種運命×Z×OO   作:スターゲイザー

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PHASE-02 戦いを呼ぶもの

 

 

 

 

 

 L5宙域にあるプラント所有のコロニー・アーモリーワン内部には今も爆炎と黒煙が漂っている。その中心にして発生源では数機のモビルスーツが対峙していた。

 

「カガリ、今の内にこっちに」

 

 戦闘機が合体して現れた四機目のガンダムタイプは敵ではないと直感で判断したキラは、リニアシートに捕まっていたカガリを懐に引き寄せた。

 股の間に入れられれば良かったのだが、リニアシートにはそこまでの横幅はないので膝の上に乗せる。

 

「お、おいっ!?」

「シートベルトは…………あった。窮屈かもしれないけど我慢してね」

 

 いきなり膝の上に乗せられて驚くカガリを無視して、キラは補助的に付けられているシートベルトを彼女ごと付ける。

 

「キツくない?」

「キツくはないが何だこの状態は!!」

 

 二人分を想定していないシートベルトは伸びに伸びまくっているが、カガリとしては弟相手とはいえ18歳にもなって膝の上に乗せられている現状に顔を真っ赤にしていた。

 

「しがみ付いていると危ないでしょ? 今にも始めそうだよ、彼ら」

 

 リニアシートに座るキラと違って、全天周囲モニターのコックピットでは戦闘の衝撃で体が投げ出される可能性が高くなる。カガリの安全を考えれば今の方が安全である。

 

「むぅ、そうだが…………重くないか?」

「むしろ軽すぎるよ。またご飯を抜いたね」

「…………しっかりと前を見とけ! 奴ら動くぞ!」

「この件はまた追及するから忘れないように」

 

 膝の上にカガリを乗せているので、身長差があるといっても首を傾けて彼女の肩の上から前を見据えるキラ。

 

「コイツ……!?」

 

 突如として現れた新たなガンダムタイプであるインパルスの登場に、緑色のガンダムタイプであるカオスに搭乗するスティング・オークレ―は目を見張っていた。

 その間にインパルスは黒いガンダムタイプのガイアに長大なレーザー刀で斬りかかる

 

「ステラ!」

 

 単純に自分に近かったガイアを狙ったインパルスにスティングが警鐘を送る。

 

「なんだ、こいつ!?」

 

 繋いでいた通信越しのスティングの声に反応して、飛び退ってレーザー刀を回避したガイアが頭部バルカンを放つも、実体兵器には絶対の防御力を持つVPS装甲によって弾かれて行く。

 電力を食うVPS装甲も太陽炉によって弱点を解決されているので全く頓着することなく向かって来るインパルスに、ガイアもビームサーベルを抜いて立ち向かう。

 

「こいつと同じ装甲。あれも新型か……」

 

 ビームサーベルと長大なレーザー刀のぶつかり合いは、対艦刀である後者に分がある。呆気なく吹っ飛ばされたガイアだが予見していたかのように踏ん張り、もう一本のビームサーベルを取り出して二刀となった。

 ガイアが二刀となるやインパルスも対艦刀の連結を外して相対する。

 

「どういうことだ、あんな機体の情報は…………アウル!」

 

 正規パイロットで機体に乗り慣れているシンとデータでは知っていても実機に乗ったのは今日が始めてのステラ、両者の戦いは若干前者が有利で推移していた。ザクウォーリアの動きに注意を払っていたスティングは遠くで他の格納庫やモビルスーツを破壊してる仲間の名を呼んだ。

 

「そこのザク! さっさと離脱して下さい!」

 

 四足歩行の獣形態に変形して向かって来たガイアの突進を躱し、撃たれたビーム突撃砲をシールドで受け止めながらシンはザクに通信を繋げた。

 ニューミレニアムシリーズのザクウォーリアと最新鋭機であるセカンドステージシリーズでは機体性能に差があり過ぎるので、離脱を求めたのは下手に介入されても邪魔にしかならないからである。

