広い大地の片隅で眠る   作:黒兎可

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ちょっとバトル描写とかの塩梅で時間かかりました……!


P021.あなただけ見つめてる

 

 

 

 

 

「全く、仕方ないわね……」

「何で俺が空気を読めない、みたいな顔されなきゃならないんだよ。どう考えてもおかしいのは貴様達だろ。

 後ビクトリーム、貴様そこで何やってやがる!?」

「敗者は大人しくⅤの偉大なるパワーを貯めるだけよ……、当然だろう? 『義理もある』故に何もできぬとも」

「意味がわからねぇ!」

「大体貴様とか、年齢から言って似合わないぞダルモスくふぅ(ヽヽ)ん」

「ロードの縛りさえなきゃお前から最初に本を燃やしてやってたものを…………!」

 

 ビクトリームがくらいつくした残り二つのメロンを見て名残惜しそうな顔をしていたレイラは、やれやれと言いながらダルモスと呼ばれた魔物の隣に立つ。そしてビクトリームが煽る煽る。レイラも「止めなさい」とかストップかけずにため息つくだけなので、一方的にダルモスがイライラする様を見せられる俺達だった。

 …………ダルモス君の方は見覚えないんだけどレイラの方はこう、何かすごい見覚えがあるな。メタ的なこと言うとキャラデザがガッシュ系統に寄ってる感じだし、ビクトリームとも仲が良さそうなあたり、もしかしなくても味方になる子かな?

 ま、スギナは特に気にした様子もなく小魚ポリポリつまんでるし、ツヅリはツヅリで「真面目な顔した方がいいの?」と化野先輩に聞いてるし。

 

 状況的にはもうバトルに移ると察してるからか、清麿君の声にあわせて本を構え動き出す。

 入って来た入り口の方はビクトリーム戦で塞がっており、奥に抜けようにも当然目の前にはダルモスやレイラたちがいる。

 

「状況的に今、連戦は難しい。逃げるにしても、俺達の中で心の力が一番残ってるのは……、春彦さん!」

「春彦、ここならジュロンくらいは使えるよ」

「なら拘束くらいは出来るか。『オージグル・マ・ジュロン』!」

 

多重操作(オルダ)付与(ジオ)強化(グル)最上級()植物(ジュロズ)操作(ロン)ってところかしら。なるほどね」

 

 今何って言った!? 何かすごい、こう、術の中身を分析されたみたいなセリフを言ってたぞ、あのレイラ!!?

 驚愕する俺とは対照的に、小魚を食べ終えたスギナは小袋をポケットにしまい込んで手を構え、ジュロンの杖(竿?)を形成する。そしてそんなスギナに「ポイ捨てしないのは、偉いじゃない」とかやっぱりレイラちゃんがフレンドリーなことを言ってきていた。距離感どうなってるんだと思わなくもないが、ビクトリームからして色々とテンションがおかしいので、そのあたりの影響だと思っておこう。

 

 そして清麿君が隣でレイラの台詞を反芻してるのか「そういう術なら……」と俺に耳打ちしてくる。うん…………、うん、やっぱり頭良いなこの子。術の概要聞いただけでほぼノータイムで上手い扱い方を考えるものだ。あと頼りになりすぎて普通に指示に従ってしまうあたり、流石に原作主人公だ。とはいえ年上としては申し訳なさが凄い。

 

「何やっても無駄だ、オイ人間――――!」

「――――『ベギルセン』」

 

 ダルモス君の腹部が展開して出現した大砲から放たれる弾丸。球体に悪魔の羽根みたいなのがついたようなのが回転して襲い掛かってくる。

 スギナは最初その砲撃の口そのものを塞ごうとしたらしいが、ジュロンが生い茂るよりも先に弾丸は放たれた。……普段よりもちょっと動きが遅いな、植物。あの感じだと、スギナも使えるとは言ったが普段通りとはいかないらしい。あのパワーと勢いだと、ジュロンだけだとちょっと厳しいな。

 

 というか普通にピンチだ!

