「――――『セツオウ・チャーブル・ガポルドン』!!!!!!!!!」
「――――――――ッ! 『チャーブル・エムルドン』!!!!」
狐面のツヅリから放たれる巨大な怨霊の炎の球。それを前に、タマモはその姿を巨大な九尾の狐に変化させた。
春彦を拘束……、拘束? している方のタマモは、ニヤニヤとしながらその対決を見ている。
果たして九尾の狐は、当たり前のように「チャーブル・エムルドンを
とはいえ敵もやすやすというわけではないのか、げぷ、と声を立ててからツヅリたちを睨みつけ。
『怨霊系とかベルギムじゃないのだから……、お腹下しそうって感じ~』
「感想があれでいいのか?」
「怨霊はお腹に良くないしぃ~」
思わず突っ込んだ春彦。そして反応するもう一人のタマモ。そこだけ少し平和ボケしたような空気感だが、状況は変わらない。九尾の狐はそのまま大口を開け、ツヅリたちめがけて襲い掛かり。
ツヅリを抱えようと走り出す化野は、思わず目を閉じ――――。
「――――『マ・チャーグル・イミスドン』!」
「逆・サイドゥ!」
『こぉん!?』
どこからか放たれた「Ⅴの字型」の光線が上空から注ぎ、光線らしからぬ自由機動を描き狐を腹部から叩きのめした。空中に打ち上げられた狐は、ポンと音を立てると美少女の姿に。それと同時に春彦にサービス(?)していたタマモは「ここんこん!?」と驚きの声を上げながら、こちらもポンと音をたて、そしてその姿を掻き消した。
数秒後、術の発動により気絶していたツヅリが我を取り戻し。狐のお面をずらして周囲をきょろきょろ確認して見たものは。
「――いくら化野が好みじゃないからって、あんな時代錯誤なハニトラに引っ掛かるのはダサすぎるよ。もっと格好良い大人でいてくれよ」
「――ハイ、サーセン、サーセン……」
半眼でニヤニヤしながら自らのパートナーに子供としての正論をぶつけるスギナと。
さきほどまで色々とだらしない顔を浮かべていた、現在は青い顔をしてスギナに頭を下げている春彦の姿であった。
※ ※ ※
「春彦が別に誰と恋人になったりエッチなことしようと僕は関係ないけどさぁ……。いくら化野が好みじゃないからって、あんな時代錯誤なハニトラに引っ掛かるのはダサすぎるよ。もっと格好良い大人でいてくれよ。僕にとって春彦って、普通に格好良い大人の一人なんだからさ」
「――――ハイ、サーセン、サーセン…………、いやマジでゴメンね」
「そーゆうところだよ」
どうやらビクトリームたちが上手い事やってくれたらしく? タマモの最大術はうまいこと妨害できたらしい。それと同時に俺を悪魔の手段でもってして拘束していたタマモもまた姿を消し(ちょっとNARUT〇の影分身っぽいエフェクトだった)そのまま背中を打った。
そんな俺を見下ろす我がパートナーであるところのスギナは、完全にいじめっこみたいな表情になっていた。
やれ、おっぱい星人だのケモミミ萌だの、最近テレビで聞いたようなフレーズを繰り返し言ってくる。
それで大したダメージを負っていないのを見てからすぐ戦法を切り替えるあたりは流石のオタク系、自称参謀ポジションになりた派の性格である(偏見)。そしてぶつけられた言葉は、そのままドストレートにこちらの立場を無くす言葉の数々であり、言い返すことが出来ないので誤り倒すしかない。
というより、普通に格好良い大人の一人だとか言われて照れる暇もなく心を折りに来るこのストレートさというかえげつなさよ。一体誰に似たのやら……。
ほら、とこちらに本を差し出すスギナから受け取り、立ち上がる。
「まあ、対策は思いついたんでそこは勘弁してくれな? してくれな?」
「僕は別にいいけど、後で化野に怒られると思う」
「それは……、まあ先輩は大したことないから大したことないし」
ちょっとどういう意味よ! と、あっちの方でツヅリを抱きしめながら先輩が叫んでる。どうやら腰でも抜けたのか、さっきのビクトリームの術が入ったときから身動き一つとれていない。おやビビったのか? もしかして一人で巨大な術に立ち向かうのって、ひょっとして先輩たち初めてだったりしたのか……? いやそうじゃないか。多分、エムルドンをいっきに放つために無茶したせいで、心の力を一気に吸われたんだな。
