種運命×Z×OO   作:スターゲイザー

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昨日、機動戦士ガンダムSEEDFREEDOMを見に行ってきました。

ウジウジ、メソメソしているキラからしか得られない栄養があると理解しました。

アコードがイノベイター的というかニュータイプ的な能力を持っているとして、本作ではあまり目立たなくなってしまったというか。

本作では、始まりのコーディネーターであるジョージ・グレンはイノベイター(イノベイド)を参考に造られたと構想しているのでアコードを出すとしてもリボンズの部下か、体の良い手駒になってしまう恐れが……。


PHASE-05 星の狭間で

 

 

 

 

 

 デブリベルトで戦闘に介入して来た片方の勢力の内の母艦であるアーガマの艦長との通信が行われるミネルバ。

 ブリッジで行われる通信にカガリ・ユラ・アスハと、アレックス・ディノを名乗っているキラ・ヤマトとパイロットスーツを着替えたアスラン・ザラも戦闘後に直ぐに戻って来て同席していた。

 

「どうかされましたかな、ブライト艦長」

 

 互いに名乗り合ったところで向こう側が何やら驚いている様子に、プラント最高評議会議長であるギルバート・デュランダルが訊ねる。

 声掛けに我に返ったエゥーゴ所属アーガマ艦長ブライト・ノアが咳払いをする。

 

『あ、いえ、失礼しました。通信越しの所為か、議長の声がクルーの一人とそっくりに聞こえたもので』

「ほう、それは興味深い。昔の諺では世界には自分とそっくりな人間が三人いるというが、私は今まで生憎会ったことがない」

『聞けば聞くほど似ていますが、恐らく顔はそれほど似てないかと』

「恐らく?」

『サングラスを外さない人なので』

 

 ブリッジで通信を聞いていたミネルバ艦長のタリア・グラディスは思わずデュランダルがサングラスをかけて外さない姿を想像をして吹き出しかけた。ブリッジ員の何人かはタリアと同じ想像をしたらしく、前を向いている肩が揺れている者が何人かいた。

 一度ブリッジを見渡したデュランダルは僅かに目を細め、再び通信画面に視線を戻す。

 

「エゥーゴには様々な人がおられるようだ。まさかホワイトベースの艦長が指揮しておられるとは」

『自分は二隻も船を沈めてしまった艦長です』

「常に最前線にいながら艦と共に無事に終戦を迎えた艦長など数えるほどですよ。それこそ浮沈艦とまで呼ばれたアークエンジェルの方が例外だ」

 

 一度そこで言葉を切るデュランダル。

 

「ブライト艦長は随分とガンダムと縁があるようだ。しかも、貴艦にはアムロ・レイの再来もいると聞く。一年戦争を思い出す人も多いことでしょう」

『刎ねっかえりに苦労していますよ。私を含めてそう期待されている面もありますが、()をキラ・ヤマトの二の舞にはしたくないものです』

 

 ハッ、とブライトは自分で言った言葉は通信相手であるデュランダルには不適切であると気づいて陳謝する。

 

『ザフトの方々の前で言うことではありませんでしたね。申し訳ない』

「気になさらず。もう終わっていることです」

『しかし、ガンダムというならそちらも同じでしょうに』

 

 インパルスとセイバーのことだというのは直ぐに分かる。苦笑を浮かべたデュランダルは右手を上げて軽く振る。

 

「三機も奪取された身では何も言えないがね。しかし、彼らがティターンズと一緒に去ったということはやはり(・・・)地球連邦なのか……」

『二年前の意趣返しか、エゥーゴにされたのをやり返したのかは分かりませんが、議長は彼らを地球連邦とは見てなかったと?』

「今の情勢で確たる証拠もなしに決めつけたくはなかった。どんな火種になるか、分かったものではない」

 

 ともあれ、現状ではそれ以上に厄介な問題が見つかり、こうして本来ならば友好以前に交流すら持っていなかったプラントとエゥーゴが通信を交わす必要性が生まれた。

 

『この特大の火種をどうするか、ですね』

「うむ、こちらでもユニウスセブンの動きは確認した。情報提供に感謝したい」

 

