広い大地の片隅で眠る   作:黒兎可

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※後でちょっと手直しするかもですが、大枠流れは変わりません


P037.満員電車にひとめぼれ

 

 

 

 

 

「モヒカン・エースよぉ。この町での仕事も、もはや終わったも同然。次なるメロンを探しに行くぞ! 北海道!」

「いいのか? ガッシュたちに会いに行かなくて」

「ガッシュか。……ダウワン、我が敵の一人の子孫なのは間違いないだろうが、どうにもガッシュよりパートナーの清麿の方が気に食わんッ! 我が素晴らしきベリーメロンの歌と踊りを邪魔しよってからに、しゃっはァッ!」

「おーおー、おかんむりだなぁ。メロンアイスでも買っていくか?」

「モチのロンよぉぱあぁ……! まあ、レイラも言っていたがぁ? 我らの戦いはとうの昔に終わっているのよん。あまり仲良くしすぎて、当然のように戦力に数えられるのも、フェアではなかろう」

「肩入れしすぎないってことか。結構、節度はわきまえてるんだな。……それを言うと、あのツヅリって子にお面届けたのも、よくわからなかったが。紫式部から、お前充てだったんだろ? あの箱の中のやつ」

「ベリィ・シッッッット! 誰が受け取るか、あんな縁起でもない(マスク)なんぞォ!」

「め、滅茶苦茶嫌がってるな……」

「香子も何を考えて、わざわざタマモの面を残していったのやら。ふん……。あれはタマモの『念』でも籠っていそうだったからなぁ。私が受け取らないしても? いつまでも人間界にあってはまずいものだろう。ならせめて、回収の目途位立てねばな。

 あの女はぁ……、祟るぞ?」

「祟るねぇ……。まあ、お前さんがそういう気なら別に構わないけどな」

 

 ぬぅ? と。そんな話を夕方の大学駐車場でしているビクトリームとモヒカンエース。あからさまに世紀末なモヒカンにパンクスタイルにバイクへとライドオンしているモヒカン・エースであるが、特に通報されずにビクトリームと戯れているあたりはモチノキ町近隣の人間たちの懐の深さゆえか。

 

 そのまま一度バイクを降りて、大学内のコンビニでアイスを買ってくるモヒカン・エース。そんなモヒカン・エースの前に……。

 

「待って居たぞ、モヒカン・エースよ……。さぁ、私のこの華麗なるⅤにふさわしきアイスを渡すのだぁ」

「待って居たぞ、モヒカン・エースよ……。さぁ、私のこの華麗なるⅤにふさわしきアイスを渡すのだぁ」

 

 …………ビクトリームは、何故か「二人」いた。華麗なるVのポーズが二つ。なんならWっぽい。

 普段通りのカラーのビクトリームと、若干だがオレンジがかった色をしたビクトリームの二体。2Pカラーかな?

 

 流石にモヒカン・エースも困惑し、白目がちな目をさらに白目にして大きく見開く。

 

「なんだ、こりゃ……!? 意図(いと)わけわかんねぇぜ! ビクトリーム!? 何だ、分裂でもしたかっ!」

 

「何を言っている、モヒカン・エースよぉ……」

「何を言っている、モヒカン・エースよぉ……」

 

「「…………」」 

 

 と、ビクトリームたちも自分たちの声が二つ重なったことに気付いたらしい。

 お互い横を見て、じーっとお互いの「V」の体勢を観察し。

 

「――何晒してくれとんじゃ貴様ァー! 偉大なる栄光の『V』を偽るとは何と罪深いッ!」

「――こっちの台詞じゃボケがァー! 私と同等のVなぞ存在するわけがないわー!!!」

 

 わけがわからないまま殴り合いとなる二人を前に、「とりあえず術唱えれば、どっちが本物かわかるな」と呟くモヒカン・エース。動揺した割には意外と冷静である。

 もっとも彼が本を出した瞬間、当たり前(?)のようにオレンジの方のビクトリームが「先手必勝ッ!」とモヒカン・エースに飛び掛かる。しかし、モヒカン・エースも慣れたもの。本を手にしたまま片手でそのビクトリームを一本背負いの要領で放り投げ、空中めがけて指をさす。

 

「ビクトリーム、合わせろよ? ――――『マグルガ』!」

「甘いわ甘いわ、偽物が! 頭冷やして出直してこいや――――!」

 

「こ、ここぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんッ!?」

 

 そしてビクトリームの頭部の光線が直撃したオレンジっぽいビクトリームは。その場で「ぽんっ」と音と煙を立てると同時に、その姿を変化させ。

 煙の中から現れた相手を見たビクトリームは、呆然として、呟いた。

 

