「うおおおおお!? じゅ、『ジュモル・ヨーヨー』!」
「あ~ああ~~~~~~~っ!!」
ツヅリの「チャーブル・エムルドン」、怨霊の大火に焼かれるドームから伸びたツタがあっちの木にひっかかって、そのままバキバキと音を立てて崩れた木のシールドから、二人が出てくる。変な苗字をしてる春彦君と、そのパートナーのスギナ君だ。
……ま、まるでターザンね。そのままぶらりぶらりと動きながら、あの子たちは森の奥までぶらりぶらり揺られながら逃げていく。
そんな彼らを見て、ツヅリは仮面をかぶり直して「ごっこ遊び」の続きをしている。
『ふぅん、恐れをなして逃げていくか。とはいえそのような雑魚であるならば――――』
「えいっ」
「――きゃっ!? ちょっと、お姉ちゃん!!?」
鬱陶しくなったのでお面を奪い取る。なんならチャーブルで呼ばれた4つの人魂ちゃんたちも、ツヅリのリアクションに合わせてびっくりした感じに震えていた。
「ごっこ遊びもいいけど、あんまり尊大になりすぎないことっ。それじゃ立派な王様になれないと思うわよ。いい?」
「うぅ…………、で、でもぉ」
「わかったなら返してあげるから。はい」
「――――! ありがとう!」
まったくもう。現金なんだからと言いたいけど、ふりふり楽しそうにしてお面を抱えるツヅリは本当、可愛くて仕方がない。
妹の小さい頃を思い出してほっこりする私だけど、それはそうとやっぱりお面を付けて「ヌワーッハッハッハ!」とか笑い出すこの子はないわー。うん。自分が真顔になんて白けた目をしているのがわかる。
『では行くぞ小娘。どうせこの
あっちょっと、と制止の声をかける間もなく、ツヅリは走り出す。……和服だから脚は全然動かせないはずなのに、足首だけ猛烈な動きで加速してるのはちょっとしたギャグマンガかホラーなんだけど、そんなことも気にならず、私は後を追いかける。
そのついでに、ツヅリの周囲に浮かぶチャーブルの霊を見る。色は……、あの黒々とした色が抜けて、青白い感じになってる。だけど徐々に徐々に黒く染まり始めてるから、問題はなさそうね。
『我が魂、散開ッ! 必ずやあの小僧を探し出すのだっ』
あ、とやっぱり私の指示を仰ぐよりも先に、それぞれバラバラな方に動き出していく霊魂。
私ほとんど呪文読むだけになってない? と思いながらツヅリの方をみるけど、ツヅリはツヅリで仮面のままこっちに視線も寄越さない。
「……少しは仲良くなってるはずなんだけど、まだまだなのかしらね」
ごっこ遊びではあるけど、この距離感はツヅリが私に抱いている警戒心の現れ……、普段は内気だから私にいいように可愛がられていることの反対であるというのを表しているのかと思うと、ちょっと心が痛い。
思えば、ツヅリと出会ってから三カ月くらいかしら。
学校の警備のアルバイトをしていたら、この森の奥にある学校の記念館(和風建築)の中で、座敷童か亡霊みたいなものの目撃情報があった。
噂そのものを、私は大して気にしてなかった。仕事でも「そういう」オカルトな話があるのは微妙だったけど、お給料分の仕事をしている分だったら別に問題ないだろうって思ってた。
でも、当たり前のように警備室に侵入してたツヅリは、和風美少女な見た目を完全に無視してワイルドな感じに、私の御夜食のコンビニ弁当を素手でカッ喰らってた。
最初はキレてお説教かましたり、色々言い募ったりしたんだけど。あの子は当たり前のように私に自分の魔本を手渡して、読んで、と言って。
その手から幽霊みたいな何かが放出されたのを見て、流石に腰を抜かした。
