那須隊のトリオンモンスター・ガンナー   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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前話のパラメーターを微修正しました。


15 お悩み相談

王手(チェック)

「? ? ?」

 

 那須家、玲の部屋。

 勇者みずかみんぐに討伐されたことで何かに目覚めたメイは現在、姉の玲とテーブルを挟んで座り、戦略型ボードゲームの王道であるチェスに興じていた。

 もちろんルールなんてわからないので、メイを膝の上に乗せた小夜子に教わりながらだ。

 

「んー……。小夜子、これってこっちに動ける?」

「うん。動けるよ。よく覚えたね」

「うん!」

 

 頭を撫でてくれる小夜子は懇切丁寧に説明してくれて、玲は相当手加減してくれているが、それでも戦況は思わしくない。

 ついでに、躊躇なく膝に乗って上目遣いで見上げてくるメイを抱っこする小夜子の様子もちょっと変だった。

 というか、そもそも引きこもりガールの小夜子は、こういう時、リモートで参加するのが鉄板だったはずなのだが……。

 

「いやー、小夜子先輩、ちょっとずつ外に出るようになって良い感じですね!」

「そうなんだけど、そうじゃないような……。なんだろうこの違和感……?」

 

 それを外から見守る茜はのほほんとしていて、熊谷だけが謎の違和感に首を傾げていた。

 何故かわからないが、このままだと取り返しのつかないことになるような気がするようなしないような。

 まあ、多分気のせいだろう。

 熊谷は深く考えるのをやめた。

 最後の望みの綱が断たれたということに誰も気づいていない。

 

「チェックメイト」

「ふしゅー……」

「お疲れ様」

 

 対局が終わり、頭から煙を噴き出して小夜子のBカップにもたれかかるメイ。

 魂が抜けていた。

 

「やっぱり、これは、無理ぃ……」

 

 水上に戦略の強さをわからされ、なら自分もと手を出してみたが、あまりの向いてなさに真っ白に燃え尽きた。

 そんなメイに、小夜子が後ろから優しく語りかける。

 

「大丈夫。メイにできないことは私や那須先輩がフォローするから。適材適所。メイはメイの得意分野を伸ばせば良い」

「小夜子ぉ……!」

 

 彼女の言葉は正しい。

 人には向き不向きがあり、メイのように長所と短所がハッキリしているタイプは、長所を伸ばして短所は誰かにフォローしてもらう形が一番上手く回る。

 とはいえ、

 

「それでも、苦手なことも少しは頑張りましょうね。苦手で済むならともかく、全然できないままだと、また水上くんに良いようにやられちゃうわ」

「……はい」 

 

 姉の玲がちゃんと引き締めるべきところを引き締めた。

 勉強しない悪い子は、みずかみんぐが食べちゃうぞ。

 遊真といい、ランク戦には本当にメイを成長させてくれる教育的ナマハゲがあふれている。

 落とされて学んでいくのがランク戦の存在意義とはよく言ったものだ。

 

『プルルルル』 

 

 と、その時、メイのスマホが鳴った。

 

「あ、透。って、しまった!?」

 

 約束の時間に遅れてしまう!

 メイは小夜子の膝から飛び降り、慌てて準備を整えて茜の手を引っ張った。

 

「茜! 行こう!」

「うん。行こー!」

「あ……」

 

 あっという間にドアの向こうに消えていく二人に、寂しそうに手を伸ばす小夜子。

 自分が男性恐怖症でなければ一緒に行ったのにと、ちょっと寂しい気持ちになっていると……。

 

「小夜子! 今日はありがと!」

「!」

 

 お礼を言い忘れていたことに気づいたメイが、ドアの向こうから一回帰ってきて、小夜子の手を両手でギュッと握りながら、姉と同じく整った顔でニコッと笑いかけた。

 小夜子の胸がキュンとした。

 

「じゃ、行ってきます!」

「「行ってらっしゃい」」

 

 玲、熊谷、小夜子に見送られながら、メイと茜は奈良坂のもとへ。

 小夜子はしばらくメイの握った手をグーパーした後、二ヘラっと笑った。

 

「えへへ」

「小夜ちゃん、メイと随分仲良くなったわね……」

「まあ、一番お世話してるしね……」

 

 多分、盛大に絆されてしまったのだろう。

 私も経験あるわと玲が言ったことで、熊谷の認識もそんな感じになった。

 ……まあ、あと2〜3年くらいはそういう認識で大丈夫だろう。うん。

 

◆◆◆

 

「∮✕♡♀⊕∧∂⊄∬∝」

「メイちゃーん!?」

「壊れたか」

 

 奈良坂の采配でスナイパーの合同訓練、捕捉&掩蔽訓練に叩き込まれたメイ。

 普段身内のスナイパーズとやっている訓練の大規模版ですっかりボッコボコにされ、全身が撃たれた証のマーカーだらけで妖怪みたいになっていた。

 