 伝えると通信画面のブライトは少し気まずげに視線を逸らす。

 

『次の作戦策定中に偶発的に気づき、対処に動いていたところでデュランダル議長と出会えたことは幸運でした。我らにはプラントへの直接の連絡ルートがなかったもので』

「早急にルートの構築を指示しておこう」

 

 背凭れに凭れ直したデュランダルが思案気に口を開く。 

 

「百年の安定軌道にあると言われていたはずものだ。隕石の衝突か、はたまた別の要因か……」

『原因はともかくとして、動いている。今、この時も地球に向かって』

「回避手段の模索や原因の究明にプラントも全力を上げている。エゥーゴにも正式に協力を依頼したい」

『自分の妻子も地球に住んでいます。拒否する理由はありません』

「よろしく頼む」

『それでは』

 

 通信が切れて画面がブラックアウトして、デュランダルは同席はしたものの口を挟むことは無かったカガリの方へと向き直る。

 

「結果的にアーモリワンから連れ回す羽目になったこの度のこと、本当に申し訳ありませんでした、アスハ代表」

「こちらのことなどいい。このような結果に終わったこと、私も残念に思う。早期の解決を心よりお祈りする」

「ありがとうございます」

 

 落ち着いた言葉で返したカガリに、デュランダルは恭しく礼を述べる。

 

「本国ともようやく連絡が取れました。既にアーモリーワンへの救援、調査隊が出ているとのことですので、内一隻をこちらへ皆様のお迎えとして回すよう要請しておりましたが、またもやのアクシデントで姫には大変申し訳ないのですが、私は間もなく終わる修理を待ってこのミネルバにもユニウスセブンに向かうよう特命を出しました」

「難しくはありますが御国元とも直接連絡の取れるよう試みてみます。出迎えの艦とも早急に合流できるよう計らいますので。代表にもどうかそれを御了承頂きたいと」

「無論だ。これは私達にとっても…………いや、寧ろこちらにとっての重大事だぞ。そこで議長に一つお願いしたいことがある」

 

 頭を下げるデュランダルに続くタリアの言葉を受け、カガリが提案を持ちかける。

 

「なんでしょうか?」

 

 提案を待ち望んでいるかのように薄く笑みを浮かべているデュランダルから、カガリは自身の背後で後ろ手に立つキラへと目を移す。

 

「こちらのアレックスを作業に同行させて頂きたい。無論、そちらの指揮に従うと約束する」

 

 カガリの提案を吟味するように手摺に置かれていた左手の人差し指をトンと動かしたデュランダルが、そうと言われなければ分からない程度に眉間に力を入れているタリアへと視線を向ける。

 

「ふむ、どうだろうか艦長? 私としては先程の数多の激戦を潜り抜けてきた者の力を見て否やはないが」

「エゥーゴとも協力関係にあるのです。こちらの指示に従うと言うなら私に拒否する理由はありません」

 

 ザフトへの指揮権もある最高評議会議長の決定を一艦長が覆せるはずもない。第一、既に手を借りているのだから二度目を断ったところで心象を悪くするだけと、諦めが先行した受容を見せたタリアにカガリが笑みを浮かべる。

 

「ありがとう、デュランダル議長、グラディス艦長。では、任せたぞアレックス」

「はっ」

 

 固く請け負うキラに、タリアは先程の戦闘では時間が無かったとはいえ、彼が着の身着のままでモビルスーツに乗ったことを思い出した。先程戦闘時には時間が無かったから仕方ないとはいえ、もう一度モビルスーツに乗るとなればパイロットスーツを着て貰わなければならない。

 

「アスラン、後で彼にパイロット控室に案内してパイロットスーツを見繕ってちょうだい」

「分かりました」

 

 戦闘後、状況が落ち着いてパイロットの待機命令が解除された一同は隊長を除いた面子で固まりながらレクリエーションルームへと向かっていた。

 

「うわぁ~」

「そんなに落ち込むなよ、ルナ」

 

 らしくもなく肩を落として進んでいたルナマリア・ホークの珍しい態度にシン・アスカが下手くそな慰めをかける。

 

