那須隊のトリオンモンスター・ガンナー 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
「ほう。そう来たか」
「んぇ!? これって……!?」
一方、実況解説席。
無事に合流を果たした那須隊の繰り出した戦術に、真木と奈良坂は感心したように頷き、北添は大いに驚いていた。
「ゾエさんの適当メテオラ!?」
◆◆◆
「おわっ!?」
「なっ…!?」
霧に覆われた空から降り注いだ炸裂弾。
見当違いの場所に落ちたものの、直径数十メートルを消し飛ばす大爆発が巻き起こり、それに飲まれて小荒井と奥寺がベイルアウト。
「ッ!?」
「うわぁ!?」
〈帯島ァ!?〉
〈カシオ!〉
続いて、弓場隊アタッカーの帯島と、王子隊アタッカーの樫尾もベイルアウト。
経験の浅い二人は、突然の大爆発に反応が遅れた。
「あ、ちょ、待っ……!?」
〈外岡ァ!?〉
更に、隠密能力の高さが売りの弓場隊スナイパー・外岡が、哀れにも流れ弾に巻き込まれてベイルアウト。
一気に敵軍の半分が落ちた。
『北添先輩の十八番、
この銃の特徴として、山なりの軌道で弾が飛んでいくから、射程がスナイパー並みに伸びる上に障害物を無視できる。
その代わり、弾速はかなり遅いが』
『うわぁ……。ゾエさんのメテオラとはもう別物だよ。フィールドがクレーターだらけだ』
隕石でも落ちてきたのかと思うような有り様になった森を見て、北添は戦慄した。
『ただし、技量の方は逆の意味で北添先輩とは比べ物になりません。
レーダー頼りで適当に撃ち込んだのでしょうが、それにしたって、どれもこれも見当違いの場所に着弾しています』
『その分、フルアタックの数撃ちゃ当たる戦法で補っているし、結果としてバッグワームでレーダーに映らない外岡隊員が流れ弾で死んだから、結果オーライだけどね』
『ひぇぇぇ……』
もう、こんなのランク戦じゃない。
ただの災害だ。
「フハハハハハハハ! 人がゴミのようだぁ!」
〈何人倒した?〉
〈五人ですね。正直、予想以上の戦果です〉
〈どうぇえええ……〉
〈まさか、お勉強の成果が、こんな形で現れるとは思わなかったわ〉
前回の戦いで味方まで爆殺したメイは、ランク戦の戦い方を徹底的に教え込まれた。
当然、そのための教材として、今使っている適当メテオラの本来の使い手、北添の所属する影浦隊の試合映像もチェックした。
で、メイが「これ楽しそう! やりたい!」と言い出し、なんだかんだで甘いお姉ちゃん達に採用された結果、こんな地獄絵図が完成したわけだ。
〈皆、油断しないで。本当の勝負はここからよ〉
〈はい!〉
〈わかってる〉
〈もちろんです〉
「ヒャッハー!」
「メイも、いつでもガトリングに持ち替えられるようにしておきなさい」
「はーい!」
那須隊は気合いを入れ直し、楽しそうにダブルグレネードをぶっ放し続けるメイにも注意をして、その時を待った。
そして、
「やってくれたな、那須ぅぅぅ!!」
そう時を置かずして、最初の襲撃者が現れた。
二丁拳銃を構えた、ヤクザにしか見えない強面の男。
弓場隊隊長にして、ボーダーNo.2ガンナー『
那須隊がステージの端でガッチリと隊列を組んで待ち構えているのを見て、不意打ちは通らないと判断し、漢らしく正面突破。
〈メイ! 銃眼アステロイド!〉
「よっしゃー!」
メイの持つ銃が、二丁のグレネードランチャーから一丁のガトリングガンに変わる。
ガトリングが火を吹き、超速アステロイドの雨が弓場に降り注ぐ。
更に、ガトリングの銃口以外を覆う形で、弓場方向の攻撃から仲間全員を守れる大きなシールドを展開。
最強の矛と最強の盾が組み合わさった最強装備!
