那須隊のトリオンモンスター・ガンナー   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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今さらですが、ランク戦は新生那須隊が暴れ回るので、順位が滅茶苦茶になって、原作とは全く違うマッチングになります。
マッチングが違えば試合内容も違うので、更に滅茶苦茶になる予定です。
でも、主な被害者は上位なので、ラウンド2までの玉狛第二はギリギリ原作通り。

それと、私の手元には単行本がありません。
なので、キャラ間の呼び方とか、先輩後輩に対する口調の使い分けとか、実況解説の時「〜〜隊員」って呼ぶのかどうかとか、違ってたら教えてくれると嬉しい。


7 B級ランク戦・ラウンド3

「C級時代に空閑を倒した那須さん……。改めて見ても、とんでもないな……」

 

 今季B級ランク戦のもう一つの台風の目。

 結成直後にも関わらず、ラウンド1では8対0対0の完全試合、ラウンド2でも中位を相手に6対2対1の快勝で勝ち進み。

 上位が三チームほど事故に遭って無得点試合をやってしまったのもあり、入れ替わりで三戦目にして上位入りした新進気鋭のチーム『玉狛第二』。

 

 その隊長である『三雲(みくも) (おさむ)』は、次の対戦相手のデータを見ながら唸っていた。

 

「ごめんね、修くん……。私もこんな風に戦えたら……」

 

 メイの記録映像を見て、玉狛第二のスナイパー『雨取(あまとり) 千佳(ちか)』が申し訳なさそうに謝ってきた。

 彼女はメイ以上の尋常ならざるトリオン能力を持っており、スペック上は彼女と同じ大虐殺を行うことができる。

 しかし、千佳には戦闘員として致命的な弱点があった。

 

 雨取千佳は、人を撃てない。

 

 今だってメイと同じように戦う自分を想像すると、メイや那須隊に陰口を叩くC級隊員達の姿が脳裏に浮かんできて、拒絶反応で体が震える。

 そのせいで、メイのような大暴れで隊に貢献できないことを気にしていた。

 

「謝らなくていい。戦い方も得意分野も、人によって違って当然だ」

 

 修はそんな千佳を責めないし、変われとも言わない。

 元来、そのトリオン能力のせいでネイバーに狙われ、親友や兄すら失ってきた少女だ。

 自罰的な傾向のある彼女に、不幸の元凶であるトリオン能力を振り回せとは言えない。

 我が身を守る力を鍛えなければお姉ちゃん達ごと死ぬと直感で理解して一切の躊躇をしない、どこぞの幼女のメンタルの方がおかしいだけだ。

 

「空閑、どうだ? 今なら勝てそうか?」

「30……いや40メートルくらいまで接近できればいけると思うぞ。俺もあの時とは違うからな」

 

 代わりに問いかけた玉狛第二の頼れるエース、空閑遊真が冷静にそう言った。

 C級時代と違ってシールドもグラスホッパーもある。

 あれを相手にシールドは役に立たないだろうが、グラスホッパーの機動力があれば、間合いの内側に入り込むことは充分に可能だ。

 

「ただ、護衛がついたら、さすがにキツいな。その上、全員集合なんてされたら、並大抵のことじゃ崩れないだろ」

「そうか……」

 

 全員揃えばA級部隊に匹敵すると言われた那須隊の連携。

 対して、こちらの強い戦力は空閑だけだ。

 千佳は人が撃てないし、隊長である修は頭こそ切れるが、戦闘力はB級最弱争いができるほどに低い。

 

(しかも、今度の相手は……)

 

 次の試合は初の四つ巴。

 対戦相手は、暫定1位『二宮隊』、暫定2位『那須隊』、暫定3位『影浦隊』。

 那須隊を抜き返した絶対王者の二宮隊と、その二宮隊に牙を届かせうる影浦隊。

 

 まさかのB級トップ3と同時対決。

 元A級部隊が二つに、条件次第でA級に匹敵する部隊が一つ。

 正直、正攻法では勝ち目が無い。

 

(どうする……!)