「落ち込まずにはいられないわよ。完全に隊長の足手纏いにしかならなかったのよ、この私が!」

 

 ギリギリと歯ぎしりすらしそうな剣幕のルナマリアにシンが助けを求めるようにレイ・ザ・バレルを見るも、彼にもどうにも出来ないと首を横に振る。

 

「赤を着ていて、こんな無様晒すなんて……」

 

 ザフトで赤の軍服を着れるのは、士官学校での卒業成績が優秀だった証。前大戦後にザフトにも階級制度が導入されたので、緑服の者の方が階級な上なことは珍しくもないが赤服を着れるというだけで一種の誇りを抱かせるものがある。

 まだヒヨッコの自覚はあったが足手纏いにはならないだけの自信を木端微塵に砕かれたルナマリアが荒れているところに、廊下の向こうから彼女の妹であるメイリン・ホークがやってきた。

 

「あ! シン、お姉ちゃん、レイ!お疲れ様…………お姉ちゃん、どうしたの?」

「隊長の足を引っ張ったって自己嫌悪中」

「んがー!」

 

 少し離れた所で足を止めたメイリンに事情を正直に話したシンにルナマリアが襲い掛かった。

 

「うわ!? 止めろって!」

 

 掴みかかって来たルナマリアの腕を直前で掴んで止める。

 無重力空間なので力が入らないこともあってクルクルと回る二人からレイが距離を取る。

 

「人に言われたら腹立つのよ!」

「傍若無人過ぎるだろ!?」

「アンタ達だって他国の人間に艦を守ってもらって恥ずかしくないわけ!」

 

 手を振り解いたルナマリアの指摘にシンが眉根を寄せる。

 

「でも、元はプラントの人なんだろ、あの人」

「それが良く分かんないだよね」

 

 姉の癇癪に巻き込まれないように避難していた安全圏から一歩踏み込んだメイリンに顔を向ける。彼女は指を頬を当ててちょっと考える様子を見せていた。

 

「歌姫の騎士団のエース、フリーダムのパイロットってことぐらいしか分かっていないの。ラクス・クラインがどこからか連れて来た謎のパイロット。噂だとクライン派が秘密裏に育て上げてたスーパーエージェントだとか」

「流石に三文芝居の見過ぎだろ」

「それがそうでもないのよ。当時は戦時だったけどプラントにキラ・ヒビキという人間がいた形跡はないんだって」

「突然現れた出自不明の謎の存在だってニュースの人も言ってたもんね」

 

 地球連邦の勢力の一つである大西洋連邦によってオーブが占領された直ぐ後にシンはプラントに渡っている。

 プラントに親類縁者もいなかったので一人で生きていくためにザフトの士官学校に入り、戦争に係る詳しいニュースを見る気になれなかったので当時の情報に疎い。姉妹揃ってミーハーな面があるホーク姉妹とは情報量が違う。

 

「実際、凄かったよ。敵をバッタバッタと倒して、歌姫の騎士団であのアスラン隊長を差し置いてエースと言われるだけの実力があるなって思ったもん」

「知ったかぶりしない」

「痛っ!?」

 

 ブリッジで戦況を観測していたメイリンが頬を紅潮させて語っていると、ルナマリアが後頭部を軽く叩いて止める。

 思いの外、痛かったのか叩かれた後頭部を擦っていたメイリンが疑問を口にする。

 

「でもぉ、本当に名前まで変えなきゃなんないもんなの? 英雄なんじゃないの、あの人」

「何言ってのよ、アンタは。幾ら戦争を止めたって言っても、最新鋭機は奪うわ、攻撃を仕掛けるわ。今のザフトでやったら即銃殺刑もんよ? 功罪を合わせても、そのままの名前で再入国なんてとても受け入れられるわけじゃない」

「まあ、ラクス・クラインでもプラントを出て行っちゃったぐらいだもんね。私、あの人の歌はあんまり知らないけど」

「アンタ、イケメンが好きだもんね」

「お姉ちゃんもじゃない」

「はっ、美人なら毎日鏡で見てるもの」

「うわっ、凄い自信。でも、否定できない」

 

