広い大地の片隅で眠る   作:黒兎可

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今回は空耳ケーキでサブタイ良いと思ってます(爆)


P016.空耳ケーキ

 

 

 

 

 

 ミールさんと遊んだり何だりし終えた九月の初め。

 千年前の戦いに関係のありそうな石板を集めている魔物の一派がいる。化野先輩の実家も襲撃されたと、その話を軽く清麿君に共有した時点で、聡い彼は「こっちでも何か探してみる」と調査を快諾してくれた。とはいえ中学生だから無理をしない程度に、と言い含めては置いたが、彼のことだ、結構早く何かしらの調査結果が出てくるかもしれない。

 ナゾナゾ博士については、やっぱりこちらから下手に情報を渡すよりも、先入観なく接するべきだろうと判断した。その方がおそらく彼のためになるはずだし、ナゾナゾ博士としても色々やりやすいだろう。……なんとなく思い出したけど、初登場時はだいぶコメディに振り切って清麿君を揶揄っていた筈だし。

 

「しかし流石、清麿君。あっという間にまた魔物と遭遇してるとは……、これが主人公力か?」

 

 キャンチョメと我らがパルコ・フォルゴレとの出会いの前に3体の魔物と遭遇。1体は逃がしたが、それでも2体は魔界に帰っており。なんならこっちに帰って来てウマみたいな魔物を飼ったり?(ウマゴンとか名づけられてたっけ、確かアニメとかだと)、旅人がパートナーの不思議なペアと戦っていたり。どう考えてもキャンチョメ以外に新しい魔物に1体も会ってない俺やスギナの遭遇率の無さが異常にも思えるが、意識的に探さなければこんなものだろうとスギナは言う。

 

『まあ何か……、ロンドンで嫌な感じの気配を感じたけどさ』

『嫌な感じの気配?』

 

 その正体について、スギナは特定しきれていない。しきれていないからこそ俺とスギナは警戒する。こういう場合のそういうフラグって、アニメや漫画やゲームだと強キャラ遭遇フラグの類だ。同じような気配を感じたらすぐ逃げられるように何か考えねばと、二人で意識を合わせたのは言うまでもない。

 どう考えても主人公じゃない俺たちが勝てる相手じゃなさそうだしな!

 

 さて、そんなこんなで気が付けば秋も終わりが近い。

 ミールさんが久々に「遊ぶぜ」とこちらに来て連れられた先で、俺達も「ガッシュとそっくりな魔物」と戦ったりといったことはあったのだが(最終的にジュオウで魔力操作を封じてミールさんと一緒に逃走した)、何とか生きている。逃げおおせた後の魔物の襲撃もなく、大学もバイトも相変わらずで、ツヅリがスギナと一緒に遊んだりしてるのも相変わらず。しいて言えば化野先輩から「ツヅリがスギナ君のこと、気になってるみたいなのよね~」とか言われて、陰ながら仲良くなれるよう協力してちょうだい♪ とか言われたことくらいか。とはいえそれも別に何か進展がある訳ではなく、相変わらず相変わらずといったところ。

 ミールさんもあれから本当に全然遊びに来なくなって(以前酷い時は週に3回は遊びに来てたし)、メールで調子を聞いてきたりするくらい。何か忙しい用事に忙殺されているとかで、ひと時も目を離すことが出来ないのだとか。

 

 そんな時、アレから更に魔物と戦いを重ねた清麿君から連絡が来た。

 その要件のために現在、俺達は清麿君の家に遊びに来ていた。清麿君に関しては、ガッシュとそっくりな魔物についての情報共有をしようという意味もあったし、清麿君からしても「見てもらいたいものがある」という連絡だったので、これはお互いに目的が合致した訳だ。

 

 ちょうどガッシュやティオたちが「特訓だ!」と言って出ていくところだったので、顔を合わせたスギナも当然誘われたが。

 

「ウヌ! スギナもどうだ?」

「今日はツヅリ、いないのね」

「メルメルメ~~?」

 

「いつも一緒ってわけじゃないからね、ツヅリ。あと、僕は清麿と春彦が何を話したりするのかって方に興味がある。こう、オタク的な意味で」

 

 オタク? と首をかしげる三人に、オタクなんだよ、と例のどんよりした目を向けるスギナ。なんとなくたじろぐ三人へのこのプレッシャーは何なんだろうね。はいはいとそんなスギナの頭を撫で落ち着けた後に清麿君たちと話してると言って、「競争よ!」と彼等が走っていくのを見送った。……「一般人にぶつかったら危ないから注意しな~!」くらいは声をかけたが、これは一般人として当然の配慮である。

 さて、清麿君のお母さんに挨拶して、スギナともども上がった先。清麿君の自室にて、俺達は目撃した。

 

 

 

「オンカラカラウンハッタソワカ!