 

「離れていいのなら離れるが、緑のガンダムがそちらを狙うが構わないか?」

「はぁっ!? 何を言って――」

 

 空中にいるガイアにビームブーメランを投げ、モビルスーツ形態に戻ってシールドで受け止めたが弾き飛ばした一瞬にシンはザクとカオスの位置関係を見る。

 ビーム突撃銃とビームトマホークを持ったザクの位置取りはガイアを常に背後に置いており、カオスが攻撃をすれば味方に当たる可能性を常に敵パイロットにちらつかせている。そんなことが出来るパイロットが乗っているのならば、もしもカオスが下手な行動をすれば一気呵成に仕掛けて来ることは想像に容易い。故にカオスは動けないでいる。

 

(アイツ、何者だ?)

 

今戦っているガイアのパイロットは機体性能を十分に引き出している。シンと技量に大きな差はなくカオスのパイロットも同レベルならば、その相手の機先を性能で劣る機体で完全に制し得るザクのパイロットに興味を持ったが、通信画面に目をやる時間は残っていなかった。

 

「このぉおおおっ!」

 

 再び向かって来るガイアにビームライフルで牽制して隙を探す。

 

「シン! 命令は捕縛だぞ!」

 

 突然、スピーカーから母艦であるミネルバの副長アーサー・トラインの声がコックピット中に響き渡る。

 

「分かってるのか、あの機体は我が軍の――」

「そんな余裕はありません! 手を抜けるような相手じゃないんですよ!」

 

 捕縛を出来るのならば既にしている。機体性能はほぼ互角、ガイアのパイロットとシンに大きな技量差が無い以上、捕縛を優先すれば逆に撃破されかねない。命令を優先して死にたくはないシンは怒鳴った。

 

「捕縛したいって言うならアスラン隊長を寄越して下さい!」

「そうしてやりたいが機体のシステムトラブルで直ぐには無理だ。今暫く耐えてくれ」

「肝心な時に……!」

「セイバーはロールアウトしたばかりなんだ。仕方ないだろう!」

 

 シンの文句もアーサーも苛立ったように返す。

 

「大体、あの人は何時もそうだ! 前大戦の英雄だからって――」

 

 どうにもウマが合わないが腕には絶対的な信頼がある隊長ならば出来ると期待したのに裏切られた気分だった。

 こんなことになっている憤りを、シュミレーションでも実機でも一度も勝てた試しがないのに必要な時に現れない隊長にぶつけていると、通信相手が切り替わる音が鳴った。

 

「演習ではないのよ、シン! 文句を言う暇があったら気を引き締めなさい!」

 

 狂ったように向かって来るガイアのビームサーベルをシールドで弾きながら、艦長であるタリア・グラディスの叱責に歯を食いしばるシンの耳に警報音が鳴った。

 

「アビスも来たか!?」

 

 1対1で互角なのに2対1となると状況的に厳しい。

 シンがどうするべきかと判断に迷っていると、背後に移動してきたザクウォーリアが再度通信を繋いで来た。

 

「味方は何時来る?」

「分かりません。直ぐには来れないかも」

 

 空を飛んできたアピスが肩のバインダーを開いて2連装ビーム砲を撃って来た。

 飛び退いて散開したところをガイアとカオスがそれぞれ襲い掛かる。ビームが地面に着弾したことで発生した噴煙に紛れるように獣型モードに変形したガイアが翼部ビームブレイドを煌めかせてザクウォーリアの背後に迫る。

 

「危な――」

 

 モニターにその姿が映ったことから注意喚起しようとしたシンの視線の先で、まるで最初からガイアの行動を予測していたかのようにザクウォーリアが回し蹴りを放ってガイアの顔面を蹴り飛ばした。

 

「何か?」

「いえ……」

 

