種運命×Z×OO   作:スターゲイザー

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PHASE-06 世界の終わる時

 

 

 

 

 

 戦闘が行われているユニウスセブンの中心部から離れた外縁部に数機のモビルスーツがいた。

 

「あのぅ、マシュマー様。本当に良かったのですか、彼らを止めなくて」

「彼らは身命を賭して信念を通そうとしているのだ。騎士として激励こそすれ、止める理由などない!」

「騎士道がどうとかじゃなくて、ハマーン様が僕達に与えた任務は現在の地球圏の調査であってユニウスセブンが地球に落ちるのは望まれないと思うのですが」

 

 実質的なトップである宰相の命令に反するのではないかと、アクシズの先遣隊隊長に任命されたマシュマー・セロに彼の部下のグレミー・トトは消極的提言をしていた。

 

「む、それぐらい私も理解しているぞ、グレミー」

 

 本当か、とグレミーは心の中で思いながらも口には出さない。

 口には出さなかったが通信越しの雰囲気で感じたのか、マシュマーは何時もの癖で胸ポケットに入れている赤いバラを触ろうとしてパイロットスーツを着ているので果たせず、所在無さげな手を誤魔化すように手を振る。

 

「これほどの質量が動いているとなれば、そろそろ各勢力も阻止に動く頃合いだ。期せずして戦力調査が出来る。そら、来たぞ」

「あれは……」

 

 マシュマーが乗るガルスJの手が指差した方向をズームすると、グレミー達がいる反対側の外縁部から中心部に向かって行くモビルスーツの一団がモニターに映る。

 

「ガンダムも混じっていますがザクもいます。ジオン、ですかね」

「…………どういうことだ?」

「僕に聞かれましても」

 

 統一性の無いモビルスーツの一団にマシュマーとグレミーが通信越しに首を捻りあっている近くで、ズサがグレミーが乗るガザと同機種の機体によって捕まれていた。

 

「む、胸が苦しい! もう死ぬ、死んじゃうぞー!」

 

 ズサに乗るキャラ・スーンがコックピットで手足をバタバタと動かす。

 

「落ち着いてください、キャラ様。モビルスーツに乗っているだけじゃないですか」

「アタシはモビルスーツに乗ると興奮して疲れちゃって、好きじゃないんだよ。こうなるから乗りたくなかったんだ。お前達が無理やり乗せたりするから!」

「ユニウスセブンがどうなるか見たいって言ったのはご自分じゃないですか! 艦で近づくと所属が割れちまうんでモビルスーツしかないんですよ!」

 

 元々はマシュマーの部下だったゴットン・ゴーは不規則な動きをするキャラのズサをガザCで抑え込みながら、自分の上官運の無さに嘆かざるをえなかった。そんなことを考えるものだからズサの抑え込みが甘くなる。

 

「うだぁー!!」

「ああ! やっぱり暴走した!」

「魂よ!魂の躍動なのよ!アタシの魂は宇宙を駆ける魂!宇宙を駆ける、魂!」

「くそっ、デキの悪い上司を持つと、フォローするのも命がけだ!」

 

 不規則なズサの行動にガザCは対応しきれず、キャラは謎の言葉と共にユニウスセブンの中央部に向かって飛んで行く。ゴットンも慌てて後を追う。

 

「キャラ!? なにをやっているゴットン! 我らも行くぞ、グレミー!」

「え、マシュマー様!? キャラ様はゴットンに任せておけばって聞いてないし」

 

 アクシズ先遣隊がもう少しで戦闘に加わろうという時に、ミネルバのブリッジではジュール隊を攻撃しているモビルスーツのデータを見ていた。

 

「ゲイツを使っているというのか、その一群は?」

「ええ。GN粒子が見えますから近代化改修された機体のようです」

「GNドライブを搭載したゲイツなど一体、どこから……」

 

 前大戦末期にロールアウトされたゲイツの改修機を、ニューミレニアムシリーズから搭載されているGNドライブを後付けするなどして近代化改修した機体は、あくまでザクシリーズが配備されるまでの繫ぎでしかなくザフト以外ではまず運用されていない。

 

