ISGジェネレーション   作:京勇樹

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お待たせ


準備

季節は夏に変わり、日光がジリジリと地面を焼くある日

シャルロットは一人、IS学園から程近いある駅の駅前に居た

目的は臨海学校へ向けての買い物だが、彼女には待ち人が居た

同じIS学園に在籍している想い人

神埼直哉である

ようするに、デートである

しかし、そんな彼女は………

 

「ねえねえ、彼女! 暇?」

 

「暇ならさ、俺達とお茶しない?」

 

空気を読まない男達に、ナンパされていた

しかもこのナンパ男達、かなりしつこい

既に、数分は無視しているのに、未だに声を掛けてきていた

女性優遇制度が設けられてから、殆どの男性陣は肩身が狭い思いをしている

しかし、一部の男性陣は女性優遇制度を利用し、根強く生きていた

それは、己の容姿を活かした職種

ホストなどである

彼等は自分の容姿を活かして、身分の高い女性陣に取り入り、周到に生き残ってきた

恐らく、このナンパ男達もそういった輩なのだろう

かなりしつこかった

 

(どうしようかな……)

 

シャルロットが真剣にどう対処しようか考え始めると、男の一人が

 

「ちょっと遠出しようぜ! 愛車の良さ、教えたいしさぁ!」

 

と言いながら、停車していた車を指差した

その車は、シャルロットの祖国

フランスの車だった

すると、シャルロットは冷たい笑みを浮かべて

 

「へぇ………舗装されてる日本の道路を、燃費の悪いフランスの車で……」

 

と自分でも驚くほど低い声で言った

省エネや環境問題が声高に叫ばれているなか、燃費の悪い外国車は日増しに日本中から姿を消していっている

しかし、世の中には愛好家や物好きが居るものだ

恐らく、このナンパ男達は車の見た目が良いからだろうが

閑話休題

男達はシャルロットの声音に一瞬たじろいだが、直ぐに気を取り直して

 

「いいから、行こうぜ!」

 

と言いながら、シャルロットの肩を掴もうとした

だが、男の手がシャルロットの肩に触れるよりも早くシャルロットは男の手を避けると、その腕を背中側に捻った

 

「いででででっ!?」

 

「すいませんが、触らないでもらえます? そのキツイ香水の匂いが服に着いてほしくないんで」

 

男の腕を捻りながら、シャルロットは冷淡にそう言った

すると、もう一人の男が激怒した様子で

 

「離せや、くそアマが!!」

 

とシャルロットを殴ろうと、腕を振り上げた

その直後、その男は見事な回し蹴りで吹き飛んだ

そして、蹴りを放った人物

直哉は、右足を地面に下ろすと

 

「人の連れに何しようとしてんだ、こら」

 

と、倒した男の背中を踏んだ

 

「直哉!」

 

いいタイミングで助けに現れた直哉に、シャルロットは嬉しくなった

それにより、捻りあげていた手に力が入り

 

「ギャアァァァァ!?」

 

憐れ、男の肩関節は外れたのだった

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「はーい。女性への強引な勧誘は、条約違反なんだよね? お疲れー」

 

微妙にやる気がない警官により、ナンパ男達は連行されていった

直哉とシャルロットはそれを見送ると、互いに顔を見合わせて

 

「悪いな、シャルロット。もう少し早く来るべきだったな」

 

と直哉が謝った

すると、シャルロットは慌てた様子で

 

「ううん! 僕が少し早く来すぎたんだよ!」

 

と手を振った

そして、直哉の顔を見ながら

 

「で、なんで直哉は、サングラスを掛けてるの?」

 

と直哉に問い掛けた

そう、何故か直哉はサングラスを掛けていたのだ

すると直哉は、若干疲れた様子で

 

「いや、俺も有名になりすぎたみたいでな……モノレールに乗ってる間に、何回も声を掛けられたんだ……」

 

と語った

どうやら、逆ナンパされたらしい

それで、途中でサングラスを買って、簡易的に変装したらしい

 

「で、買い物の目的は?」

 

直哉が問い掛けると、シャルロットは恥ずかしそうにしながら

 

「え、えっと……水着を買いに来たんだ……」

 

と言った

それを聞いて、直哉は

 

「なぜに、俺なんだ?」

 

と思わず呟いた

すると、シャルロットはモジモジとしながら

 

「ダメ……だった?」

 

と直哉を見上げた

美少女から上目づかいで見上げられて、断れる訳が無い

 

「OK……付き合うよ。ただし、あんまり期待するなよ?」

 

「うん!」

 

直哉の言葉を聞いて、シャルロットは満面の笑みを浮かべた

そして二人は、大型ショッピングモールのレゾナンスに入った

なお、二人は気づいていなかったが、他にも何人か知人が来ている

レゾナンスに入ると、二人は水着コーナーへと向かった

その水着コーナーも女性優遇制度の影響を受けて、女性物がかなり広く取られている

そして、男性用は申し訳程度にコーナーの隅にある

目的地に着くと、二人は

 

「んじゃ、手早く買ってくるから、シャルロットは選んでな」

 

「うん。後でね」

 

と言うと、別れた

その後、直哉は手早く一着の水着を購入した

なお、お金はオーブからの給料である

色合いは、機体と同じく黒地に黄色いラインが入ったものだ

水着を買い終わって直哉が戻ると、シャルロットは二着の水着を持って悩んでいた

一着はオレンジ色を基調色にした水着で、もう一着は水色を基調色にした水着だった

 

「うーん……どっちにしよう……」

 

