「イタリアの英雄、あの『00F~プラチナ・ライセンス~』『00F~ゴールドファイブフィンガー2~』『00F~B地区より愛をこめて~』『00F~シルバーバレットを蹴り上げろ!~』『00F~君の瞳だけ見つめる~』『00F~ライオン♡作戦~』『00F~女王陛下の英雄~』『00F~鉄のフォルゴレは二度
「いや、何だよそのリアクションの大きさ……。食いつくところがそこなのか?」
あのツヅリって子のパートナー、何故かセーラー服を着てる大学生の化野珠紀さんという人を加えて、俺達はファーストフード店に来ている。座席を取っても問題がなく、多少騒いでいても不思議がられず、そして込み入った話をしても雑音に紛れやすいから、と言う判断だ。
流石に予算については俺、春彦さん、恵さん、珠紀とで割り勘ということになった。……なったけど珠紀さんが「くぅ……!」と凄い苦悶に歪んだ顔をしていたのを見た春彦さんが、彼女の分も出していたりする。仲が良いのかな? と思って二人を見ても、春彦さんは何か面倒臭がってる感じだし、珠紀さんはニヤリと「チョロいぜ」みたいな顔をしてて、どうリアクションをしたものか……。「そういう」関係じゃないってのはわかったけど、まあ、仲良しではあるんだろう。普通に距離感が近くて、手のかかる姉の世話をしている弟みたいな雰囲気があった。
『じゃあ、えっと。改めて。高峰清麿、中学二年生。あっちの先頭でおもちゃをいじってるのが、パートナーのガッシュだ』
「(ティオも持ってるわね、あれ……バルンルン? 清麿君に作ってもらったのかしら、おそろいじゃない)フフ……っ。じゃあ、私も。大海恵、高校生です。あっちのガッシュ君のすぐ後ろで、何かぷりぷりしてる子がパートナーのティオよ」
『『大海恵……!?』』
マスクをさっと外した恵さんに、大学生の二人は愕然としていた。トップアイドルじゃない!? と驚く珠紀さんはびっくりしすぎてしばらく絶句。春彦さんは周囲を見回した後「これ貸します」って自分がかけていたサングラスを手渡した。
『マスクしながらだと食事無理でしょうから……、いや、なんだかんだ上手いこと隠せるかもしれないけど、週刊誌にすっぱ抜かれやすくなるし』
『あっ、それもそうね。ありがとうございます』
普通に頭を下げる恵さんと、何か落ち着かない様子で周囲を見回して冷汗をかいている春彦さん。なんだか苦手そうにしているけど、大人気アイドルに生で対面したファンって感じではない、よな……。
せっかくだからと恵さんのエッセイ本(何でそう都合よく持ってた!?)にサインをしてもらう春彦さん。……そしてその背後から、何か色紙を十枚くらい手に取ってこっちにもサインしてください! って珠紀さんが迫る。強引すぎて恵さんがちょっと引いてるな……。困ってるみたいだからと間に割って入る俺と、後ろから羽交い絞めにするような形で引き離す春彦さん。何でそんな何枚も何枚も色紙にサインをさせようとするんですかって聞く春彦さんに、彼女はきょとんとした顔で。
『えっ? だってお高く売れるでしょ?』
『そう言うと思ってましたよ!? 「ジュガロ」ッ!』
『ああっ! 止めて! せっかく美術部の使ってないスケッチブックで自作した色紙もどきがァ! もっと先輩に敬意を払いなさい!』
ガッシュたちの方からスギナがこっちを向いて、けっこう正確に珠紀さんの持ってた色紙を射撃? して壊す。それに涙目で怒る彼女に、春彦さんは「ハッ」と見下すような目をして。
『せめて敬意を払えるようなことしやがれこのペチャパイがッ!』
『!!?!?!?!?!?』
白目を向いて凄い顔をして春彦さんの羽交い絞めを解いて掴みかかろうとして、春彦さんは軽く躱して……。あー、なるほど、こういう人なので、あー、なるほど…………。
後何か恵さんも恵さんで「うふふっ」ってクスクス笑いながら、俺の両肩持って「ありがとね」って囁いて来るし。春彦さんは割とまともだと思ったけど場は混沌としていて、これは何と言うか中々先が思いやられるぞ~?