「考えるのは議長のお仕事でしょう。付近にあれらの母艦は?」

「レーダーに感無し。見当たりません」

「けど、何故こんな……ユニウスセブンの軌道をずらしたのはこいつらってことですか? 一体どこの馬鹿が?」

「口より頭を動かしなさい、アーサー」

「はいっ、申し訳ありません」

 

 注意にわざわざ立ち上がって敬礼までする副長アーサー・トラインから視線を外し、艦長タリア・グラディスはプラントに取って最悪になりかねないにシナリオに顔を顰める。

 

(GNドライブを扱うなどソレスタルビーイングとザフトしかあり得ない。そしてあれがゲイツだとするなら)

 

 プラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルを見れば同じ答えに辿り着いたのだろう、沈痛な面持ちをしていた。タリアは気持ちを切り替えて作戦に臨む。

 

「これではなんとしてもユニウスセブンを地球へ落とさせるわけにはいかないわ。アスラン達にもそう伝えてちょうだい」

「はい」

 

 ザフトにボギーワンと呼称されているガーティ・ルーと同道するティターンズ艦より発進したマラサイに乗るジェリド・メサが目を皿のようにしてモニターを見る。

 

「ガンダムMk-Ⅱはどこだ?」

「焦るなよ、ジェリド。エゥーゴの奴らがこいつが動いたことに関わっているなら出てくるはずだ」

「だからこそ、ライラの仇を打つチャンスだってことだろう」

 

 隣を飛行する同じマラサイに乗るカクリコン・カクーラーに意気込みを語る。

 

「そりゃあそうだ。だってのに、子守なんか押し付けられてよ」

 

 意気込んで見せるジェリドに軽く笑ったカクリコンは、近くを飛ぶ仲間が乗るガルバルディβや近代化改修された105ダガーなどに交じっている三機のガンダムタイプに鼻を鳴らす。

 

「俺達に指揮権は無いんだ。向こうは向こうで勝手に動くだろうさ」

「なんたってザフトのガンダムだからな。その性能はコーディーが作っただけある。俺達が気にする必要はないか」

「そうさ、秘匿部隊だなんだってどうでもいい。Mk-Ⅱを見つけられたら俺は神の存在を信じるぜ」

 

 話をしながらユニウスセブンの上を進んでいると、センサーが対角線上から向かって来るモビルスーツの一団を察知した。

 

「おっ、噂をすればなんとやらやつだ。こりゃあ、奴さん達はザフトの奴らと一緒にいやがる」

「やっぱりエゥーゴも地球にユニウスセブンを落とそうとしてるんだ! 行くぜ、カクリコン!」

「ああ、やってやろうぜ!」

 

 ティターンズがザフトとエゥーゴが混合した一団を補足する少し前。

 ミネルバから発進して目的地に向かうインパルスに乗るシン・アスカは、まだ遠くにあるはずなのに視界を埋め尽くさんばかりのユニウスセブンの偉容にゴクリと唾を呑み込む。

 

「こうして改めで見ると、デカいな」

「当たり前よ。住んでるのよ、私達は、同じような場所に」

「それを砕けって今回の仕事が、どんだけ大事か改めて解ったって話しだよ」

 

 独り言に返信して来たルナマリア・ホークに答えていると、接近してくるモビルスーツをIFF(敵味方識別装置)が知らせてくる。

 

「あれがガンダムMk-Ⅱ。エゥーゴのガンダムか」

「なにあの金ピカ、趣味悪ぅ。私だったらごめんだわ」

 

 ガンダムMk-Ⅱの傍を飛ぶ、宇宙空間では目立つことこの上ない金色の塗装が施されているモビルスーツの配色にルナマリアは目を疑ってしまったようだった。

 

「あれだけ目立つんだから乗っている人はよっぽど腕に自信のある人なんじゃないか」

「無駄口を叩くな、お前達。今、ミネルバから通信が入った」

 

 先頭を行くセイバーのアスランからザフト部隊に向けられた注意混じりの言葉に、喋っていたシンは内心でやっぱり怒られたと思いながら続きを聞く。

 

「ジュール隊が近代化改修されたゲイツに攻撃を受けているとのことだ」

「ゲイツ? どこの」

「俺達の仕事はそれらの排除だ。確実に落とせ。他のことは考えるな。以上、通信終わり」

 

