俺はお前を超えるぞ、後輩   作:月桂樹の花は咲く

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創作で生まれた概念とは思えないくらいには設定が噛み合うムゲン団、暇人の底力を見ちまったぜ……。
これを元にしたゲームとか割とプレイしたくなる、ならない?
ただ割と誰も救われない物語になる模様。
後ポケモンの鳴き声難しい問題。


再び一歩

「チルタリス」

「チル?」

 

 

 俺の目の前に居座っているポケモンの名はチルタリス。

 意識不明だった二年間、ソニア先輩の手持ちとして暮らしていた俺のポケモンである。

 地味に俺のポケモンの中でも古株だったりする。

 

 

「久しぶりだが、相変わらずフワッフワだな」

「チッルルー♪」

 

 

 この毛並みのモフモフフワフワな感じは不滅なのだろうか。

 それはそうとして、チルタリス。

 

 

「……そろそろ、離れてくれ」

「チル」

「嫌、じゃなくてだな……そろそろ、埋まるぞ俺」

 

 

 コットンガード→のしかかりなんてコンボ、今の俺なら窒息する。

 二年前も似たような事してた気が……けどあれはここまで極まってなかったよな、そもそも二年前からのしかかりは覚えてない筈。

 

 

「あ、潰されてる」

「先輩、助けて下さい」

 

 

 このままだと今度は永眠することになりかねないので、先輩にも助けをもとめる、結果は……。

 

 

「はいはい、チルタリス? 嬉しいのはわかるけどそろそろ離れてあげて、ご主人様を潰したくないでしょ?」

「……チル」

「落ち込まないの……ほら、ヤチェの実だよ」

「チルッ!」

 

 

 成功だ。

 流石先輩、扱いが上手い。

 

 

「……チルタリス、君が寝てる間もずっとあんな感じでさ、私もよくワンパチと一緒に捕まってたから、慣れちゃった」

「すみません……あの人懐っこさはあいつの良さなんですけどね」

「うんうん、しかもバトルだと驚くほどにたくましいからね」

「確かに」

 

 

 あの硬さを普段から使うことで鍛えてるのだとしたら、多少……いやコットンだぞ、毛並みを鍛えるってなんだ?

 とは言えど、エースバーンのキョダイカキュウを受けてケロッとしてた時は、持ち主ながら震えたね、本当に。

 ……鍛えてるのか? マジで……。

 

 

「ケイジくん?」

「あ、いえ少し考え事を……」

 

 

 しかしこれで一匹目か。

 ファイアロー以外の三匹……そう言えば誰が所持しているんだろうか、今すぐはリハビリで無理だが、俺だってまだ終わってられないしな。

 

 

「他の奴らって、誰が持ってるんですか」

「あー、確か……トゲキッスをビート選手が、オンバーンをキバナさんが、アーマーガアをマリィが持ってた、かな?」

「ああ、マリィ以外はタイプ基準って感じですか」

「うん、もちろんポケモンたちも納得してくれて、だよ?」

「……そうですか、良かったです」

 

 

 しかしまたよく知ってる人たちからよく知らない人まで広く散らばっちゃって。

 ビート選手……ポプラさんの後継ってくらいにしか印象がない、ああ、あとユウリの同期だったか。

 

 

「……今日はキバナさんが来てくれる筈だよ」

「そうなんですか?」

「うん、本当ならダンデくんと一緒に来る予定だったんだけど、ダンデくんの方に急ぎの用事が入っちゃったらしくて」

「急ぎの用事」

「うん、ちょっとね」

 

 

 ふむ、キバナさんか。

 聞けば今もトップジムリーダーであるらしい、それには流石の一言しかないな。

 

 

「……あの時トップになれたのは本当に運が良かったな」

「キバナさんとのこと?」

「はい、あの時ほど気合を入れた戦いもそう無いですし」

「……ユウリを除いて、でしょ?」

「え」

「とぼけなくても良いよ、ユウリに勝つ為に〜って、リーグ戦いつも頑張ってたの、知ってるからさ」

 

 

 あー……そうか、ばれてるのか、そうかぁ……。

 いや厳密には、最初だけちょっと違う理由だったんだが。

 

 

「……いや、まあ……」

「世間からは次世代のキバナさん枠だ、ってよく言われてたし」

「そんな風に言われてたんですね……」

「……で、実際のところ、どうなの?」

「……確かに、負けないようにってのは、あります」

 

 

 他の人たちが弱いわけじゃない、というかあの時代はユウリ含む多くのルーキーに触発されてて大体のジムリーダーの本気レベルがどんどん上がっていく、まさにインフレの凄い時期だったわけだし、今は知らん。

 

 

「うんうん」

「……でも、きっかけは別だったんですよね」

「え、そうなの」

「はい」

「ふーん……どんなことがきっかけだったの?」

「……それは、秘密です」

「ええー」

 

 