 ピンコロピンコロピンピンコロリ!!

 ジャンボウゲ・アピポロピョーン!!!

 マンマン・テロテロ・エクスタァス!!!!

 ジャムジャ・カムジャ・コンデ・ガン・デ・ブビデ・バビデ・ブー!!!!」

 

「ついに狂ったかッ!!?」

 

 

  

 頭が良すぎるが故に色々と限界を超えて何かがぶっ壊れている様子の清麿君にツッコミを入れる俺と、その場で転がって大爆笑するスギナ。流石にこっちの声が聞こえて我に返ったのか、アホのビンタでもお見舞いされたような能天気な表情で空笑いする清麿君である。「あっ」とちょっと恥ずかしそうではあるが、それ以上に思考が空回り始めているのは間違いない。

 何かしらのオブジェクトに手を当てて、謎の呪文を唱えていた清麿君だが、その足元にはアルコールだのマジックだの魔術所だのタライやら氷やらポットやらもう何が何で何を目的としてそれ用意したって有様である。なんならガスコンロと寸胴鍋まであるし。何だ、出汁でも取るのか? 

 そして清麿君が手を当てて、叫んでいた対象こそが今回俺達を呼び出した理由なのだろうとはわかっていた。

 

 石板――――ナゾナゾ博士から教えてもらったものと同質であり、清麿君がロンドンで見たものと同じような、あの石板。

 今度は星をイメージしたような、魔物の子のようなレリーフが彫られている。

 

「それが今日、骨董屋で見つけたってやつか」

「ああ。気味が悪い、重い、デカいっていうから、酷く安い値段だった」

 

 可哀想に、となんとなくそう思う。別に魔物に対してそう思ってる訳ではないはずだけど……、何か引っかかるな。作中確か千年前の魔物がどうこうってエピソードがあったような気がするし、多分そのあたりに関係するアイテムなんだろうけれど。正直この世界に転生するなんて生前は思って無かったろうし、再読していなかったのが悔やまれる。

 

「春彦さんも言っていたけど、これが記録として残されたものだったら大した意味を持たないだろう。けれど、コイツを回収している魔物がいるっていうなら話は変わってくる。

 この魔本だってその正体について、俺達は全然知らないんだ。何かしら戦いに有利になる要素が潜んでいても不思議じゃない」

「例えば?」

「そう、だな。……魔物の子を象ってるんだ。その子の呪文が封印されてるとか、そういうところか?」

 

 わざわざ盗んだりして集めてるってことは利用価値があるのだから、これくらい直接的でも不思議じゃないだろう、と清麿君。

 確かにわざわざ人間界尺度でみて窃盗とか含め、単なる情報であるならば石板本体ごと回収していく理由は薄い。だからなるほど、呪文的なのを唱えて何か反応があるかみたかったってことか…………。

 

「……それはそうと、そのブリは……?」

「あ、あははー……、そのこう、自由な発想で調べてみようかなって」

 

 再びアホのビンタでも喰らったような顔をする清麿君。うんまぁ、通常の調べ方では出来ない方法を取ろうとしたのは察するんだが、その、何と言うか…………。頭が良すぎて一周回って頭が悪くなってる感じというべきか……。

 いや、それでも片づける気配がないので、手が詰まったら色々試すつもりではいるんだろう、ウン。

 

 それはそうと、ちょっと気になることがあった。

 

「スギナ、これって魔界の文字っぽいけれどお前さん読めないのか?」

「えっ、判るのか!?」

 

「ん? …………字の形は魔界文字っぽいけど、形が古めだな。なんとなく『星』か『パ』っぽい字はあるんだけど、読めない」

 

 そうか、という俺に「ちょっと待って」と言って石板に向き直るスギナ。しばらくウンウン唸って「月」とか「操り?」とか単語単語を語るものの、最終的にギブアップ。

 

「魔本もそうなんだけど、書かれてる文字は知ってる文字のはずなんだけど、意味を形どれないよ。何と言うかこう、すごい達筆な旧字体で書かれてるって言ったら春彦はわかりやすい?」

「あー、ニュアンスはおおむね」

 

 そうなるとやっぱり何かしら手段が必要か? と思ったが。清麿君が待ったをかけた。

 