 直ぐに切られた通信の意味にシンは眉を顰め、コッソリと隣を飛ぶレイ・ザ・バレルのブレイズザクファントムの肩に手を置いて接触回線を繋ぐ。

 

「詮索するなってことか?」

「躊躇うな、ということでもある。これほどのことを仕出かす相手となれば腕に自信があるはずだ。機体性能に大きな差がないとなれば、その小さな隙が俺達の命を奪うことになる」

 

 レイはそこで一度言葉を切る。

 

「考えるのは俺達の仕事じゃない。与えられた仕事を果たすぞ」

「分か――」

 

 元より考えるよりも行動するタイプのシンは深く考えることをせず、レイに返答しようとしたところで突如としてコックピットに照準警報が鳴り響いた。

 

「うわっ!?」

 

 横合いから向かって来るミサイルにアスラン達他、戦場に慣れた者達が各個に撃ち落とす。着弾による爆発が幾重にも響いた。

 あっという間の対処に驚くだけで何も出来なかったシンが呆然としている間に、爆煙の向こうから複数のモビルスーツが飛び出して来た。

 

「なに、コイツら!」

「見たことのないモビルスーツ!? 連邦軍か! こんなところまで!」

 

 遅まきながら戦闘態勢に入ったルナマリアと同時に、ブラスト装備のインパルスがケルベロス高エネルギー長射程ビーム砲を向ける。

 

「なんだそれは! ええい、私を誰だと思っているんだ!アタシはキャラ・スーンだぞ!!」

「止めて下さい、キャラ様!」

「ガンダムMk-Ⅱ! ここで会ったが100年目ってね!」

「あの時の機体!? じゃあ、やっぱりあれもティターンズってえの!」

「なんなんだ、こいつ等は!」

「散開! 各機編隊を維持して散開しろ!」

「お前らのせいかよ、こいつが動き出しのは!」

「カオス、ガイア、アビスまで!?」

 

 アクシズ先遣隊の爆煙に紛れてティターンズ達も悪いタイミングで合流し、戦場は瞬く間に乱戦へと突入していく。

 乱戦という誘蛾灯に引き寄せられるように、ユニウスセブンにモビルアーマーが接近していた。

 

「思念が集まっているから来てみれば、混沌としている。テンプテーションを追うことでメッサーラの機能テストは果たせたが、この機会に実戦テストを行うとしよう!」

 

 自部隊が戦闘に突入したのはミネルバでも観測していた。

 

「ユニウスセブン、更に降下角プラス1.5、加速4%」

「ジュール隊がカオス・アビス・ガイアやティターンズ他、所属不明機に攻撃を受けています。本艦旗下隊とエゥーゴが応戦中」

「不明機はどこの所属だ? ティターンズの新型か?」

「データに該当はありません」

 

 戦闘開始と同時に濃度を増していくミノフスキー粒子とGN粒子によって、データ補正されても動き続けるモビルスーツの映像は荒い。

 コンピューターがある程度の特徴から自動的に所属を割り出してくれるが、今回の場合は観測データが足りないのか、本当にデータが記録されていないのかまでは判断がつけづらい。

 

「これでは破砕作業など出来ません! 艦長、本艦も戦闘に参加すべきです!」

 

 アーサーの意見にタリアが難しい表情している中、作戦には口を出さなかったデュランダルが索敵担当のバート・ハイムに顔を向ける。

 

「エゥーゴはどうしているかね?」

「動きを見せていません」

「彼らも計りかねているのか……」

「プラントの自作自演と疑っているのかもしれません。なにせ最初に破砕作業を妨害してきたのはゲイツですから」

 

 デュランダルと同じ懸念を抱いているタリアが制帽を被り直す。

 

「そんな!」

「仕方ないわ。あれがゲイツではなくダガーであればアーサーもエゥーゴやティターンズの関与を疑うでしょ?」

「う、それはそうですが」

「ボギーワンや連邦艦とコンタクトを取ろうにもエゥーゴの手前、下手なアクションは藪蛇を突きかねないな。この混沌とした状況で敵を増やしたくはない」

 

