俺はお前を超えるぞ、後輩 作:月桂樹の花は咲く
ぼうふうとブレバみたいな火力高い技はあるし、はねやすめみたいな癖のない回復技もある。
おいかぜなんかは補助技でもわかりやすい効果だし。
積み技でめぼしいものはないかもですけど。
鳥らしく、上から殴る的な感じなイメージが湧いて良いと思います。
ファイアローは壊れてたけど。
「戻って来たぜ、ユウリ」
「言いたいこととか、数えきれないほどあるけどよ」
「……あの時の続きだ、今度は最後まで楽しもう」
返り咲いた空の猛者が、唸り笑う。
「……もう戻れない」
「戻らない」
「振り返らない」
「……私はただ、進むだけ」
君臨し続ける王者が、冷たくあしらう。
示し合わせたかの様に、お互いがボールを構え、各々息を整える。
勝負を しかけてきた!
「いってこい、オンバーン!」
「出番だよ、ストリンダー!」
繰り出したポケモンは、奇しくも二年前と同じであった。
「「ばくおんぱ!!」」
▲▲▲
「え、サイトウに渡した?」
「ええ」
「なんでまた……」
「知りませんよ、でもあなたがここに来ることは知っている風でした」
「マジか……」
マジかあいつ、誰から聞いたんだろ。
マリィかその他か……多分マリィなんだろうけどさ。
ホップ……今は博士か、ホップ博士経由だとかもしれんが。
「とにかく、僕はリーグ戦の準備で忙しいんです、用がないならさっさと立ち去って下さい」
「お、おう……トゲキッスを今まで預かってくれててありがとな、ビート選手」
「ビートで構いません、あなたの方が年上で、先輩なのですから……それに、トゲキッスは行き先がなくて仕方なく受け取ったに過ぎません」
「行き先がない」
「ええ、最初はチャンピオンの手持ちになる予定だったんですが……チャンピオンが何故か受け取ろうとせず、他に適任もいなかったのですよ」
何故かって、受け取りたくないのに何故も何もあるんかね。
まあ色々あったんだな、当時は。
「とにかく……行き先はわかった、それじゃ」
「ええ、次会う時はスタジアムです、二年前トップジムリーダーであったあなたやその他を踏み越え、僕はチャンピオンを超えるんですから」
「自信家だなぁ……ま、お手柔らかにな」
いやぁ、本当に踏み越えられそうなんだよなぁユウリの同期には。
まあやることになったら全力で飛び越えるけども。
「にしてもサイトウかぁ……」
俺と同い年なんだよな、昔はよくバトルしてたっけ。
タイプ相性なんて関係ないと言わんばかりの強さで、毎度毎度ヒヤヒヤしていた覚えがある。
「……甘いものでも持って行くか」
▲▲▲
「……」
ラテラルタウンのスタジアム。
構造的には他の街と変わらん筈なんだが……どうにも武道の試合前の様な厳かなイメージが離れん。
それは
「俺のポケモン、返してくれるか」
「構いません、私の目的は既に半分果たされていますので」
そう言って返されるボール。
「随分あっさりと返してくれるんだな、わざわざビートのところから持って来たってのに」
「……私は、あなたがこちらに来て、ポケモンバトルをし始めた頃からの友人です」
「ん? ……まあ、そうだな」
言ってしまえばホップとユウリのアレか、ポケモンを手に入れて勝負したのはお互いにお互いが最初だったんだっけ。
「かなり昔の話だがな」
「はい、お互いにジムリーダーとなり……時に、お互いのポケモンたちをぶつけ合い、研鑽し合いました」
「だな、民衆もよく取り上げてくれてたっけか」
その当時は、話題に出せるほどのライバル関係がありそうなのが俺とサイトウ、キバナさんとダンデさんくらいしかなかったってのもあるが、よくテレビとかで話題にされていた覚えがある。
「ライバルだと、思っていました」
「おう……ん?」
「ですがあなたは、チャンピオン……ユウリさんを、ライバルに選んだ」
「……」
「私と戦う時より、あなたは楽しそうでした」
「……私が、ずっとあなたのライバルであるなどというのが、自惚れているんだと、気付かされた」
「あなたが私を見ていなかったわけではなく、より強い光に目を奪われる」
「それが、何よりも衝撃的で、悔しかったんです」
……いや、確かにユウリが表舞台に立ってから、明らかにテレビでサイトウと組まされることは減った。
ユウリを超える為に、という考えが勝負の前提についていた。
「それは……」
「何も言わないで下さい」
「……おう」
