那須隊のトリオンモンスター・ガンナー 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
「B級ランク戦・ラウンド4、昼の部のお時間がやってまいりました!
実況は海老名隊オペレーターの武富!
解説には加古隊の加古隊長と、王子隊の王子隊長にお越しいただきました!」
「「どうぞよろしく」」
一週間ぶりのランク戦。
ようやく今季の台風の目の試合とタイミングが合った実況解説システムの発案者にして運営主任『
ゴーイングマイウェイで知られるA級6位『加古隊』隊長、
ラウンド2でメイに爆殺された王子隊隊長、
それが本日の愉快なメンバーだった。
「さて! 本日の対戦カードは二宮隊、生駒隊、那須隊、香取隊による四つ巴! 二宮隊と那須隊は連戦となります!」
「入れ替わるとはいえ組み合わせは限られてるからね。こういうことは多々あるよ」
「二宮くんが辛酸を舐めさせられた那須隊と連戦は面白いわね。今頃イイ顔してそう」
二宮の元チームメンバーである女性隊長は、実にイイ顔でニマニマと笑っていた。
二人の仲の良さ()が滲み出ている。
「現在同率で1位と2位に君臨する二宮隊と那須隊! そんな2チームに挑むのは、影浦隊を抜いて暫定3位となった生駒隊と、上位に復帰してきた香取隊です!」
「いやー、カトリーヌ達に上位復帰の先を越されたのは悔しいね」
「……今の中位は、あの東さんが落ちる魔境だものね」
王子の苦笑に、二宮と一緒にA級1位時代の東隊に所属していた加古がシリアスな雰囲気で返す。
いくらヒヨッコどもの育成に集中しているとはいえ、あの東が上位に戻ってこれないというのは異常事態だ。
東の強さをよく知る弟子の加古は、一際その思いが強い。
「香取隊、王子隊、東隊が上位復帰をかけたラウンド3は大番狂わせでしたね!」
「そうだね。僕達は荒船隊のスナイパー三人に頭を押さえつけられた状態で、ウルティマが摩天楼なんて選んでくれたから、さぁ大変。気力すり減るかくれんぼだったよ」
マップ『摩天楼』。
天を突くようなビルが乱立する、縦にも横にも広いフィールド。
更に天候は薄霧。
スナイパーが撃つ分にはそこまで問題無いが、位置バレしたスナイパーを追いかけようと思うと地味に大変なくらいの視界の悪さ。
そんなフィールドでスナイパー三人の荒船隊と、王子隊、柿崎隊、漆間隊の四つ巴。
どのチームも下手に動けず、そもそもエンカウント率自体が低く。
散発的な戦いがいくつか起こって、隠密特化の漆間がチョロチョロしてる間にタイムアップで試合終了。
とんでもないロースコアの戦いとなった。
「その裏で香取隊、東隊、諏訪隊によるもう一つの戦いがありました! こちらは4対2対1で香取隊が勝利し、上位復帰を勝ち取りましたね!」
「転送運が死ぬほど良かったのよね。
東さんが狙撃地点につく前に、香取ちゃんが遭遇事故してた小荒井くんと堤くんを奇襲で落として、三浦くん若村くんVS諏訪さん笹森くんVS奥寺くんの戦いが勃発。
二人を倒した香取ちゃんが後ろから乱入して、競り合ってた笹森くんと奥寺くんにこれまた奇襲をかまして撃破。
直後に東さんに撃たれて、残った諏訪さんが三浦くんを倒して、東さんにやられて、若村くんはガン逃げしてタイムアップ。
最後、東さんが挑発しても出ていかなかったのは偉かったわ」
転送地点は東が端で、真ん中に香取と奇襲で即落ちした二人、反対側に乱戦を演じた者達という感じだった。
たまたま香取が真ん中を早急に落としたことで、そこまで機動力に優れていない東が、終盤まで駒として浮いた形だ。
まさかのラッキーパンチによる大番狂わせで、あの東春秋が中位で負けた。
まあ、倒されたわけではないし、なんなら両チームの隊長を撃ち抜いてるのだが。
「そんな大番狂わせを経てのラウンド4! そして今、ステージが決定しました!
最も順位の低い香取隊によって選ばれたステージは……おおっとぉ! 『河川敷A』!