 春彦ぉ!? と涙目で逃げて来るスギナだが、悪いが速度的に間に合わないなこりゃ。とりあえず俺も走ってスギナを少しでも引っ張れないかと向かうが、そんな俺よりも素早い小さな人影が一つ。

 

「ヌゥウウオオオオオオオオッ!」

「が、ガッシュ……!?」

 

 流石は主人公って言うべきか、ぎりぎりでこちらを庇うように前に出るガッシュ。その隙に俺はスギナを拾い上げ、清麿君の作戦を耳打ち。

 さてジュロンを振るおうかと杖を構え直す丁度そのとき、レイラって子が服の胸元の月のイラストから出現させたステッキを構えて、こちらを見ていた。

 

「…………」

「『ミグロン』――――」

 

 光が伸びる。光線というより「ロン」だから、鞭か!? うわあああああ! とキャンチョメとかが声を上げて咄嗟にその方の全員が回避するが、運良くか運悪くか壁に穴が開き、ビクトリームの「ほぅ」というニヤリと言わんばかりの声が聞こえる。

 

「そういうことか」

「何がだ? しかし外すとはお前らしくもない」

「ええ。ダルモス。アルベール今度こそ、『次は』当てるわ」

 

「ダメ!?」「清麿くん、さっきのがまた…………!」

 

「『ミグ――――』、ァ、ァ、…………」

 

 そして、まあ、うん。なんとなく途中からメタ読み出来ていたのだけれど、レイラはダルモスの方に月のステッキを向けて構えていた。

 貴様裏切るのか!? という言葉に、ぶつぶつと何かつぶやいたレイラはこちらを振り向く。

 

「何をボーッとしてるの。早く私の作った壁穴から逃げなさい」

 

 驚愕に、流石に全員思考が追い付かない。スギナも「ここまでストレートに裏切る!?」と別な意味で驚いている。

 さっきのビクトリームが、あのノリでもなんだかんだ敵だったことを思えば当然のリアクションだ。唯一ツヅリだけが「やっぱり」とか言って、ごそごそと背中の帯の隙間から何かを取り出そうとしていた。

 

 さて、ダルモスの攻撃をかわしつつこちらに来たレイラは、そのまま月の文様を立体化するような術で盾を形成。

 

「おのれ、何を考えている! ビクトリームと揃いも揃ってッ」

「仕方ないさ、ベリーメロンの魔力の前には……」

「そんなに美味かったのか、あれは……? い、いや、何を馬鹿なことをッ!

 ええい構わぬわ! 心の力を使い続けろ人間! このまま術の威力で押し切ってくれるっ」

「――――っ、あまり、もちそうにないわね、この『ミシルド』も。せめてアルが万全だったら……。攻撃の術を、過去の戦いの魔物同士で使おうとすると、心の力を押さえられるなんて縛りのせいで……ッ」

 

 ちらり、とビクトリームの方を見てみると、俺と目を合わせてニヤリと微笑む。何を考えているかいまいちわからないが、まあメタ的にはそう酷い事にはならなそうな気はしていた。紫式部の旅先での意外とワイルドなエピソードを話していた時もあんな感じだったし、ハメてくる意図はないだろう。

 つまり、直近で死にはしないということだ。

 よしちょっと冷静になった。とはいえ手数というより出力が致命的に足りないのは否めない。清麿君もわかっているだろうが、わざわざ今からキャンチョメの変化を準備する暇もないし、ティオの防御の術があの威力相手に消耗している今どれくらい持つかもわからない。さっきのサイフォジオで既にギリギリにはなってるはずだし、せいぜい1回とかそのくらいだろう。

 

 スギナの下準備ももうちょっと後になってから効いてくるタイプのだし、ここはどうしたら……。

 

「どういうことだ……? レイラ、君は一体――――」

「――――清麿って言ったかしら。そうね。今私たちがさせられてることが、間違ってるってことくらい、わかってる子もいるってことよ」

 

 石板から解放されてから、心が元の平穏を取り戻せたならね、とレイラは寂しそうに言う。

 で、ちらりと見るとビクトリームが口笛を吹きながら、頭部を360度ぐるぐる右回転させている。

 あー、よくわからないけど気性が荒ぶってた自覚はあるってことか。

 