『私は、ツヅリです。……お姉ちゃんは、私の運命のお姉ちゃんなのです』
何だか嫌そうな感じに、そんなことを言っていたかしら。私も私で、あの子の術を怖がってたんだけど。
でも、魔物だとか色々話を聞くと、どうも戸籍とかもないような感じだし、誰かが面倒をみないといけないような流れ。流石に一人で放り出すのも可哀想だったけど…………。
何かあった時に逃げる先の実家も丁度、妹で死んだ時期と重なって。部屋に空きが出来てしまっていたのが、嫌にタイミングが良くて。
怖がりながら、嫌がりながら、それでも私に頭を下げたあのツヅリを、やっぱり私は放って置けなかった。なんとなくだけど、一人で置いておいたらすぐ死んじゃいそうな気がして。
……別に、妹の代わりってわけじゃない。一人にしておけなかったって、本当にただそれだけで。
それでも小さい子だから、一緒にお風呂に入ったり、一緒にテレビを見たり、一緒に食事をしたりと、可愛いがれるだけ可愛いがってて。妹が死んでから一人暮らしになってしまって、開いた心の隙間を埋める様に。
…………やっぱりそれでも、ツヅリの方は抵抗があるっていうのが、こういう態度の表れなのよね。積極的に反抗しないのも、きっと私がパートナーだからってだけで。
『見つけたぞ小娘』
「お姉ちゃん、でしょ!」
『フッ…………』
「何よその態度!」
そして走っていった先、少し開けた道でスギナ君と春彦君が、心の力を貯めて構えている。
「あのヒトダマは索敵には使えるけど、単体だと攻撃には使えない。予想当たったね」
「まあ、フワフワしてて何もしてこなかったからな」
そして彼らの背後から、大きな花がいきなり生えて――――――――ッ!
「ツヅリ!」
『しんぱいするな……、第二の術を』
「『ラージア・ジュガロ』!」
「『ギガノ・リュウス』!」
開花した花の花弁の中央、大砲みたいになってるところから、岩なのか種子なのかわからない大きな塊が何発か撃たれ。
でも、そんなことおかまいなしにツヅリは特に何も構えない。霊魂は彼女の横に並んで、ゆらゆらとゆらめき――――ツヅリの口元と同時に、いっせいに「霊魂からも」術が発射された。
霊魂からも放たれた霊魂。何か日本語がおかしいけど、実際そうだから仕方ないわね。総数は五発だけど、拡散して、お互いの密度が高い怨霊が複数放たれる。
それらが春彦君たちの攻撃を弾いていて、春彦君たちは「何、だと!?」ってびっくりしてるわ。
スギナ君の大技を弾いた後は、ツヅリは例の足首だけの疾走でスギナ君に迫っていく。ひぃ!? と涙目になった彼は、春彦君から離れる様に逃げ、ツヅリも彼を追う。
「『リュウス』!」
「また逃げる訳にもいかないからな……。とりあえず『ジュロン』!」
放った初級術に対して、手を「パン!」って合わせてから霊魂の方に手を向けるスギナ君。地面から出て来た木の根っことかがリュウスをはじいたりして、それでもバキバキと砕いてるから、威力はこっちの方が上。
いえ、どちらかといえば「ツヅリ固有の能力」のお陰で上みたいなことになってるってところかしら…………。
ツヅリがあえてスギナ君を初戦の相手に選んだのは、無策じゃない。そもそも彼の名前を知っている時点で、ツヅリは最初から彼のことを意識していた。
最初に倒すに最も相性が良い敵として…………。
『リチャージまではもうしばし、か。だが……、そろそろかな』
「ええ。『リュウス』!」
「ガンズを使うにも足場を固定しないといけないし……、『ジュロン』!