 何時の間にかビームトマホークを持っていないと思ったら背後でカオスが吹っ飛ばされているし、誰かは知らないが明らかに凄腕なパイロットにシンは何も言えなくなった。

 

(この人、もしかしてアスラン隊長より……)

 

 ザフト最強パイロットの名を欲しいままにしているアスラン・ザラよりも技量は上かもしれないと、何度も挑んでもコテンパンにやられているシンだからこそ感じていた。

 インパルスがアビスにビームライフルで牽制射をしながら地面に降りると、リニアシートの揺れと同時に計器が異常を示した。

 

「地震?」

「コロニーで地震って、何を言って………え、誰? 女の声?」

「――――これは外からの攻撃だ!」

 

 地球育ちなので勘違いしたカガリの声が通信先から聞こえて来てシンが混乱していると、コロニー育ちのキラは直ぐに原因を突き止めて叫んだ。

 そしてそれはスティング達が待っていた待望の合図だった。

 

「スティング、今の!」

「分かってる、お迎えの時間だ」

 

 期せずしてシン達と相対する格好で距離が取れている状態のスティングが苛立ちも露わに吐き捨てる。

 

「タイムオーバーだ。撤退するぞ」

「アレはどうするのさ」

「予定にない四機目のことなど俺が知るか。くそ、サーシェスのやつ。あんなの予定にないぞ」

 

 スティング達に与えられた命令の中には四機目の情報などなかった。本来ならば既に撤退の準備を整えているのに、こうして邪魔をされている上に予定にない強者と戦うことになるとは想像もしていなかった。

 

「撤退するぞ。遅れたらサーシェスの野郎は俺達を置き去りにしかねない」

「でも、絶対に追撃してくるよ、あいつら」

「構うな。今は逃げることを第一とする。逃げ切れればOKだ」

 

 と、スティングとアウルが話している間にガイアが飛び出して二機に攻撃を仕掛けていた。

 

「ステラ、下がれ!」

 

 ザクウォーリアのビーム突撃銃を躱したところをインパルスの対艦刀が襲い掛かるのを、カオスがビームライフルを撃って牽制する。

 

「でも!」

「離脱すると言っているだろう。敵も集まってきている。どっちにしても引き時だ」

 

 撃ちかけられたビームを回避して、尚も敵に向かおうとしているステラを説得する。

 上空遠くからモビルスーツらしき影をセンサーが捉えている。スティング達の味方はコロニーの外にいるはずで中にまで入ってくる予定はない。となれば、ザフト側の援軍なのは確実で、これ以上の敵はスティング達の情勢を不利にしかない。

 

「あの新型の首でも土産にしたいところだが、そうも言ってられない。従え、ステラ!」

 

 インパルス一機やザクウォーリアに乗っているがただのザフト兵ならばスティングもこの場で仕留める選択をしたが、そうではないのだから引き時を見誤れば死ぬのは自分達だと理解している。

 

「直ぐに沈めるッ!」

 

 完全に頭に血が上っているステラに冷静な判断は下せなかった。

 静止を振り切ってガイアを進ませようとしたステラの耳にアウルの声がポソリと呟くのが聞こえた。

 

「じゃあ、お前は勝手に一人で死ね(・・)よ!」

 

 死、というワードがステラの耳に入って脳が認識した瞬間にステラの全身が氷のように固まった。

 

「アウル!」

「あ、やべ」

 

 スティングが叱責の声を上げるも遅く、アウルも苛立ちから漏らした言葉を取り戻せない。

 挙動の先が入力されずにガクンと不自然な動きをするガイアの隙を見逃さず、ザクウォーリアがビーム突撃銃を放つ。

 

「アウル、余計なことを……っ!」

 

 アビスが間に入って両肩部シールドでガイアを庇い、カオスが突撃しようとして来たインパルスを牽制する。

 

「悪かったって! ほら、こんなことで言い合いをしている暇はないよ!」

「ちぃっ!」

 