「だけど……、俺たちを逃がしたら君もまた石にされるんじゃないのかっ」

「確かに、バレたらまずいわよね。でも――――間違ってるのは私たちの方なのよ」

 

 半眼で、どこか遠くを見つめるそれには諦観が含まれていて。

 すっと、スギナが俺の服の袖を引っ張り、見上げて来る。

 レイラとも違う半眼でこっちを見てくる我が家のお子様は、

 

「フォルゴレ、恵さん、珠紀さん! 俺達はこの子と協力してあいつを倒す!」「ヌゥ!」

「ま、そうだな(さっきから準備してる仕込みもあるし)」「…………」

 

「そんな……! 私たちも戦うわ」「そうよ! スギナはともかくガッシュたちはもうボロボロなのに、さらに危険な目になんて…………!」

「判断が難しいかしら。って、ツヅリはやる気みたいね」「うん」

「――――いや、待つんだ! ここは逃げよう。いや『逃げなければならない』」

 

 フォルゴレさん、と驚いた声を出す大海恵。対して先輩は「ツヅリの気持ちもあるけど、私としても逃げた方が良いと思うのよね」とその意見を後押しする形だ。

 今の時点で攻撃を持つ形で戦えない以上、足手まといになるのは必至。仲間がまだ他にもいることを考えれば、全滅だけは避けなければならない。

 

「どれほど力が強くとも、心が強くとも! 私たちは人間なんだ……!」

 

 そしてうわっ、パルコ・フォルゴレ格好良い! 自分の判断に胸を痛めて歯を食いしばる様が、映画でのラブアンドピースなエージェントである以上に「大人の男」として凄い格好良い顔をしている。

 とか空気を読まない感想を俺が思ってしまうのは、大体あっちでⅤの体勢を取ってるビクトリームのせいなんだが。……ガッシュたちと共闘していた覚えはなんとなくない気がしたけど、子供人気が高かったことと、あのモヒカン・エースが逃げていないことなどから、これから起こり得る展開をなんとなく先読みし。

 

 それに、こっちに来てるのは俺達だけじゃないというのもあるからこその、安心感でもあるのだ。

 

 視線をウマゴンに向けると、この状況で固まって「メル……!?」と挙動不審になっているウマゴン。ビクトリーム戦で破壊されたテラスの向こうに可愛らしく吠えていたのを含め、なんとなくだがこっちもこっちでフラグが回収されてきている気がする。

 今の所、直撃コース以外でスギナが泣いていないのもそのあたりが原因だろう。

 

 そして清麿君は、そんな俺達みたいな「安心材料のような可能性」もないのに、当たり前のようにティオに本を預けて。それさえ無事なら、ガッシュも死ぬようなことが無ければ魔界には帰らないと伝え。

 そして走り去っていく面々、先輩は俺の方を見て「余裕そうね」と不審がっていたが、まあそのあたりもスルーし、ウマゴンの方を再度見て。

 

「メル…………」

 

 ここでサンビームさんが来てると伝えてしまうのもアリだと思ったけれど。俺はそれを止めた。スギナは前方を向いてジュロンの準備を色々しているところだからこっちには気付いていない。

 

「しっかり見てた? アル、アルベール。あれが真の仲間、真のパートナーたちよ。

 だから、お願い…………、こんな操り人形みたいな関係で終わらないで? せっかく、また、巡り合えたんだから――――――――」

 

「――――思えばお前と、その類の話はしたことがなかったな」

 

 えっ? と。その声に「やはりか」と思いつつも、それでも実際に動く姿を見ると「まさか」と思わされるものがあった。

 そしてビクトリームは…………。モヒカン・エースがいつの間にかその辺にほっぽりだされていたスカイグリーンな色合いの本を片手に。その本を、アルベールや、あのダルモスのパートナー以上に爛々と光輝かせて――――。

 

「『ウル・マグルク』――――!」

「――――輝きしⅤの力よ、我に勝利をッ!」 

 

 月の盾が砕けるとほぼ同時に、術によって変形したダルモスの「獣の顎」のような腕を前に。全身の水晶のようなものをチャーグルの時と別な色に発光させたビクトリームが、その間に割って入って、殴り返し、叩き潰した。

