Bloodborne:Brave of Braze   作:NEXT_0809

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狩りから戻った(In the night went men,)ェルン(in studded)ドは
燥した薪(and stoked up)に火を起こ(the fire ready)して


したばか(to cook some)りの熊の肉( of the bear)
ゆらゆらと揺れ(he had just killed)る炎へと焚( in the fore)べた


「ヴェルンドの歌」−第6スタンザ−
────古エッダ:神話詩より────




03.ライフルマン

 

 

[バッシュ]

────”ソード”の4番

 

民間人や未輸血の異邦人が撃てるように

調整された後装式単発ライフル

 

対獣に使われる都合上、反動はそれなりに大きいが

君の体格ならば扱うのは容易い筈だ

 

ブリーチブロック*1を上げて実包を装填、

後は狙って撃つ───簡単だろう?

 

弾丸は水銀内包の”円錐弾(ソード)*2で貫通性能を重視している

中距離狙撃や路上、閉所での狩りには最適だ

 

売人の話を聞きながら俺はライフルを手に取り

照準機、ライフリングが施されてるのを確認した

(近年母国に配備されたというスナイドル銃*3

これは、よく似通っているように見える)

 

一見仏頂面に見えるだろうが内面はそうでもない…

微かに鼓動は高鳴り、脳内麻薬は着実に蓄積している

 

それもこれも品質の良さ。無骨ながらも、

美麗なバレルとストックがまるで芸術的で故に

先の、ダンテの誘いで落ちた気分は天へ上がったのだ

 

 

[ジョン]

呼称のスートは弾の形状からか。

さしずめ”ワンド”は短銃の様な一粒弾、”ソード”は

横から見たライフル弾を剣に重ねてるって感じか?

 

[バッシュ]

ああ、よく分かったな。

他には散弾銃の”カップ”、特殊銃器の”コイン”…

 

[ジョン]

洒落てるな────そうだ、頼みたい事がある

 

 

片手間にアタッシェケースを開いて、

据え置かれた拳銃の実包ケースを机の上に置いた

 

 

[ジョン]

俺が持ってる銃の弾だ、こいつに水銀を入れたい

 

 

[バッシュ]

見たこと無いな…最近の実包かな

 

 

「出来そうか」──様子を伺いながらも問い、

綺羅びやかに輝く弾丸を摘んだ彼は頷くが…

 

返ってきた答えは思いも寄らないものだった

或いは、至極当然だと言うべきでもあるか

 

 

[バッシュ]

技術的には出来る…だが君は”狩人証”を持ってない

注文が応えられるのは工房が認めた人間だけだ

 

 

[ダンテ]

──ならば丁度良い

彼に契約書を。発行手続きを行ってくれたまえ

 

 

横からダンテが一つの提案を差す

そこからはなし崩しに事が進みだした。

 

否応なしにバッシュが机の中から紙1枚を取り出し

インクとペンを用意、書く用意をしたその間、

ダンテは短銃の弾を懐にしまうなりをしていた

 

 

※────※

 

 

 

ほう…「青ざめた血」ねえ…

確かに、君は正しく、そして幸運だ

 

まさにヤーナムの血の医療、

その秘密だけが…君を導くだろう

 

だが、よそ者に語るべき法もない

 

だから君、まずは我ら、

ヤーナムの血を受け入れたまえよ…

 

さあ、契約書を…

 

 

 

※────※

 

 

 

 

 

工房証発行契約書

 

 

第一条

発注者は、工房に対し製品の製作及び

発注者への供給を依頼し工房はこれを請負う

 

第二条

本契約の有効期限は依頼毎に更新される。ただし

期限満了時、若しくは工房の破産、発注者の死亡が

確認された場合につき発注者の本契約は破棄される

 

第三条

工房の製作物供給については、本契約に基づき、

個別契約を締結して行う。個別契約は発注者が

交付した注文書を受け、工房が注文書を発注者へ

交付する方法で行う。

 

第四条

工房製品の所有権は引き渡し時に発注者へ移転する。

 

第五条

本契約締結時に発注者へ渡される狩人証は

期限満了時、工房へ返却するものとする。

 

2.