 ザクウォーリアが閃光弾を投げて来て視界が塗り潰される。

 カオスはモビルアーマー形態に変形して硬直しているガイアの手を取って空を飛び立った直後、インパルスの対艦刀が先程まで三機がいた地面を砕いた。

 

「逃げる!?」

 

 事前の打ち合わせ通りに動いたものの仕留められなかった己の不甲斐なさを感じるよりも、強奪された三機が天頂方面に向かって行くのを目にしてシンはインパルスの銃口を上に向けた。

 

「駄目だ。万が一にでもコロニーに当てたら――」

 

 シンの狙撃の腕はお世辞にも高いとは言えない。インパルスのビーム程度でコロニーが壊れることはまずがないが、地球の大地と比べれば脆いことを考えると迂闊な行動は取れない。

 せめて当てられる距離にまで近づかなければならないと考え、急いで逃げた三機を追って飛ぶ。

 

「追え、キラ! 奴らを逃がしたら二年前の二の舞になる!」

 

 三機を追って飛んで行くインパルスの姿を目にして、カガリがキラを急かす。

 

「けど、カガリ。これ以上、君を戦闘の最中にはいさせるわけにはいかないよ。後はザフトに任せて、どこか安全な場所に――」

「そんなことを言っている場合か! 同じ新型のガンダムタイプでも倒せないのに、お前が抜けたら奴らに逃げられる!」

「でもね。カガリは代表首長なんだから国の為にも」

 

 新型ガンダムタイプの脅威は実際に戦ったキラの方が良く分かるからこそ、なんとかカガリだけでも安全な場所に避難させたいので説得を重ねる。

 

「私のことはどうでもいい。私は今、世界で一番安全な場所にいるんだ。守って、くれるんだろう?」

「また、そういうことを言う」

 

 呆れつつも、その全幅の信頼には応えたいと思ってしまうのだからカガリは罪作りだとキラは思い、ザクウォーリアを飛び立たせて先を行く四機の後を追う。

 

「ミネルバ、フォースシルエットを!」

 

 今、インパルスが纏っているソードシルエットは近接戦闘に特化しており、先に飛んでいる三機との距離を詰めるには機動力が足りない。ならば、機動力の高いシルエットであるフォースシルエットを母艦であるミネルバに要求する。

 

「艦長?」

 

 ミネルバの艦橋にてシンの要求に副長のアーサーが戸惑った顔でタリアの顔を見上げる。

 

「許可します。射出して!」

 

 タリアは一切の迷いなく決断して、肩越しに背後を振り返って先程ミネルバに到着したばかりのデュランダル議長を見た。 

 

「――――もう機密も何もありませんでしょう?」

「ああ」

 

 デュランダルは常の笑みを口元に浮かべながら首肯する。

 

「フォースシルエット、射出シークエンスを開始します。オールシステムズゴー。シルエットフライヤーをプラットホームにセットします。中央カタパルトオンライン。非常要員は待機して下さい」

 

 粛々と作業工程が消費されるも、奪還された三機を追うシンにとっては一秒が長く感じる。

 

「早く速く!」

 

 気持ちばかりが逸りつつも、先を行く三機も迎撃に出て来たゲイツRといった今となっては式典用や訓練学校の演習用にしか使われていないモビルスーツの邪魔にあっているのが見えた。

 機体性能は明白だがカオスがガイアを曳航していることで蠅のように群がりつつある包囲網を直ぐには突破できていない。その間にインパルスが追いつく。

 

「突破される? させるかっ!」

 

 視界の中でガイアがカオスから離れて反撃に乗り出したことで突破されるのは時間の問題というところで、シンは背中を向けているアビスに向かってビームブーメランを放つ。

 仲間の警告を受けたのか、アビスは孤を描いて近づいてビームブーメランをビームランスで弾いた。

 獣型に変形したガイアがビームブレイドでジン・ハイマニューバ二型を撃破し、遂に包囲網を突破してコロニーの外壁に向けてビーム突撃砲とビームライフルを放つ。

 

