俺はお前を超えるぞ、後輩 作:月桂樹の花は咲く
名前の由来に関連させるなら電気タイプになるとのこと、サンダーソニアって植物らしいし。
同期がダンデさんとルリナさんだから結構強かったのではないか思ってたり。
「オンバーン! 『りゅうのはどう』だ!」
「アババァ!」
「チルタリス、『ムーンフォース』で迎え撃って!」
「チルッ!」
チルタリスとオンバーンの攻撃がぶつかり合い、爆発する。
うん、なんとなく感が戻ってきたか?
思った以上に身体が動かないから、最初はヒヤリとしたもんだが。
「大丈夫そう?」
「ですね、わざわざ手伝ってもらってありがとうございます、先輩」
「どういたしまして、って本当は私の方も久しぶりで焦ってたんだけどねー」
「いえ、とても強かったです」
ジムチャレンジ時代のことをあまり話したがらない先輩だが、やはり対面するとトレーナーとしての圧、がある。
バトルマニア……でもないが、本気の先輩と戦ってみたかったな。
「まあ私のことは良いとして、これからどうするの?」
「ポケモンたちに会いに行く……んですけど、どうすべきか迷ってまして」
というか今の俺ってどういう扱いなんだろうか、なし崩し的な一時的引退とは言え元ジムリーダー、しかも意識不明であると報道されたらしいし。
「今のところ、ケイジくんの病状はまだ意識不明、ってことになってる」
「今のところ、ですか」
「うん、ケイジくんの体調が元に戻るまで〜、っていうのもあるけど、一番は……」
「治安の悪さ、ですか」
どうやら二回ほど俺は身柄を狙われたらしい、寝ている間に。
目的は俺のポケモンだったそうだ、中々ずる賢い。
「だから先輩の家だったんですか? 俺が寝てたの」
「そうそう、ケイジくん家は一人暮らしで微妙に危ないなーってなったんだけど、ジムリーダーはジムリーダーで忙しいし……ってことで基本うちにいる私に白羽の矢が立ったの」
一度病院から病院に移った時にも襲われたらしいし、中々情報通なんだな相手は。
そんなこんなで、他人宅療養という形になり、定期的に医者の人が来ていたとのこと。
「最初は断ったんだけど、ダンデくんに『ソニアならいざって時に問題ないだろう!』 って押し切られちゃった」
「重ね重ね、ご迷惑をおかけしました」
私引退してるんだけどなーとぼやく先輩。
お礼しなきゃだな、何を差し入れるべきか。
「そういう理由で、今のところケイジくんが目覚めたのを知ってるのは私とおばあさまに、ダンデくんとキバナさんだけだったり」
「それは……まあ、サプライズになりますね」
「そう考えるのは良くないけどね、相手も心配してたんだし」
「です……かね、すみません」
「ということなので、ビート選手とマリィの二人がいる……あ」
固まる先輩、視線は俺の背後に向いているみたいだが。
「誰かいるんで……すね」
「……」
「……お久しぶりです、ネズさん」
「目覚めてたんですね、ケイジ」
「ご連絡が遅れて、すみません、事情が事情らしいので」
「ええ……存じていますよ、あの事件は俺も鎮圧に手を貸しましたからね」
「それは……ありがとうございます」
「それよりも……ほら、妹よ、いつまでも黙っていては何も始まりませんよ」
来ていたのはネズさんとマリィのスパイクタウンの二人。
噂をすればとは、このことだな、タイミングが良いなんてものじゃない。
「よ、マリィ」
「あんた……!」
「長いこと寝てたらしいな、俺、あんま自覚ないんだけど……っとと?」
いきなり突撃はやめて貰いたい、戻って来たとはいえどまだまだ貧弱なのだ、倒れるところだった。
「マリィ?」
「うっさい……」
「……」
「素直ではありませんね」
なんか既視感……。
うーん……うん、何も言うまい。
心配させたのは俺だし。
▲▲▲
「いつ目覚めたんですか?」
「大体一ヶ月ちょっと前ですね、それからはリハビリやら二年前との違いを修正してました」
「ふむ……その間に誰もお見舞いには来なかったのですか」
「キバナさんとダンデさんが別々の日に」
「……全く、それならそうと、一声、かけて欲しかったものです」
「すみません……俺のスマホロトムが戻って来たの、二日前だったので」
「あなたではなく、キバナやダンデへの不満です、勘違いしては、なりません」
いやほんとにすみません。
ボールに入ってたメンバーはともかく、スマホロトムは俺と一緒にガラル粒子を受けてたからな。
中身は無事でもガワのスマホがな、俺が目覚めてからデータの復旧やら何やらを始めたお陰で、今になった。
「……」
「マリィ?」
「……」
「やれやれ、これでは昔の様ですね」
「昔……ああ、ネズさんに頼まれた時ですか」
「ええ、もう九年ほど前の話ではありますが、その頃は、今あなたにしている様に、俺によく、くっ付いてましたね」
「まあ、あの時は初対面ですからね、俺」
妹にポケモンを教えてやって欲しいとネズさんに言われたのも、もう九年前になるのか。
「時が過ぎるのは、早いものですね」
「ですね」
「あなたは確か、もっと前に、ガラルに来たのでしたね?」
「はい、俺が十三歳の頃なんで……十一年前ですね、もう少しで人生の半分をガラルで過ごすことになります」
親父も母も、旅が好きな人だからな。
かく言う俺も、アーマーガアの背中に乗って飛び回るのは好きだからな、血は争えないのかもしれない。
「以前は、どこに住んでおられたので?」