発注者が狩人証の紛失、破損時に行う再発行は

別途支払金を工房へ納めなければならない。

 

 

 

 

 

 

つらつら書かれる書類を一通り目を通し、

自筆の署名───そして最後に、自身の血判。

軽く切った親指からはじくじくと血が滲み出す

 

様子を見て工房のバッシュが紙を手に取り

必要事項の再確認等を済ませた後には署名を見て

その名前を多少なり、訝しげに問うた

 

 

[バッシュ]

ジョン…スミスねぇ…偽名じゃないのか

 

[ジョン]

…パスポートならあるが…

 

 

「いや、結構だ」───問題が無い、というより

面倒な事に顔を突っ込むのは避けたかったのだろうか

 

ペンを取って両者共に署名を終え、すると彼は

デスクの引き出しから、ごく小さなガラスの容器と

火薬入れを取り出し瓶に黒色火薬を満たす。

 

あれが証、極細のチェーンのついた工房の狩人証…

 

それを手渡し、俺の首元に掛けられたのを見て

バッシュは満足げに契約書を仕舞った

 

 

[バッシュ]

ふむ…よろしい、これで契約は完了だ

それでは鍛造を始めようか

 

改めまして、歓迎しよう。我らが同志ジョン

 

─────『火薬庫』へようこそ

 

 

※────※

 

 

 

よろしい。これで契約は完了だ

 

それでは、輸血を始めようか…

 

…なあに何も心配することはない

 

何があっても……悪い夢のようなものさね

 

 

 

※────※

 

 

契約を執り終えた俺は案内されるがまま

応接間の奥、木製の硝子窓がついた両扉を開け

だだっ広さを感じさせない雑多な加工場へ入っていく

 

溶鉱炉、鋳造器、金床───

真新しく磨き上げられた黒壇の銃床、

鈍い銀の銃身に至るまで、数々の品があちらこちらに

散見される様は、古い兵器廠を思い起こさせた

 

[バッシュ]

私は”バッシュフル”、皆からはバッシュと言われる

他の連中は今は寝てるから……私が対応する

 

先の話だが───拳銃の実包を、

水銀弾に変えたいという事だったな

 

その規格のものがうちには置いてない以上、

改造という形にはなるが…本来の担当じゃないから

品質までは保証出来ない。だから代金は取らないよ

 

工房の一角、弾薬製造に使われているらしき場所には

厳重に保管された水銀の容器や、それぞれの個人名が

書かれた血液ボトルの棚…そして作業台の上には

彼が言う様に別の人間の名前札が垂れ下がっていた

 

まるで”可笑しなその名前”には、少しばかり

驚かされたが彼自身も似た由来であると聞く。

 

設計師で年長者の”ドク(先生)

 

金属鋳造の”グランピー(怒りん坊)

 

武器鍛造の”ハッピー(ご機嫌)

 

銃器製造の”スリーピー(ねぼすけ)

 

弾丸加工の”スニージー(くしゃみ)

 

新米鍛冶の”ドーピー(おとぼけ)

 

そして書記と会計担当の”バッシュフル(照れ屋)

揃い揃って奇妙な名前だが、当然あだ名だそうだ

まるで七人のドワーフ──工房には似合いだろう

 

…にしても、この規模の設備、工房を回すのに

たった7人程度とは、余程効率的に動ける者ばかり

なのかそれとも単に人材が足りてないのか…

 

それは、定かでない。

 

[バッシュ]

S&W…44口径、アメリカンカートリッジ…か。

 

ふむ…今回作れるのは6発だ、

それ以上は次回にしてもらおう

 

[ジョン]

それだけあれば十分だ

 

[バッシュ]

それとサンプルでもう一発貰いたい。今後来る

予定があるなら新しい弾もスニージーに用意させよう

 

───ダンテ!

