俺はお前を超えるぞ、後輩 作:月桂樹の花は咲く
あとムゲン団って言うif創作の概念知った時の衝撃と興奮は忘れられない、気になる人は自己責任で調べてみて下さい。
目が覚める、知らない天井だ。
既視感はあるけどな……少なくとも俺の家ではない。
何故俺はここにいる?
俺は目が覚める前まで……ふむ、記憶の混濁と言うやつか、頭の中をぐるぐると色んな場面が巡っていて思い出せん。
「そ……ぃてぉ、ずぃ……のび……」
舌が回らん、声が出ねぇ。
そして俺の髪の毛、流石にこれは伸びっぱなしと言わざるを得ない。
本当にどうなっているんだ、何があった?
「ぅ、ぐ……ぉとぉぇ……」
起き上がるのも一苦労、衰えたな。
寝たきりなのだから当然か、それでも歯痒いが。
「ぁ、あー……あいうえお、かぃくけこ、さしすぇそ……」
声は大丈夫そうか?
ガタン
「……あ」
「嘘……」
何かが落ちる音が、した方向にいたのは。
「ケイジ、くん……?」
「……そにぁ、せんぱい」
三つ上の先輩である、ソニア先輩。
「……」
「……」
場を支配する沈黙。
どうしようか、何か凄く気まずい、と言うか何から言えばいいのかわからん。
「ぇえ、と……その、おはよう、ございます、せんぱい」
「ぁ……バカ!」
「!?」
怒られてしまった、何故だ。
考えられるとしたらこうなる直前、何かやらかしたとかだが。
生憎、思い出せない状態だ。
「その……」
「なんで! あの時……! バカ! バカバカバカ!」
「……すみません」
訳もわからず怒られる、解せぬ……とは言えないか、泣きそうな顔されちまうとな。
「……」
「……でも」
「?」
「……目覚めて、良かったぁ……!」
うぬぅ……記憶にある先輩よりも情緒が不安定で掴めん、どうしろと。
上げ下げの振れ幅がバグってて、語彙も不足してる感じがするが……何があったんだ、俺に。
▲▲▲
「おちつきました?」
「……うん」
それは良かった、あのままバグられてると会話が難しいとかそんなレベルじゃないからな。
あの後、医者の人とかが来て色々調べられたりなんだかんだしているうちに落ち着いたのなら、こちらとしてもありがたい。
「おれは、どのくらいねてましたか」
「えっと……大体二年くらい、かな……うん、一週間後にリーグ戦があるから」
「にねん……」
なるほど、そりゃ衰えるし先輩も泣きそうになるか。
先輩に限った話じゃないが、大体お人好しだからな。
二年……二年か。
「あ、ケイジくんの家とか、ジムは問題ないから」
「そう、ですか」
「うん、ジムは後任で新しい人が入ったし、家は定期的に掃除してるからさ」
それは……まぁなんと言うか。
ジムはまあそうだろうなって感じだが、二年もあったんだし流石にね。
自宅は……正直荒れ放題だなとか思ってたから、感謝しても仕切れないな。
「おれのぽけもん、は……」
「……えーっと、問題はそこなんだよね……」
「?」
うちのメンバーに何かあったんだろうか。
「まず最初に、一匹は私が今持ってるから、すぐに返せるんだよね」
「なるほど」
なるほど。
俺の手持ちの五匹の扱いに困ってたのか。
ポケモンボックス……もとい、ポケモンセンターのパソコンシステムは、基本的に一人に一つ与えられる。
そしてそれらは本人以外に扱う事はできない。
「他の子たちも、持ち主に会えたら返してくれると思う……一匹を除いて」
「……ふぁいあろーですか」
「……流石、よくわかるね」
「とれーなーですから」
元々気性難な所あったしなあいつ……俺のことを認めてくれていたとは言え、倒れたからって他のトレーナーに早々に従うようには思えん。
「そのファイアローがさ……居なくなっちゃったんだよね」
「でしょうね」
「捜索は続けてるんだけど、居なくなる時にボールを持って行っちゃったから」
「なるほど」
ファイアローは……まあ気が向いたらユウリやダンデあたりのところに出向いたりしてるんじゃなかろうか。
リザードンとかに喧嘩を仕掛けていてもなんら不思議には思わん。
「……そういえば」
「?」
「あのとき……なにが、あったんですか」
「え、覚えてないの?」
「ざんねんながら……きおくがこんだくしてまして」
そう言うと先輩はあちゃー……と言った感じで、申し訳なさそうな顔をし始めた。
「……あの時は、リーグ戦の決勝戦の途中だった」