…………って、あれ?」
ようやく効果が出て来たみたい。呪文は成立してるし、スギナ君もちゃんと発動モーションをとってるけど。それでも植物が地面から出てくることは無い。
どういうことだという顔をしてるスギナ君。春彦君は何かを察したのか、別な術を準備したけど、もう遅い。
「第三の術『ジュガロ』!」
スギナ君の手から植物の種が放たれる。だけどそれに続けて「ジュロン」、多分植物操作の術だろうそれを使っても、種は地面の上で動きもしない。
「…………春彦、土が、死んでる……!」
「土が……?」
驚いている春彦君に、ツヅリがヌワーッハッハッハ! って大声で笑うわ。……なんか小物の悪党っぽい感じになっちゃってるけど、あなたそれで良いのかしら。
『その通り、我が術は死に近き魂の術。怨霊はそこに在るだけで「生者から奪っていく」。生きる力であり、活力の力であり。
それ故にもはや小僧、お前の術では植物を操ることは出来ないぞ?』
そう。ツヅリの術は、そういった「生きるエネルギー」みたいなのを吸い上げる性質を持って居るらしい。魔界にいたとき、同じように植物を操る魔物をその性質でもって戦闘不能にしたと言っていた。なんでも、エネルギーを吸い上げ続ければ「生きることに精一杯になって、術者に力を貸す余裕もなくなる」から、らしい。
スギナ君がさっき使っていたジュロンで出来た木の根っこ。チャーブル・エムルドンで焼いたあの木のシールド。ああいったもの全部、結局は大地から力を借りた木でしかない。
追加で巻いた種も、多分あれを使って新しく植物を生やそうとしたんだと思うけど…………、周囲に漂ってる霊魂がそれを許さない。
チャーブルで分裂させたツヅリの霊魂、その4つは、存在するだけでツヅリの「生きるエネルギーを吸い上げる」力を発揮し続ける。
そしてそれがあるからこそ、チャーブルは解除しない限りずっとその場にとどまり続け…………、こうしてまた、吸い上げたエネルギーで黒く染まる。
『格が違ったな。これが相性差というものだ三下共! 貴様らがこれ以上勝てる余地は万に一つもありはすまい。
ヌワーッハッハッハッハッハ! 勝利はわが手に!』
「何か凄い煽ってくるけど、魔界で面識ないの? あの子。恨まれてたりとか嫌われてたりとか」
「あったら僕だって煽り返してるよ、春彦……」
そしてあの二人、結構ピンチに追い込まれてるはずなんだけど、ツヅリのテンションのせいか落ち込まずにドン引きしてるだけだった。……うん、私もその心境はわからなくはないわ。
あっ、私と春彦君の視線が重なった。…………軽く会釈してくれてる!? 絶対同情されてる…………。
「じゃあ、まあ仕方ないかな。…………結構疲れるから出したくないんだけど、相手もいよいよこっちにトドメだ! って感じだし」
「出し惜しみしてる場合じゃないよ、春彦。……でもそうだね、そういうフラグは折るってのが、お約束ってやつだよね」
「ウン、ソウダネー(棒)」
「春彦?」
「いや、何でもないよ。(すっかりアニメ漫画文化に染まっちゃって……、俺のせいか)」
何故かため息をつく春彦君。だけど、本の輝きを見るにまだまだ戦う気はなくなってないみたい。
とはいえもうチャージは溜まりきってる。だったら勝負は、私たちの勝ちだ。
再びリングを描き始めるチャーブルの霊魂。ツヅリは両手を前方に構え、スギナ君たちを狙いながら。
「『チャーブル・エムルドン』!」
そして現れた大きな、黒い炎の塊。
怨霊の霊魂がチャージされた巨大な火弾を前に。
「第
春彦君はスギナ君の頭をくしゃりと撫でながら、さっきまでとは比べ物にならないくらい本を輝かせて。
スギナ君はやっぱり両手を合わせて、地面に叩きつけて。
「――――『ジュオウ・リシルド』!」
『ジュラララララララララララララララララララララララララララ――――――――――――ァッ!』
次の瞬間彼らの目の前に巨木。
いえ、何と言ったらいいのかしら。お化け柳? こう、怖い顔のついたものすごい大きな木が、それこそ怪獣とかじゃないかってくらい大きな木が。
緑色に輝いてる人面樹が、エムルドンと私たちを見下ろして絶叫した。
何、あれ。
流石にびっくりして、ツヅリも仮面がちょっとずれてる。
でも、どんなに大きくても所詮は木。
死者の炎であるエムルドンには勝ち目はないはず。
そう思っていたのだけど……。
『ジュララララララララ――――――――ァッ!』
エムルドンの大火球を、あの人面樹は当たり前のように大口を開けて「喰らう」。
ガブリと齧るようにして、バリバリと音を立てながら食べている……!?