 

呼びかけられたダンテが遠目から

ひょっこり顔出し何事かと此方を伺っている

 

[バッシュ]

水銀用の血液ストックが残り少ない

待ってる間、補充をしといてくれないか

 

ゴトンと、棚から引き出したのはDante(ダンテ)と書かれた

先の血液ボトルの中の一つ、そして専用のチューブと

注射器やらの医療器具の類いであった

 

成る程、こうして定期的に採血をしては水銀と合成し

それを更に鉛の弾頭へと仕込む。最初の想像よりは

ずっと商業的、或いは実業的で体系化されたもの

 

水銀弾というのはそれ程にここヤーナムでは

一般的で、故に効力も保証されている物なのだろう

 

 

さておき…俺はまた応接間に戻って

ダンテの話を聞く事にした

 

今後の目標、何をすべきか…

しっかりと教えて貰うとしよう

 

 

 

 

流れ出る真紅の血が深緑色のボトルを満たし続け

やがて底はゾッとする様な、暗い色に変わる

 

結構な量を注いだ筈だがダンテは特に意に介さず、

こちらの質問、会話へとずっと意識を向けており…

 

しかしその後新しい戦地へ赴く身にとって

それは、大いに結構な事であった───

 

 

[ダンテ]

まずは聖杯大教会へ向かう、先ほども言った通り

今回の夜は既に8日になるが未だ明ける様子はない

 

元凶を探すのも良いが、このまま放っておけば

下街は崩壊する可能性がある。他の狩人と連携を

取りながら、尚且つ情報の共有を優先すべきだ

 

[ジョン]

他の狩人と言うと?

 

[ダンテ]

古狩人デュラ。大教会周辺エリアが彼らの狩場だが

最後に会ったのは3日前、きっと彼らも消耗している…

 

取り急ぎ合流──向こうの状況次第では

恐らく、大規模な戦闘になるだろう

 

教会は住民の避難所、言わば最後の砦だ。

あそこの決壊だけは必ず阻止せねばならない

 

 

言うには、古狩人ダンテを筆頭に───

一部の限られた人間は夜は常、元凶となる”ある物”を

ずっと探しており、それらを狩る事を使命にしている

 

その一人が古狩人デュラ、ダンテと同じく経験豊富、

熟達の狩人であり、一定の範囲を回っているそうだ

 

 

[ジョン]

俺としては手早く終わらせたいところなんだがな。

 

あんまり回りくどい様ならこの件は

無かった事にさせて貰うぞ、良いな?

 

[バッシュ]

お二人様───待たせたな、ご注文の品だ

 

 

作業が始まって小一時間の経過。バッシュが、

頼んだ6発の実包を麻布に包んで戻ってきた

 

早速それを手に取るや否や、じっくり検品をするが

彼ら”火薬庫”はとても精巧な技術を持ち得る様だ

 

見た目は殆ど変わらず、しかしそれでいて質量は

確かに水銀のそれになっており、シリンダーにも

問題なく装填が可能───これは。

 

 

[ジョン]

───パーフェクトだ、バッシュ

 

[バッシュ]

当然だな。火薬分野はうちが最も扱い慣れてる

他に”蒸気機関”、”機械工学”になんでもござれだよ

 

[ダンテ]

問題無い様子で何より、それでは行くとしよう

支度は済んでいるか───ジョン

 

「ああ」───準備は万端

装備は中距離ライフルと腰に下げた拳銃、

そしてボウイナイフ*4。両腕には防具の代用として

手持ちの包帯を目一杯まで巻いた状態だ

 

他は一般的な服装にケープとフードがある程度だが

何、此方は射撃支援が主なので問題は無いだろう

 

荷物のケースは工房に預ける事にした。

 

貴重品の類いはあるが、正式な取引を交わした連中だ

流石に客の荷物を漁るなどという蛮行は起こすまい

 

 

[バッシュ]

お連れさんは良いのかい、置いていって?