「りーぐせん……あぁ、たしかに、そうでしたっけ」
そうだ、あの時はキバナさんからトップの座を奪って初のリーグ戦だったっけ。
それで……そうだ。
「……だいまっくす、したんでしたっけ?」
「そうそう、お互いにね……で、問題はもう少し後」
「そのあと」
「ケイジくんが先制して、ユウリがムゲンダイナを繰り出して戦ってたときに、事件は起きたの」
ふむふむ……ムゲンダイナ……確か俺はファイアローで……。
「……あぁ」
「原因のわからない、ガラル粒子の暴走」
「そのときに、ケイジくんはユウリを庇って、ガラル粒子の奔流を浴びた」
「そして意識障害に陥って……今、目覚めたの」
「……そう、でしたね」
あの時はとにかく、人命を優先して動いてたな。
ユウリの足元がひび割れていってたのに、気付いたときは生きた心地がしなかった。
その時ユウリを突き飛ばして……って感じか。
「あの時……助けられなくて、ごめん」
「まさか、あやまられるようなことはなにもありませんよ、せんぱい」
「でも!」
「でももへちまもありません、あのひあのときあのばしょで、ゆうせんされるべきは、いっぱんじんです」
ガラル粒子は、ポケモンをダイマックスさせる物質だ。
ダイマックスしたポケモンが下手に動けば、それだけで怪我人が出る可能性だってある。
あの場所はそんな物質が入り乱れていたし、実際にダイマックスして暴れてしまっているポケモンだっていた。
故に一般人が優先されるべきなのだ。
「おれたちがすぐににげなかったのも、げんいんです」
「覚えてないかもだけどさ! あの時の二人はダイマックスしたポケモンに囲まれててそんなすぐに逃げ出せる状況じゃなかった! なのに私たちは二人より一般人を優先したの!」
「……」
「見捨てたのよ! 私たちはケイジくんとユウリを!」
そうだったっけか、そうだったか。
でも、見捨てたってのは違うでしょう。
「ちがいますよ」
「違わないよ……」
「いいえ、ちがいます」
「ッ……なんでっ!?」
「おれも、たぶんゆうりも、さきにおれたちにたすけがきていたらそのひとをおこってますよ、なんでおれたちのところにきたんだって」
「おごりも、あったんだとおもいます、それまでのたびじで、いろいろあったから」
「だから、あのときはみんなが"さいぜん"をえらんでました……おれたちいがい」
自分たちの安全を考えるなら、スタジアムでダイマックスしてしまったポケモンたち全ての対処より、逃げ道の確保を優先すべきだったんだ。
スタジアムは、普段からダイマックスしたポケモンたちのバトルに耐えられるように頑丈に作られているからな、数匹が暴れたとて街にまで被害は及ばない。
だから、それをしなかった俺たちの自己責任だ。
まあ、ユウリには悪いが、先輩の特権だ、一緒に責任を負って貰おう。
「それは……それじゃあ……!」
「なので、せんぱいたちにせきにんはありませんよ、あのじこをみぜんにふせぐなんてことは、みらいをよんでいたとしても、ふかのうでしょうし」
「ッ……」
未来予知したとて、自然災害を止めるとなると相当大変だ、しかもイベントまで重なってたんだし。
「あらためて……ありがとうございます、おれのこと、いえのこと……いろいろ、せわしてもらって」
「ぅ……どう、いたしま、して……!」
やば、また泣かせてしまった。
うーんどうしよう、俺が原因なんだよな。
「……変わら、ないね……ケイジくんは」
「かわりませんよ、おれは」
「そっか……」
「……えっと、ケイジくん」
「はい?」
「……おかえり」
「……はい、ただいまもどりました」
トレーナー情報
ケイジ
ガラル地方で、二年前までジムリーダーを務めていた。
その実力は高く、現役最後の年にはあのキバナを差し置いてトップジムリーダーとなり、決勝戦ではチャンピオンと互角の戦いを繰り広げている。
ジムリーダーとなったのは現在のチャンピオンより前だが、チャンピオンがジムチャレンジを始めた当時から当人たちは友人関係であり、ライバル関係にあったと考えられている。
本人インタビューによると、ジムチャレンジを始める前は他地方を旅していて、そこで得た経験も今の自分に繋がっているとのこと。
二年前のとある事故の際に、意識不明となりそのままジムリーダー業を休業した。
今現在、意識が戻った等の情報は無い。