「ば、馬鹿な……、何だあれは!?」
「ツヅリ、お面!」
「あっ」
驚いているツヅリの方へ、ギロリとあの人面樹がにらみつける。
私たちの最大術、ツヅリの魂のエネルギーを直に注いだ術。それらが当たり前のように破られて、しかもあんな意味が分からない感じに、まるで御菓子でもつまむような適当さで無力化されている。
そのことがツヅリの動揺を誘ったのか、お面を直そうとしたツヅリは失敗して、地面に落としてしまう。
樹木が現れた瞬間に立った砂煙で咽せながらも、私もまた何か攻撃されるんじゃないかって、恐怖から動くことが出来なくて。
人面樹は追撃してくることはなかったけど、当然のようにそのままエムルドンを喰らいつくして、姿を消して――――。
「第四の術『ジュモルク』!」
「……っ! ツヅリ、声の方を見て!」
「あ、ああ、あっち、声の方って、どっち……?」
きょろきょろと周囲を見回すツヅリ。だけど、私も砂煙の中でどこを見たらいいのか分からない。シルエットはなんとなくあるから、そっちを指さして――――。
「『ジュロン』!」
「ツヅリ、あっちよ! 『リュウス』!」
「っ!? そっち!」
「えっ!? いや違う、そっちじゃない――――」
ようやくシルエットがはっきりしかけてる春彦君たち方を指さして呪文を唱える私。だけど、とっさに左側から襲い掛かってくる樹木を見て、そっちを向いたツヅリ。
放ったリュウスで一瞬気絶したあの子。その、私たちのすれ違いが勝敗を分けた。
「『バル・ジュガルセン』!」
「きゃぅ!?」
放たれた無数の植物の種。その猛烈な種マシンガンを喰らって、ツヅリはノックアウトされた。
砂煙が晴れた先では…………、「右手にアサガオみたいな花」を構えた、頬っぺたが木の表面みたいな感じになったスギナ君。
「……なるほど、自分が植物になる術もあったってことか」
だったら、周囲の植物の力を借りなくても何とかできるわよね…………。
未だこっちにアサガオを構えるスギナ君と、警戒を怠らない春彦君。
流石に花の女子大生といえど、そんな攻撃でノックアウトするのはおまぬけがすぎる。あくまで普通の女子大生な私は、降参ってことで両手を上げ。
そして春彦君たちが、少しだけ警戒を解いて近寄ってきたのを見て、全力疾走でツヅリへと走り、抱えて逃げた。
「あっ逃げた!?」
「まあ逃げるよな~」
「フフフ、甘いわね春彦君! 年上のお姉さんを甘く見ていると痛い目に――――」
「――って、何でこんなところにバナナの皮がァ!?」
そしてその途中、盛大にずっこけた。
※ ※ ※
「えぇ、マジで…………?」
「残念ながらマジなようだ。戦闘中は終始シリアスっぽかったから、反動でも来たのかもしれない」
猛烈な勢いで顔面からずっこけた化野先輩と、彼女に抱えられてたせいで仲良く地面とキッスを遂げた魔物の女の子。
そんな両者を見ながらドン引きするスギナに、俺もあんまりかける言葉はなかった。
「いや、だって、何これ? 現実でしょ? 現実でここまでギャグ漫画みたいなのってあるの? だってほら、バナナの皮だよ? バナナの皮。別に僕らが仕掛けたわけでもないよ? なのに何で勝手に踏んずけてすってんころりんてしちゃってるのさ」
ついでに言うと、スッ転ぶ時勢い余ってスパッツが裂けてしまい(何故?)、スカートも猛烈にめくれ上がって絵面が散々なことになってる。あまりにも現実を超越した光景を前に俺は信じても居ない十字を切って神に祈った。おお仏陀、貴方は寝ておられるのですか……!(宗教観しっちゃかめっちゃか)
何とも言えない空気のままでいると、うっうっ、と先輩が泣き始めた。あーあ…………。どう収拾つけたものか。
