ISGジェネレーション   作:京勇樹

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入浴と断罪

アリーナで起きた事件から数時間後、直哉達は少し遅めの夕食を食べていた

 

「シャルル、胡椒取ってくれ」

 

「はい」

 

直哉はラーメンを、シャルルはオムライス

そして、一夏は蕎麦を食べていた

すると、少し離れた場所から

 

「トーナメント中止……」

 

「トトカルチョがご破算……」

 

「あの約束も無効……」

 

と女子達が呆然としていた

そして少しすると、トボトボと肩を落として去っていった

それを直哉達は見送ると、首を傾げながら

 

「なんなんだ?」

 

「さあ?」

 

「知らないよ?」

 

と会話していた

あのラウラの暴走があって、トーナメントは全試合中止

とはいえ全員の実力は知りたいので、全ペアは一回は戦うことになった

ふと気付けば、先ほどまで女子達が居た場所に箒が一人ポツンと立っていた

それに気付いた一夏は、食べ終わった丼を返却すると

 

「箒。あの件だが、付き合ってもいいぞ?」

 

と箒に告げた

すると、箒は嬉しそうな表情を浮かべて

 

「本当か!?」

 

と一夏に詰め寄った

その箒の言葉に、一夏は頷いて

 

「俺でよければ、幾らでも付き合うぞ! 買い物くらい!」

 

と言った

その直後

 

「そんなことだろうと!」

 

乙女の怒りの拳が

 

「思ったわ!」

 

一夏に炸裂した

 

「ふんっ!」

 

「ごふ………」

 

一夏にとっては予想外だったために、まともに食らい倒れた

倒れてる一夏を見て、シャルロットが

 

「一夏ってさ、たまに態とやってるんじゃないかって思うよ」

 

と苦笑混じりに言い、直哉は

 

「天然なだけだよ」

 

と言った

その数秒後だった

 

「あ、織斑くん! 神崎くん! デュノアくん!」

 

と山田先生が現れた

お盆を返却した二人と、復活した一夏は山田先生を見ると

 

「どうしました?」

 

「なにかありました?」

 

と問い掛けた(一夏はまだ、呼吸を整えてる)

走ってきたからか、山田先生は荒かった呼吸を整えてから

 

「今日から、男子用入浴時間が設けられました!」

 

と告げた

すると、一夏が嬉しそうに

 

「おおぉ! マジですか!」

 

と声を上げた

そんな一夏の反応に、山田先生は笑顔を浮かべながら

 

「はい! この後の八時半から一時間です!」

 

と言った

それを聞いて、直哉達は時計を見た

今は午後八時少し前

移動時間や準備時間を考えると、丁度いい時間だった

 

「よっしゃあ! それじゃあ、部屋に着替えなんかを取りに!」

 

と一夏は駆け出そうとしたが、そんな一夏の肩を背後から伸びてきた手が掴んだ

誰かと思いながら振り向いて、一夏は固まった

そこには、怒りのオーラを身に纏った千冬が居た

千冬は一夏の肩を万力を彷彿させる力で握りながら

 

「織斑、貴様……ピットのハッチを切り裂いたよな?」

 

と問い掛けた

千冬のその問い掛けに、一夏は顔を青ざめた

何故なら、一夏が提出した報告書には、《一夏がピットのハッチを切り裂いて出撃したことを書いてなかったからだ》

一夏としては、その時は激情に駆られていたために忘れていたのだ

だが千冬としては報告もせずに、切り裂いたことが問題だった

前の無人機襲撃の時は、ハッチを破壊するしか方法が無かったのと、事前に直哉が通達したので別に問題では無かった(オーブが修理のバックアップを行ったのもあるが)

しかし、一夏は言えば開けられたはずのハッチを無断で切り裂き、しかも、それを報告すらしなかった

言わずもがな、これは大変マズイ

だから千冬は、怒り心頭といったオーラを纏っているのだ

 