 完全に姉妹だけで話し始めて周りを蚊帳の外にする二人。

 女は二人揃うと姦しい。レクリエーションルームに入って飲み物を手にしてレイと二人で眺めていると、整備班のヨウラン・ケントとヴィーノ・デュプレが室内に入って来た。

 

「おっ、シン達じゃん。今、休みか」

「ああ、ヨウラン達もか?」

 

 二人は姉妹で楽し気に話しているホーク姉妹をチラリと見てシンとレイの下へとやってくる。

 

「当直終わり。それよりも聞いたか、ユニウスセブンのこと」

「動いてるって話だろ。メイリン、地球への衝突コースだって本当なのか?」

「あ、うん。バートさんがそうだって」

 

 こういう話はブリッジ要因に聞いた方が早い。姉と話していたところでヨウランに話題を向けられたメイリンが顔を向けて返答する。ヴィーノは喉が乾いていたのか、飲み物を取りに行く。

 メイリンがシン達の話に入ったので、ルナマリアも合流する。

 

「はぁ~、アーモリーワンでは強奪騒ぎだし、それもまだ片づいてないのに今度はこれ? どうなっちゃってんの」

「俺に言われても…………聞いた話じゃ、エゥーゴと協力するんだって」

「今頃、その話を通信で艦長たちがしてると思う」

 

 ヴィーノが自分の分だけでなく、ついでにヨウランの分も持って来た。

 

「へぇ、本当だったんだな。じゃあ、エゥーゴのモビルスーツって見たのか?」

「何機かは。後、ティターンズのも」

「マジか!?」

 

 シンが記憶を思い出して脳裏にモビルスーツの姿を蘇らせていると、息せき切んだヨウランが顔を近づけて来た。

 男に顔を近づけられて喜ぶ趣味もないシンは顔を掴んで遠ざけつつ、ヨウランがそうなる原因を思い出して納得する。

 

「なんだ、モビルスーツマニアの血が騒いだのか?」

「そりゃあな。モビルスーツに興味が無ければ整備班なんてやってないって」

「それはお前だけだ」

「そう言うがヴィーノ、お前だって興味はあるんだろ?」

「…………ちょっとはな」

 

 興味を誤魔化すように飲み物で顔を隠すヴィーノに仕方ないとばかりに肩を竦めるヨウラン。

 趣味をオープンにしているヨウランとちょっと隠し気味なヴィーノに、その辺りの気持ちにはとんと無頓着なルナマリアが膝についた両手に顎を乗せる。

 

「私は殆ど見てないな。ミネルバに戻って来た時、向こうの艦に入ろうするのがチラッと見えたぐらい」

「じゃあ、シン達は?」

「って言われてもな、人に何か言えるほどのもんじゃないよ」

 

 ヨウランの問いに、自身が操るインパルスに似た白いモビルスーツがシンの脳裏を一瞬過った。

 

「そりゃあ分かってるよ。もう単刀直入に聞くけどガンダムMk-IIってどうだった? それだけは知りたい」

「ガンダムMk-IIって、エゥーゴの新型ガンダムって言う?」

 

 そう言えばそんな名前だったかと、今更ながらにシンは脳裏のモビルスーツと名前が結びついた。

 

「正確にはティターンズが開発したのをエゥーゴが奪って運用してるって話らしいけどな」

「なんて、既視感(デジャヴ)

 

 ヴィーノの言い様に、アーモリワンからのアレコレを思い出してちょっと複雑気なルナマリアにヨウランが苦笑する。

 

うち(ザフト)が今、正に似たようなことされるからな。で、どうだったんだ?」

「どうって言われても」

「性能とかだよ。連邦のあのガンダム(・・・・)なんだぜ。なにかあるだろ」

 

 その名に大きな意味があることをその場にいた誰もが知っていたが、戦禍から程遠いオーブ連合首長国で過ごすシンは本来は物静かで大人しい性格も相まって戦争に対する知識を士官学校で得ても重さを実感できていない。