「スギナ、ちょっと整理させてくれ。『部分部分は読める』んだよな?」

「一文字一文字が日本語の五十音に対応しているわけじゃ無いから、この場合は音と意味と接続がわかるような、わからないような程度って感じだけどね」

「それでも助かる。そうだな…………、連結して意味を理解できないってことは、きっとそこに何か理由があるんだ。ということは、単語単語を外部に書き記して繋いでいけば、何かわかるかもしれない」

「つまり、あの文字を絵に描け…………、ってコト!?」

「な、何でびっくりしたんだ春彦さん?」

 

 いやこう、ちょっとノリで……(ち〇かわ並感)。

 しかし、なるほどそれは妥当かもしれない。魔本に書かれてる文字については正直「呼んで意味を理解できる」ことに関してはインチキの類、それこそ魔法的な方法で制御されている何かなんだろうと思っているけれど、それはそうとして文字の形が何であるかを解読できるというのなら、やってみるのは妥当だ。

 ひょっとするとスギナ自身が元々オタク気質だから知ってたのか? と少し興味深(おもしろ)い。この感じだと間違いなく原作では思い至らなかった部分だろうし、さてどうなることやら。結局意味のない文字の羅列になるにしても、それはそれで前進したと言えるだろう。

 

 果たして…………、俺は、その意味を知って後悔した。

 

 作業手順としては、まず俺が文字を一つ一つ切り出してノートに描き(デッサン速度の速さの問題)、スギナがそれに近い現代の魔界文字の意味を列挙。それを全部の文字に対して繰り返し、一通り見ながら三人であーでもないこーでもないと文章を作っていく。

 その結果出来上がったのが、次の文章だ。

 

「…………『数多の星を従えし愚かなる月、愛と正義に裏切られここに踏みつけられん』。墓標みたいな言い回しになったが、かなり嫌な文章になったな」

「意外と文章っぽくなったな。まあ愚弄されまくってる感じだけど」

「多分、当時のニュアンスだともっと酷い罵りになってると思う」

 

 1時間くらい相談し合って、結果的に出来上がった文章がこれだ。これだけで全体の文書の前半、上下二段のうちの上段だけだ。

 書かれていた文章は明らかにその書き手の悪意がにじみ出ていて、千年後の俺達ですら思わず顔をしかめるくらいには嫌なものだ。さも、RPGのラスボスにありそうな物言いのようにも思える。

 

「結局、意味がある何かってわけじゃなく、嫌な気分にさせられたって訳か……」

「……いや、そうじゃない春彦さん」

「む?」

 

 愚痴を吐く俺に、清麿君はそうじゃないと言う。少なくともこの石板が千年前の戦いに確実に関係がある代物だというのが判ったのもそうだし、何より――――。

 

「何より『ここに踏みつける』という文章。確か他の言葉だと『埋葬する』とか『押さえつける』とか、そういう用法もあったよな。言い回しの変化形の部分として魔界文字的におかしいから踏みつけると言う言葉になっているだけで。

 ひょっとすると、そういった意味から類推できる何かが、この石板にはあるんじゃないか?」

 

 頭を悩ませる清麿君。結局この後はアイデアらしいアイデアも出ず、コンビニで何か買ってくると出て帰って来たら、清麿君がアホのビンタされたような能天気な顔になったあたりで「あっもうこりゃダメだ」と察した。

 石板をブリでビタンビタンと叩いたり、氷水につけたり、鍋にブリと一緒に入れて煮込みだしたりしたあたりで流石に静止をかけるも、変な落書きをし始めて(何故かスペイン式アルファベットとか)、もうお手上げというところだ。

 

 気分転換ということで、別な話題。ガッシュに似た魔物、台湾で食事中にしれっと遭遇したあの「銀色の魔物の子」について、話すことにした。こちら側の本題として話を振ってみれば、清麿君は面白いくらいに食いついてきた。

 親の仇でも睨むような感じになっていたので、流石に怖い。指摘すれば謝ってから訳を話してくれたので冷静さを失ってはいなかったものの、そこには強い怒りの感情が含まれていた。

 

「す、済まない。…………そのガッシュに似た魔物は、以前俺達と戦って、再戦を誓った魔物の本を、燃やした奴だからな」

「それだけ、って訳じゃなさそうだけどな」

「やっぱり俺、顔に出てます?」

「まあ、ね。人より頭が回る分、そういう心の力も人より強いんだろうさ」

 

 俺の言葉にちょっと照れたように苦笑いして、清麿君は前を向く。

 

「スギナは、ガッシュの記憶がないっていうのは知ってるな? その原因が、ガッシュに似た魔物なんだ。あいつはイギリスの森で発見された時、全身ボロボロにされて記憶を失っていたらしい。そして――――その時にガッシュを傷つけ、本を燃やさずに記憶だけを奪い去ったのが、その魔物」