 

[ジョン]

そいつは連れでもなんでもねぇ、馬車の馭者だ

邪魔になるなら適当に追い出せば良い

 

微かに二人の目が見開いたのが分かる

ならばなんでまた馭者を、と尋ねられるのも当然。

むざむざしらばっくれる理由もなく簡潔に述べた

 

[ジョン]

…この街に来る途中で馬車を獣に襲われた。

何とか撃退こそしたが倒木で馬車が倒れてな

面倒だったが、俺がここまで背負って来たんだ

 

[ダンテ]

……その銃で、追い払えたのか?

 

[ジョン]

あとは火だな、棒きれを燃やして追い払った

奴さん目だけは柔いらしい…潰してやったよ

 

くつくつ笑うダンテ、顎を擦って感心するバッシュ。

彼らがこの反応なら異邦人にしては妥当に

過ぎる対応だったのだろう。何と言うべきか、

我ながら判断が良かったのは確かというところだ

 

[バッシュ]

こりゃやり手だな?君、やけに銃の扱いに

手慣れていたが軍人さんだったりするのかい

 

[ジョン]

イギリス王国陸軍大尉…元と付けたほうが正しいか

ガキの頃は、親父の鉄工所で働いてた

 

[ダンテ]

…ふふ、バッシュ、彼はとんだ掘り出し物だぞ

なあ?迎え入れて良かっただろう?

 

ダンテの言葉に応答する事はなくバッシュによって

再び鉄扉が開かれて、夜の寒さと暗闇が視野に広がり

狩りへの一歩を着実に踏み出し始める────

 

だが、その前に大鎚の狩人は

俺へ激励をするが如く、静かに語った

 

[ダンテ]

ジョン、きっとこれは運命だ。

君がもし…私達が”探していた人物”であるなら

この夜の明けへ至る鍵はもうすぐそこにある

 

まさに詩人と言うべきかな。

大層な言い振りを聞かせるがしかしそんなもの、

先短い身には縁起でもない言い草であった

 

[ジョン]

…運命なんざ、あてにするもんじゃねぇよ

 

血痰に咽る喉を押し殺し、その苛立ちも

我が道阻む獣達へ撃ち込むのが常套

 

昔から、それが俺だったのだ

 

いかなる困難が心に火を付け、心が体を鋼にする。

何時であっても、今回もそれは変わりはしない

邪魔をする者はすべからく叩きのめすだけだ

 

 

[ダンテ]

(だが運命だとも。君が”夢の狩人”であるならば──)

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

───獣狩りの夜が始まる───

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

《聖杯大教会にて》

 

夜が始まりとうに8日。獣の群れは群衆の失踪と

比例してずっと増え続き、留まるところを知らない

 

古狩人のデュラ率いる新参と古参に至るまでの者が

ヤーナムの下街、聖杯大教会に集結しつつあった

 

 

[───]

───デュラ!!これ以上は保たんぞ!!

数が多過ぎる───こっちも一人やられた!!

 

 

黒い頭巾の狩人。彼はデュラの三人の盟友のうち

その一人であり…狩人の装いに限っては簡素な、

ノコギリの槍と短銃を用いて、古狩人にも劣らぬ

熟練の業を見せる、屈強な狩人である

 

 

[デュラ]

持ち堪えろッ!!一匹として入れてはならん!!

グレッチェン、向こうの援護に回ってくれ…!

 

[グレッチェン]

アブラハム、こっちは任せるぞ

 

[アブラハム]

分かった!!