とりあえずジュロンで化野先輩たちを縛って転がしておく(腰をロープで縛る感じだ、断じてエロいやつじゃない)。対応を考える前に、ちょっとだけ戦闘の流れと術の使用効果範囲を整理しよう。
……最大術である「ジュオウ・リシルド」を使った後だと言うのに、呪文を使う余裕があるのは原作ガッシュから考えると何かおかしい気もするけど、そういう意味ではやっぱりこの術って、多分ドレイン効果みたいなのも持っているんだろうな。
あの「ジュオウ・リシルド」で召喚されるリアルウィスピーウ〇ズ(アニカ〇ビィ)だけど、アイツは相手の術をかみ砕くと同時に、その相手の心の力と能力を吸い上げている、と思う。
使用は今回が2戦目だから断言はできないんだけど、あの「空間を裂く魔物」の移動能力を一時的に阻害していたし、すぐに強めの術を使わせなかったことから考えても、この仮説は正しいかもしれない。
実際問題、あの怨霊の力がどれくらい封じられたかはわからないんだけど、多少なりとも消耗させることが出来たのなら御の字だ。
そんな考察をしながらじっと先輩を見てると、先輩は何故かむずむずと両脚を合わせてこするというか、若干身じろぎをしてほっぺを赤くしてる。
「な、何かしら? ツヅリの本を燃やさない代わりに私の身体でも要求するつもり!?」
「何故そんな自意識過剰なセリフが口から出てくるのか……」
「そもそも本を燃やさない前提で話を進めていて、図々しいねこの人」
確かに美人だけど……、ツタで絡めとられていない身体の一部をちらりと見て、ないないと肩をすくめる。
あえて口に出すとトラブルの元になるので(俺は鈍感系主人公とかじゃない)、そういうイベントフラグは最初から発生させないのが吉である。タイプでないことだけは確かなので、肩はすくめておいた。
「春彦は
「――――――――!?」
「ちょっと!! 何いってくれちゃってんだスギナッ!!?」
ただ、お子様なスギナにこういったことはやっぱりまだ早かったらしい。顔をホラーばりに変形させてキレ、声なき声を上げる先輩に「ひぃ!?」と恐怖する俺。本を取り上げてなかったら、これだけで逆転されかねないぞお前! 何やってんだよ本当にさ!
そう、実際に先輩は美人さんではあるのだがバストサイズで言うと…………、まあ、その、色々残念なことになっているといいますかねエェ。脚は綺麗なのは認めますが、そのあたりも「あっちの」お姉さんよりはまだまだというか。
いや、あのお姉さんもお姉さんで性格が終わってるところがあるんで、足して2で割ると丁度良いのかもしれない。
キレながらも、それでも冷静さを取り戻した先輩は。無言のまま両手で顔を覆ってるツヅリの方を見て、苦い表情をする。
「…………燃やすのよね、この子の本。そういうルールなんだもの」
「……………………」
「どうする? 春彦」
どうすると言われてもなぁ……。魔界の王を決める戦いのルール的には、当然燃やして倒すという流れが正しいし、不意打ちを受けた側からするとちょっと思う所はあるんだけど。
「スギナはどうしたい?」
「うーん…………、なんかしっくり来ない」
俺はスギナに問い返し。その返答に甘っちょろいことを言ってる場合ではないと言うべきなんだろうけど。スギナは両手で顔を追ってるツヅリの方へと向かって、その手を剥がし。
「……なんか、こういう状態の子を一方的に倒すとか、それこそ何か別のフラグみたいな気がする。死亡フラグじゃないけど、何か嫌な感じのやつ」
「ふぇ?」
両手で顔を覆ってたツヅリは、鼻水を垂らしながらずっとしくしく泣いていた。
幼児らしく全力で泣いていて。でも同時に、その声を俺達に聞こえないようにしながら。