 

「ふぅん、同じ変化でもミラコ程の芸はないか……」

「ビクトリーム、あなた……」

「ブルァアアアーッ! モヒカン・エース、ありったけの『大和魂』をッ!」

 

「いや流石に子孫とはいえ、日本人じゃないからそれは無理だろ」

 

 スギナちょっとお黙りなさい、今良いとこなんだから。

 レイラに答えず突進するように向かっていくビクトリーム。爛々と輝く本を構えるモヒカン・エースは、更にその本の輝きを増していく。

 ダルモスもその様には、レイラ以上に驚き、ビビったのか一歩下がり頭を振る。

 

 いまのうちに、と体勢を立て直すため、一旦物陰に入る俺達にニヤリと微笑むビクトリームは。

 

「ちくしょォ……、貴様それだけの力を持って何故裏切る? 義理はあるんじゃなかったのか!」

「ほぅ、流石に訳が分からぬと言いつつも、ダルモスくふぅ(ヽヽ)んも多少考える頭はあったか。

 何、大したことではない。確かにロードには『Ⅴの字のまま石化できなかった』我が肉体を解放してもらった恩はある。Ⅴの体勢のままであれば、敗者としてちょっとくらいそのままでもと思わなくも無かったが、それでもまたⅤの体勢をとれるのならばそれに越したことはないからなぁ」

「お前それしか言うことが無いのか!?」

「もちろん! もちろんベリーメロンも重要だがな! それでも我が肉体と精神の自由を再び与え、そしてまた香子の! 本人ではないとはいえ、その血筋とめぐり合わせてもらった恩もある! 義理もある!

 だがそれでもなぁ――――――――」

 

 殴り続け。「ベギルク」という術で強化されたらしいダルモスと対等に殴り合いを続けるビクトリームの声が、こちらにも聞こえる。

 

「――――共に戦った友達の絆ってのは、今も昔も変わらないものだぜ」

 

「ウヌ……、ウヌ!」

「不覚にも格好良い……」

「メ、メル……」

「ビクトリーム……」

 

 アイツ、と少しだけほっこりしてる清麿君と、CV的なプレッシャーやら威圧感やらセリフの妙な説得力に感心する俺たちである。子供たちも子供たちで色々と思う所はあるらしく、レイラはとくに、アルベールの手を引きながら何とも言えない表情になり。

 

 

 

「例え我が友が、こんな秘境でまでジパングから輸入した子供向け遊具でお人形さん遊びをしているお子様だとしてもなっ!!! フハハハハハハハッ――!」

 

 

 

「ヌゥ……?」

「あーあ」

「メル……!?」

 

「――――ビクトリーム、あなた最低ね。そういうバカさえしなければ素直に友達だって言ってあげてもいいのに」

 

 小声ながらアルベールから手を放して陰キャ的オーラと怒りのオーラを放つレイラに、他のお子様たちは一歩引いていた。恥ずかしがっている感じで可愛いっちゃ可愛いが、いかんせん黒い怒りの感情が大きいのがよくわかる。

 そして、そういえばあのビクトリームもまだ普通にお子様だったなぁと、「は?」と呆然とする清麿君に苦笑いを向けた。そうなんですよ、あのお声でビクトリームもまだまだ魔物の子なんだよなぁ…………。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

「ハァ……、ハァ……」

「ふぅ。…………『ジガディラス・リフォウ・ザグルク』、良い術だ。まさか最初から、僕の『滅ぼし』に完全対策して挑んでくる魔物がいるとは思ってなかった。

 アシュロンでさえ鱗がなければ消し飛ぶだろうに、よくぞ術だけで対策してきたものだと思うよ」

「ほざけッ! 本来なら一分のダメージすら入らないリフォウに、しっかりダメージを通してきてどの口が言うかッ」

「フフフ? もっと楽しまなくっちゃ、勝てるものも勝てないはずだよ――――僕はこうやって、魔物が苦しむ姿を見るのを、楽しんでるんだから」

 