「私もユウリさんの強さは尊敬しています、チャンピオンになった後も研鑽を続ける貪欲さも流石の一言です」
「ですが」
「あなたのライバルは、私です」
「……今日は、それを証明する為に、この様な手段を取らせていただきました」
そう言い放ち、サイトウはボールを構える。
「……ルールは」
「ケイジさんはまだ、手持ちが揃っていないとのことなので、お互いの手持ちの中から三体、ダイマックス有りでどうでしょうか」
「……要するに、いつものにダイマックスを追加しただけか」
「そういうことです」
懐かしいルールだこと、ちょうど良いけど。
あの時はお互いメンバーも定まらず、お互いのポケモンの数が揃わないなんてのはいつものことだったからなぁ。
「出すポケモンは直前まで決めなくて良かったよな」
「はい、『チャレンジャーの手持ちは勝負するまでわかりません』から」
「……もう八年も前になるのか」
ネズさんとも話したが、時が経つのは早いな。
……っし、集中集中。
「準備、終わったぞ」
「……では、始めましょう」
「「……」」
再び場を包む静寂。
"合図は
「いけ、オンバーン!」
「いきましょう、オトスパス!」
オトスパスか、どうせ持ってるあの技は今更だ、ならやるべきは
「 速攻で、終わらせる! 『エアスラッシュ』で蹴散らしていけ!」
「オトスパス、かわして『たこがため』!」
「アバババァ!」
「ムッスン!」
タコ故の柔軟さで、『エアスラッシュ』が悉く避けられ、オンバーンに差し迫る。
「『ダブルウイング』で迎撃しろ!」
「! なるほど、ですがその程度ではオトスパスはひるみません!」
「ムッス!」
「アバッ!?」
付け焼き刃じゃ追い払えねぇか。
「至近距離から『ばくおんぱ』を浴びせてやれ!」
「耐えて『れいとうパンチ』を打ち込んで!」
「アバババァ!」
「ムスン!」
「アバ!? ……ア、ババ……」」
やっぱり持ってるよなこおり技。
ひこうタイプの宿命だが、こおりといわは天敵なんだよな。
「……お疲れ、休んどけオンバーン」
『たこがため』で無理矢理ぼうぎょを崩された上に、四倍弱点のこおり技……やべえな。
サイトウは俺を本気で倒しにかかってる。
いつものエンタメ混じりなトーナメントとは、違う。
「……はは」
「流石のあなたも、怖気付きましたか?」
「まさか、勝負はこれからだろ……チルタリス!」
こおり技を持つオトスパスに、ってか? それは違うぜ。
「チルタリス、『コットンガード』!」
「出ましたか……オトスパス、続けて『れいとうパンチ』です!」
「チルッ!」
「ムッスン!」
オンバーンは元々、比較的耐久が低い……が、チルタリスは逆だ、そのモフモフはあらゆる物理技を押し返す。
「彼女に『たこがため』は通じない……であれば押し通すのみです!」
「近付いて来たところを、『ムーンフォース』で持っていけ!」
「チルチル〜!」
「ムッスン!? ムスゥ……」
机上論で言えば、『たこがため』はほとんどの相手のぼうぎょを崩すが。
実際には、絡めない相手が存在する、うちのコットンガードチルタリスもそのうちの一人だ。
「……流石、手強いですね」
「バカ言え、これで五分じゃねぇか」
「二年間のブランクがありながら、五分に持ち込むケイジさんは流石です……ですがそれもここまで……いって、カイリキー!」
「は……!?」
二体目にエースを……何かするつもりだな!
「カイリキー、全てを壊しましょう! キョダイマックス!!」
「!?」
おいおいおい、マジか……マジか!?
ここで切るのかその切り札を!
「グ、オオオオオオオッ!!」
「想いをここに、全てを乗せる! 『キョダイシンゲキ』!」
「チルタリス! もう一度『コットンガード』だ、受け止めろっ!」
「チルル〜!!」
「ソイヤッ!」
半減とは言え凄え威力だなぁ!?
キョダイシンゲキなら、まだ受けられそうだが……問題は他のだな。
「……打ち続けて! カイリキー!」
「ソイヤソイヤッ!! ソイヤソイヤッ!!」
「ぐ、耐えて合間に「はねやすめ」!」
「チルッ!」
まさかのゴリ押しかよっ!?
息を吐く暇すら貰えない連撃だ、耐えてくれよチルタリス……!
「チ、チルルッ!」
「ソイヤッ……」
「凌いだか……チルタリス、『りゅうのはどう』!」
「カイリキー、『ビルドアップ」です!」
「チルッ!?」
「フンヌッ!」
積んでやがる……裏のポケモンまで貫く気か?