「! やっぱり、来てるわね……!」
そして、両側のトリガーを使ったメイの隙を突くように、弓場とは別の方向から曲がる弾丸が飛んできた。
ハウンド。
それを護衛の熊谷がシールドで防ぐ。
「王子先輩」
「来たよ、ナスレイ!」
無差別爆撃を生き残った王子隊隊長『
彼のポジションはアタッカー。
しかし、近接戦用のブレードトリガーだけでなく、中距離戦用の弾トリガーを同時に使いこなす。
手に持つのは、アタッカーに一番人気の日本刀型トリガー『弧月』。
撃ち出すのは、敵を追尾して曲がる弾丸ハウンド。
ただし、銃は持っておらず、キューブとなって宙に浮く弾丸を操作する『
「「ハウンド!」」
そんなハウンドの雨が那須隊に降り注ぐ。
撃ったのは王子だけではない。
バッグワームを使って霧に隠れたもう一人の王子隊『
二人分のハウンドが撃ち込まれ、熊谷のダブルシールドがそれを防ぐ。
構わない。元からただの牽制だ。
本命は弾丸の雨に紛れて、王子がアタッカーの間合いまで近づくこと。
勝算の薄い特攻だが、
「アステロイド」
そんな王子を迎え撃つのは、同じく隊長である玲。
彼女のポジションもまたシューター。
ガンナーに比べて射程や速射性で劣るものの、銃を介さないことで、威力、弾速、射程、弾数、特殊効果などの項目を毎回弄れるという利点がある。
それによって、自由度の高い戦闘ができるのがシューターの強みだ。
そんなシューターの技術の中に『置き弾』と呼ばれるものがある。
生成した弾丸をあえて発射せず、待機状態で周辺に設置し、任意のタイミングで放つというものだ。
ここは那須隊が選んだステージで、那須隊が選んだ防衛地点。
当然、罠が仕掛けられている。
「ぐっ……!」
置き弾が弓場の足下で炸裂し、メイの攻撃を避けるだけで精一杯だった弓場を撃ち抜いた。
自分が先陣を切ることで他の部隊に側面を突かせ、こっちもその部隊が作った隙を突くつもりだったが、想像以上にメイのガトリングがどうにもならなかった。
「やるじゃねぇか、那須隊ィ……! 次は負けねぇぞ……!」
実戦における新生那須隊の強さを肌で感じるという戦果を得て、弓場がベイルアウト。
これでメイがフリーになった。
猶予は彼女が重くて取り回しの悪いガトリングをこちらに向けるまでの数秒。
最後の攻防だ。
「
「くっ……!」
玲がフルアタックを解禁した。
彼女の何よりの特徴は、扱う弾丸。
撃つ前にイメージで弾道を設定し、複雑怪奇な軌道を描く変化弾『バイパー』。
しかし、バイパーは弾トリガーの中でもぶっちぎりで使用難易度が高く、使いこなしていると言える領域にいるのは、ボーダーにおいてたったの二人。
たった二人の完璧なバイパー使い。その片翼。
それが那須隊隊長・那須玲である。
「ッ! 嫌な撃ち方だ……!」
玲と撃ち合いを演じる王子は、そんな称賛を彼女に送った。
ハウンドよりも遥かに自在に曲げられるバイパーの特性を活かし、玲は王子の側面や背後を弾丸で埋め、更にシールドをくぐり抜けるような軌道を描かせる。
そこに置き弾まで合わさり、一切の反撃の隙が無い。
なんとか避けることだけはできているが、避けた先は玲が意図的に空けたスペースだ。
〈メイ! メテオラガトリング!〉
「了解! そいや!」
「……これはやられたね」
玲のフルアタックバイパーに追い立てられ、誘導された先はメイの銃口の先。
そこから超速アステロイド以上に避けられない爆撃の雨が降り注ぎ、王子を消し飛ばしてベイルアウトさせた。
(ここまでだな)
「ベイルア……なっ!?」
勝ち筋が消えたと見て、これ以上の得点を与えないために自発的にベイルアウトしようとした蔵内の胸を、一発の弾丸が撃ち抜いた。
攻撃の出所は、近くの木の上。
そこには生い茂った葉の中に隠れる形で、森林迷彩仕様の隊服とバッグワームを着込んだ那須隊スナイパー・日浦茜の姿があった。
(なるほど。今のメテオラで霧が……!)