 いや教えませんけど。

 今となっては恥ずかしい思い出だ、本人も忘れている様だし答えなくても良いだろう。

 

 

「まあそれはそれとして」

「露骨に話、逸らしたね」

「……窓の外に映るアーマーガア、キバナさんじゃないですか?」

「む……まあ、今回は許してあげる」

 

 

 許された、セーフ。

 出迎えに行くソニア先輩……俺も行きたいけど、まだ玄関まで歩けるほど回復はしてないからな、ここで留守番だ。

 

 

「しかし……オンバーンか」

「チル」

 

 

 ヤチェの実を食べ終わったらしいチルタリスが、再び俺にくっ付いて来る。

 先輩の説得が効いているのか、今回は控えめだ。

 のんきと言うか、のうてんきと言うか……ある種ずぶといのか? わんぱくかも知れん……そんなチルタリスと、いじっぱりで気難しいファイアロー。

 いつでもおとなしいトゲキッスに、れいせいでトレーナーにはない視点から、戦いを有利に進めていたオンバーン。

 そして……俺のエース、アーマーガア。

 

 

「……」

 

 

 俺は寝てただけだからな、二年間の空白を知らない。

 けど……一瞬だとしても、誰もいないってのは少し、寂しいな。

 

 

「チル!」

「……ごめん、今はお前がいるよな」

 

 

 私がいると言わんばかりに主張するチルタリス……そうだよな、俺より寂しい思い……してたよな? してて欲しいかと言われると複雑だが、ポケモンたちはしてた筈なんだ、これから会わなきゃな。

 ファイアロー以外は所在がわかってるんだし、ファイアロー以外は。

 

 

「ファイアロー、どこにいるのかなぁあいつ……」

「チルチル」

「知らないかぁ……まあ、あいつならまた会えるさ」

「チル」

 

 

 肝心な時に頼りになる焼き鳥だしな、こう呼ぶと怒られるが。

 拗ねるっても、言うことを無視して独断し始める、ご丁寧に命令したのもとは別のことをしようとするってだけだからある程度制御はできるけど。

 と、足音が聞こえてきた、キバナさんだな。

 

 

「よっ! お目覚めかよケイジ」

「はい、長く寝てた自覚はないんですけどね」

「それもそうか……ま! こうやって目覚めたんだ、早く復帰してオレさまの前に戻って来いよな!」

「努力します」

「チルッ!」

「チルタリスも元気そうだな! きのみ食べるか?」

「チルチルー!」

 

 

 相変わらず豪胆というか……うん、キバナさんだな。

 見舞い品な、と花やきのみの入ったカゴを置き、チルタリスにズアの実を食べさせているキバナさんは、二年前とあまり変わってない様に思える。

 

 

「本当はダンデも来る予定だったんだけどなぁ……」

「ああ、急用で来れなくなったんでしたっけ、先輩に聞きましたよ」

「そうなんだよなー……全く、最近は治安が悪くて忙しいのなんの」

「え、治安が悪いんですか?」

「そうなんだよ、つってもアレな、大して強くもない小悪党が増えただけなんだけどな」

「へー……具体的には」

「さあな、具体的な発生源はわかってねぇ、当人もどっかの組織に入っただの、目的の為にやったことだってのは共通して答えるんだが、それ以外はめっきり喋んなくなるしよ」

 

 

 ふーん……小悪党ね。

 他地方なら当たり前、ってわけじゃないが、それなりにいたんだけどな、そう言う輩。

 ガラル地方だと凄い珍しいと言わざるを得ない、ローズ元委員長とて一応ガラルの為らしいし。

 

 

「ローズ元委員長とは関係ないんですか」

「知ってたか、だがそれは無関係だってユウリが言ってたぜ、直々に聞いたらしいし」

「……ユウリが? またなんで」

「いやそこは知らねぇのか」

「?」

「いや、大体一年前の話なんだがな……ムゲン団って言う、ユウリがリーダーの組織が作られたんだよ、ローズ元委員長はそこの幹部役員な」

 

 

 ついでにマリィの嬢ちゃんもいたぜ、と言うキバナさん。

 中々奇妙なメンツだな、ユウリとマリィにローズ元委員長て。

 

 

「やってることはマクロコスモスとあんま変わんねぇけど、ユウリがトップだから大丈夫だろうって事で、そう言うことになった」

「なるほど……ちなみに、治安が悪くなり始めたのって、いつくらいなんですか?」

「ん? 大体半年前だったかな、どこの街だとか関係無しに、いろんな場所で騒ぎを起こしやがるから、ジム関係者はよく駆り出されてるぜ」

「ほー……」

 

 

 そんなにか、妙だな。

 ガラル地方で悪事を働く輩って、その大半がジムバッチ三つ……最初の難関を越えられない奴らが多い、そこで大半が振るい落とされるから必然的にだな。

 しかしそこから悪事を働くのは本当に僅かだし、こう言っちゃアレだが実力も大したことはない、後半の街で暴れられる程の人員をどこから……?