 

 

聖堂前門の二方、その方や担う女。

 

デュラと同じ古狩人───グレッチェン*5

その身の熟しは疾く、双短剣を前提とした技法は、

如何に敏捷な獣と言えど容易に捉える事は出来ない

 

その弟子のアブラハムは年少の狩人

変形機構を持った斧を振るい、確実に獣を討つ

 

 

 

 

激戦に次ぐ激戦、狩人達は近年類を見ない

長期戦と大群に見舞われて、消耗は大きく

皆に疲労の気が出始めており───

 

デュラ達が応戦する一画の反対、此方は

残りの”デュラの盟友”、その二人と名もなき狩人達が

獣、狂った群衆相手に悪戦苦闘を繰り広げる

 

連装砲…ガトリング銃の若き狩人

”青雷”の特異な金槌を振るう狩人

 

そこへ援護に加わるグレッチェン。ようやっと来た

応援を受けて、微かに狩人達は安堵の表情を浮べ、

だが直ぐに真正面の敵に顔を強張らせた

 

 

[────]

クソ…!皆下がれ…!!掃射する!!

 

 

ガトリングのバレルが甲高い音と共に勢い増し回転。

これより放たれるは対集団に真価を発揮する、

剛砲と言うべき、連続射撃の鉛の嵐だ

 

 

[───]

!?待て!!誰か来る…!!あれは────

 

 

好機を制止された理由とは、彼らもよく知る影が

獣の奥に見えたから、加えてもう一つの影も。

 

それが意味するところは一つ…この危機的状況に

おいて、確かな救いが訪れたという事

 

「───ダンテだ!!」

 

───古狩人ダンテ。

現ヤーナムで彼に並び立てる狩人は極少ない

 

その実力…誰もが認める程の老練

膂力、技量、そして特に人望の高さは闇夜に

生きる狩人には似つかわしくないとすら言えよう

 

狩人は皆、彼をこう云う───「撃鉄」と

 

 

[ダンテ]

見えてきた!ここからは入り乱れるぞ!

 

[ジョン]

行けよポイントマン、援護は任せろ

 

 

古狩人の後ろを追ってきた異邦人は

脇目も振らず先導者にそう呼びかける。

 

今現在の彼らは互いが”相棒(バディ)”だ

異邦の男はライフルを構え、古狩人を阻む獣を

類稀な命中精度を以て、四肢を撃ち抜き牽制する

 

 

[デュラ]

(生きていた…!やっと戻ったか!)

 

 

古狩人ダンテの得物、”爆発金槌”はその重厚な

殴打の威力も当然ながら、本領は多対一の状況にある

 

熱気を帯びた赤い炉

 

一度撃鉄を上げて、着火した機構はそれを最後、

敵を爆炎によって薙ぎ払うまで収まる事はない

 

 

[ダンテ]

ふんぬ────ッッ

 

 

”───ゴオォォンッ!!”

閃光と轟音。前方数匹の獣が瞬く間に肉塊へと

様変わり───しかし相手はそれだけに限らない。

 

 

[デュラ]

ダンテ!後ろだ!

 

 

背後は隙を晒す、しかしこれは彼自身承知している

 

後方へ気を配る必要は無い。

その為のライフルマンなのだから

 

”───パァンッ!!”

二人のコンビネーションは流麗で、

長年付き添った経験があるかの様な動きを見せ続く

 

 

[ダンテ]

(流石、これ程狩りに専念出来るのは久しぶりだ)

 

[ジョン]

(良い銃だな…)

 

 

たった二人───されど戦況は、

それだけの差で容易に覆り始めだし

劣勢だった狩人達は徐々に士気を取り戻した

 

一匹、また一匹と…狩人に葬られ

やがて屍は山になり、燃え移った炎が屍から

鼻を突く異臭を放って、勝利の香りを醸し出す

 

 

[デュラ]

もう一息だぞ!気を抜くな!

 

[グレッチェン]

あのライフルの男、かなりやるよ

 

[───]

みたいだな…!さっきから見てる、

一発足りとも外してる様子が無い…!