「タマモ、だとぅ? 噂をすれば影、ということか。

 ……いや、まるで意味が解らんのだ!!! モヒカン・エース、どういうことだ!」

「いや俺の方が何もかも訳が分からないんだが!!?」

 

 こんこんこん、と独特の笑い方をしながら、尾が二つの、ビクトリームほどの「魔物の子供」らしい大きさをした狐のような何かが。「術の威力は式部よりも低いのねぇ」と、目を弓にして嘲笑っていた。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 

「アレは亡霊よぉ……。パートナーの清明もなく、この世に現れ出たオバケの類よ。そこのツヅリは、何か知らないのか?」

「わかんない。…………魔力はちゃんとあったし、怨霊さんじゃない? とは思う」

「ふん。謎は深まるばかりかぁ」

 

 えーっと、まあ細かい話をまとめると、えーっと、何だ? 安倍晴明のパートナーだった魔物らしいタマモってのが蘇って(先輩は玉藻天后とか言ってたか)ビクトリームを襲って、それに巻き込まれて先輩が居住している宿直室がぶっ壊されたと。うん。ビクトリームが「病院などいこうものなら化けて出てくるわ!」とか言い出して、傷ついたモヒカン・エースも適当に手当てして移動せざるを得ず、先輩も親の家は頼りたくなくて、で俺のところに来たと。まあそういうことらしい。ちょっと何言ってるか判らない。

 わからないが、とりあえず二十二時半を回った今からホテルを探すのも色々と大変だろうということで、昨日は諦めて先輩たちをそのまま泊めることになった。初のよその家でのお泊りということで(?)ツヅリがちょっとワクワクしているようだったが、化野先輩が憔悴していたのであまり遊ぶ訳にもいかなかったらしい。先輩は先輩で

 包帯ぐるぐる巻きで爆睡しているモヒカン・エース(パスポート見たらアイルランド国籍でポロ・ペーニョン? って読めたけど、本物かは知らん)とビクトリームのペア、ツヅリと先輩、俺とスギナと、居間の卓袱台を挟んで男女に分かれて眠るイメージだ。客間なんてものは全部物置代わりに使われている状態なので(主に趣味関係のもの)悪いがそちらに寝かせることなんてできない。

 

『普通にホテルとか自腹で泊まってくれないっスかねぇ? 先輩相手には興味ないっスけど、俺だって一応男なわけだし』

『とはいうけど春彦君……、ホテル住まいは月々ものすごいお金がかかるの! セーラー服はギリギリ夏用と冬用を回収できたけど、色々と私物も全部燃やされちゃった以上、異次元の節約が私には必要なの! ツヅリの食費を担保するためにも! あの子の食費は安くない……、安くないのォ!』

『まあ魔物の子はけっこう食べますからねぇ……、ほら、泣かないでくださいって、ハイハイ…………』

 

 他人事のように言ってる俺だが、実際他人事だ。魔物の食事量に関しては清麿君から愚痴られたりすることもあるし、先輩が言うにはツヅリは中々エンゲル係数の上昇に貢献するタイプの子らしい。ティオとてそう変わりないとかいう情報も先輩が言っていた(大海恵からの情報?)。そう言う意味じゃ、スギナの食事量は普通に常識の範囲内なので、全く気にする必要がない。

 

 まあそれはともかく、常識的に何日もこっちに泊める訳にもいかないので、先輩の次の居住先が見つかるまで(あるいは宿直室の修繕期間)については、こっちの財布の札束でぶん殴ることにした(最低な比喩)。とりあえず3月分のカプセルホテルの代金を翌日下ろしてきて手渡し、後のことは頑張ってくださいっていうことで放流。先輩と一緒に信用金庫にいって、こっちからお金を振り込んだ流れだ。

 

 自分の預金座高にいきなり百万近く増えたことに衝撃を受ける先輩と、その先輩のスカートを引っ張って「お姉ちゃん?」と声をかけるツヅリ。「大丈夫なの? 春彦」と聞いてくるスギナだったが、そっちについては心配するなと言う感じだ。

 今回に関しては、我が母(マダー)から許可をいただいている。「お世話になっている先輩の家が全焼して行き場所がないので、数カ月分の生活費を出して手助けしてあげたい」的なことをオブラートに包んでスペイン語(エスパニョール)なまりに国際電話でまくし立てたら、あっちもあっちで江戸っ子(べらんめぇ)なまりにいくらでも使えと叫んできたのだ。普通に怖い我が母親(マダー)だが、こういう男前な所は流石である。

 

『で、先輩たちのことは片づけたとして、ビクトリームたちはどうするんだ?』

『モヒカン・エースがもう少し動けねばなぁ……。バイクも完全に破壊されたが故に、移動手段も限られてしまってブシャムッシャムシャムシャシァアアァッ!