その後、ガッシュとツヅリがティオに追い掛け回されてきたり、スギナが俺と恵さんを見て小指を立てて何も言わずにこう……、って、いや古いな。恵さん、意味がわからなくて「?」って微笑みながら不思議そうにしてる。俺だって親父が昔テレビを見ながらそうやってたのを見たから、意味が解ってるだけなんだけど。
いや、そういうのじゃないし、年だってかなり離れてるからそういう目では見られてないんじゃないかなーって……。そりゃ、多少は信頼してもらってるし、距離感が近いから「全くない」とは言わないんだろうけれども。水野ほどストレートに来てる訳でもないから……って、いや、そ、そんな照れくさい話は置いておいて。
『俺は春彦。あっちでツヅリをからかって遊んでるのがスギナ』
『私は化野珠紀。あっちのちょー可愛い女の子がツヅリよ? ――――後すっごい貧乏だから、連帯保証人とかは期待しないでっ!』
春彦さんはともかく、何故か涙目でこっちにサムズアップしてくる珠紀はこう、何なんだろうなぁやっぱり……。恵さんも「あはは……」と困ってる感じだし、ついでに暴れまくったせいか制服のリボンが解けて今にも落ちかかってるし。
指摘する春彦さんと、飛び跳ねる様に大慌てで治す珠紀さん。
あと、スギナと話してるガッシュとティオとツヅリが何故か涙目になってる。あっちはあっちで何やってるんだ……。
『き、清麿!? スギナが怖いのだっ!』
『い、いるわけないしー! トイレの天井に幽霊なんているわけないしっ!』
『えと、あの…………、わりと、いる時もある』
『嘘よ~~~~~~~! め、恵ぃ!』
恵さんの膝に抱き着いて涙目のティオ。……よくわからないけど、怖い話を聞かされたらしい。ガッシュは抱き着いたりはしなかったが膝がガクガクいってるし、ツヅリはツヅリで「陰惨……」とか言って引いてる。一体何を話したんだ、あのスギナは……。何か暗い雰囲気でニヤリって笑ってて、うーん、こっちもこっちでこう……。何でどいつもこいつもこう、個性が尖ってるのか。恵さんと顔を合わせて思わず苦笑いをした。
その後、ファーストフード店についたあと。俺と春彦さんでレジの方に並び、恵さんと珠紀さん、あと魔物の子たちで席を確保する流れに。……だったんだけど、スギナだけは春彦さんについてきていた。
『ブーリバーガー! ブーリバーバー!』
『今日は最初の一個が喰えるなー』
『うん! 春彦、今日こそは食べるよ!』
さっきまでのローテンションが嘘のようにハイテンションで、ぴょんぴょんしながら春彦さんに笑顔を向けるスギナ。キャラが違って驚きはしたけど、ガッシュよりは落ち着いているなぁと何とも言えない気分になる。
『って、最初の一個?』
『あー、言ってなかったっけ? 以前、大海恵グッズ盗難の騒ぎがあったちょっと前、ブリバーガーを魔物の子に盗られてさ。ハイドっていう子なんだけど…………って、知ってる顔してるね』
『あー、まぁな……』
大海恵グッズ盗難騒ぎのあたりで、あの二人の顔が脳裏をよぎった。そうか、余罪はまだまだあったってことなのか……。一度戦って撃退して、それ以降は会ってもいないけど、アイツらも生き残ってるんだろうか。既に残り70を切ってるっていうのに。
そう、残り70。
ティオや恵さんたちと会うちょっと前。この魔本に新たな文字が刻まれ、俺達に知らせたのだ。残りの魔物の数が70名になったのだと。
その後、俺達はティオを襲ったマルスを撃退したので最低マイナス1。ブラゴや、もっと強い魔物がいるだろうことを思えば、その数はもしかしたらもう50台になってるかもしれない。
そんなことを言いながら、とりあえず今まで戦った魔物について話し合いをする流れになった。直接戦う、戦わないは別にして「こういう魔物と術が存在した」と言う情報は、これから戦う時の参考、魔物の術の奇想天外さのサンプルになるだろうと思ったんだ。
春彦さんはおおむね賛成してくれたけど、ちょっとだけ渋った。
『あー、一人ちょっと絶対話せない相手がいるんで、その人だけは除外して話すよ』
『話せない相手?』
『怖いの。正直、下手なことするといつこっちが殺されるかわっかんないくらい怖ぁい人なの』
『魔物の方も何考えてるかわからないし、藪はつつかない方がいいと思う』
その人だけは勘弁と言いつつも、最低限のことだけは教えてくれた。とてつもなく強い魔物であること、術の規模がかなり広いこと、彼等の最大術(流石に教えてくれなかった)はその魔物に対抗するために生み出されたことなど。
『その後に戦った魔物は……』
『ツーパンは、なぁ……』
『? どうしたんだ二人とも、そんな変な顔をして』
口を歪めて、二人とも嫌そうな顔をしている。どんな魔物なのか逆に興味が涌いてくるのだけど、細かく確認をして聞いたのを後悔した。主に……、食事時だったせいで。
『ケツから火を出す魔物だった』
『ほぼオナラだよね』
『えぇ……?』
術系統は「波動」で、第一の術は「レイス」。忘れもしない、ブラゴとシェリーが使っていたあの術だが、どうやらそこにいくつも属性を上乗せして放ってきたらしい。火の「エムルレイ」、水の「オータルレイ」、風の「ハリクレイ」、といった具合に。ブラゴの場合は「グラビレイ」だったか、そういうことならアレは多分、重力系の術になるってことか。
『そっちは倒したんだな』
『スギナ的にちょっと許せないことをしたからな、あの猿っぽい魔物。最近そんなに「王になるつもりがなくなってきてる」スギナでもブチ切れてたくらいだし、あれはびっくりした』
『…………あそこまで露骨に無意味な環境破壊とかされるとね』
あー、なるほど。確かこっちは植物属性の術だったか。俺達を助けた時は術の効力で植物たちに協力してもらっていたらしいし、つまり逆説的に植物は友達なんだろう。そんなあの子の前で、ケツから火を出した、わざわざ「火」と言及してたっていうことは、おそらく木々をいっぱい燃やしたとか、そんなところか?