 東アフリカ某所。夜半、空は曇っており月は見えない。

 自然保護区すぐちかく、死海が見えるような場所において、その魔物たちは戦っていた。

  

 片や、ひょろひょろとした青年の魔物。着用しているタンクトップやジーンズは焦げているが、ボロボロと言うほどでもなく衣服としての機能を保っている。

 片や、本来なら真っ白いマントだろうそれがブローチを残しほぼ全損した、半袖半ズボンの幼い少年。全身には裂傷と血が、そして白銀の髪も、顔面も右目の側すら赤黒い血で覆われ塞がれている。

 

 幼い少年の全身からは電撃のオーラが放たれており、それらは彼よりも後方、地面から生える二つの、巨大な鳥の翼のようなものと「電撃で」繋がれていた。

 その翼の足元で、幼い少年の魔物、ゼオンにインカムで指示を出す青年。

 

「よくやった、ゼオン。今ので相手のパートナーの力が尽きた」

『何? まだ本は光っているぞ、デュフォー』

「いや、おねむ(ヽヽヽ)の時間だ。まだ長時間、起きていられないらしい」

『…………そ、そうか』

「喜ぶのは早い。『心の力』が尽きていないのも事実だ。もう数カ月も経てば、あのクラスの術を10で利かない程に放ってくるだろう」

『お前も大概だが、末恐ろしいガキだな奴のパートナー ……』

 

 デュフォーと呼ばれた青年の言葉通り、ゼオンの相対する魔物の後方の光が徐々に徐々に弱っていく。

 これで、もう術は使えない。だがゼオンは油断しない。油断できない。お互いの最大術の衝突ですら「あの程度」しか傷をつけられないのだ、対する自分のボロボロ具合と比べれば、なるほど自らのパートナーがあれほど警戒し、身体保護の術を生み出してから挑むのもうなずける。

 たとえその前提すら答えが変わり、貫通ダメージだけでも死にかねないレベルであるとしても、それすらギリギリを見極め「答え」を導き出すのだから、やはりゼオンはデュフォーに対しての信頼は強い。

 

 だからこそ、目の前の敵、クリア・ノートの一言に目を見開いた。

 

「だが、悲しいかな。いかに君ほどの力とはいえ、おそらく『ベルのバオウ』でもなければ、今の僕ですら倒すのは無理だ。そして僕も、今のままでは君をすぐには滅ぼせまい。

 ゴーム」

 

「ゴ―――― ……」

 

 どこからともなく、顔の箇所が判らない、異様な大男のような、あるいは虫か怪獣のような、そんな魔物が現れ出る。

 その彼に「帰るよ」と言いつつ、クリア・ノートはバリアのようなものにつつまれたベビーカーを押し、ゴームの背後に出現した黒い渦のような何かへ押し。

 

「バオウ、だと……? バオウ・ザケルガだと!? どいつもこいつもバオウ、バオウ、バオウと! あの術の一体何を知っているというのだ――――!」

 

「――――『テオザケル』」

 

 遠隔で読み上げたデュフォー。怒りのままに掌を向けて構え、放たれるは特大のザケル。

 対するクリアは背を向けたまま。ただ、渦の穴の奥へと声をかける。

 

「ミール」

「――――チッ、『ボージルド・ディオボロス』!!」

 

 声のみであったが、しかし術は発動した。異形の腕を突き出したゴームの、その目の前に生み出される黒い円の盾。波紋のように黒と半透明のエネルギーが行ったり来たりするそれが展開された、クリアとゴームの範囲だけ、テオザケルの一撃は一切通らず。

 お互いの術が消えるころには、焼け焦げた周囲と、草の生い茂ったままのクリアたちの足元ばかり。

 

 そしてクリアは、いっそ面白そうに少しだけ後ろを振り返り、手を掲げる。

 

「むしろ僕が聞きたい。君はあの術が『魔界の外でどう扱われているものなのか』知っているのかい?」

「な……、何っ?」

「しかし良いパートナーだ。これだけの滅びを受けてまだ心の力を絶やさない。アシュロン程とは言わないが、君もまた僕のライバル足りうる誰かなのかもしれない――――」

 