「今カラ、寮長室ニ来イ……反省文ト始末書ヲ書カセル………」

 

気のせいだろうか

人間を半分辞めているような気がする

そんな姉を見て、一夏はガタガタと震えながら

 

「い、いや、千冬姉………俺、これから風呂に………」

 

と逃走を試みた

だが、千冬は有無を言わさぬ雰囲気で

 

「イイカラ、来イ………」

 

と一夏を引きずりだした

 

「あ、ちょ!? た、助け………な、直哉! ヘルプ!!」

 

一夏は直哉に救助を求めるが、直哉はどこからか取り出した小さい旗を振りながら

 

「頑張れよー」

 

見送った(見捨てた)

 

「この薄情者ーーーーーーー!!」

 

その叫びを最後に、一夏は食堂から消えた

直哉は一夏を見送ると、小さく

 

「悪いな一夏………俺だって死にたかないんだ………それに、今回は自業自得だ………」

 

と呟いた

すると、苦笑いを浮かべていた山田先生が

 

「それじゃあ、私は先に行って、生徒が残ってないか確認してきますね」

 

と言うと、食堂から去っていった

直哉とシャルロットはそれを見送ると、二人して顔を見合わせて

 

「どうしよう、直哉……」

 

「どうすっかね?」

 

と二人して、首を傾げた

なにせ、シャルロットは女の子だ

そのシャルロットと一緒に入るというのは、問題だろう

直哉とシャルロットはどうすればいいのか、少し考えたが

 

「ここで留まってても仕方ない。準備して行くぞ。もしかしたら、いい案が浮かぶかもしれん」

 

と直哉が言うと、シャルロットは頷いた

そして十数分後、直哉とシャルロットは脇に着替えを抱えて、大浴場の前に到着した

しかし悲しいかな、案は浮かばなかった

直哉とシャルロットが到着すると、山田先生は微笑みながら

 

「来ましたね。他の生徒は居ませんから、どうぞ」

 

と入るように促した

直哉とシャルロットの二人は言われるがままに、大浴場のロッカールームに入った

すると山田先生は、ドアに紙を貼ってから

 

「では、ごゆっくり」

 

と言ってから去っていった

少しすると、シャルロットが

 

「直哉……どうする?」

 

と直哉に問い掛けた

だが直哉はその問い掛けに答えず、ドアから外を見回すと

 

「シャルロット。シャルロットが入れ」

 

と促した

 

「え? 直哉はどうするの?」

 

直哉に問い掛けると、直哉はドアから僅かに顔を出して

 

「俺は部屋でシャワーでも浴びるさ……」

 

と言うと、中に戻って着替えを掴んだ

するとシャルロットが、直哉の腕に抱きついて

 

「直哉が入って……僕はいいから」

 

と言った

 

「いいのか?」

 

「うん……今があるのは、直哉のお陰だから」

 

直哉の問い掛けに対して、シャルロットは笑みを浮かべてそう言った

正直言うと、シャルロットのその言葉は嬉しかった

直哉とて日本人

風呂は好きである

直哉は少し考えると、頷いて

 

「わかった。シャルロットの好意に甘えるな」

 

と言って、入るための準備を始めた

そして準備を終えると、直哉は入っていった

そしてシャルロットは、直哉が入っていくと喉を鳴らした

 

「おおー……」

 

浴場に入ると、直哉は感嘆の声を漏らした

直哉にとって、初めての光景が広がっていた

一気に三十人以上は入れるだろう湯船に、その湯船にお湯を注いでるライオン型の彫像

 

「本や映画だけじゃないんだなぁ……」

 

直哉はそう呟くと、手近な洗い場にイスを置いて体を洗い始めた

すると、直哉の右肩の付け根辺り

よく見ると、うっすらと傷跡があった

まるで、斬れたのをくっつけたような感じだった

直哉はそれを気にする様子はなく、体を洗い、頭を洗うと湯船へと入った

 

「あぁ………いい湯だ……」

 