「燃やさなかった、ねぇ…………」

 

 半眼になるスギナも、あの時のことを思い出しているんだろう。今思えばミールさんがいなかったら、確実に倒されていたあの二人を。

 

「よければ詳しく聞かせてくれねえか?」

「……元々それが主目的で来てるから、否とは言わないけどね」

 

 とはいえあまり長々と話すようなことでもない。戦闘自体はお粗末極まりないので、要所要所必要な所だけに集中して話すことにしよう。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

「あれは久々に知り合いの人に連れられて、台北でラーメンを食ってた時のこと。……何? なんでわざわざ台湾でラーメン食ってるのかって? いやそれは俺も知り合いの人にツッコミ入れたけど、仕事の関係で台湾の方が都合が良いとか言ってたっけ、ウン。よくはわからない。

 女の人? ……あー、パルコ・フォルゴレのコンサートの時に、俺が話してたのを見てたのか。うん、あの綺麗で怖いお姉さん。多分一生関わる必要が無いタイプの世界の人だから、そこはスルーしておこう。

 で、そのお姉さんに連れられて2件くらいハシゴした時だったかな? スギナが前にロンドンで、フォルゴレのコンサートを見終わった後に感じた『嫌な気配』をまた感じたらしくて、その場で足を止めて。そしたらンマー、俺達が出て行った店に入っていくガッシュそっくりの魔物の子と、何か仙人みたいな不思議な子が一緒にいてね。子? というけど大人って感じじゃ無かったし、俺より下か同じ位だとは思う。ズボンに服の裾を入れて、薄手のジャケット着てたかな。んー、あと親指のおさまりが悪いのか、ポッケに手を入れてる時には……、何々? パートナーじゃなくて魔物の子の方を知りたい? それもそうか。魔物の子は、ゼオン、と名乗った。……名乗ったっていうより、バトルしてた途中で『在野出身のくせにこれほど多くの術を扱うとは、このゼオンが認めよう! お前はガッシュを下回る程に心が弱く、それでいて生き汚い魔物であると』って感じで。

 褒めちゃいない? それは、まあ、そうだろうな。

 で、まあラーメン屋で遭遇して、パートナーの、デュフォーって言ったっけな? そっちの方は『ホットドッグの方が良い』とかブツブツ言ってたんだけど、ゼオンの方が『煩い今日はカツオの魚介コンソメを飲むんだ』とか言って聞かない感じで、あれはあれで幼児とお兄ちゃんって感じで可愛い組み合わせな気もしたけど、俺とスギナを見たてすぐに態度が変わったんだ。『お前達、ガッシュ・ベルと共にあの奇天烈な変態男のコンサート会場にいたな?』って。

 そう、だね。どうやらあの時、スギナも一瞬しか感知できなかったけど近くにいたらしい。まあ俺は俺でフォルゴレのこと奇天烈な変態とか言ったのにキレて襲い掛かったんだけど。……何でだよって、いや、そりゃファンなんだからもうちょっと言い方ってものがあるだろ! ってなるじゃん? ならない? うん、そこは見解の相違かなぁ。

 で、とはいえパートナーの方が食事したそうだったし、俺たちもわざわざ急いでる訳ではないから、女の人と別れて場所を決めてバトルして……。

 結果? あー、ほぼ負けだったね。ウン。温情もクソもなく、使ってる術はことごとく破られた。最大術はともかくとして、気が付けばバンバン転移してくるわ、スギナの魔力を乱してジュロンすら使い辛くしてくるし、空中に散布された攻撃は電撃で焼いて粉々にしてくるものだからねぇ。ゲームとかだと木属性って電気属性と相性良いんだけど、ありゃ出力の問題だねとはっきり思ったね。

 とはいえスギナもパートナーは狙わなかったし…………、ん? そっちを狙ったらあっちも俺を狙ってくるだろうからやらなかった? フフ、こいつめー、こいつめー。可愛いやつめ。

 あー、はっきり言っておく。ゼオンのザケルは、一発でこっちのアーガス・ジュロンを貫通して来た。ガッシュのザケルと比べて威力はえらい違う。大体ツヅリのギガノ・リュウスより威力はあるだろうから、他の術と比較すればおおよそどれくらい強いか予想はつくんじゃないかな? うん、ヤバイくらい強かった」

 

 そんな相手にどうやって勝ったのか。俺の問いに、春彦さんは首を左右に振った。

 

「だから、戦いとしては完敗なんだって。位置取りに関しては追い詰められないように気は使ったりしてたけど、遠距離中距離主体の俺達に思いっきり近距離攻撃しかけてくるし。ついスギナも近距離系の術が出来るくらいにはビビッてたし。……あっこら、ポコポコ殴るな殴るな。