 

 

女狩人と”デュラの盟友”の一人が、

背中合わせに語るのは異邦のライフルマン。

 

全ての弾が意のままの様に的確に、

場の狩人を援助すべく獣のあらゆる部位を撃つ

 

彼が狩人に非ず、しかしこれ程の技量を持つのは

当然紛れではなく…並外れた経験が故であるのだ

 

 

[ジョン]

やっぱりちと、鈍ってるな?

 

 

全盛を通り越して尚、衰えは殆ど見せず

淡々とライフルの排莢、装填、射撃を繰り返す

 

彼はジョン・スミス。クリミア戦争の英雄

 

騎兵戦闘から塹壕戦…伏兵戦に至るまで。

その全ての戦場から生還し、あまつさえ────

孤軍奮闘、何十何百の兵を討ち取った男

 

何より特筆すべきは、その鋼の精神力

イギリスの自軍、友軍までもが彼を見てこう言った

 

 

”───不死身のジョン(ダイ・ハード)、イカれ野郎だ”

 

 

[ダンテ]

ジョン、左方目に────!!

 

[ジョン]

!!

 

振り向きざま、獣の剛腕が飛び込んでくるが

それでもジョンは焦りの気を見せない

 

”───パァンッ!!”

 

飄々と交わし、ライフル射撃による”牽制(パリィ)”を繰り出す

 

撃ち抜かれた腕の痛みと衝撃に大きな獣は

途端に大きく怯み、その隙を見逃す男ではなく。

 

予め古狩人ダンテから手渡されていた火炎瓶を

獣、狼の様な大口に勢い良く突っ込み───

 

次に抜き出したのは愛銃のS&W. No3

 

[ジョン]

これでも喰らえ、(Yippee-ki-yay, )くそったれ(motherf✗cker.)

 

 

───拳銃から一発の銀の弾丸が炸裂

 

火の付いた瓶は文字通り、獣の頭部を丸焼きにする

飛び散ったオイルにも煌々ときらめく炎が上がった

 

口内から気道、胃までの全てを灼き尽くされれば

この絶叫が、空に響き渡るのも当然である

 

 

[ジョン]

へっ…旅道中平和ボケして仕方ねぇや

 

[ダンテ]

見事だよ…火炎瓶も役に立ってるな

 

[ジョン]

それよかこのライター…良い物持ってるじゃないか

マッチより手間が省ける、煙草にも丁度良い…

 

ようダンテ、これ貰っていいか?

 

 

戦闘の最中にそんな雑談を交わせるのも

彼らが総じて強者であるから───

 

獣狩りの夜、そういう非常事態においても冷静を

欠かさない者は、だからこそ屈強な狩人となる

 

血に酔わず、狂気に呑まれぬ精神を彼は持っていた

 

[───]

…遅れはとっていられない、狩り尽くすぞ!

 

焚きつけられた狩人達の攻勢

雷電走り、ガトリング掃射の音

 

大斧が振るわれ、女狩人が走り出す

爆発金槌の一閃───杭打ち機が爆ぜる

 

ライフルマンの水銀が、尽くを撃ち抜いた

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

《ジョン一行が工房を経って幾時間》

 

───火薬庫の工房、応接間の暖炉は

緩やかに、ゆらゆら、炎が燃えて暖かい

 

工房のバッシュフルはただ一人その火をじっと

見つめている中…老年の男が作業場との扉を開けて

入って来、眠たそうに彼へと問いかけた

 

[──]

ん───バッシュ、誰か来てたのか

 

[バッシュ]

ああ”先生(ドク)”…起こしたかな、すまない

 

 

[ドク]

いやぁ、構やしねぇよ。

──んで…そうか…新人が入ったか

 

謝罪を受けてドクと呼ばれた男は、

枯れた声で笑いながら机に散乱する書類を見る

 

それは契約書、ジョンが狩人証を

発行する際に署名した、血判入りの物だ

 

[バッシュ]

…普段なら余計な詮索はしないタチなんだけどね。

不用心に荷物を置かれたら私だって気になるものさ

 

バッシュといえば、先んじて発った

異邦人の荷物を、軽く漁った後であり…

だがしかし疚しい考えがあっての事では無い

 

金銭の類いには勿論一切手を付けておらず

触れられていたのは彼の個人情報だけだ

 

[ドク]

はっは…なんだこりゃ。”ジョン・スミス”、偽名か?

