箒からのラウラの第一印象は最悪だった

具体的に言うと、同族嫌悪だろうか

箒から見たら、ラウラは昔の荒れていた頃の自分に見えたのだ

一応、箒は直哉達の実力を見誤らないように忠告はしてある

しかし、ラウラは無視

そうしている間に、試合開始時間になった

空中に三つのランプが投影されて、最初は無色だったのが青になった

次の瞬間には黄色に染まり

そして、赤になった

その瞬間に、直哉とシャルロットは動いた

直哉は楯に内蔵されていたグレネードを発射し、ラウラの手前の地面に着弾させた

それにより土煙が上がった

 

「目潰しか………小癪な!」

 

ラウラがそう言った直後、眼前に直哉のビームライフルの銃口が突き付けられた

 

「くっ!」

 

ラウラは咄嗟に体を傾けて、ビームを回避した

 

「不意打ちとは!」

 

「戦場で、動きを止めたら死ぬだけだ」

 

ラウラの悪態に対して、直哉は冷徹に返した

直哉がラウラに迫ったことに気づいて、箒がラウラの援護に向かおうとした

だが、そんな箒の前にシャルロットが現れて

 

「ふっ!」

 

と短い呼吸と共に、両手に持ったショットガンを連射

箒は何とか防いだり避けたりしながら、シャルロットに迫り刀を振り上げた

しかし、次の瞬間

シャルロットがしゃがんだその頭上を、二発のグレネードが通過

箒に直撃した

 

「があっ!?」

 

まさかそんな攻撃が来るとは予想しておらず、箒は吹き飛んだ

そして見えたのは、ラウラのプラズマ手刀をビームライフルのサーベルモードで防ぎながら半身になり、楯を自分の方に向けた直哉だった

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

場所は変わり、アリーナのモニタールーム

そこでは、山田先生と千冬が試合を見ていた

 

「今の………事前に打ち合わせていたんでしょうか?」

 

「恐らくな………だが、重要なのは、神崎とデュノアの戦闘スタイルだ」

 

山田先生の言葉に千冬はそう返しながら、試合を見つめていた

今もまた、直哉とシャルロットは背中合わせになりながら回り、箒とラウラに攻撃している

 

「戦闘スタイル……ですか?」

 

山田先生が首を傾げると、千冬は頷いて

 

「ああ。神崎もデュノアも、両方共遊撃型だ。遠近中、どの距離でも対応可能だ」

 

と言いながら、サブモニターに直哉とシャルロットの武装一覧を表示した

それを見て、山田先生は

 

「確かに……あらゆる距離での戦闘が可能ですね……」

 

と納得していた

 

「それに、ああして戦うことで、ボーデヴィッヒの致命的な弱点を突ける」

 

「致命的な弱点?」

 

千冬の言葉を聞いて、山田先生は首を傾げた

 

「ああ……ボーデヴィッヒの機体は、一対多の戦闘を考慮されてないし、何よりも、ボーデヴィッヒ自身がタッグ戦ではなく単独戦闘をしている」

 

千冬がそう言うと、山田先生はモニターに視線を戻した

直哉とシャルロットが見事な連携でラウラと箒に攻撃しているが、ラウラと箒の二人はバラバラに攻撃している

むしろ、時々ラウラの攻撃が箒に当たりそうになっている

 

「ボーデヴィッヒさん……篠ノ之さんのことを完全に仲間と思ってないみたいですね」

 

「ああ」

 

山田先生の言葉に千冬が同意した時、シャルロットの放ったショットガンが箒に直撃した

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

場所は戻って、アリーナ闘技場

箒はショットガンの直撃を受けても反撃しようと試みたが、箒の意に反して、機体は動かなかった

 

「くっ………ここまでかっ!」

 

箒の機体

日本製第二世代IS打鉄はシャルロットのショットガンにより、シールドエネルギーが切れて機能を停止していた

それに対して、シャルロットと直哉は一切被弾無し

そして、ラウラは気付けば、エネルギーが三割ほどを失っていた

 

「バカな! この私が!?」

 

ラウラは直哉をAICで拘束しようとしたが、それは直哉の背後から横っ飛びで現れたシャルロットの攻撃によって妨害された

そう、これこそがラウラの機体

黒い雨(シュヴァルツェア・レーゲン)の第三世代兵器

アクティブイナーシャル・キャンセラーの欠点だった

AICはその効果を発揮するためには、非常に高い集中力を必要とするのだ

確かに、AICは一対一では絶大な効果を発揮するだろう

しかし、今のように一対多となると、むしろ邪魔になる

どちらか一方に集中すると、どちらか一方に攻撃されかねない

正に、今の状況だった

それが、AICの欠点だった

今度はシャルロットを捕まえようとワイヤーブレードを射出したが、それらは直哉が頭部バルカン砲で迎撃、破壊した

 

「貴様らぁぁぁ!」

 