じゃあ、ここからは選手交代って話で……。とりあえず隣のモヒカン。エースを見る。
「……それはそうと、あっちの背の高い木の上でVのポーズ決めてるビクトリームは何なんだ?」
「――――デデドン! 決まっているだろう、格好良いからだッ!」
「――――真面目に言うとタマモってあの魔物の死角に入るためだったぜ」
ビクトリームは俺の質問にいつも通りの調子で答え(というかデデドン(絶望)は止めない? デデドン(絶望)はな?)、割と真面目に解説してくれるモヒカン・エースが普通に大人だ。しかも何か、ビクトリームが木の一番上のところに立ってポーズしてるのをビデオカメラっぽいので撮影してるし。一体どういうスタンスなんだアンタ。というかモヒカン・エースもモヒカン・エースでもう包帯はとれてるし、傷もちょっと数か所残すくらいで頬と腹にテープやら包帯が巻かれているくらいになってるし、改めて頑丈すぎやしないか? スギナのチャージオの果実とかじゃねぇんだからさ……。
というか、そもそもなんでビクトリームたちまで来ているんだろう? スギナが来ているのもよくわからないが。
俺の疑問に、とう! と飛び上がったビクトリームはモヒカン・エースの隣に着地し、軽快に答えてくれた。
「お前のいない間に、タマモが襲撃をかけてきたのよぅ。とはいえこのビクトリーム様の目に掛かれば? あの分身が所詮は分身なことなどオミトオシ。ロボルドムの変形合体と総合格闘術をもって、完膚なきまでに叩きのめしてここに参上!」
「何でまた……?」
「おう、お前目当てだったらしいぜ?」
「俺?」
ビクトリームとモヒカン・エースの言葉に困惑する俺に、スギナが手を引いて言う。
「――――『花柄春彦のパートナー魔物、および本を館長さんに連れていくって話よねぇ』って言ってたから、間違いなく僕と春彦狙いだよ」
「なるほど…………、あー、大体わかった」
そしておおよそ少年漫画的なメタ読みだけど、今回の真相というか「真犯人」がわかったような気がする。あのタマモが蘇ってる? みたいな状態が何なのかって話は別に存在するんだが、それこそたぶん何かしらの術の類だろう。
だとすれば――――。
「くっ……! いまさらビクトリーム一人加わった程度で、そう簡単にはいかないものねぇ……!」
あっちの方で腹を抑えて立ち上がる、衣服が乱れたタマモ。……何と言うか色々少年誌的に問題ないくらいのお色気具合のはだけ方と破れ方なので、悪いがそのくらいのお色気では揺らがない。
そしてこっちは生憎と、さっきまでのサービスで否応なく心の力
「――――『アーガス・ジュロン』! 『オージグル・マ・ジュロン』! 『バル・ジュガルセン』! で、あとは拘束ヨロ!」
「いきなり容赦ないね……」
「口の中にもツタちょっと入れて、術唱えるのも妨害な」
「本当容赦ないね…………」
「こん!? って、何ですぅこれちょっと、いきなり全方位塞がれてこれ、ツタとかがァ!!?」
とりあえずジュオウを1発くらい撃てるくらいの心の力を残しながら、タマモを全力で拘束する。
まずアーガス・ジュロンでタマモの周囲を覆い、オージグル・マ・ジュロンでアーガス・ジュロン内部の樹木操作を可能に。その状態からバル・ジュガルセンでタマモの頭上から種をまき、たぶん服にも入ったろうその状態でオージグルの杖を使って植物を操作して拘束。言葉少なくともすぐさま対応してくれるあたり、スギナもスギナで石板魔物関係でちょっと成長したというところだ。
また一気に畳みかけることでタマモに分身やら変身する余裕、余地を生み出させず、そして術発動の妨害までかます。パワー系の魔物相手には使えず、また「パートナーがいる魔物」相手には中々うまく決められないだろう、圧倒的な拘束戦法だ。どう考えても主役じゃなくて悪役のスキルツリーである。
まあもともとジュオウしかりジュガルドンしかり、どう考えてもデバフ系のビルドだから当たり前といえば当たり前なんだけどな。
なお「えっもう終わり!? 相性勝負にしても、もうちょっと何かあるでしょ!!?」と驚いてツッコミを入れる化野先輩と、スギナに拍手するツヅリ。先輩は先輩で苦労かけた分あの反応なんだろうし、そこについてはサーセン、サーセン……。