 

ドクもこうしてバッシュと同じ反応をした。

 

言ってしまえばジョンは誰が見ても怪しく、

その名も奇妙、組織的な誓いを交わした者としては

多少なりとも納得のいかない部分もあったろう

 

[バッシュ]

私もそう思ったんだ、行き場を無くした

一匹狼、アウトローの類いかとね────

 

だが、違うな。彼は中々に威圧感はあったが

あの澄んだ目付き…悪い奴じゃあないよ

 

 

ケースから取り出されているのは

何通かの手紙や電報…その全ては彼を労る

同じ死線を潜った軍の人間による文であった

 

悪性に塗れた背景を持つ人柄であれば

こんな物は当然、届くであろう筈がない

 

それはケースの中の勲章ですら示していた

 

 

[バッシュ]

それで…なあ、先生。

ふと貴方の昔話を思い出したんだよ

 

───教会の剣士、ウォルター

 

 

その言葉を聞いた途端、ドクは重い瞼をかっと見開く

思い起こされる記憶───古き良き、だが忌々しき時代

 

ずっと昔の話だ、”聖剣のルドウイーク”…

かの英雄が活躍をする、それよりもずっと前の。

 

古い剣士、教会の創始者、その一人

 

 

[ドク]

あぁ…そういう事か…

”スミス”…もしそうなら…因果だなぁそりゃあ…!

 

ドクは火薬庫の前身、オト工房の人間である

 

狩人達が狩りに銃を用いる様になった理由は

彼らオト工房が、ヤーナムの銃火器開発に

深く携わっていた所が大きかった

 

[ドク]

(なぁダンテ、これからきっと面白くなるぞ

なんてったって──”スミス”はヴェルンドの化身だ)

 

 

 

感慨深いのはきっとこの場のドクだけだろう

もうずっと、ずっと忘れ去られた時代の話だから

 

炉の底に貯まった、灰の様な思い出だから

 

 

 

 

 

 

────────

 

 

 

※グレッチェンについて。

 

脚注の通り、グレッチェンは海外コミックスに

登場する熟練狩人であり、またゲーム本編に登場する

”烏羽のアイリーン”と同様に「慈悲の刃」を持つ。

 

「慈悲の刃」は「狩人狩り」の称号と共に双方

唯一の物で、つまり、それが意味するところ

彼女はアイリーン以前の「狩人狩り」…

 

…という事になるが、詳細は定かではない。

(本作では、狩人狩りとして扱う事とする)

 

*1
尾栓、閉鎖器のこと。初期の後装式ライフル等は、この箇所を開けて実包を装填する。

*2
円錐形の弾丸。19世紀当時のこの頃、従来の球型弾とは別に改良され、この弾丸が発明された。今日に至るまでのライフル弾の原型とも言える。

*3
イギリス産のライフル。エンフィールド造兵廠が、エンフィールド銃を改良した事で生まれた後装式小銃。1866年、イギリス陸軍採用。

*4
ナイフの一種。刃長20〜30cmのクリップポイント、強固なダブルヒルトを持った大型の鞘付きナイフ。

*5
海外スピンオフコミックス、Bloodborne:Lady of the lanternsに登場する主要人物の一人。アブラハムも同様である。




《 獣狩りの長銃 》
狩人の工房「火薬庫」の手になる長銃
主に異邦人や群衆の為に調整された銃で
これは特に、工房の先鋭的な技が垣間見える

長銃は射程が長く、だがそれゆえ大きい
ヤーナムの狩人にとっては扱いづらいだろう
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