 ガンダムの名の重要さを知っていても、それ以上の意味を感じ得ていない様子のシンを見たレイが答える。

 

「戦闘をしたわけではないから性能に関しては分からない。が、乗り手は間違いなくエースだ。動きを見れば分かる」

「俺もレイと同じ意見だ」

「お前絶対分かってないだろ、シン」

「分かるよ」

「嘘つけ」

 

 知ったかぶりをしているシンにツッコミを入れたヨウランも喉に渇きを覚え、ようやく飲み物に口をつける。

 

「共同作戦をやるのだからデータを取る機会はあるだろう」

「こっちのデータも取られるだろうけどな」

「お互い様だって」

 

 イマイチ共同作戦に実感が感じられないシンが口を開く。

 

「共同作戦たって、そのユニウスセブンをどうすればいいの?」

「砕くしかない」

 

 シンの疑問にあっさりとレイが答えるが、その言葉の意味を理解したヴィーノが呆然とする。

 

「砕くって、あれを?」

「軌道の変更など不可能だ。衝突を回避したいのなら、砕くしかない」

「でも、デカいぜあれ? ほぼ半分くらいに割れてるって言っても最長部は8キロは……」

「そんなもんどうやって砕くのさ」

 

 血のバレンタインによって半分となったプラントコロニーの一つであるユニウスセブン。その砕き方(核爆弾)に皆が思い当たりながらも口はしなかった。それだけ(核爆弾)はコーディネーターが使ってはいけない物だから。

 何よりもユニウスセブンの現状を知る者なら使いたい物ではなかった。メイリンなどはそれ(・・)を想像しただけで顔色を真っ青にしていた。

 

「それにあそこにはまだ死んだ人達の遺体も沢山いるのに」

 

 血のバレンタイン後、直ぐに核反応を抑制するニュートロンジャマーが地球圏に散布され、プラントと地球連邦は明確に戦争状態に突入した。なので、ユニウスセブンで亡くなった遺体の回収はまだ行われておらず、今も彼の地に眠り続けている。

 

「だが衝突すれば地球は壊滅する。そうなれば何も残らないぞ。そこに生きるものも」

 

 生きている者と死んだ者のどちらかを優先するかなど論議も起こらないとレイの断言に、シンは何故か脳裏を過ったオーブの情景を認めたくなくて首を振る。

 直面した現実に、モビルスーツに浮かれていたヨウランも椅子に深く腰を降ろす。

 

「地球、滅亡か。現実がフィクションに追いついちゃったよ」

「だな」

「そんな……」

「はぁー、でもま、それもしょうがないっちゃあしょうがないかぁ?」

 

 軽く答えたヴィーノと違って重く受け止めて顔色を真っ青にするメイリンを見たヨウランが手を広げる。

 

「不可抗力だろう。けど変なゴタゴタも綺麗に無くなって、案外楽かも。俺達プラントには――」

「ヨウラン、滅多な事を言うな」

 

 軽く動くヨウランの口を止めたのはレクリエーションルームの入り口にアスランだった。

 

「うっ、アスラン隊長」

 

 語気鋭く言い放つアスランに、マズイところを見咎められたヨウランが身を竦める。

 アスランは一度レクリエーションルームにいる全員を見渡し、この部屋に来た目的を果たす為に歩きだす。

 

「今この艦には他国の人間が乗っている。無いと思うが聞かれたらお前の言葉がプラントの総意として受け取られる可能性もある。軍人ならば言葉には気を付けろ」

「すみません」

 

 お盆とコップを三つ取って飲み物を入れながらの注意に謝るヨウランの姿に、アスランとはどうしても波長が合わないシンは頭ごなしな態度にムカッときた。

 

「ヨウランだって本気で言ってるわけじゃありませんよ」

「シン、それは俺達がヨウランの性格を知っていて場を和ませようと言っているのだと分かるからだ」

 

 背を向けていたアスランが半身だけ振り返り、飲み物が入ったコップを御盆に乗せていく。

 

「他国の人間でなくても、船員の中にはジブラルタルとカーペンタリアに親類縁者や知人がいることも十分に考えられる。最悪のケースになった時、冗談で恨みは買いたくないだろ?」