 タリアの指摘に言葉を失くすアーサーを納得させる為ではないが、行動を起こすだけでもエゥーゴが敵に回りかねない状況にデュランダルが悩まし気に続ける。

 

「彼らも我らと目的を同じとしているなら、この場での戦闘には何の意味がないというのに」

 

 デュランダルの言葉を聞いて、作戦が始まってから一度も口を開かなかったカガリ・ユラ・アスハが突如として席から立ち上がった。

 

「――――グラディス艦長、この宙域にいる全ての艦、モビルスーツに声を届けることは可能だろうか?」

「国際救難チャンネルをオープン回線で使えば恐らく」

 

 問われたタリアは答えつつ、カガリが何をしようとしているのかを察した。

 

「私が呼びかける。中立国オーブ代表の言葉ならば、彼らも容易に無視しえないはずだ」

「よろしいので?」

「これが一番角の立たない方法だ」

「…………分かりました、直ぐに準備します」

 

 ミネルバが準備している頃、激化を続ける乱戦に合流したMAメッサーラを駆るパプテマス・シロッコがルナマリアのガナーザクウォーリアを標的にした。

 

「落ちろ、赤い蚊トンボ!」

「あぐっ!?」

「ルナ!」

 

 ガイアに気を取られていたルナマリアのガナーザクウォーリアの左足がメガ粒子砲によって吹き飛ばされ、気付いたシンが救援に入る。遅れてレイがルナマリアのガナーザクウォーリアのカバーに回る。

 

「このモビルアーマー! よくもルナを」

 

 放たれた肩部に装備された2門のレールガン(デリュージー超高初速レール砲)をヒラリと躱したメッサーラの中でインパルスを視認し、シロッコはその端正な顔で獰猛に笑う。

 

「ザフトのガンダムタイプ。私の太陽炉と性能比べをしようではないか!」

「こいつはGNドライブを持っている!?」

 

 地球連邦の専売特許であるからザフトではありえないモビルアーマーがGNドライブを搭載していることに気づき、僅かながら動揺するシンがメッサーラに追い込まれている場所から少し離れた所で、ジェリドとカクリコンのマラサイがアスランのセイバーとキラのザクウォーリアに損傷を重ねていた。

 

「えぇい、赤いガンダムめ!」

「このジオンのザク擬きめ、やりやがる。マズいぞ、ジェリド!」

「キラ!」

「アスラン!」

「うっ、く、くそぉ! ライラさえいればこんな無様なことにはならなかったのに!」

 

 機体性能の差をむざむざと感じさせる二人一組(ツーマンセル)同士の直ぐ傍で、カミーユ・ビダンのガンダムMk-Ⅱとクワトロ・バジーナの百式が中心となるエゥーゴ部隊がアクシズ先遣隊とカオス・アビス・ガイアと戦闘をしていた。

 

「なんなんです、あの見たことのない機体は!」

 

 この戦場のほぼ全員がアクシズ先遣隊のモビルスーツの正体を計れない中、嘗てアクシズにいたクワトロだけは答えに辿り着いていた。

 

(あのモビルスーツはガザの発展機か。アクシズの者達が何故ここに)

 

 理由は分からないながらも思考に耽る暇はない。カオスの兵装ボッドを躱してアビスにビームライフルで牽制を入れながら、クワトロは自部隊全体にも意識を配る。

 

「ザフトのガンダムは厄介だな。戦況も混沌とし過ぎている。損傷した機体は下がれ!」

「エマ中尉、後退してください!」

「くっ、了解」

 

 損傷しているにも関わらず指示に抗おうとしたエマ・シーンの機体を庇ってガイアと戦っているカミーユのガンダムMk-Ⅱから目を離し、意識だけが戦場の中を自由に飛び回るモビルアーマーを捉える。

 

「あのモビルアーマーから感じられるプレッシャーはニュータイプか。だが、あれはアムロではない。もっと違うタイプだ」

 

 アポリー・ベイとロベルトのリック・ディアスが流石のコンビネーションで積極的ではないアクシズ先遣隊を抑えてくれている間に、損耗を続ける部隊の長としてクワトロが指針を示そうとしたその時、通信回線を通して女の声が響き渡る。

 