蔵内の潜んでいた霧のベールが、メイのメテオラで吹き飛んでいた。
保険としてバッグワームを使って霧に紛れていたが、王子を援護していた以上は狙える距離だったということだ。
オペレーターにハウンドの弾道を解析されて、大体の位置を割り出されたのだろう。
「やるな」
蔵内ベイルアウト。
「どわっ!?」
だが、次の瞬間、いくつもの木の幹を抉りながら一発の弾丸が飛来した。
狙いは、狙撃直後の茜。
基本的にスナイパーは狙撃銃とバッグワームでメインとサブのトリガーを使ってしまうので、狙撃の前後は防御ができない。
そして、霧が消えたことで射線が通るのは敵も同じ。
誰かが霧に紛れる動きをすることも、その誰かを見つけるためにメテオラによる霧払いを仕掛けることも読み切り。
ひたすらの忍耐でタイミングを狙い澄まし、霧が晴れた瞬間に敵の位置情報を頭に叩き込んで放たれた、始まりのスナイパー・東春秋の絶技だ。
「見事」
だが、それも防がれた。
一切の油断をしていなかった護衛担当、熊谷の遠隔集中ダブルシールドと、玲の遠隔球体ダブルシールドによる四重の盾が東の狙撃を止める。
通信で指示を受けたのか、メイが二人の代わりに慌てた様子で自分達の周りにシールドを出したので、追撃も意味が無いだろう。
そして、メイのガトリングの銃口がこちらを向いた。
「撤退だ」
姿をくらまして逃げたところで、メイのメテオラでフィールド全体を更地にされると判断し、東は陣取っていた木の上から自発的にベイルアウト。
これにて、フィールドに残るのは那須隊の四人のみとなった。
『決着だな。生存点2ポイントを加え、最終スコア10対0対0対0。まさかの完全試合再びで那須隊の勝利だ』
「やったーーー!!」
メイが勝利の雄叫びを上げた。
チーム戦で初の怒られないで掴み取った勝利。
滅茶苦茶嬉しい。
「ふぅ……」
「さすがB級上位。最後まで気が抜けなかった……」
「私なんて絶対死んだと思いましたよ! 熊谷先輩も那須先輩も凄いです!」
〈だ、大金星だ……!〉
玲と熊谷は初めての上位戦の緊張もあって疲労感が先に来ているようだが、茜と小夜子はメイと同様、大いに興奮していた。
茜はメイのところに走っていって高い高いを始め、小夜子は柄にもなくオペレータールームで小躍りした。
そして、場面は実況解説席へと移る。
◆◆◆
「いやはや、思っていたより更に面白い結果になったな」
「そうですね。さすがに、これは予想外でした」
「ひぇぇ。ゾエさんはもう悲鳴しか出ないよ」
真木は面白いものが見れたから、奈良坂はなんだかんだで仲の良い従兄妹二人の勝利でご機嫌になり。
逆に次の試合で当たりかねない北添は引きつった笑みを浮かべていた。
「ランク戦で二桁得点なんて初めて見たな。ここまでの大勝利、勝因はなんだったと思う?」
「一番大きいのは、フィールドのおかげで那須隊が簡単に合流できたことと、メテオラ流星群が綺麗に刺さったことでしょうね。
霧に覆われた空から降り注ぎ、直径数十メートルを消し飛ばすメテオラの乱射。
来るとわかっていなければ、対処は難しいでしょう」
「あれで一気に五人持っていかれたからね〜。もう反則じゃない?」
反則と言いつつ、北添は次の試合に向けて対処法を考えていた。
そして、適当メテオラの本家本元であるがゆえに、即座にいくつか思いついた。
初見の優位と霧が無ければ、まだ対処のしようはある。