ツヅリ、と化野先輩が声をかけると、はっとしたように両手でまた顔を覆う。嫌がっているようには見えないが、ツヅリはどこかで化野先輩を拒絶しているように見える。
そんな二人を見比べて、スギナは同じ幼児らしからぬ声音でため息をついた。
「僕子供だからよくわかんないけど、もっと二人で話しなよ。何か『ずれてる』気がする。このまま魔界に帰ったら、絶対二人ともその後の人生にしこりが残るよ。
最終的に銃で介錯しあうようなことはないだろうけど、単純にコミュニケーション不足だと思う。どっちからということじゃなくって」
以前のスギナだったら絶対言いそうにないようなそんなセリフを聞いて、なんとなく俺はほっこりしつつ。その例えとかを聞いてやっぱり初手ガングレ〇ヴは重かったかな? と謎の罪悪感を抱く俺だった。
【ここまでで登場した術】(※数は術の取得順)
スギナ編……「植物」属性。また固有能力として、植物の声を聞いて索敵したり土の栄養状態を把握したりできる。
①ジュロン:
本作では植物の根、幹、ツタなどを操る(力を貸してもらう)術として扱う。
②ジュオウ・リシルド:
スギナの現時点最大呪文。巨大な人面樹を召喚し、相手の攻撃の大小に関わらずそれらを強引に「喰らい」無効化する。またその際に相手の魔物とパートナーから「力」を吸収し、魔物固有の能力なども一時的に封じる。
③ジュガロ:
植物の種を放つ。出力は任意で調整でき、そのまま地面に落とすだけのような使い方も可能。この種を使用し、植物がない場所でも術を使用できるようになる。
④ジュモルク:
第一話でも名前だけ登場した、自分の身体を植物化する術。範囲や形状は任意に操作できる。水と光があれば光合成できる他、自分の身体を変化させることで、植物が呼び出せない場所でも術を使用することが出来る。
⑤バルジュロン:
木の兵隊を作り出す術。複数造り出すパターンと合体させて1つの大きな兵士を作るパターンがある。
⑥ジュモル・ヨーヨー:
腕を植物化した上で先端が大きな蕾になったツタを直に生やし操る。
ヨーヨーとついているがツタの装備および操作なので、扱いとしてはロップスのリグロンに近い。
⑦チャージオ・ジュモルク:
未使用につき、使用時のおまけにて。
⑧ガンズ・ジュガルセン:
筒状の幹から葉っぱを高速で射出。ジュモルク時は腕から直接使用。
⑨バル・ジュガルセン:
アサガオ型の花から種を大量に射出。ジュモルク時は腕から直接使用。
⑩ラージア・ジュガロ:
巨大な花から塊状の大きな種を連射する。原作最大呪文。
⑪アーガス・ジュロン:
シールド状に全体を覆う木の根や幹を生やす。ジュロン系の術なので密度の変更、隙間を開けて視界を確保、脱出などもできる。
ツヅリ編……「怨霊」属性。固有能力として生命エネルギーなどの吸引が術に上乗せされる。
①リュウス:
口から人魂のような怨霊のエネルギー弾を放つ。炎属性はついていない。
②ギガノ・リュウス:
リュウスの強化版。怨霊の参加人数(?)が十倍に。
③チャーブル:
自分の魂から一部を分離して、別の怨霊として召喚する。チャーブルで出した怨霊(霊魂)自体もツヅリ本人として扱われるので、ツヅリが使用する術は霊魂も同時に使用できる。ちょっとパムーンのファルセーゼ・バーロン味ある。
現在は最大4。なお四魂のような詠唱は数にあやかってるだけで、別に関係はない。数が増えたらまた詠唱を変えるので、単なるなりきり遊びの類。
④チャーブル・エムルドン:
ツヅリの現時点最大呪文。チャーブルで呼び出した怨霊たちを使用して、より巨大な怨霊の火の玉を呼び出す。怨霊の参加人数は100倍で、この術には火属性がついている。
扱いとしてはビクトリームのチャーグル・イミズドンに近い。
※整理する時素でアーガスを忘れてたので追記(ガバ)