『――――ユニウスセブンの宙域にいる全ての者に告げる』

 

 オープン回線とはいえ、ミノフスキー粒子とGN粒子によって声は荒く雑音も混じってたがクワトロの意識を不思議と惹きつけた。

 

『私はオーブ首長国連邦代表カガリ・ユラ・アスハだ。現在、故あってザフトの戦艦に乗っている』

 

 入ってしまった者を巻き込まずにはいられない闘争の渦が声によって引き裂かれて行く。

 

『ユニウスセブンの落下阻止の為、破砕作業に全力を挙げねばならんのにお前達は何をしている! そんなに戦いたいなら余所でやれ余所で!』

 

 言い切った直後、別の声が紛れるが雑音交じりなので何を言っているのかまでは戦闘が続いているクワトロには聞き取れない。

 

『なに? 論点がズレてるだと』

 

 思わず肩透かしを覚えそうになりながら、向かって来たGN粒子を放つゲイツRを撃墜する。

 

『とにかく! 地球存亡の危機なのだぞ、破砕作業の邪魔をするな! 以上!』

「グゥレイト!!やったぜ!」

 

 カガリが通信を終えた直後、メテオブレイカーが作動してユニウスセブンを真っ二つに分けた。

 誰もが半分に割れたユニウスセブンに気を取られる中で、これを契機として大きく距離を取ったシロッコのメッサーラが真っ先に戦域から離脱する。

 

「ふっ、次の時代を動かすのは女性だという私の考えは間違っていなかった。十分な収穫は得た。地球の重力の井戸に引き込まれるのは御免だ」

 

 シロッコの動きに偶々近くにいたゴットンが我に返り、ボロボロになったガザCでキャラのズサの動きを封じにかかる。

 

「マシュマー様、キャラ様を確保しました!」

「よし、撤退するぞ、グレミー!」

「今なら行けます!」

 

 動きを止めたキャラのズサを捕獲したゴットンを確認したマシュマーの命令に、カガリの声に奇妙な胸の高ぶりを覚えていたグレミーが追従する。

 カガリの声に続くようにユニウスセブンが割れ、謎のモビルアーマーとアクシズ先遣隊の撤退を確認したガーティ・ルーのブリッジでアリー・アル・サーシェルがニヤニヤと笑う。

 

「記録は撮れたな。イアン、撤退信号を出せ」

「よろしいので?」

「観戦だけでも十分に楽しめた。水を差されてはこれ以上、面白くはならんだろう」

 

 アルケーガンダムの特殊性故にあまり容易に出撃出来ないのと、艦載機を全て吐き出しているので万が一の護衛代わりに残っていたサーシェスは地球に向かって落ちていくユニウスセブンの半分を見下ろす。

 

「どうあってもアレは落ちる。楽しくなるのはこれからだぞ」

「…………了解しました。信号弾を上げろ」

 

 ガーティ・ルーが上げた撤退信号弾を契機に、ミネルバやアーガマといった艦も続々と信号弾を打ち上げる。その光をユニウスセブン宙域にいる者達全てが目にして、やがて光が消える頃、ミネルバはアーガマから通信を受けていた。

 

「本艦は大気圏内での運用を想定しておらず、我々はここまでです。申し訳ない」

「エゥーゴの協力に感謝を。どういう形にせよ、連邦も撤退してくれました。本艦は限界まで艦主砲による対象の破砕を行いたいと思います」

「健闘を祈ります」

 

 通信が切れ、ユニウスセブンを追うミネルバとは反対に、アーガマが重力に引かれないように離れていく。

 遅まきながら自分達が大気圏に突入するのだと気づいたアーサーが顔色を真っ青にする中、アーガマを見送ったタリアは続々と帰還してくる艦載機を確認して、背後へと振り返る。

 

「議長、ミネルバはこれより大気圏に突入します。こんな状況下で申し訳ありませんがボルテールにお移り頂けますか?」

「タリア、しかし……」

 

 気づかわし気なデュランダルに毅然と見返す。

 

「どこまで出来るかは分かりませんが、でも出来るだけの力を持っているのにやらずに見ているだけなど後味悪いですわ。私はこれでも運の強い女です。お任せ下さい」

「…………解った。すまない、タリア。ありがとう」

「いえ、議長もお急ぎ下さい」

 