「――――『ギール・ランズ・ラディス』、むにゃっ」

 

 そこに生み出されるは、滅却の力のみを貯めた鎌のごとき斧か、槍か。

 巨大なそれを、手の動きで振り下ろし、クリアはゴームの穴へと姿を消していく。

 

 徐々に落ちて来るその巨大な一撃を前に、ゼオンは奮い立つ。今ここにいたるまでの生を縛ってきた忌々しきバオウ・ザケルガという術を、それをわざわざ「魔界の外で」と表現したあの敵のそれを、只の世迷言だと断じれるほどにゼオンは子供ではない。

 だがそれを考えるのも後回しだ。今はあれを止めねば、自分どころかデュフォーも危ない。

 

『構えろ、ゼオン。開いた両手を重ねるんだ。でなければ制御できない』

「制御? お前、何を言って――――っ!」

 

 インカム越しに聞こえて来るデュフォーの声に少しだけ後ろをちらりと見たゼオンも、流石に気づいた。その本が、平常に構えているはずのデュフォーからは久々に見るほどに輝いていることを。その輝きの仕方、今の自分の心境。この状況。重なるそれらにより、導き出した結論は一つ。

 

「まさか……、オレもそこまで拗らせているとはな」

『行くぞ、ゼオン』

「ああ。頼むぞ――――」

 

 

 

「――――『ゼオ・ウル・ザケルガ』」

 

 

 

 果たして。ゼオンの両手の内から放たれた、紫電の雷を纏いし銀の竜は。滅びの斧を噛み砕き、絶叫を上げながら、ゴームへと迫り。

 

「早く逃げるよ!? こんな所でアホみたいに終わる必要なんてねーからっ!」

「ゴ、ゴ~~~~~~~~!!?」

 

 慌てたように消えたゴームが立っていた、その場所に落ち。「逃した」というデュフォーの通信に、そうかと返し、ゼオンは自らの両手を見て。

 

「これでも、所詮は……、だとするとバオウが必要だと? あの、今のガッシュでは良くてギガノ級程度にしか扱えていない、あのバオウが? 笑えない、が、それも後で――――」

 

 息絶え絶えに呟き倒れたゼオンの元へ、デュフォーはリフォウを解除し走り出した。

 

 

 

 

 


・ダルモスくん、ちょっとだけメロンに誘惑される:

 残ってたらワンチャンあったかもしれない(エー)。

  

・戦闘について:

 現状、一番心の力を使ってないスギナたちが残るのは自明の理なので、当然清麿君も作戦を立ててる。メンバーとしても順当にといった形。

 

・オージグル・マ・ジュロンの術韻:

 一応こういう構成になっております。なので、最上位の植物制御のために強化を付与された杖が、制御しやすくするために生み出される。

 

・Ⅴ様の参戦とレイラェ……:

 メロンを喰らいつくした後、すぐに壁際でVの体勢をとって何もしなかったので、ダルモス君も反逆したとは思っておらず見逃していた。本人的にはゾフィスへの恩とレイラとの友情とを天秤にかけ、レイラがそちらに回ると言うならという形で参戦。

 ただテンションが上がってるせいで、デリカシーに欠けているのがたまに瑕。おませさんなので、ティオやガッシュ、ツヅリたちと違いお人形さん遊びには羞恥を覚えるレイラとなっております。

 

・一方その頃:

 魔界の脅威討伐RTAを開始したデュフォーだったものの、その場で答えが延々と代わり続けたため後手に回っている。このあたりは、いくらパートナーの事があるとはいえ終盤まで感知されなかった、クリアの隠蔽能力も高かったという前提から逆算した描写になっております。

 聞き覚えのある名前の魔物の子とパートナーについては、まあ、そうなるよねってことで。

 

・「魔界の外」での扱い:

 原作およびガッシュカフェ、ガッシュ2の描写を元にしたニュアンスの言い回しです。多分、クリアも自分を滅ぼしうる存在は最初から本能的に知っているだろう的イメージ。

 

・ゼオ…………:

 何かのフラグかもしれない。他のオリ術についても、正式登場時にて。

 

 

 

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