「アイツら、コロニーに穴を開けようって言うのか!!」

 

 コロニーで暮らす者にとって最大の禁忌を犯そうとしている強奪犯にシンは激怒した。

 まずは遮二無二ビームを撃ち続けているガイアを止めなくてはならないと標的を定めたところで、センサーが背後からの接近警報を伝える。

 

「兵装ポッドだって?」

 

 足止めのモビルスーツを全機撃破し終えたカオスの背面にマウントしていた筒型のユニットが切り離されてインパルスの背後を取っていた。

 シンは機体を切り返し、撃たれたビームを躱しながら兵装ポッドを撃ち落とす為にビームライフルを撃つ。

 

「くっ、良く動く。奪った機体でここまで……!」

 

 軽やかに避けた兵装ポッドにビームは当たらず、逆にアビスのカリドゥス複相ビーム砲とバラエーナ改2連装ビーム砲をシールドで受けたものの吹っ飛ばされる。

 今日初めて乗ったとはとても思えない敵機の動きにシンは歯噛みする。

 

「先にこいつらをやるしかない」

 

 アビスとカオスに比べればガイアの火力は左程高くはない。二機のどちらかにガイアの方に行かれた方が厄介だと判断したシンは決断した。

 

「行かせるか!」

 

 カオスの兵装ポッドを囮にして、ガイアの下へ回り込もうとしていたアビスの機先を制して対艦刀を叩き込む。

 

「こいつ、しつこい!」

 

 対艦刀をビームランスで受け止めたアビスは、他のモビルスーツと違って容易く落とされてくれないインパルスに苛立つ。

 

「離れろ、アウル!」

 

 スティングの警告に従ってインパルスから距離を取ると、カオスがビームライフルとファイヤーフライ誘導ミサイルが放つ。

 インパルスはシールドでビームを受け止め、ミサイルをビームライフルで撃ち落とす。

 

「いい加減に落ちろっ!」

 

 インパルスが迎撃行動に入っている間に全天周囲モニターでも死角になりやすい直上からアビスが3連装ビーム砲を放ってきた。

 

「ちいっ!?」

 

 シールドを直上に向けている暇はない。機体を錐揉みさせて3連装ビーム砲を回避したところでカオスの兵装ボッドを迫る。

 体勢を崩しながらも移動しながらの五回にも渡るビームを時に回避し、時にシールドで受けた直後、カオスがモビルアーマー形態に変形して襲い掛かって来た。

 

「エクスカリバーが!?」

 

 カオスのビームクローが対艦刀の実体部分を切り取り、 エクスカリバーと銘打たれたレーザー対艦刀が真っ二つとなってしまった。

 兵装ポッドを装着し、尚もモビルアーマー形態で向かって来たカオスにインパルスがビームライフルを向けたところで、右方面からアビスのバラエーナ改2連装ビーム砲が放たれようとしていた。

 

「っ!?」

 

 咄嗟に気付いて回避するもビームライフルの半ばまでがビームによって融解し、爆発を起こす前に投げ捨てる。

 シールドで爆発を防いだところでカオスの存在を思い出した。

 

「しまっ――」

「貰った!」

 

 迂闊な敵に舌なめずりしそうな心境でスティングの操るカオスのビームクローがインパルスに迫る。

 

「させない!」

 

 後少しでインパルスに迫ったカオスの横っ腹に、ようやく追いついたキラのザクウォーリアが一切減速することなく最高速のままで放った蹴りが突き刺さる。

 

「ぐうぅっ!」

 

 幾ら実体攻撃には無類の強さを発揮するVPS装甲と言えども衝撃の全てが消えるわけではない。リニアシートに固定されていてもパイロットスーツを身に着けていないスティングはあまりの衝撃に歯を食いしばるも意識が一瞬飛んだ。