 そう時間は残されない。デュランダルが立ち上がり、まだ座ったままのカガリへと顔を向ける。

 

「では、代表も」

「私はいい。あれだけのことを言ったのだ。最後まで見届けさせてくれ」

「しかし、代表にはお国でのお仕事が……」

 

 カガリの宣言に、ここに来るまで十分に危険な目にはあったが特大の懸案にタリアも止めにかかる。

 苦笑したカガリが柔らかく笑う。

 

「私は名ばかりのトップに過ぎん。国の者達がなんなりとするだろう。何があろうともプラントに責任は求めない。頼む、艦長」

 

 他国のトップに言われたところで一艦長でしかないタリアに負える責任ではない。

 

「代表がそうお望みでしたらお止めはしませんよ」

「しかし、議長」

「グラディス艦長、この艦は破砕作業を続けながら地球に下りるのだ。私の存在は万が一の時、カードになり得ると思うが」

「…………はぁ、分かりました」

 

 自分のトップが受け入れたこと、問答を続けている時間も惜しく、カガリの言うことも最もであると判断したタリアは溜息と共に受け入れざるをえなかった。

 ミネルバが残る破砕作業に入り始めるも、撤退信号弾を無視して戦いを続けるグループがいた。

 

「見えた! 今度こそ、今度こそMk-Ⅱを!」

 

 撤退途中のガンダムMk-Ⅱを見つけてしまったジェリドのマラサイが襲い掛かる。

 

「あの新型、他の機体が後退したことに気づいていないのか!」

 

 スラスターが故障していたネモを曳航していたカミーユは近くにいたクワトロの百式に後を任せ、乱戦の最中で大半の武器と右足に頭部を失いながらも向かって来るマラサイに向かってビームサーベルを抜く。

 

「ジェリド、これ以上は無理だ!」

 

 同程度の損傷を負っていたカクリコンのマラサイが助けに入ろうとして、暫くして閃光が奔った。

 別動(アスラン)隊がまだ戻って来ないことを聞いて、損傷したレッグフライヤー交換してを単機で引き返して来たシンがその戦闘を遠くから確認して顔を顰める。

 

「まだ戦ってるのか、アイツら。あ、何をやってるんです、隊長! 帰還命令が出たでしょう。通信も入ったはずだ」

「ああ、解ってる。シンは早く戻れ」

 

 セイバー1機だけでメテオブレイカーに取り付いて操作をしているアスランが簡潔に答える。折角、心配して単機で探しにきたというのに無体な態度にムカッときた。

 

「このままじゃ、一緒に吹っ飛ばされますよ! バディ(アレックス)はどうしたんですか!」

 

 辺りを探しても緑のザクウォーリアの姿はない。帰還したという話は聞いていないが、撃墜されたとも思えずに問う。

 

「キラには別のメテオブレイカーの所へ行ってもらった。ミネルバの艦主砲と言っても外からの攻撃では確実とは言えない。出来るだけ砕かないと」

「ここにはお母さんが眠ってるんでしょ。なんでそこまで」

「だからだ。せめて静かに眠らせてあげたい。誰かを傷つけるなんてさせてなるものか!」

 

 アスラン本心からの叫びに、心の奥底に響くものがあったシンも手伝おうとした時、敵機の接近を知らせるアラームがコックピットに鳴り響く。

 シンがハッと顔を巡らせると、三機の近代化改修ゲイツRがこちらに向かって来た。

 

「うおぉぉ!」

「これ以上はやらせん!」

「アイツら、まだ!」

 

 シンは背面にマウントされた太い砲身を跳ね上げ、ケルベロス高エネルギー長射程ビーム砲のトリガーを引いた。

 放たれる前から既に散開していたゲイツRの一機がポルクスIVレールガンで牽制し、もう一機がインパルスに接近戦を仕掛ける。

 

「我が娘のこの墓標、落として焼かねば世界は変わらぬ!」

「なっ!?」

 

 インパルスがケルベロスの砲身内部に収納されていたデファイアントビームジャベリンで応戦すると、ゲイツRのパイロットの叫びがコックピットに響く。

 