 

 

「ちょっと、目覚めたばっかりのケイジくんに、物騒な話をしないでくださいよ」

「ん? ああ、悪かったよ」

「俺は気にしませんが」

「気にしなさい! 全く、自分のことを疎かにしがちなのは変わんないよね、ケイジくん」

「いや、そんなつもりは……」

「アーマーガアの背中に乗って、一日中何も食べずに飛び回ってたのは誰だっけ?」

「いや、その」

「びっくりしたなぁあの時は、次の街で待ってたら、一日中ほったらかしにされた挙句に倒れてるんだから」

「……あの時はすみませんでした」

 

 

 いやね、あの時はアーマーガアに進化したばっかりで、背中に乗って飛び回れるって言うのも相待って……まぁ、はしゃいでたよな、本当に。

 進化した当日は、バトルの疲れとかもあってそんなだったんだが、翌日はもう……ね、若気の至りだ、恥ずかしい。

 

 

「おいおい、夫婦漫才はそれくらいにしとけよな」

「夫婦じゃない、です!」

「そうですよ、先輩は先輩です」

「……」

「おおう……ま、オレさまに言えることはねぇな、それにそろそろ再会させてやんねぇとだし」

 

 

 そう言って、どことなく見覚えのあるハイパーボールを取り出すキバナさん。

 オンバーンのボールか。

 

 

「そら、出てこいよオンバーン!」

「アババッ!」

 

 

 出てきて早々に、辺りを見回すオンバーン。

 あ、目が合った。

 

 

「? ……!! アバババァッ!?」

「よ、久しぶり」

「アババァッ!」

 

 

 俺の元に飛んで来たオンバーンを、優しく撫でる、嬉しそうだ、良かった。

 相変わらず元気そうだ。

 

 

「チルチルッ!」

「アバッ!? アババ!」

「チル?」

「アバババッ!」

 

 

 何を言い合ってるんだこいつら。

 まあいつもの光景なんだが、本当ならここに、呆れた様に見守るファイアローとか、なんだかんだで止めようとするトゲキッスとアーマーガアが見れる。

 

 

「なんだかケイジくんの日常、って感じがするね」

「……ですね」

「お前のところの鳥ポケモンたち、ドラゴン並みに騒がしいもんなぁ」

「実際、言い争ってるのはドラゴン二体ですから」

 

 

 何が原因なのだろうか。

 まあ、険悪にならなきゃそれで良い、実際楽しそうな時には二人して楽しんでるしな。

 

 

「ああ、そうそう」

「?」

「お前って、確かホウエンの方にも行ったことあるって言ってたよな?」

「え……まあ、確かにいましたけど」

 

 

 随分と急だな。

 ホウエンは結構思い出深い地方だったり、古いメンバーは大体そこ出身だし、チルタリスとかな。

 

 

「そこの……なんだっけな、チルタリスの関係者だとか言う女から伝言任されてんだわ」

「チルタリスの?」

「チル?」

 

 

 チルタリスの関係者なんて名乗るの、一人しか思い付かないんだけどな。

 今更だがチルタリスはそいつから譲り受けた子だったりする、チルットの時だけど。

 

 

「……コンテストアイドルですかね」

「そうそう、それだそれ」

「そいつ……コホン、その人から伝言ってまた……なんでキバナさんに?」

「SNS経由だからだな、SNSを一番広くやってんのはオレさまだぜ?」

「あー……」

 

 

 確かに、俺は連絡付かないだろうし、急ぎの連絡ならキバナさんに伝えとくか、俺でもそうする。

 ……ん?

 

 

「んー……?」

「どうした?」

「いえ、何か違和感が……」

 

 

 そういや俺の身に起きたことって、他地方に伝わってたりするんだろうか。

 ガラルだと有名な事件だが、さっきも言った通りガラルはキバナさんがSNS関連の最大手だし、キバナさんはわざわざ他地方に身内の不幸を発信する人でもない。

 

 

「……それより、その人はなんて言ってたんですか?」

「ああ、確か……」

 

「『アクア団とマグマ団の残党が、妙な動きをしてるから気を付けて』ってさ」

「……え」




ポケモン情報

チルタリス(♀) レベル75

主人公の手持ちの中で最もタフ。
チャンピオンのエースバーンのキョダイカキュウを受け止め、何食わぬ顔でその後も戦い続けた姿は、一部のファンの間で伝説となっている。
わんぱくな性格、れいせいぶってるオンバーンとは口喧嘩する仲。

オンバーン(♂) レベル73

先発をよく任される、手持ちの他四匹と比べると新参者。
主人公に褒められたくて、れいせいな性格になりバトルでも活躍しているが、元々なまいきだった。
チルタリスとは、その時からの喧嘩仲間。
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