その後にツヅリ、あとは俺達と一緒に戦ったペニと続いて、それ以降は戦っていないらしい。遭遇率で言うとやっぱりガッシュがかなり多いし、それだけガッシュの魔界時代が「弱虫」と揶揄されるような扱いだったってことだろう。
少しだけ苛立ちを覚えるが、特に表に出すようなことでもない。誰に当たるような怒りでもない、単に、友達のために勝手にわいてきた義憤ってだけだ。
そして今度は俺達の番ってことで、前にメールで話していた分と、忙しくて細かく話せなかった分をまとめて話して――――。
「フォル、ゴレ……!?」
というわけで、愕然とする春彦さんだ。
何かよく知らないけど映画のタイトルをばーって出してきて(シリーズものもある?)、ものすごいびっくりした顔をしてる。いやあの、コルルの件とかもっと食いつくべきところがあると思うんだが……。「戦いたくない子に人格が植え付けられる」って話とか、メールだとしてなかったし。
「なるほどフェインどころかハイド
「あ、ああ。……というか先輩?」
「うん。あの人、人間換算で言うと僕とかガッシュより2歳くらい年上になるし」
そういうのは守らないとね、とよくわからないこだわりを見せるスギナ。それを言うと声変わりしてるし、あのフェインってピエロみたいな魔物の方が年上に思うのだが……。いや、何か妙に達観してる風なところがあるし、尊敬できない相手は呼び捨てとかそういう感じなんだろう。
ついでということで、両手で頭を抱えて色々苦悩してるっぽい春彦さんがどうしたのか聞いてみる。
「何であんな妙な感じに……?」
「春彦、フォルゴレファンだから。ライブに行ったりしないけど出演映画とかCDとかPVのディスクとか全部集めてるし。この間も新曲の『バストハイバスト〜もぐかもがれるかの
「マジで!?」
「うん。何だっけ、確か『非暴力』なのが良いんだって。アクションシーンも凄いけど、ダンスで世界が平和になるならそれが一番だって」
そう言われると何やら高尚なことを言われた気になってくるが、俺の脳裏にはツッコミのための弱いザケルを受けても、キャンチョメの期待を裏切れず無理して何度も立ち上がる可哀想な大人の男性の姿が過って、どんな顔したらいいやら……。いや、あれも「子供の期待に応える」ってスターらしい振る舞いなんだろうけど、完全にギャグの類であの二人については、まあ、また遊びに来るんだろうか……? 戦うって感じじゃなかったけど、ガッシュ的には「強くなろうと頑張る者」ってことで、嫌ってはいないし。
というよりもトップアイドル・大海恵よりもイタリアのスター・フォルゴレの方が、重要度が重いのこの人? 水野とか、あとあの泳太とかも恵さんのグッズを盗んでたとかいうのもそうだし、そういう凄い人気ってのをこの目で見てるからこそ、恵さんに対する興味が薄いのに結構びっくりした。
「おっと、取り乱した。ごめんな清麿君」
「あ、いや、大丈夫だ……(急に戻ったな)。
えっと…………スギナはその、コルルについては何か知ってるか? さっき俺が言った……」
「戦いのために人格を植え付けられる魔物もいるって話は、噂では聞いたけど実際はどうなんだろう? 術特性で人格が変わったりする子は、いないわけじゃないけどね」
「そっか」
「それに、あっちのティオの方が詳しいんじゃないの? コルルとは友達だったし」
「何!?」
思わず、ばっと座席の方を振り向いてしまう俺。……えっと、何をやってるんだガッシュたちは。俺が作ったバルカン300(※工作で作る簡単なロボット)とティオ用に強請られて作ったバルンルン(※同様)、あと藁人形みたいなのを抱えたツヅリが、何かストローみたいなので棒倒しみたいなのをやってる……。恵さんが苦笑いしながら幼稚園の先生みたいな感じだし、珠紀さんが腕組んで足組んで鼻提灯膨らませて爆睡してるし。
シュールすぎて表情が「無」になってる俺に、春彦さんは少し笑った。
でも、そうか……。だからあの時、ガッシュと一緒に戦った後、話し合ってた時にあれだけ泣いてたってことか。自分を追ってた魔物を倒したこと、俺達に出会えたこととかの安心感とは別に、友達が一人、いなくなってしまったんだから。