 どうやって逃げたかで言えば……、清麿君、というかガッシュ君だってもう一つや二つ、持ってるだろう? 最大呪文。大海恵とかと顔合わせした時、心の力が足りないから使えなかったけど術だけは教えたろ? 『ジュオウ』。スギナの最大術で、防御用の術。コイツがどうも、相手の能力を封じると言うか、魔力とかそういうのに干渉する術みたいでさ。これを使った後はザケルの威力もちょっと落ちたし、瞬間移動もできなくなってたし。

 で、それに混乱してる隙をついてアーガス・ジュロンで覆って、そのまま全力で逃げた! って感じ。な? 全然誇れる部分なんてないだろ?」

 

「いや、それでも逃げ帰って来れただけでも、良かった」

 

 思わず俺は安堵して一息。春彦さんの説明は飄々としていたけれど、それが言葉通りのことでないのはスギナを見ればわかる。話をし始めてから春彦さんの隣に座って、ずっとそこを離れていないからだ。

 ふいに脳裏をよぎるのは、アポロとロップスのこと。……伝え聞いたツヅリの姉らしい魔物の本を燃やしたやつもそうだが、既に燃えている本を、相手の心を折るためだけに再度追撃して燃やす、そんな非情なこと。そんな奴には容赦しないし、するべきじゃない。

 

 そんな思いが渦巻いて、声に出ていたからこそ。俺は「あっ」と何かを思い出したような顔をしてる春彦さんが、俺に散々「自由な方法で」実験された、落書きまみれの石板に向いていたことに気づかなかった。

 

 

 

 

 


・石板とその背後で蠢く何かを認知する清麿:

 春彦経由でナゾナゾ博士の言っていたこと、ツヅリや化野関係の話の追加は軽くは聞いている。がナゾナゾ博士についてはぼかされてるので、初対面の時は例のクイズもやる。とはいえ発見が遅れてるのは、わざわざ石板単体に謂れがある形で残されているのが化野実家のV様くらいだから。

 

・壊れた清麿:

 なまじ頭が良い分、一度空回るとぶっ壊れる。本編でよくやるアレそのままで、結局「自由な発想」による検証と実験は回避できなかった。パムーンェ……。※春彦も最後に思い出したので「あっ」と何かを察した。

 

・修行より解読に付き合うスギナ:

 オタク気質だというのを鑑みるとこっちにくるかな、という判断です。あとは英才教育?のせいもあり、春彦と一緒について行って一緒に何かやった方が、魔界に帰ってからも自分の身の助けになるだろうと判断してる。

 

・ゴーレンの石板について:

 石板に書かれてる文字は本作オリジナルということで……。文字の解読についても「魔本に依存している魔界文字」だから読めないのであって、別々に絵にかくなり何なりしてやれば文字単体は読めるだろうという発想からです。

 魔本と違って石板は対象の魔物について、なんとなくどういう経緯で封じられるに至ったかをニュアンスで判る程度のイメージ。というか多分、ゴーレン視点で見た相手の感想。

 

・ゼオン遭遇:

 多分ミールかゴームのストレスが限界になったので、少し遊ばせてくれと頼み込んで春彦と一緒に出歩いてる途中にて遭遇。デュフォーは絶対「カツオの味のスープでも面白く呑むんだろうなぁゼオンは」とか思って見てる。ガッシュと一緒にいた奴だから間違いなくお友達だろう判定で即刻バトルになるし、春彦もフォルゴレに身もふたもないこと言ってるのでキレてるのでバトル不可避。デュフォーは何も言わないしスギナは生命の危機を感じるしミールもコソコソ逃げてる。

 バトルに関しては描写考えたけど、可愛そうなくらい歯が立たない割に話が進まないので省略。流れとしては、ゼオンはザケル・ザケルガにソルド・ザケルガと瞬間移動のみでジュオウ以外は完封。オージグル・マ・ジュロンも「周囲の植物全体に」ベルの雷でダメージを蓄積させ、スギナの操作を嫌がるように調教したため使い勝手が悪くなっていた。結果、ジュオウで魔力を封じた上でアーガス・ジュロンで視界を奪い、コソコソ隠れて見てたミールとゴームによって日本まで逃走。

 そのまま追ってこなかったのは、すぐに追ってこれなかったせいというのと、デュフォー側に理由が出来たせい。

 

・残り魔物40体のお知らせ:

 この後ほどなく。ブラゴ大将軍とかめちゃくちゃ頑張ってると思う。

 

 

 


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