「はい、そこまで思い至りませんでした」

 

 地球にある二つのザフト軍基地には当然ながらザフト兵がいる。地球滅亡ともなれば彼らがどうなるかなど子供にも分かる話で、ヨウランも場を和ますにも口にしていい冗談ではなかったと認めてアスランに謝罪する。

 

「次から気をつけてくれたらいい」

 

 そう言って、お盆を持ったアスランがレクリエーションルームを出て行くのをなんとなく全員で見送る。

 

「…………そう言えば隊長のお母さんってユニウスセブンで」

「複雑でしょうね」

 

 見送った後、ホーク姉妹が話している内容にシンは興味を引かれた。

 

「どういうこと?」

「隊長のお母さん、血のバレンタインで亡くなったって話。隊長もそれでザフトに入って、パトリック・ザラがナチュラル憎しになったって有名よ。知らなかったの?」

「知らなかった……」

 

 前大戦の英雄、優れたモビルスーツパイロットで、自分には殊更厳しい隊長の来歴にシンは呆然とした。

 

「シンはもうちょっと他人に興味持った方が良いわよ」

 

 ルナマリアの茶化すような物言いにもシンには返す言葉が無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 デブリベルトで簡易的な修理を終えたミネルバが快足を活かして航行していた。

 艦長席に座るタリアは結局、ミネルバに乗ったままのデュランダルとカガリへと顔を向ける。

 

「ボルテールとルソーがメテオブレーカーを持って既に先行しています」

「地球軍側には何か動きはないのですか?」

「何をしているのか、まだ何も連絡は受けていないが」

 

 プラントからの直接の報告はミネルバではなくデュランダルの方に届く。副長のアーサーの問いに悩まし気に眉を顰めたデュランダルが答える。

 

「だが、もう月からでは艦を出しても間に合わない。後は地表からミサイルで撃破を狙うしかないだろうな。だがそれでは表面を焼くばかりでさしたる成果は上げられないだろう」

 

 デュランダルの声がブリッジに響き渡り、不思議なほどクルーへと浸透していく。

 

「ともあれ、地球は我等にとっても母なる大地だ。その未曾有の危機に我々もできるだけのことをせねばならん。この艦の装備では出来ることもそう多くはないかもしれないが、全力で事態に当たってくれ」

「「「「「はッ!」」」」」

 

 ブリッジ全員の声が唱和し、クルー達の士気が目に見えて上がるのを感じ取ったカガリは一度、真空の宇宙を見た。その視線の先にユニウスセブンがあるかのように。

 

「ユニウスセブンまで1200」

「光学映像出ます」

「ボルテールとの回線開ける?」

「いえ、通常回線はまだ」

 

 暫くの後、モニターに映し出されたユニウスセブンは既にかなりデブリベルトから突出しており、奥の方にあるまだ小さな青い惑星に引き寄せられるように近づいていっている。

 格納庫ではこの映像を見ることは出来ないが、仮に見れたところでモビルスーツの発進に向けて慌ただしい作業に追われて無理だっただろう。第一、そんなことをしたら格納庫の主であるマッド・エイブスのスパナが飛んで来るに違いない。

 

『モビルスーツ発進3分前。各パイロットは搭乗機にて待機せよ。繰り返す、発進3分前。各パイロットは搭乗機にて待機せよ』

 

 パイロットスーツに着替えて乗機であるコアスプレンダーに向かっていたシンは、目の前を過った赤のパイロットスーツとヨウランの二人に目を瞬かせる。

 ミネルバで赤色のパイロットスーツを着ているのは自分とアスラン、レイとルナマリアの四人だけだが、ヨウランと共にいる者は体形的に男。しかし。レイやアスランは既に自身の乗機に乗り込んだのを目にしている。

 目で追っていたらザクウォーリアに取り付いたので、それが誰だか遅まきながらに気づいた。

 

「ん? ああ、あの人も出るんだっけ」

「らしいな。作業支援なら他国の人間の手を借りなくてもいいだろうに」

 