直哉はそう呟きながら、首をゴキゴキと鳴らした

その時、ガララとドアを開ける音がした

 

(一夏か? 早かったな……)

 

と直哉は予想した

が、すぐにその予想は裏切られた

 

「お、お邪魔しまーす……」

 

服を脱いだシャルロットが、恥ずかしそうに入ってきた

 

「なんでさ……」

 

シャルロットが入ってきたことに気づいて、直哉は小さく呟いた

シャルロットは顔を赤らめながらも、湯船にゆっくりと入った

 

「シャ、シャルロット?」

 

「こっち、見ないで……」

 

直哉が呼び掛けると、シャルロットは消え入りそうな声でそう言った

言われた通り、直哉は振り向かなかった

正確には、予想外の事態に固まり、動けなかったのだが

直哉が固まっている間に、シャルロットは直哉と背中合わせになるように座った

実を言うと、異性と入浴したのは初めてではない

まずジェネレーションワールドに居た時、スペースの都合で共同で入浴していた

そして何よりも、直哉は孤児院の出である

孤児院では院長一人で手が回らないために、年長者組が年少者組の面倒を見ていた

それはもちろん、直哉も例外ではない

直哉も面倒を見られたし、面倒を見た

しかし、同年代の女子と入ったのは数少ない

しかも、シャルロットは掛け値なしの美少女だ

緊張するな、というのは土台無理な話しである

どうしよう。と直哉が考えていると

 

「直哉、僕ね………ここに居るよ」

 

とシャルロットは言った

それを聞いて、直哉は微笑んで

 

「そうか……頑張れよ」

 

と応援した

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

その頃、フランスはデュノア社

その社長室にて、一組の男女が居た

しかし、女性のほうは苛立った様子で指の爪を噛んでいた

 

「あの役立たず………何時になったら、報告を送ってくるのかしら……」

 

そう言ったのは、カトリーヌ・デュノア

シャルロットに男装して、データを盗み出すように指示した張本人である

カトリーヌは机に座ってる男性

エト・デュノアが座っている机の前をウロウロしながら

 

「ねえ、あの役立たずは何時になったら、報告を送ってくるのかしらね?」

 

とエトに問い掛けた

が、エトは答えなかった

エトが返答しなかったのが気にくわなかったのか、カトリーヌは舌打ちした

その時、机の上にあった電話が鳴った

エトは受話器を取ると、耳に当てて

 

「どうした?」

 

と問い掛けた

電話向こうのカトリーヌ派の部下は、慌てた様子で同じことを繰返していた

何が起きたのか分からず、エトは受話器をカトリーヌに手渡した

 

「なによ………は? テレビ?」

 

カトリーヌは応接セットの机の上にあったリモコンを取ると、テレビのスイッチを入れてチャンネルを回した

そして、驚愕した

何故ならば、そのテレビのニュース番組では、彼女が懇意にし、更にはシャルロットを送り込む時に協力させた上院議員が逮捕されたと報道されていたからだ

罪状は、違法献金と個人情報の改竄だった

それに連なって、デュノア社社長婦人にも逮捕状が出ていると報じられていた

 

「そんな……そんなバカな!?」

 

カトリーヌはそう喚くと、社長室から出ていった

それを見送ると、エトはパソコンのメーラーを起動させた

今から二日ほど前、エトのパソコンにメールが送られていた

差出人は不明

その内容は

 

『娘さんを助けたくありませんか?』

 

という文章だった

エトは藁にもすがる思いで、助けたいと返信した

そしたら

 

『二日待ってほしい』

 

と返信が来た

それと同時進行で、デュノア社の株がある企業に買い占められていた

その企業は………

 

「オーブのモルゲンレーテ………」

 

エトはモルゲンレーテ社の意図に気付いた

だからこそ、エトはカトリーヌが落とした受話器を掴むと、一度通話を切って

 

「私だ。オーブのモルゲンレーテ社に繋いでくれ」

 

と決断した

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