「住んでた……って言えるのか怪しいんですけど、イッシュ、ホウエンなんかは印象に残ってます」
「ほう……どんなことが?」
「そうですね……ホウエンは、その……色々ありました」
「雑ですね」
「いや本当に色々ありまして……ガラルに来る直前までいたのもあって、説明が大変なんですよ、勘弁して下さい」
うん、何と言うか、アレは……。
「イッシュは、親父の親族……初めて親戚に会ったので、そのことが印象深いです」
「なるほど」
「積もる話はまた後にして下さい、三人とも……お見舞いだけが、理由じゃないんですよね?」
お茶やらを用意しに行っていた先輩が、いきなり本題を突き付けてくる。
まあなんかあるんだろうなとは思ってたけども。
「ええ、実は……」
「……例の悪党たちが、ねがいぼしを集めとるけん、一番危なそうなソニア博士のところに行こうって、アニキが」
「ねがいぼしを?」
「推測ですがね、スパイクタウンは、比較的被害が、少なめな、傾向にある様ですし」
「他の町と、うちを比べた時に一番大きな要素と言えば、ダイマックスでしょう」
「なるほど……」
「ねがいぼし」
なんとなく既視感があるが……ダメだ、思い出せん。
というかねがいぼしを集めて何をする、って話だしな。
「今現在、俺たちは、そのほとんどがわからない敵を、相手にしているのです、ある程度予測をつけないと、押し潰されてしまいます」
「まだ敵って判明してはいないと思いますけどね」
「……前例がある以上、否定はできませんけど」
「ねがいぼしを集めたとして、何ができるんですかね」
「さあ……それをついでに聞きに来た、って言うのも、あります」
ダイマックスとかそういう分野の研究者だからな先輩。
職業柄ねがいぼしを集めてそうだから、それが本当なら襲われるし、専門家の意見を聞くこともできるってことか。
「うーん……ねがいぼしは、確かにエネルギー源にはなります、けど……それをどう使うかまでは……」
「どう使うか、は本人たちに聞いて回るしか、ありません……が、どの辺りまで応用が効くのか、を聞きに、来ました」
確かに、ねがいぼしが実際どれくらい便利な代物なのかは知らないな。
わからないならわからないなりに絞れる範囲を絞っておこうってことか。
「……結論から言います」
「はい」
「ねがいぼしのパワーは、基本何にでも使えると思います」
「なんでも、ですか」
「実際に試したことは、ないですけど……ポケモンたちのパワーを、条件無しに増幅させている以上、その応用性は無限にあると言えるんです」
……思った以上に凄かったな。
考えてみればそうか、ほのおもみずもくさもでんきも……あらゆるタイプのポケモンがダイマックスできて、技もそれ相応に強力になるんだ、汎用性は高いのが普通か。
「けど、ムゲンダイナ……ユウリの持つあのポケモンが協力しない限り、ねかいぼしのパワー……ダイマックスエネルギーの真価を発揮することは、現在のエネルギー技術では難しい筈です」
「ッ」
「つまりお相手は……現チャンピオンを倒す手立てがあると?」
「もう一匹ムゲンダイナがいない限りは」
「……それを聞いた途端、現実味が薄れて来ましたね」
いやまあそうなんだけどさ。
ユウリが負ける未来というものを、安易に想像できる人間は、おそらくガラルにはいない。
そう言い切れるほどには高みにいるのだ、あいつは。
「……ケイジくん?」
「……え?」
「思い詰めた顔、してたからさ」
「いえ……俺の目的の高さを、再認識しまして」
「そう言えばキミは、現チャンピオンの打倒を目的にしていましたね」
「はい」
「……できる」
「え?」
「ケイジならできるけん、諦めんばい」
「……おう、ありがとな」
「まあ、その前にあたしを倒さんとやけど」
言うじゃないの後輩、調子戻って来たな?
聞くところによれば現在マリィはジムリーダーの中で上から二番目だとかどうとか言われてるらしいし、実際強敵ではあるんだが、次点でビート選手だったか。
「二年間で、あんたなんか追い越しとーけん、覚悟してよ」
「そりゃ楽しみだ、大会楽しみにしとくよ」
「……ん」
そうだ、二年もあればジムリーダーなんて、当時の俺より皆強くなってるんだよな。
……考えたら少し、ワクワクしてくる……かもしれん。
「……その為にはまず、ケイジのポケモンを揃えねばなりませんが」
「「あ」」
そうだそもそも半分も手持ちが揃ってねぇじゃん。
ボックスなら他にもいるけどな、衰えた俺が今から鍛えてどうにかなるのかって話だな、最終手段だ。
「そうだアーマーガア、迷惑かけてないか?」
「あんたのこと好き過ぎて、あたしの言うこと全然聞かんと」
「あー……」
「でも良い子やったよ、あたしのポケモンたちとは仲良くしてたから……大事にしなよ」
「そりゃな、自慢のエースだよ」
「それじゃあ……出て来て、アーマーガア!」
投げられるハイパーボール、そこから出て来たのは……。
「ガァ」
「……おう、待たせたな」
「ガァ!」
「もう大丈夫だ、心配かけたな」
「……あの時は有耶無耶になったが……あいつに勝つ為にもう一回、俺と一緒に戦ってくれるか、アーマーガア」
「ガァァッ!」
博多弁難しいって。
マリィというキャラクターを書く上での最大の関門、強過ぎ。
自分じゃ使わない方言を書くことの難しさよ、違和感を探せないってのがまた。
間違ってたら教えて下さい……調べてもこの程度にしかできなかった。