まさかのラウンド3と同じ河川敷Aだぁ!」
「あら、意外。香取ちゃんは玉狛の二番煎じみたいなの嫌がりそうなのに」
「いやー、これはカトリーヌ、もしかしなくてもログ見てないかもですね」
「あー、なるほど」
評価の低い香取隊。
しかし、玉狛第二が二宮隊、那須隊対策で選んだのと同じステージを選んだということは、チョイス自体は間違っていない。
その玉狛は負けているので、玉狛との違いを見せられるかどうかだ。
「さあ、各部隊転送完了! B級ランク戦・ラウンド4、スタートです!」
◆◆◆
『マップ『河川敷A』! 天候『大雨』!』
「んんん?」
なんか見たことある光景にメイは首を傾げた。
嫌な記憶が刺激され、眉間にシワを寄せながらバッグワームを起動する。
〈まさかの天候まで丸かぶりですか〉
〈そうね。でも、運勢までは被らなかったみたい。良かったわ〉
通信の先で玲が胸を撫で下ろす。
前回と違って、今回の転送運は悪くない。
東岸にメイ、玲、熊谷が揃っていて、茜だけは西岸に一人きりだが、メイと違って隠密行動に秀でたスナイパー。
下手に撃たない限り、そうそう見つからない。
〈私とメイとくまちゃんはこっちで合流。茜ちゃんは無理に橋を目指さないで、隠れること優先でお願い。
三人合流できたら、メイのメテオラで川の水を抜いて迎えに行くわ〉
〈〈〈了解!〉〉〉
方針が決定し、いつものように全員バッグワームを起動した那須隊が動き出す。
メイは近くの家に入って机の下に潜り込み、何故か小声で時間を数え始めた。
「いーち、にーい」
『これは那須隊の運が良いか! 那須隊長と熊谷隊員の位置が近く、那須隊員もそこまで離れていない場所にいる!』
『下手したらラウンド2の悪夢再びじゃないかな。怖い怖い』
『王子くん達が爆殺されたやつね。確かに、あれは厄介だわ』
合流した那須隊の必殺戦法。
他のメンバーでメイを守りつつ、メテオラ流星群でフィールドを爆撃。
逃げ続けることは不可能だし、近づけば置き弾の罠があるところで、超火力ガトリングと精密バイパーでサンドイッチにされる。
ラウンド2にて10対0対0対0の完全試合を成し遂げた悪夢再びかと観客席がザワつく。
「よし!」
『おっと!? ここで那須隊員が動き出した! 隠密行動っぽいものを取りながら、チームメイト達の方へ移動!』
『んん? これはちょっとわからないな。メイナードはどう考えても、お迎えが来るまで机の下に隠れてた方が良いと思うんだけど……』
策士で有名な王子が本気でわからずに困惑した。
メイの行動は自殺行為にもほどがある。
なのに、チームメンバーが咎める様子は無い。
『もしかしたら、メイちゃんに経験を積ませることを優先してるのかもしれないわね』
その時、加古が違う視点から意見を言った。
『確かに、勝つだけなら王子くんの言う通り、これは愚策よ。
けど、ずっと過保護にしたままだと、いつまで経ってもあの子の技術は未熟なまま。
ランク戦は真剣勝負の場だけど、それ以上に訓練の場なのだから、こういう挑み方も全然ありだわ』
東さんだってやってるし。
その一言で、加古の言葉の説得力が一気に増した。
東さんパワー。
『あー、なーるほど。そういうことか。メイナードと言えば変な噂も聞いたし、そういうことなら納得です』
疑問が解けて王子もスッキリ。
次に戦う時はそういうところも突いてやろうと悪巧みを開始した。
『けど、さすがに前回の戦いから一週間やそこらで劇的に上手くなるものでもないし、同じことが起きたね』
「見つけた」
大雨の中、電柱の上からメイを見る女が一人。
香取隊隊長『
才能だけならボーダー屈指の天才少女。
それが不機嫌そうにメイのことを睨みつけていた。
『香取隊長が那須隊員を発見!』
『カトリーヌに見つかったね』
『でも、前よりは長く隠れられたんじゃない?』
加古、正解。
遊真に見つかった時より、三分長く隠れられている。
それは試合全体から見ればちっぽけな三分だが、メイにとっては大きな三分だった。
「仕留める」
そうして、香取がメイに襲いかかる。
奇しくも遊真にやられたのと同じステージ、同じ奇襲。
成長が試されるシチュエーションとなった。
二宮隊と連戦とかいう悪夢……。
これが上位に居座るということだ。