 

「スティング!」

 

 追撃を仕掛けようとしていたザクウォーリアにアビスが切り込む。

 

「…………大丈夫だ、アウル。ステラは?」

「まだコロニーに穴を開けれてない。クッ、こいつは並じゃない!」

 

 機体性能差をパイロットの技量差で埋めるどころか逆に超えて来る敵の変幻自在の攻撃に、機体に熟練していないアウルの方が追い詰められていた。

 全ての武装を失ったはずのインパルスはどうしたのかと探すと、少し離れた場所で背部の装備を切り離しているところだった。

 

「何を――」

 

 戦闘機にしては小さな飛行体がスティングの視界の端を横切り、インパルスの背面にマウントした。

 

「なっ、装備を換装しただと!?」

 

 インパルスの背面に赤い羽根が広がり、機体の色が白と赤を基調とした色から青色が多くなった。

 

「ストライクタイプのガンダムをザフトも開発していたのか。なら、この装備は………!」

 

 過去の機体の特徴はスティングの頭の中に入っている。

 先程の赤を基調としていた時は対艦刀からストライクで言うソードストライカーパックを装着した状態と予測出来る。そして大型可変翼を装備した今のインパルスの特性にも容易に推測が立てられる。

 

「やはり機動力重視の装備か!」

 

 ビームライフルを放つも簡単に避けられ、抜き放たれたビームサーベルを回避しながら格段に増した機動力にスティングは己の推測が当たったことに舌打ちする。

 スティングを抜いたインパルスが一気に粒子を放ちながらビームを放ち続けるガイアの方へと迫る。

 

「ステラ!」

 

 下手に撃てばガイアに当たると、迷いを抱えたままスティングがステラの名を叫ぶ。通信から聞こえて来たスティングの声にステラも反応する。

 

「止めてぇぇぇぇぇっ! あっちに行ってっ!」

 

 ビームを放って来るガイアの攻撃を事も無げに避けながらインパルスが接近していく。瞬く間に肉薄してくるインパルスにステラの心胆は冷え切っていた。

 インパルスがビームサーベルを振り抜き、ガイアが必死に避けたところでがら空きの腹に蹴りを叩き込む。

 

「ぐぅっ!?」

「堕ちろォォォッ!」

 

 明確な隙を晒したガイアにビームサーベルが迫る。

 命令は捕縛であるが最早、事態はそんな領域にはない。堕とせる時に落とさなければならないと決意したシンの意志がビームサーベルの輝きと共にガイアのコックピットに迫る。

 

「ステラをやらせるか!」

 

 カオスが持てる射撃兵装の全てをインパルスに向かって放った。

 視界の端でカオスの挙動を捉えていたシンには三つの選択肢があった。被弾覚悟でガイアへの攻撃を続行するか、回避するか、攻撃を受けるか、の三つの選択肢が。

 背後にガイアの攻撃を受け続けていたコロニーの外壁が無ければ、前者二つをシンは選んだだろう。

 

「くそぉっ!」

 

 あわよくばガイアも巻き込んでくれればと考えながらシールドでカオスの射撃兵装の攻撃を受ける。

 スティングの目論見通り、ガイアのいない側に狙いをつけて放たれた射撃兵装の半分はシールドに直撃してインパルスを弾き飛ばし、残る半数が横を通り過ぎてコロニーの外壁に着弾して遂に穴を開けた。

 

「ステラ、アウル、飛び込め!」

 

 インパルスにビームクローによる飛び蹴りをしてガイアから距離を取らさせ、兵装ポッドを切り離してザクウォーリアをアビスから離す。

 ガイアが真っ先に外壁に開いた穴から宇宙に飛び込み、カオスがザクウォーリアに、アビスがインパルスに射撃兵装をありったけ放って飛び込んでいく。

 

「逃がすか!」

 

