那須隊のトリオンモンスター・ガンナー   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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ランク戦じゃないので巻きでいきます。


3 ガッツリ出遅れた大規模侵攻

 平日昼間。

 小学校で授業を受けていたメイは、当然「ゾワッ」という、身の毛もよだつような悪寒を覚えた。

 過去何度も自分を救ってくれた虫の報せ。

 それが最大級の警鐘を鳴らしている。

 

 そして──ボーダー本部周辺に、おびただしい数のゲートが開くのが見えた。

 

『ゲート発生! ゲート発生! 大規模なゲートの発生が確認されました! 警戒区域付近の皆様は直ちに避難してください!』

 

 けたたましい警報が鳴り響き、ボーダー本部からそこそこ遠い小学校でも、何人もの子供達がパニックになった。

 

「トリガー起動(オン)!」

 

 そんな中、持ち前の胆力でビビらず動いたメイは、トリガーを起動して学校から飛び出した。

 まずはゲートから出てきた大量のトリオン兵のところに突撃して一発ぶちかま──

 

「あ、ダメっぽい」

 

 そう考えた時、壮絶に嫌な予感に襲われた。

 突撃なんかしたら緊急脱出(ベイルアウト)があっても最悪死ぬと、メイの直感が言っている。

 この手の勘が外れた試しは無いし、そもそもメイは動物的な直感に任せて動くタイプなので、自分の中から湧き上がってくる感覚に素直に従った。

 

「なら、姉ちゃんと合流するか」

〈メイ! 聞こえる!?〉

「わっ!?」 

 

 その時、トリオン体の通信機能を通して姉の声が聞こえてきた。

 まだこれに慣れていないメイは、ビックリして声を上げた。

 

〈あなた、単騎で突撃とかしていないわよね!?〉

〈や、やだなー。私がそんなことするわけないじゃん!〉

〈そ、そうよね。B級に昇格してからまだ二日。通常の防衛任務すら未経験。

 いくらメイでも、こんな状態で飛び出していくほどバカじゃないわよね〉

「うぐっ!?」

 

 姉の心底ホッとしているような声が辛い。

 ごめんなさい。

 嫌な予感がして思い留まる前は、なんも考えずに突っ込もうとしてました。

 

〈とりあえず、あなたは私のところに来なさい。それからくまちゃん達を拾って、警戒区域に向かうわよ〉

〈了解!〉

 

 姉の通う高校は、メイの通う小学校からそこそこ近い。

 しかし、警戒区域からはかなり遠い。

 ゆえに、現着する前にガンガン状況が動いた。

 

「新型トリオン兵?」

「マズいわね……!」

 

 本部からの通信によると、敵の大軍はボーダー本部から見て、西、北西、東、南、南西の五方向に分かれて進軍を開始したらしい。

 それを倒すためにこちらの部隊も分散せざるを得ないのだが、そうやってバラけたところに、A級隊員に匹敵する強力な新型トリオン兵が出現。

 

 それに対抗すべく、本部はB級の()部隊合流命令、及びチーム全員が揃うまで戦闘禁止を命じた。

 生半可な戦力では新型の餌にしかならないという判断だろう。

 

「皆の学校ってどこだっけ?」

「……くまちゃんと小夜ちゃんは道中で落ち合える場所だけど、茜ちゃんは警戒区域を挟んだ反対側ね」

「ダメじゃん!?」

「だから、連絡通路を使って本部で合流するわよ」

 

 方針を決めて、那須姉妹は目的地に急いだ。

 予定通り、熊谷と引きこもりの小夜子の回収には成功したのだが──

 

「連絡通路が開かない……!?」

 

 そこでまさかの事態が発生。

 どういうことだと本部に問い合わせてみたが、通信が繋がらない。

 先ほど、基地に向かって自爆特攻を仕掛けた大型トリオン兵がいたので、その時の衝撃でどこか壊れたのかもしれない。

 

〈どうする、玲?〉

〈基地南部の市街地で茜ちゃんと合流するわ。その後、北上して弓手町支部に向かい、状況を把握。

 小夜ちゃんにオペレータールームを貸してもらって、それから他のB級部隊と合流よ〉

〈〈〈〈了解!〉〉〉〉

 

 那須隊は即座にプランを練り直して行動を再開。

 ……しかし、合流予定地点に辿り着く前に、南西部にてトリオン兵の群れと逃げ惑う市民、その避難誘導をしているC級隊員達に出くわし、見捨てるわけにもいかないので戦闘が発生してしまった。

 

「!」

 

 玲の倒したトリオン兵の中から、例の新型と思われる小型のトリオン兵が出現。

 

「おりゃぁ!」

 

 そして、出現した瞬間に嫌な予感を覚えたメイによって、一秒と経たないうちに蜂の巣にされて機能停止した。

 

◆◆◆

 

〈隊長。 新たな超高出力トリオン反応です〉

〈何?〉

 

 今回の大規模侵攻の主犯。

 近界(ネイバーフッド)最大級の軍事国家、神の国アフトクラトルの精鋭達を率いる隊長『ハイレイン』は。

 オペレーターを兼任している側近『ミラ』からそんな通信を受け取って、眉を潜めた。

 

(ブラック)トリガーか?〉

〈いえ、反応は通常トリガーです。金の雛鳥に劣らない出力。しかし、雛鳥ではないもよう〉

〈……タイミングの悪い〉

 

 凄まじいトリオン能力を持つ人間。

 それは全てのネイバーが喉から手が出るほど欲している存在であり、今のアフトクラトルはそれに輪をかけて必要としている。

 

 本来なら他の何を差し置いても獲りに行くのだが、本当にタイミングが悪い。

 既にこちらの戦力はあらかた出払った後であり、何人かは撃破されてしまっている。

 更に、今はもう一人の最優先捕獲対象を追っている最中だ。

 余力は全てそちらに集中させている。

 

 おまけに、彼らが玄界(ミデン)と呼ぶこの世界の兵士達は、雛鳥(C級隊員)以外、全員が緊急脱出のトリガー持ち。

 捕獲の難易度は高い。

 

〈いかがいたしますか?〉

〈……ダメ元ではあるが、回せそうな戦力があれば回せ。ただし、最優先は金の雛鳥だ〉

〈了解〉

 

 口惜しい。

 せめて、もう少し早く出てきてくれていれば、いくらでもやりようはあったというのに。

 

(いや、考えても仕方が無い。ミラに言ったように、今は金の雛鳥の捕獲に全力を注ぐとしよう)

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