『りゅうのはどう』じゃ止められんか、どうする……!
「……まだです、もう一度『ビルドアップ』、から『れいとうパンチ』です!」
「これ以上はまずい、『ムーンフォース』で終わらせろ!」
「ソイヤッ!」
「チルッ!?」
は?
「また一撃か……やばいな」
「……」
『キョダイシンゲキ』は確か、ポケモンがはりきる効果を持ってたんだよな。
コットンガードごとチルタリスを貫かれるとは。
「……いけ、アーマーガア!」
「ガアァッ!」
「俺たちがチャレンジャーだ! 気張れよアーマーガア! キョダイマックス!」
「ッ、来ますよカイリキー!」
「ガアアァァァ!!!」
相手は強敵、出し惜しんでも、気を抜いても負けに繋がる!
「空の王者を、教えてやれ! 『キョダイフウゲキ』!!」
「耐えて『かみなりパンチ』を打ち込んで!」
「ガアアッ!」
「フンヌゥ!」
ビルドアップ二回積んでるからか、倒せねぇ。
だったら倒れるまで打ち込むだけだ!
「もう一度、『キョダイフウゲキ』を 」
「 やるなら、今……『きしかいせい』!」
「ッ!? アーマーガア!」
「ソイヤッ!!」
『きしかいせい』は使うポケモンの体力が少ないほど威力が上がる技だ、今のカイリキーならほとんど最高威力が出る。
渾身の『きしかいせい』、キョダイマックスとは言えアーマーガアは……。
「ガ、ア……アァ……」
「……よく頑張った、アーマーガア」
「……私の、勝ちです」
「ああ、俺の負けだ」
……強えな、タイプ相性が息をしてなかったし。
「……ですが」
「?」
「あなたの目を、奪うにはまだ、足りない様です」
「……」
いや……別に俺は、なぁ。
「俺は、確かにユウリを特別視してる」
「……」
「ライバル視、って言う奴なのかもな、あんまり細かく考えたことはないけど」
あの時、ユウリがダンデさんを倒したあの日。
いや、おそらくもっと前から……俺は、あいつに目を奪われている。
目を逸らしたくなるほどに、眩しい強さに。
「俺はあいつを超える、そこは変わらんし、最優先だ」
「……だが、その後にすることはまだ決まってねぇんだよな」
「……?」
「……だから、その後はお前にリベンジマッチを挑むぜ、サイトウ」
「! ……決まってないのでは?」
「今決めた、ってか負けっぱなしは嫌なんだよ、今もう一回やろうぜ」
「……ふふ、もちろん……と言いたいところですが、今は受けません、少なくともトーナメント戦までは」
「……その時はもう負けねぇから、覚悟しとけよ」
「いえ、また私があなたを打ち砕きます」
なにおう、今度は初手ダイマックスで蹴散らしてやろうか……?
基本的にキョダイフウゲキ、ダイジェットはサイトウの手持ちに負荷を掛けられるし、悪くないとは思ってるが。
だがそれを見越して作戦を組まれたりするとな……。
「……ああ、そうだ」
「?」
「チョコ食べるか? 差し入れ用だったんだ、溶けてるかもだけど」
「! ぜひ、いただきます!」
「うお、相変わらず甘いもの好きなのな」
「当然です、早速食べましょう」
「ここでかよ」
「ええ、ここ数年、人目を避けてスイーツを食べることが難しい日が続いていますが、ここなら誰も来ません」
「そうかい」
スイーツの話になった途端、目の色が変わりやがった……。
今日一日、こいつに振り回されてばっかりだったな。
「……ふふ」
……まあ、良いか。
終わり良ければ全て良し、って奴だろ。
サイトウの心境
ジムリーダー以前〜以後ユウリ登場まで
「無二のライバル、好敵手」
ユウリ出現後
「NTR、WSR」
↓
「ふんどのこぶし」←イマココ
※WSRとは「私が先にライバルだったのに」という作者の作った造語です、深く考えないで下さい。
完全に乗せ忘れてたアーマーガアのあれこれ。
ポケモン情報
アーマーガア(♂) レベル80
主人公のエースポケモン、タフさではチルタリスに負ける。
これまで多くのポケモンを主人公と共に蹴散らし続けて来た空の王者。
ダンデが現役の頃はダンデのリザードンをライバル視していた節がある、最近はユウリのエースバーン。
主人公が空を飛ぶ時、自分の背中に乗ることを誇りに思っているらしい。