なおアーガス・ジュロンだけ少し動かし、拘束されているタマモを見て別な意味でキレる先輩である。ちなみにビクトリームは爆笑してるあたり、状態については多少察して欲しい。
「こぉん、こぉん……! 胸の谷間が、くすぐったいのよねぇ」
「ブルァアッハッハッハ――――――!」
「春彦君、いくら敵だってもうちょっと扱いってものがあるでしょ!? そんなにチチもぎたいっていうの!!?」
「いやポージングはスギナが遊んでるだけなんで……」
そう、拘束されたタマモは、なんでかずっとスギナにより空中で「チチをもげ」を踊らされていた。
腕、脚、服の内部から胸の谷間を経由して肩やら頭部やら色々と拘束している状態の木の根やツタは、植物らしからぬ縦横無尽さで自在に動きながら、ヌルヌルとなめらかな動きでチチをもげを躍らせている。アニメだったらきっとスタッフが無駄に洗練された無駄の無い無駄な動きを無駄に
とはいえ勝っても負けてもなんなら出て来た時点でギャグ要員な可能性があるんだよなぁこのガッシュ世界……。むしろギャグ要員化は今日キャラ化フラグでもあるから、そのあたりのバランスが難しい。
「何であんなことやってるのよスギナ君!?」
「だってこうやって萎えさせとかないと、化野と話すとき気まずいでしょ? 春彦も。化野だって胸が大きくならないんだから――――痛っ」
スギナはスギナなりに気を遣ってくれているらしかったが、いかんせん方法が直接的すぎた。まあ、いつものガ〇グレイブ的な話からすれば、俺と化野先輩がすれちがわないように的な振る舞いなんだろうが、それはそうとしてもうちょっとこう、なぁ?
なお化野先輩も、スギナの折檻にデコピンで済ますあたりはまだ大人だった。
「さて。…………」
未だに踊らされてる彼女を見ながらさてどう聞こうか、という話を考えていると、何故か化野先輩が悲壮感漂う顔で立ちはだかる。腰が抜けたのがまだ直ってないのか、脚がぴくぴく震えている……。
「春彦君、どうするつもり? エッチな事するつもりだったら、お姉さん流石にあのタマモを庇わざるをえないんだけど……」
「いや別に、そんなには引きずられてないっスから……。ビクトリーム、何かタマモに用事でもあるか?」
一応、ビクトリームの方に話を振れば「特にはないな」と肩をすくめた。
「あの後、
我が好敵手との想いは、その全ては我が麗しき
それが何より大事なことだから間違えはしないのだ、と。ビクトリームは自分のVの字型の頭部を指さす。そんなビクトリームを見て、モヒカン・エースはどこか眩しいものを見る様に目を細めた(白目がちだけど)。
「故にこそ、そこにいるタマモはノイズでしかない。大体かつてのお前はもっと、それこそ私やレイラとそう変わらぬ背丈だったろうに。何故そう大人の姿になっているのだ? そこからして気に入らん」
「何、だと?」「ん?」
「どういうこと?」「ふぇぇ?」
俺とスギナ、化野先輩とツヅリ、それぞれが同時にタマモを見る。スギナも空気を読んだのか、躍らせるのを止めて十字架に掲げられているような状態に拘束し直していた。
タマモは左右の頬を内側から少し引っ張る木の根を邪魔そうにしながらも、しかし苦笑いを浮かべてビクトリームを見ていた。
「本当、クサいセリフを臆面もなく言える所も変わりないのよねぇ。それでいてもうちょっと真面目だったら、晴明様もおもちゃにはしなかったでしょうし」
「真面目も不真面目もない。私は、私だ」
「あなたほどの割り切が出来ていれば、
まあ、この姿について今知ることもないでしょう。どうせこの戦いが終わった後、何かあれば嫌でも知ることになるのだし」
「ほぉう…………?」
そして今のタマモの言い回しからして、ふと俺の脳裏には「金色のガッシュ!!2」って文字が躍った。えっもしかしてガッシュって続編、作られてるのか? 今のタマモの言い回し的に、魔界の王を決める戦いの後にまた人間界に来たみたいな話だし。