『いやメロン食べ終わってからで良いぞ、話すの』

『ブレないよねビクトリーム。キャラが立っているって言うか』

 

 先輩経由で、数日後にティオと会ってサイフォジオ(回復術)かけてもらえるように現在、大海恵にかけあっているところだが、それはそうと足を抱えて部屋の隅で落ち込んでいるビクトリームを見るのも忍びない。スーパーで買ってきた安物の(と言いつつ値段としてはまあまあ高めな)メロンを献上すれば、それを片手にやっぱり踊り狂って、なんなら自ら包丁で綺麗にカットしてむしゃぶりついているビクトリームだった。

 ま、まあ会話できるくらいに心が持ち直したなら良いが……。ちゃんとスプーンで果肉をすくって、苦笑いするモヒカン・エースにも時々運んでいるし。

 

『悪ぃな、知り合って全然時間も経ってないっつーのに、こんな世話になっちまって。この恩は返すぜ、ハルヒコ』

『ま、困ったときは助け合いでしょ。ある程度相手は見てやりますけどね』

『そりゃそうだな! っと、痛ぇな……』

 

 おそらく初めてまともに話すだろうモヒカン・エースは、俺に終始頭を下げ続けていた。とはいえ卑屈になるような感じでもなく、何と言うか本当に普通な人だった。職業がサボテン職人だったり、エレキギターが特技だったりと色々キャラが濃い話も聞けたが、右腕を痛めてるらしく披露することも出来ずにいた。

 

 まあ、とりあえずそんな感じで数日はビクトリームたちを泊めることにした訳だが。その間も菜須香とのやりとりは継続している。電話越しに「突然止まりに来る海外のサボテン職人」とか身近なネタを盛り込んだりして、お互い漫画のネタ作りに盛り上がったりしているのを、カスタム□ボとかで遊んでるスギナが半笑いで視てたりと言ったこともあったが。

 

 

 

 さて、前置きが長くなったが、ここからが本題だ。

 とりあえず清麿君たちの方も何か異常がないかってことで電話して、警戒を促したりもしたけど。今の所そこはあまり進展はないらしく、新たな情報が入ってくることも無い。ナゾナゾ博士も「もう少し調査すれば、新たな情報が出て来る」とメールを返されているので、そちらも安心して任せている所だが。

 

 

 

「あ、春彦きゅ~ん♡ ごめぇん、待った~? うふッ♡」

「いや誰だぁ、テメェ……?」

 

 

 

 相変わらずのほ、ほーっ、ホアアーッ!! (ほ〇ちゃん) みたいな声帯をもつ化野先輩だが、うん、おそらくは偽物だ。偽物のはずだ。大学の学食で化野先輩と待ち合わせをしていたから、やってくること自体は間違っちゃいない。住居を移って2、3日のその後の経過と、大海恵とのアポイントメントがどうなっているかというのを聞くため、メールで今日顔見せすることになっているのだから、それは特に問題ない。

 問題があるとすれば……。普段どう見積もってもBあれば良いくらいの先輩のバストサイズが、制服を押し上げるビッグサイズになっていることくらいっスかね?

 いや、だって考えてもみろ。普段ならスレンダーにも「すとん」って感じでひらひらしてるセーラー服の胸元からお腹にかけてが、明らかな乳カーテンを形成しておへそが普通に見えるくらいになっているのだ。違和感バリバリだし、なんなら気のせいじゃ無きゃ普通にDとか超えてるし。ビッグ・ボインばりにバルバルン揺らしながら寄ってくるものだから、学内の生徒たちもぎょっとした顔を先輩に向けている。

 

 何ですか、新型のパッドか何かのテスターのバイトでもやってるんですかね、とか失礼なことを考えつつも、なーんかこういう感じのニュアンスの話がガッシュの初期のアニメで見た記憶があるような、ないような……。

 というか十中八九、タマモだろコイツ、という確信もある。今までのフラグから整理すれば、十中八九例のタマモって魔物が先輩に化けてるって考えるのが妥当なはずだ。

 今日は本を持ってきちゃいないし、スギナも家でビクトリームたちとレトルトカレーでも食べていると思うのだが、お陰でこちらに対抗手段がない。参った、と手を頭にやりたいところだ。

 

 そんな俺に対して、彼女は「おほほ」とやはりらしくない笑みを浮かべて距離を詰めて来る。対面じゃなくってわざわざ隣の席に座ってくるのは、こちらの本を探ろうとしているのだろうか。まがりなりにも「魔物」のオバケらしいので。警戒するに越したことはない。まあ本を持ってきていないので、スギナの安全だけは大丈夫だろうが……。

 

「むぎゅ」

「――――――――ケ・ソルプレッサ(なんてこったいっ)!!」

 

 おぱぁああああああああッ! とか一瞬気持ち悪い感じで叫びたくなってしまったが、そこはご愛敬ってことで許してもらいたい。

 だって! おっぱいが! 柔らかいのです!