 シンは一瞬、穴を塞ぐ方法を考えたがインパルスの装備ではどうすることも出来ない。戦闘用モビルスーツに出来ることは戦うことだけ。穴を通って行った三機を逃がしてはならないと、インパルスをコロニーの外へと出させた。

 

「やっぱり行くの?」

「当然!」

 

 一応の確認の為にキラが問いかけるも、早くと言わんばかりに膝をバシバシとカガリに叩かれてザクウォーリアを空いた穴に向かわせる。

 箱庭の外には真空の宇宙が広がり、目印が無ければどこまでも果てしない星の空間が広がっていく。

 

「あのストライク擬きは……?」

 

 タイプが似ているからといって無体な仇名を付けたカガリが全天周囲モニターを見渡して探す。

 

「ちょっと待って」

 

 目視で探すよりもセンサー類に任せた方が早いと知っているキラはスイッチを幾つか押して、予測進路からインパルスの位置を割り出す。

 ピッピッと電子音の後に左下方に遠目のインパルスの姿がモニターに映り、数倍に拡大される。

 

「初めて乗った機体をもう使いこなしてるよ、こいつ……」

「基本的なところは似たようなものだし、一度OSを見れば大体の操作方法は分かるよ」

「いや、分かるはずがない」

「僕は、コーディネイターだから」

 

 自身の異常性を一言に纏めたキラに、コーディネイターでもお前と同じことを出来る者は二人といないだろうと内心で思いつつもカガリは口にしなかった。

 

「…………三機を見失ったようだね。Nジャマーにミノフスキー粒子も散布されている。GN粒子もある中で、これじゃあセンサーも碌に働かない」

 

 モニターの中で拡大されたインパルスも三機を探しているのだろう。目的もなく彷徨っているように見えた。キラが手元の機械を触ってセンサーの探知範囲を拡大してもノイズばかりで返って来るものはない。

 

「逃げられた、か」

「そのようだね。どうする? コロニーの外壁に沿って探してみる?」

 

 コロニーを出てから左程時間も経っていないのにセンサーに引っ掛からないのはおかしい。隠蔽能力に長けた母艦がいて、既にそこに入ったとするなら捜索は他国人のキラ達がすべきではない。

 

「コロニーに戻って議長を探そう。流石に今の状況はよろしくない」

「分かった」

 

 オーブの人間であるキラやカガリがこうしてザフトのモビルスーツに乗り、戦闘まで行ったのだから問題となるかもしれない上に、身元を保証してくれるのがデュランダルしかいないことに遅まきながら気づいた。

 少し離れてしまったコロニーに戻ろうと、機体を返そうとした時だった。突然、キラの感覚に触るものがあった。

 

「あぐっ!?」 

 

 キラが予告なくザクウォーリアを幾度も上下左右に旋回させた。急激なGの発生にカガリの口から何度も苦痛の声が漏れる。

 

「これは……!」

 

 視界の端で同じ攻撃に晒されて同じように回避行動を行ったインパルスがシールドでも受けきれずに右足に被弾したのを目にしながら、嘗て似たような攻撃を受けたことのあるキラは背筋を粟立たせていた。

 インパルスとザクウォーリアの周りを高速で飛び回ってビームを放っていた飛来物が失ったエネルギーの充填する為に主の下へ帰る。

 

「――――活きの良い奴がいるようじゃねぇか」

 

 飛来物がスカートアーマー内に収容され、その機体の背面から赤いGN粒子がパッと吹き出す。

 

「始めようじゃねえか! ガンダム同士によるとんでもねえ戦争ってやつをよぉ!!」

 

 地球連邦軍ティターンズ所属のファントムペイン部隊隊長であるアリー・アル・サーシェス大佐は乗機であるアルケーガンダムを駆り、嬉々として言い放った。

 

 

 

 

 




ムウがコミックボンボン版ルートなので確実に死んでいるので、代わりではありませんがアリー・アル・サーシェスの登場です。
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