「シャルロットには、両方似合いそうだな」

 

直哉が背後からそう言うと、シャルロットは少し驚いた様子で振り向いて

 

「う、うん。僕も、この二着で迷ってるんだ……」

 

と言うと、直哉のほうに振り向いた

その直後、シャルロットはビシリと固まった

 

「シャルロット?」

 

直哉が呼び掛けるが、シャルロットは反応しない

直哉がシャルロットの目の前で手を振ったりするが、シャルロットは反応しない

この時、シャルロットは直哉の背後

つまり、エレベーターの方に見知った人物達を見つけていた

見つけたのは、鈴、セシリア、ラウラの三人だった

どうしてそのメンバーなのかは知らないが、シャルロットにとっては最上級での緊急事態だった

鈴は一夏を思っているみたいだが、見つかったら騒ぐのが目に見えている

ラウラはどういう反応するか分からないが、セシリアはほぼ確実に介入してくるだろう

だからシャルロットとしては、どうにかして二人きりになりたかった

そして、一気に周囲を見回すと

 

「直哉、こっち!」

 

「おろっ!?」

 

直哉の手を掴んで、ある場所に駆け込んだ

 

「シャルロット!?」

 

「直哉……今から着替えるから、見て判断して……」

 

二人が駆け込んだのは、着替えブースだった

見つかると大変不味い直哉は、小声で叫ぶという器用な技でシャルロットに問い掛け、シャルロットは顔を真っ赤にしながら小声で言って、服を脱ぎ出した

今さら出る訳にはいかず、直哉は目を閉じた

そして、ジェネレーションワールドでの生活を思い出した

ジェネレーションワールドでの生活は、その性質上で常に艦での生活だった

そして、艦内で生活するにあたり、スペースは非常に限られていた

だから、一部の空間は男女共用だった

特に、居住スペースはそうだった

トイレ、入浴スペース、ロッカー、寝室

これらは各個人、もしくは男女別にすると、あっという間にスペースが足らなくなる

故に、男女共用だった

だから、それに慣れないといけなかったし、慣れた

最近は男女別が当たり前になっていたので、それを忘れがちだった

 

(思い出せ、あの頃を……軍人としての俺を)

 

直哉は軽く自己暗示すると、閉じていた目を開いた

たったそれだけで、直哉に劇的変化が起きた

赤くなっていた顔は通常に戻り、高鳴っていた鼓動も落ち着いた

そして何より、その目付きが変わっていた

何時もは少し垂れた感じなのだが、今は鋭く、更にはその眼光も鋭くなっていた

ただ不幸中の幸いと言うべきか

サングラスでシャルロットには分からなくなっていた

シャルロットはパニックになった頭を必至に動員し、何とか着替えると

 

「ど、どうかな?」

 

と直哉に見せた

着ていたのは、オレンジ色を基調色にした水着だった

直哉はゆっくりと見ると、頷いてから

 

「うん。よく似合ってるぞ」

 

と答えた

その直後、着替えブースのカーテンが一気に開いて

 

「お前達……何をしている」

 

と千冬が二人に問い掛けた

この時、直哉の脳裏には

 

《デデーン! 直哉、シャルロット、アウトー!》

 

という、何処ぞのアナウンスが響きわたった

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「………ということです。わかりましたね?」

 

「「はい、すいませんでした……」」

 

山田先生の説教が終わると、直哉とシャルロットの二人は深々と頭を下げた

なお、シャルロットは水着から私服に着替えている

 

「今は休暇中だから、これ以上は追及しない。ただし、今後は気をつけるようにな」

 

「「はい……」」

 

千冬の言葉から察するに、どうやら休暇を使って買い物に来たらしい

恐らくは、近々行われる臨海合宿に向けてだろう

なお、この場に来た全メンバーが同じ目的である

説教が終わると山田先生は、近くに居るセシリア達を捕まえて離れていった

どうやら、千冬と一夏を残す心算だったらしい

なお一夏は、箒と一緒に来ていた

それを感じてか、シャルロットはオレンジ色の水着を持って

 

「じゃあ僕、会計してくるね?」

 

と駆けていった

直哉はそれを見送ると、水着コーナーから出て、休憩空間のベンチに座って、柱に背中を預けた

そして、数秒後

 

「いい加減鬱陶しいから、どういう思惑か教えろ」

 

と静かにしかし、強く告げた

すると、その問い掛けに

 

「んー……ロシアからは、丁重に連れてこい。日本からは、護衛を頼まれたのよ」

 

と誰かが答えた

その声の発信源は、直哉が背にしている柱の真裏にいる外側に跳ねた水色の髪が特徴の美少女

IS学園生徒会長、更識楯無だった

 

「連れてこいねぇ……」

 

「言っても、来ないでしょ?」

 

「まあな」

 

楯無の言葉を聞いて、直哉は肯定した

ロシアとしては、来てほしいのは直哉達ではなく、機体の方だろう

天候に左右されないビーム兵器に、核融合炉といった半永久機関

これらの技術を手に入れれば、ロシアは間違いなく、それを戦争やISに転用するだろう

そんなことを、直哉達は望まない

誇り高き傭兵魂(スピリッツ)

力無き人達の楯となり、戟となる

それが、フリーMS部隊スピリッツである

 

「ロシアのお偉いさんに言っておけ……もし力ずくでくる時になったら……全滅する覚悟をしとけ。とな……」

 

直哉はそう言うと、ベンチから立ち上がって、会計が終わったらしいシャルロットに歩み寄っていった

そして気付けば、楯無の姿は消えていた

 

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