「彼らもユニウスセブンの被害者遺族なのか」

 

 インパルスが一瞬の動揺を突かれて弾き飛ばされ、メテオブレイカーの作業を中断したセイバーが迫って来た残るゲイツRを迎撃する。

 セイバーから放たれたビームを避けたゲイツRのパイロットのサトーは、モニターに映るモビルスーツのデータに目を瞠った。

 

「セイバー? そうか、貴様かアスラン・ザラ!」

「なにを!?」

 

 ザフト全体を見渡しても随一の機動力を持つセイバーと知り、距離を取っては不利と感じて接近戦を挑む。

 互いに抜き放ったビームサーベルが幾度も交差し、光が空間を乱舞する。

 

「父親を断頭台送りにし、軟弱なクラインの後継者に迎合した血の裏切り者! 何故気付かぬかッ! 我等コーディネーターにとってパトリック・ザラの執った道こそが唯一正しきものと!」

 

 二対一で戦っていたシンはサトーの叫びに気を取られ、片方のゲイツRに組みつかれた。

 

「じ、自爆!? うわぁぁ!!」

「シン!」

 

 自爆攻撃を食らって吹き飛ぶインパルスに追撃をしようとしたゲイツRをセイバーがプラズマ収束ビーム砲で撃ち落とすも、それは目の前のサトーに隙を晒すことになった。

 

「隙あり!」

「ぐっ」

 

 咄嗟の反応で回避行動を取るもセイバーの左足が斬り落とされた。

 

「我等のこの恨み、今度こそナチュラル共に!!」

 

 ゲイルRが一気呵成に攻撃を仕掛けるがセイバーは直ぐに体勢を整えて、自爆の衝撃で気絶したのか動かないインパルスを狙われないように距離を取る。

 

「そうやって怨念返しをするから戦争が繰り返されるんだ! それが何故、分からない!」

「ナチュラルの思いなど知ったことか! 奴らが先に奪ったのだ!」

「奪われたからって奪っていい理屈にはならない。こんなことをあなたの家族が望むとでもいうのか!」

 

 セイバーがすれ違いざまにゲイツRの複合兵装防盾システムを装備する左腕をヴァジュラビームサーベルで切り捨てる。

 

「貴様が私の家族を語るな!」

 

 切り返したゲイツRが両腰に装備されているレールガンとビームライフルを撃ちながらセイバーを追う。

 

「此処で無惨に散った命の嘆き忘れ、討った者等と偽りの世界で笑う貴様等に我らの思いが分かってたまるものか!」

「俺の母もここで死んだ!」

 

 左腕に装備された対ビームコーティングシールドでビームを防ぎ、スーパーフォルティスビーム砲とビームライフルで弾幕を張る。

 

「父はナチュラルを憎んだ。俺も戦わなければならないと思った。だけど、過去に囚われたまま戦ったって痛みを広げていくだけだ!」

「だから、戦うな、憎むなと。我らだけに痛みを背負えというか!」

「やり返したって、何も戻りはしない! 何の関係のない者の未来まで殺す気か!」

「そうだ、ただの八つ当たりだ。今更、止まれるものか! もう後戻りなど出来ぬ! この墓標を以って世界に我らと同じ痛みを刻み付けるのだ!」

「――――アスラン!」

 

 別の場所でメテオブレイカーを作動させてやってきたキラのザクウォーリアが最高速度のまま接近し、サトーのゲイツRの右腕を斬り落とす。

 

「まだだ、まだ終わらぬ!」

「この――バカ野郎ッ!!」

 

 武装と両腕を失っても突進してくるゲイツRにセイバーが抜き放ったビームサーベルですれ違いざまに胴体を真っ二つに切り裂く。

 後方で爆散したゲイツRを悲し気に見つめたアスランだったが、赤熱化し始めたユニウスセブンに気づく。

 

「間に合わなかった……」

 

 後の世に『ブレイク・ザ・ワールド』と記録され、再びの大乱となる引き金はここに引かれた。

 

 

 

 

 




まさかのアクシズ組がフライング登場。先遣隊という扱いでどうにか。

割とパトリックが悪い扱いされているザフトに残って悪口を言われ慣れているアスランのレスパ力が向上。
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