ラウラは両手にプラズマブレードを展開すると、直哉へと斬りかかった

直哉はそれを、楯裏のビームブレードを展開して防ぐと

 

「ぜあっ!」

 

と気合の声を上げながら、思い切り蹴飛ばした

 

「がはっ!? くっ!」

 

壁に叩き付けられたラウラは、攻撃しようと前を見た

だが、その目に入ったのは目前にまで迫っていたシャルロットだった

 

「まさか、瞬間加速(イグニッション・ブースト)だと!? バカな! そんなデータは無かったはず!」

 

「今初めて使ったからねっ!」

 

ラウラの驚愕のセリフに対して、シャルロットはそう言いながら至近距離でライフルをフルオートで撃ち続けた

 

「この………第二世代(アンティーク)ごときがぁぁぁ!」

 

ラウラはそう叫びながら、右手を掲げてAICを発動しようとした

その直後

横合いから飛来した一筋の閃光が、右腕の装甲を撃ち抜いた

 

「なにっ!?」

 

ビームが飛んできた方向を見ると、そこには直哉が居た

 

「これで、AICは使えないだろ?」

 

「くっ!」

 

直哉の言葉を聞いて、ラウラは歯噛みした

AICを発動するための発生装置は、右腕に内蔵されていたのだ

その間にもシャルロットは攻撃し続けて、シュヴァルツェア・レーゲンのシールドエネルギーは残り四割ほどになった

その時、シャルロットは持っていたライフルを投げ捨てると

 

「これで……決めるっ!」

 

と左腕に楯を展開し、楯の装甲が弾け飛んだ

そして、その楯の中に隠されていた武装を明らかにした

第二世代用武装の中でも、極めて高い威力を誇る武装

炸薬式69口径パイルバンカー、正式名称は灰色の鱗(グレー・スケール)

通称は

 

「シールドピアース!?」

 

ラウラは流石に食らったらマズイと思い、なんとか防ごうとした

だが、間に合わず

 

「はあぁぁぁっ!」

 

「がはっ!?」

 

その一撃は、腹部に直撃した

それにより、絶対防御が発動

シールドエネルギーが大きく削られた

しかも、シャルロットの攻撃は一撃では終わらない

シールドピアースはリボルバー機構を使っているために、連続して攻撃が可能なのだ

次々と直撃を受けて、シュヴァルツェア・レーゲンのシールドエネルギーがドンドン減っていった

 

(私は……負けるのか? こんな所でっ)

 

ラウラは負けるという現実が受け入れられず、過去を思い出した

ラウラは自然に産まれた訳ではなく、試験管ベイビーとして産まれた

それからラウラは、あらゆる軍事的分野において高い成績を叩き出した

格闘術、銃撃戦、戦闘機の操縦等々

すべてにおいて、常にトップランクだった

だが、それが変わり始めたのは、左目に施されたナノマシン移植からだった

予測では、何のトラブルも起きないはずだったのだ

だが、その移植は失敗

結果、ラウラの左目

越境の眼(ヴォータン・オージェ)は暴走したのだ

暴走したとは言え、命に別状は無い

しかし、本来だったらオンとオフの切り換えが出きるはずなのが出来なくなったのだ

このヴォータン・オージェは、疑似ハイパーセンサーと言える機能を有している

それを発現させることにより、ドイツ軍は操縦者とISの適性値を上げようと計った

しかし、ラウラはそれの暴走から全てが崩れ始めた

常にトップランクだった成績は地に落ち、IS適性も低かった

それに伴って、それまで見下していた他の隊員達から陰口を叩かれた

そんなラウラを助け出したのが、教官として赴任した千冬だったのだ

 

『お前がラウラ・ボーデヴィッヒか………安心しろ。一年でまたトップに戻してやる』

 

千冬はその言葉の通りに、たった一年でラウラをトップへと帰り咲かせた

自分を引き上げてくれた千冬は、ラウラにとって正しく神に等しい存在だった

そんな千冬にとって、唯一の汚点とも言える経歴

それが、第二回モンドグロッソ決勝戦不戦敗だった

そして、その原因が、誘拐された一夏とラウラは聞いた(実際には直哉と弾も居たのだが)

だから………

 

(あいつを……あの男を倒すまでは、負けられないんだっ!)

 

ラウラは、力を欲した

 

(力が……力が、欲しいっ! 絶対的な………唯一無二の力がっ!)

 

ラウラがそう思った時だった

 

(力が欲しいかい?)

 

という、男の声が聞こえた

まるで、人を小馬鹿にしたような声音だった

だが、今のラウラにとっては些細なことだった

 

(ああ! 力が欲しいっ! 全て捨ててもいい!)

 

ラウラがそう言うと、男が笑ったように

 

(それじゃあ、上げるよ)

 

と告げた

その直後、ラウラの脳裏に

 

《ヴァルキリートレースシステム、起動》

 

という文章が浮かんだ

そして、第二ラウンドが始まる




さて、ラウラに声を掛けたのは誰でしょうね?
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