「最後の攻防は盤石と言っていいものでした。
ステージの角に陣取り、攻撃の来る方向を限定。
那須隊員の火力を過信することなく、置き弾を使って迅速に弓場隊長を倒した那須隊長。
東さんですら狙撃を躊躇するほどに隙を見せなかった、熊谷隊員の絶対防御。
最後の狙撃も見事でしたが、それ以外の時は狙撃銃を手放し、いつでも味方を遠隔シールドで守ることのできる保険となっていた日浦隊員。
メテオラ流星群のアシスト、蔵内隊員の捕捉、膨大な数の置き弾の設定記録を始め、解説席からでもわかる支援能力の高さを見せつけた志岐隊員。
戦略と隊員全員の長所が綺麗に噛み合った結果の大勝利です」
奈良坂が真顔で滅茶苦茶称賛した。
それを聞いて、メイは薄い胸を張ってふんぞり返り、玲は微笑みを浮かべ、熊谷と茜と小夜子は照れて赤くなる。
「今の那須隊は驚くほどバランスが良い。
アタッカー、ガンナー、シューター、スナイパー。
主要なポジションが一人ずつ揃っている上に、那須隊長の変幻自在のバイパーによる追い込み、熊谷隊員の鉄壁の守り、日浦隊員の十二分に一流と言える狙撃技術、トドメに当たりさえすればシールドでも防げない超火力の砲台。
役割が奇跡的なレベルで噛み合っていて、全員揃った時の強さはA級部隊に匹敵するだろう。
まあ、ドデカイ不安要素はあるが」
最初に勝敗を分ける要素として語ったように、メイというピーキーな大駒の欠点をチームが埋め、長所を活かして上手く運用できている形。
今後の躍進が楽しみだ。
そう言って、A級2位部隊の事実上の隊長は楽しそうに笑った。
「さて、ラウンド1に続き、那須隊の順位は再び急上昇。
なんと暫定1位に躍り出た。
もっとも、2位の二宮隊と3位の影浦隊の戦いはまだだから、夜の部の結果次第で抜き返されるだろうが」
一時的にとはいえ、不動のB級2トップが抜かされた。
その事実に、観客席ではどよめきが起こる。
「そして、今回無得点に終わってしまった三部隊は順位がダウン。
東隊と王子隊が中位落ち。代わりに鈴鳴第一と香取隊が上位入り。
こちらも夜の部の結果次第で、上がってくるチームは変わるだろう。
今期は大躍進のダークホースが二つもいるおかげで、順位が滅茶苦茶になって面白いな」
二連続の完全試合で一気に暫定1位にのし上がった那須隊。
結成直後で最下位からのスタートだというのに、ラウンド1で8得点獲得の完全試合をやって中位入りし、夜の部の結果次第では上位入りも見えてくる玉狛第二。
今季のB級ランク戦は大いに荒れている。
「那須隊が厳しくなってくるとしたら、地形の優位が無くなり、初見の優位も薄れてくる次の試合からだろう。
その時こそチームの地力と底力、本当の実力が試される。実に楽しみだ」
そんな言葉を最後に、あとは終了の挨拶だけして、B級ランク戦二日目・昼の部は終わりを告げた。
わからされるのは次のラウンドまでお預けですね。
それもこれもお姉ちゃん達が有能すぎる上に、メイとの相性が良すぎるせいなんだ……すまない……。
〈トリガーセット〉
・メイン
アステロイド(機関砲)
メテオラ(機関砲)
メテオラ(擲弾銃)
シールド
・サブ
ハウンド(機関砲)
バッグワーム
メテオラ(擲弾銃)
シールド
メテオラだらけ……。
そして、とりあえず弾トリガー全種類入れとくかってノリで入れられてたバイパー(機関砲)はクソ使いづらいって理由で外されました。
那須の血が泣いている……。