ISGジェネレーション   作:京勇樹

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彼らにスポットを当ててみたり


動き出す者達

帰還した撤退部隊は、誰も一言も喋らなかった

織斑一夏の重傷

更には、神崎直哉、五反田弾の二人のMIA

MIA

作戦行動中行方不明

確認はしてないが、実質的な戦死扱いである

特に酷かったのは、激しく自責の念に襲われているらしい箒だった

一夏の怪我の原因

更に、直哉と弾のMIAの原因を自分だと思っていた

その箒は簡易的に医務室と割り振られた部屋で、意識不明の一夏の隣でただただ黙って座っていた

その頃、千冬は

 

「防衛庁は、なんと?」

 

「作戦を続行せよ。だ、そうだ……ふざけるなっ!」

 

山田先生からの問い掛けに答えると、千冬は壁に拳を叩き付けた

撤退部隊が教師部隊と合流した頃、千冬はIS学園と依頼を出してきた防衛庁に作戦の中止の許可を上申した

IS学園は直ぐ様受諾

作戦の中止を許可した

だが、防衛庁は頑なに拒否

《作戦の中止は認めず。なんとしても、福音を撃破せよ》

と通達してきたのだ

もちろん、千冬は抗議した

三名も犠牲が出たのに、作戦の続行は出来ないと

しかし、防衛庁は再三に渡る中止要請を無視

作戦の続行とだけ伝えて、連絡すら取れない有り様となっている

千冬が聞いた話しでは、防衛庁の一部には女性権利主義者が根付いているらしい

恐らくは、今回の作戦行動もそこからだろうと予測している

つまりは、MIAになったのが直哉達なら構わない

目障りな男は、死んでも構わない

と判断したのだろう、と千冬は確信していた

 

「ふざけろ………っ!」

 

千冬はそう呟きながら、拳を握りしめた

今、司令室に居るのは、山田先生と千冬だけである

セツコは部屋で泣いており、まだ戻っていない

ラウラは何処に行ったか分からないが、同室のシャルロットを慰めているだろう

セシリアの方はセシリアと同室の本音が慰めている筈だ

山田先生は気丈に振る舞ってオペレーターをしているが、休憩時間に泣いたのだろう

目元が赤い

 

「福音は、どうなっている?」

 

千冬が問い掛けると、山田先生はウィンドウを開いて

 

「戦域だった場所から、約20㎞離れた海域にて留まっています………アメリカ、イスラエルが追加開示した情報によると、ナノマシンがダメージをある程度は修復するみたいですから、それによって修復中と見られます」

 

と説明した

その説明を開いて、千冬は腕組みした

今後、どうすべきかと

その時、ふと傍迷惑な天災な友人を思い出して

 

(そういえば、あのバカはどこに行った?)

 

と内心で首を傾げた

その頃、束は海が見える崖に立っていた

 

「マー君……間に合ってるよね?」

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「急げ! 二人は重傷だ!」

 

「退いて!」

 

とある艦内は、騒然としていた

二人の血塗れの少年が乗せられたストレッチゃーが、運ばれていた

まさか、二人がこれほどまで怪我を負うとは信じられなかったのだ

それを見た一人の少女に至っては、泣き崩れた程だ

 

「それで、間違いないんだな? サーシェスとクルーゼに」

 

「ああ、間違いない……あの機影に殺気、覚えがある」

 

白髪が特徴の男性からの問い掛けに、長髪の男性は頷きと共に返答した

それを聞いて、白髪の男性は腕組みした

先に挙げた二人は、彼らが元々居た世界でも強敵だったのだ

 

「ワシらがこの世界に来たように、あやつらもこの世界に来ているか……」

 

「ああ……アスハ代表やエーカー少佐も来ていたんだ。不思議じゃない……」

 

と二人が話し合っていると医務室のドアが開いて、中から銀髪の美女が出てきた

 

「二人はどうだ?」

 

長髪の男性の問い掛けを開いて、銀髪の美女は表情を曇らせて

 

「生きてるのが不思議です………二人は細胞治療カプセルに入れましたが、何時目覚めるかは……」

 

と答えた

 

「そうか……」

 

白髪の男性が俯いていると、今度は近くの端末が鳴った

長髪の男性は端末に近寄ると

 

「どうした?」

 

と通信を始めた

すると、端末の画面に野球キャップを被った一人の女性の姿が映って

 

『二人の機体だけど、酷いもんだよ! 修理には時間が掛かりそうだよ!』

 

と言ってきた

それを聞いて、長髪の男性が

 

「動力はどうだ?」

 

と問い掛けた

 

『奇蹟的にも無事だね………どうする? 予備機(リザーブ)を使わせるかい?』

 

その言葉を聞いて、三人は唸りだした

予備機を使わせるのも、確かに手ではある

しかし、予備機だとどうしても僅かに感覚が違う

そして戦場では、その僅かな感覚の違いが命取りになるのを、三人、いや、この部隊の全員は知っている

以前に、一人の隊員が予備機で出撃し、帰らぬ人となった

だからこの部隊では、あらゆる手を尽くしてきた

長期戦に向くようにと、損傷を自動で修復するナノマシンを装甲やフレームに採用したり、エネルギー切れになりにくいように核融合炉やGNドライヴを採用してきた

それは一重に、誰にも死んでほしくないからだ

だが、戦争というのは命のやり取りだ

どうしても、生還が叶わない時もある

だから、SDS

自爆システムがあるのだ

苦しむ時間が少なくてすむように

後の仲間達のために

 

「すまんが、直すのを最優先にしてくれ。資材は惜しむな」

 

『あいよ、任せな!』

 

野球キャップの女性が威勢よく返答すると、通信は切れた

そして、彼らは動き出す

最善を尽くすために

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