しかし……、ちらりとスギナの方を見てから、俺は頭を振る。早計だ。戦いが終わった後、平和的に再会できるとは限るまい。もしかしたらそれこそ劇場版みたいな、大きな敵と戦う様な話かもしれない。だって少年漫画的にバトル漫画として描かれていた以上は、続けるならそれ相応に前作を引き継いだ話になるのだから。続いた方が読者は幸せでも、作中人物にとってはどうかというのはまた微妙な話だっていうのはよくあることだ。
だが…………、ある意味、俺も覚悟しておくべきだろうか。
いやそんな話は、今は置いておくべきだ。全力で俺の「漫画の
「タマモテンコウって呼んだら良いか?」
「こん? ……タマモって呼んでくれると嬉しいかしらねぇ。長い方は晴明様がお付けになった呼び名だもの」
ビクトリームが何やら考え込み始めたので、その間にこちらの用事も確認しなきゃならない。というか、おそらくこの確認に拒否はしないはずだ。
なにせ相手は、おそらく「自分を蘇らせた相手」に対して、そこまで強い忠誠を誓っているわけではないのだろうから。
「さっき俺に対してもそうだったし、スギナに対してもそうだったけど、館長って言ったか? そいつが俺たちをさらって来いって言ってたんだよな」
「そうねぇ」
「まさかとは思うがその館長って――――」
――――
それだけ確認すると、タマモは「ここん!? こんこんこんこんこんこんこんこん!!! みっこ~~~~ん!!?!?!?!?」と思いっきり動揺していた。
いや、動揺するのは良いけど流石にみこーんは止めておけ。どう見てもお前は良妻系の狐ではないし(タマモっち)。
・マ・チャーグル・イミスドンふたたび:
軌道を変えることが出来るチャーグル・イミスドンなので、チャージしきった上で完全に死角から放ち、最も撃たれるのがいやなところにブチ当てる作戦。このあたりはビクトリームとタマモの付き合いの長さから来ている読み(?)と、ツヅリたちに被害を与えないため腹から角度を調節し、後方にぶっ飛ばせるようにしている。はたから見ると意味不明だけど、戦闘IQを求められるタイプの使い方。
なお事前にツヅリのチャーブル・エムルドンを食べた後、尻尾9本のうち4本分は威力が落された(消化するのにエネルギーを使用した)ので弾き飛ばされた流れでもある。
・スギナにちょっとだけ怒られる春彦:
負けてもないのにギャグ要員になってたらそりゃ怒られる(当然)。なおちゃんと対抗策というか作戦も思いつきはしていたので、スギナからの株は下がっていない模様。信頼度の判定ガバガバかな?
・容赦のない拘束戦法:
春彦の言っている通り、そもそもデモルトのようにパワーが強い魔物や、パートナーがいる相手には使えない。魔物単体の拘束に集中するから高速で行えるので、人間が残っていればそちらから術を唱えられて妨害されるだろうし、魔物の方が残っていれば言わずもがな。タマモが単体だったからこその動き。
またスギナの術が速射で無く操作系をベースにしているからこその連続呪文詠唱作戦だったりする。連鎖的にFIFOで術が順々に発動するのが、実はスギナの強みの一つかもしれない。
・化野と春彦、配慮するスギナ:
仲間だし魔物の子の保護者同士という感覚ではあるけど、友人関係としては実はそこまで親しくない。なので割とボケボケに色ボケかまされたら信用がない春彦と、割と大人としてツッコミを入れる化野。
そんな二人の仲違い(?)、あるいは春彦が駄目駄目にみられるのを回避するために、スギナが状況をギャグに落す。スギナからすれば人生に色彩をくれたお兄さんなので、一番そういったすれ違いとかの不幸に陥って欲しくない相手なのだ。
・タマモっちの現在の姿:
詳細は後々正体発覚時に。低身長とはいえど大人くらいの身体の大きさな現在のタマモっちは、つまり春彦の読み通りである。
・メタ読みによる章のチャート崩壊:
初手ラスボス指名は基本。ルーニー古事記にもそう書かれている(TRPG)。なおリア卓でやるには空気感を読んだうえで行うべし。
春彦的には「わざわざ花柄春彦」指定(チャラリー・花柄・ギニュウの方じゃない)で、かついきなり自分を攫おうなんて相手は知り合いの中ならそれくらいだろうこと、本の持ち主かどうかなんて見た目からはわからないだろうこと、なんかいきなり女の子と仲良くなったのが怪しいというメタ読みから。なんでわざわざ春彦を回収しようとしているのかは、果たして……!