まあ、と春彦さんが俺の肩を軽く叩いてサムズアップ。
「残りの魔物の数も減ってきたし、ゆるーい連帯感でやっていこう」
「ゆ、ゆるい連帯感?」
「うん。ガッシュ君とティオちゃんは完全に友達だろうけど、スギナとかツヅリはちょっと『陰の者』なところあるから、ストレートに友達って感じじゃないだろうし」
「ズケズケ言うなー。事実だけど」
「だからこう、あんまり無理しない程度にって感じでよ。何か都合が合えば、何かあった時助け合うくらいな…………、単なる知り合いの距離感?」
「言いたいことはわかるけど、もっと表現の仕方がなかったのかアンタ……?」
チームプレーするほどの仲良しさではなくとも、緩い仲間って感じの繋がりでやっていきたい。そういう意図を感じたからこそ、言い回しで色々台無しな春彦さんに思わずツッコミを入れて。
長々と話をしていてようやく俺達の番が回ってきたと思ったら。
「はい、いらっしゃいませ――――――って、おお、お前!? 高峰清麿!」
「お、お前は――――」
「あっバーガー泥棒」
カウンター越しに、思わずヒートアップしそうになった俺と、多分アルバイトだろう窪塚泳太……、あのハイドって魔物の子のパートナーを前に、春彦さんが冷や水をかけるような冷静な声でそう言って。
スミマセン勘弁してくださいと、泳太の方は顔を青くして頭を下げた。
・フォルゴレ大ファンの春彦:
実際問題この世界に転生してから「本当に」ファンになった。それはそうと恵さんとフォルゴレでリアクションに差があるのは、二人が魔物のパートナーなのは原作知識で元々覚えてたので、誤魔化すためにより詳しく知ってる方をオーバーに表現して演技したため。恵さんに靡かないのは好みの問題。
多分この世界だと、フォルゴレのドキュメンタリーを作ろうとして失敗した話とかがネット掲示板に、「私はカバさんになりたい」的なインタビュー記事とかが雑誌やら何やらで取り上げられてたりするので、そういうのを踏まえた上で非暴力を徹底する大スターに脳を焼かれたものと思われる。
・暇を持て余した魔物たちの遊び:
夏なので怖い話大会したり、追いかけっこしたり、お人形遊びしたりやりたい放題。スギナだけお人形遊び用の人形? がないので、多分そのうち専用の術が生える……、はず。
・守銭奴先輩:
まだギャグで流す話だけど、割と化野の貧乏具合は洒落にならないのでトップアイドルを前にしたらああもなる。とはいえ妨害した春彦と険悪にならない程度には、本人も「スターにサイン何枚もねだって売りさばくのはどうなの?」という常識自体は失くしてない。
でも隙あらばやる。一体何なんだこの人……?
ちなみに爆睡してるのは、働きすぎて本当に睡眠不足なので。寝相やら何やら美人が台無しである。
・ここまでの戦績:
スギナが戦ったツーパンは、一発目から「エムルレイ」(火)をケツから放ち、芝生やら街路樹をいきなり燃やしだしたり、魔界の王になったらその権力で気に入らない奴に徹底的な嫌がらせをするとか言ったのでスギナにキレられた。前の自分を見てるみたいなのと、多分ウルトラ・スーパー・デラックスマ〇とかを読んだのが影響してる。
ガッシュの方は、原作でのスギナ戦がペニになってる程度なので、そう大きく戦績は変わっていない。……そしてコルルと友達だったことは教えるけど、それを知った切っ掛けであるアレについては隠すスギナ。ヘーイヘーイヘーイヘーイ。
・ガッシュ「やさしい王様になるのだ!」:
多分次回あたり、スギナたちにするかもしれない。
・ブラゴ第一の術「レイス」:
本作では「レイス」は初期の頃の説明にあったエネルギー弾だったかの設定を採用して、こういう扱いの術とします。……といっても、ほぼツ-パン用の設定でしかないので、フレーバーということで。
・窪塚泳太、再登場:
アニメ版のハ〇ピーセットが売ってたりしたつながりで(メタ)、多分マ〇クでアルバイト中。一応十五歳以上は許可があれば出来たと思うので、学校にはたぶん職業体験的な理由で夏休みの間だけ申請している。
なお恵さんには気付いていない模様。ショギョムジョッ!