「ハッハッハ! 精進しろよ、チビッ子! そんなんじゃ、Aに上がったら良いカモだぜ?」

「ううう……! シールドさえ……! シールドさえあればぁ……!」

 

 リーゼントヘアのNo.1スナイパーがチビッ子呼ばわりしてくることに反応する余裕も無く、orz状態でうなだれるメイ。

 

「だ、大丈夫……?」

 

 そんなメイに手を差し伸べてくれる人がいた。

 小学生のメイと変わらない身長、幸薄そうな覇気の無い顔。

 

「あ、ありが……あーーー!」

 

 その顔に見覚えがあったメイは、咄嗟に荒ぶる鷹のポーズをとって警戒態勢に入った。

 

「遊真の仲間!」

「え、あ、うん……」

 

 宿敵遊真のチームメイト、メイを超えるもう一人のトリオンモンスター、雨取千佳。

 メイの玉狛に対する警戒心は、現在マックスだった。

 

「今度は何を企んでいる! 悪の組織め!」

「あ、悪の組織……」

「いや、新技がバレたのはお前の自業自得だ」

「むぎゅ!?」

 

 奈良坂お兄ちゃんによる軽いチョップとツッコミ。

 彼の言う通り、メイはせっかくの新技が香取にバレていた理由が遊真というか玉狛のせいだと知って憤慨していたのだ。

 玉狛支部に突撃した時、何回も屠った遊真に「いや〜、すごいな〜」「かないませんな〜」とおだてられて良い気になっていたのに、その裏であんな悪辣な作戦を……!

 

 まあ、あの程度の策略に引っかかる方が悪いのだが。

 危機管理をサイドエフェクト頼りにしてきたツケだ。

 味方であるボーダーに新技がバレてもなんら危険に直結しないため、嫌な予感を欠片も覚えなかったのが運の尽きだった。

 

「あ、あの、那須さんは……」

「むぅ。メイでいい。皆そう呼ぶし」

 

 奈良坂に不満げな目を向けて頬を膨らませ、チョップされた頭を茜に撫で撫でされながら、メイは千佳にそう返した。

 やられたことをいつまでも引きずるのもカッコ悪いと思い、頑張って歩み寄ろうとした結果だ。

 

「あ、じゃ、じゃあ、メイちゃんは、その……」

「何?」

「あの…………ど、どうすれば、メイちゃんみたいに戦えるようになるかな?」

「?」

 

 何故か顔を真っ青にしている千佳の質問に首を傾げる。

 

「ガトリング使えばいいと思うよ?」

「そ、そういうことじゃなくて……」

「?」

 

 本気で何もわかっていないメイに奈良坂と茜は苦笑し、千佳はハッキリ言わなければ伝わらないと悟り、深呼吸を繰り返してから単刀直入に聞いた。

 

「私…………人が撃てないの」

「「!」」

「へ?」

 

 ライバルに弱みを見せる。

 過程は全然違うがメイの愚行と大差無いその行動に、後ろの茜は目を見開いて、奈良坂も少し驚いた顔をした。

 

「あー、そうなんだ」

「う、うん。だから、どうすればメイちゃんみたいに頑張れるのかなって……」

「んー……」

 

 メイはこれが結構深刻なお悩み相談であると察し、ならばと自分も真剣に答えを探した。

 ライバルを強くしてしまうとか、そんな発想は一切頭に無かった。

 メイにとってランク戦は所詮遊びであり、どうあっても、こんな深刻そうな顔より優先順位が高くなることは無い。

 

「んんー……わからん!」

「そ、そっか……」

「私は撃てないとか考えたこと無かったから。だって、撃てなきゃ私も姉ちゃん達も死ぬと思うし」

「「「!?」」」

 

 思ったより重い言葉が出てきて、千佳、茜、奈良坂は驚愕する。

 だが、メイのトリオン量と、断片的に聞いたサイドエフェクトのことを考えれば何もおかしくはないと、茜と奈良坂はすぐに思い直した。

 最近、とても楽しそうにハッチャケていたので、若干忘れかけていた……。

 

「それに比べたら他のことなんて気にする余裕無いし、気にする必要も無いでしょ! 大事なものを守るのに理由はいらねぇ!」

「わっ!?」

 

 茜の背中に飛び乗りながら、前にアニメで見たカッコイイ台詞を口走る幼女。

 台詞はアニメの受け入りだが、しっかりと中身の伴った言葉。

 それを聞いて、千佳の中で確かな変化が生まれた。 

 

「……ありがとう。凄く参考になったよ」

「なら良かった!」

 

 ニパッとメイは笑った。

 悩みを打ち明けた者と、それに答えた者。

 二人の少女が再び激突するまで、もう間もなく。

 次のラウンド5は──荒れる。




ところで、アマトリチャーナの身長ってメイナードより低いんですよね……。
いっぱい食べて大きくなれよ……。(;´Д`)ウウッ…
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