 先にコアスプレンダーで待っていたヴィーノが不満そうに漏らす。

 

「備えあれば憂いなしってことじゃないか? 腕は凄いんだから遊ばせておく方が勿体ないだろ」

「そんなもんかねぇ」

 

 シンがコアスプレンダーに乗り込むと、未だ不満そうだったヴィーノも離れていく。

 発進準備をしている間にアスランから通信が入る。

 

『いいか、たっぷり時間があるわけじゃない。先行しているジュール隊が作業を行っている。手際よく動け』

「了解」

『って言っても、粉砕作業の支援て何すればいいのよ』

『聞こえているぞ、ルナマリア』

『やばっ』

『はぁ、お前は…………編成は事前に決めた通り、レイを隊長としてシン、ルナマリアの三人一組(スリーマンセル)だ。インパルスはブラストで。頼んだぞ、レイ』

『了解しました』

 

 ルナマリアがアスランに呆れられるのは割と良くある光景で何故か安心した。

 この三機編成の場合、性格的に指揮を取れるのがレイしかいないのでシンも文句はなかった。ただ、他のことには少し気になっていた。

 

「レイ、やっぱり隊長はあの人と二人一組(ツーマンセル)で行く気なのか?」

 

 ミネルバに残る最後のモビルスーツである緑のザクウォーリアはアスランと編隊を組むことが通達されていた。納得がいっていないわけではないが、アスランには聞かれたくなくて秘匿通信でレイのブレイズザクファントムに繋げる。

 

『隊長だからだろう。あの人ほどの対応力は新兵の俺達にはない。昔は同じ陣営にいたのだからコンビネーションも取れるだろうし、隊長と組むのが一番面倒がない』

「まあ、こっちに組み込まれたり単身で動かれたり、ましてやエゥーゴに行かれても困るだけか」

 

 理屈の上では適当と受け入れざるをえないシンが発進準備を終えたところで異変が起こる。

 

『発進停止、状況変化。ユニウスセブンにてジュール隊が不明機(アンノウン)と交戦中』

「!?」

『更にボギーワン及び、所属不明の艦艇、モビルスーツを確認。各機、対モビルスーツ戦闘用に装備を変更して下さい』

不明機(アンノウン)とはどういう事だ?』

 

 後は発進命令を待つと言うところでのメイリンが告げる事態の流転。明らかに事前情報とは異なって来た状況にアスランが問い合わせる。

 

『分かりません。しかし、本艦の任務はジュール隊の支援であることに変わりなし。換装終了、次第各機発進願います』

 

 装備的に発進するのはシンのインパルスが一番最初になる。気持ちを切り替える。

 

『中央カタパルトオンライン。発進区画、減圧シークエンスを開始します。非常要員は待機して下さい』

 

 格納庫から上階へ機体を乗せたリフトがせり上がり、ゆっくりとカタパルトデッキの床が目の上から下がっていく。同時に前方のハッチが開き始め、、隙間から宇宙がその姿を覗かせていた。

 

『コアスプレンダー全システムオンライン。発進シークエンスを開始します………………針路クリア、発進どうぞ!』

「シン・アスカ、コアスプレンダー、行きます!」

 

 左手のスロットルを全開にするのと同時にカタパルトによる加速度が体をシートに押し付ける。

 瞬かない星空に機体を躍らせると、続いて射出されたチェストフライヤー、レッグフライヤーと合体して人型へと変形する。今回は最悪、少しでも破砕活動を行えるように破壊力の高いブラストシルエットでユニウスセブンへと向かう。

 

『レイ・ザ・バレル、ザク、発進する!』

『ルナマリア・ホーク、ザク、出るわよ!』

『アスラン・ザラ、セイバー、出る!』

 

 次々と僚機が発進していく。最後に出てくるはずの機体が気になってチラリとカタパルトを見る。

 

『アレックス・ディノ、ザク、行きます!』

 

 まだ偽名で貫き通すのか、とシンが思ったの同時に緑のザクウォーリアがミネルバから発進した。

 

 

 

 

 




クワトロとデュランダルの声優ネタは必ずやらないといけないと思いました。
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