 以前事故的にミールさんに抱き着かれた時のそれとも違い(大きいけど割とあっちは堅かった)、こう、腕に抱き着く偽化野先輩のおっぱいがいっぱいなのです! 動揺のあまりちょっと何言ってるか判らない感じになっても仕方がないのだ……!

 

「ねぇ春彦きゅん♡ たまきぃ、お願いがあるんだけれどぉ。言う事聞いてくれたら、お姉さんがイイコト教えてあ・げ・る♡」

「今時テンプレ極まりない色仕掛けっスね、何が目的だオイオイ」

「そんなこと言って身体は正直じゃなあい? ほらほら♡ ほらほら♡」

「おぱっ……! いや、あの、引っ張るの止めろ! いくら何でも風評被害が――――」

「ほらほら♡ ほらほら♡」

「ぼいん!」

 

 つい条件反射で腕を振るわせると、その分だけ彼女の胸の柔らかさがダイレクトに感じられる。それに動揺しているのを見て取られ、偽先輩は「きゃは♡」とこちらの腕をさらに抱きしめて色仕掛けに走る。悪循環、何という悪循環……!

 なまじ、ミールさんみたいに見物料で(タマ)取られる心配もないので、我が身体は溜まっている分本能に忠実だった。意志薄弱というなかれ。普段、預かってる子供が居住している空間で汚ねぇマネには手を出さない分別があるだけだ(適当)。

 

 なので頭では罠(?)とわかっているものの、思わず顔が適当な笑みになってしまう。身体は正直に色仕掛けにつられて、流れるまま流れるまま。そのまま彼女に腕を引かれるまま食堂を出てしまい、そのまま裏山に連れて行かれて――――。

 

 

 

「――――って待ちなさいって、流石にッ!? 第一の術、『リュウス』!」

 

「こぉおおおおおおおお――――――――んッ!!?」

「おっぱあああああああ――――――――ぃッ!!?」

 

 

 

 当たり前のようにこちらを全力疾走で追跡してきた化野先輩と、肩車されているツヅリによる連携攻撃(?)で、タマモ共々、怨霊さんに焼かれることとなった。

 息切れした先輩と、隣の偽の先輩。怨霊によるエネルギー攻撃(?)で身体を震わせてる俺と彼女。先輩と隣の胸元を思わず反射的に見比べて、その、何と言うか、運動量と言うかちょっとした動きが反映される肉の分厚さの違いと言いますか…………、ナムサンッ!

 

 

 

 

 


・玉藻天后の狐面:

 珠紀の家の京都の方の本家、ビクトリームの石板が安置されていた例のあのお家より、もしビクトリームが復活したら(?)渡す様にと紫式部よりの贈り物。ビクトリーム本人が墓参りに訪れたこともあって手渡されたが、本文中の理由から受け取りを嫌がった。一緒に入っていた書物やら何やらにビクトリーム宛のメッセージが書かれていたりしたが、生憎と古語は読めないし書けないビクトリームなので、そちらも含めてまるまる珠紀やツヅリの方へと手渡されている。

 

・札束で殴る(経済):

 本作春彦の母方の実家(スペイン)は農場を中心として様々なビジネスをやってる太いお家な設定なので、母親さえ納得させればポンと大金を自由にさせてくれたりもする。ただ母親的には「わざわざ子供が先輩になったと異性の相手にお金をとか言ってるし、もしかして……?」とニヤニヤ邪推してるし、珠紀も珠紀で「こんな金額一括で振り込んでくるとか……」とちょっと何かのフラグが立ち始めている気もする。

 

・化野珠紀(偽):

 本物との違いはバストサイズと、妙にきゃぴきゃぴ(?)した時代錯誤極まりないノリ。誰がどう見ても偽物であるが、顔かたちなどはキャンチョメとちがい完全な形で化けられている。

 

・性欲を持て余す(蛇):

 本文通り。生々しい話を割愛して表現するなら、約一年以上の禁欲生活を強いられているので、ミール相手にも命知らずだったりするのはこれが影響していたり。

 

・春彦ギャグ堕ち(?):

 あまりに簡単にハニトラ(?)に引っ掛かってるのは、ゲームなら珠紀&ツヅリペアの操作パートになるため。大学構内に張り巡らされた罠や敵と対峙しながら、色仕掛けで連れ去られた春彦を連れ戻す冒険パート…………を1話くらい書いてみたけど、いまいちバトル描写したところで引き延ばしにしかならなかったので全没。次回さらっと触れる程度で、そのままツヅリVSタマモっち(?)予定。

 

 

 

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