 

 凄まじい強敵達を打倒するべく、若き隊長は必死に頭を悩ませた。

 

◆◆◆

 

「B級ランク戦三日目・昼の部のお時間がやってきました。

 実況は風間隊の三上。

 解説はNo.1アタッカーの太刀川さんと、ぼんち揚げ食う? でお馴染みの(じん)さんです」

「「どうぞよろしく」」

 

 No.1アタッカー『太刀川(たちかわ) (けい)』と、元S級隊員『(じん) 悠一(ゆういち)』。

 凄まじく豪華な組み合わせだった。

 

「さて、今回は今季のダークホース2チームと、不動のB級2トップが揃い踏みとなりました。

 この好カードについて、どう思われますか?」

「クソ面白い。特に影浦隊がもう不動の2トップじゃないところとか笑える」

「太刀川さんに同じく。まあ、俺はこの人と違って、純粋に好カードを楽しんでますがね」

「おいこら。自分だけ良い子ちゃんしてんじゃねぇ」

 

 太刀川と迅のじゃれ合い。

 続くようなら、真面目にやってくださいと、三上から注文が入るだろう。

 

「で、戦力分析だが。まあ、さすがに総合力なら二宮隊と影浦隊が上だろ。

 那須隊は合流するなりなんなりして、一部勝ってる自分達の強みをいかにして押しつけるか。

 玉狛はステージ選択権を活かして、どれだけ有利な状況を作れるか。

 そこらへんが鍵になってくると思うぜ」

 

 太刀川の真面目な解説。

 これには三上も満足そうに頷いた。

 

「ここでステージが決定しました。ステージは『河川敷A』」

「うわ、合流しづらいとこだな。こりゃ、那須隊はちょっとキツいか?」

 

 河川敷。

 中央の広い川を境に、フィールドが東岸と西岸に分かれているマップ。

 対岸の仲間と合流するには、一つしか無い橋を渡るか、強引に川を突っ切るしかなく、そのどちらも多大な隙を作りかねないので危険だ。

 

「今回のメンバーの中で玉狛第二の遊真──空閑隊員だけが、空中を移動できるグラスホッパーを装備しています。

 最も簡単に川を渡れるというメリットを活かして自分達は合流し、逆に他の部隊の合流は阻むという算段かもしれませんね」

「影浦隊は個々が別々に動くことが多いチームだが、那須隊は揃っちまうと厄介だし、二宮隊は揃っちまうと手がつけられないからな。分断狙いは悪くはねぇ」

 

 「メイなんか一人じゃ隙だらけだし」と言いながら、太刀川は笑った。

 さすが、目にも止まらぬ弾丸を、超集中シールドと刀で迎撃して近づいて斬り捨てた男は言うことが違う。

 

「さあ、全部隊転送開始! マップ『河川敷A』! 天候『大雨』! 試合開始です!」

「……ん? アッハッハ! マジか!」

「面白い転送結果になりましたね」

 

◆◆◆

 

〈〈〈〈最悪……!〉〉〉〉

 

 転送直後。

 味方の転送された位置を確認して、那須隊は頭を抱えた。

 

〈メイが東岸で一人きりだなんて……!〉

 

 ラウンド1の悪夢再び。

 東岸にメイが一人で放り出され、西岸に玲、熊谷、茜が揃ってしまっている。

 三人もいるのだから、せめて一人くらいはお守り役が近くに転送されてほしかった。

 

〈しかも、大雨ですよ! 大雨! 川がすっごい増水してます!〉

〈橋以外からだと、強引に川を渡るのは難しそうね……〉

 

 茜と熊谷が嘆く。

 

〈那須先輩、堤防を壊して川の水を抜くというのはどうでしょう?〉

〈……それが一番でしょうね〉

 

 橋はどう考えても誰かが抑える。

 B級二強に加えて侮れないダークホースを相手に、メイ抜きで正面突破は博打が過ぎる。

 

〈でも、それをすると、とても目立ってしまうわ。水が抜けて走り切るまでの間に狙われる〉

 

 玲は考え、即座に結論へと至った。

 自分のメテオラの火力では、一度に破壊できる範囲が小さい。

 そこから水が抜けて、目に見えて水位が下がるまで、そこそこ時間がかかるだろう。

 その間に集中狙いされてしまう。

 ……だが、メイのメテオラなら、もっと早く済む。

 

(……あまり過保護すぎるのはやめた方が良いかもしれないわね)

 

〈メイ。全力で隠れながら上流の川岸に向かって、私達が反対側の川岸についたところで、そっち側の堤防をメテオラで可能な限り破壊してちょうだい。水が抜けたらシールドを張って、全速力で私達と合流。できる?〉

〈できる! 任せろ、姉ちゃん!〉

 

 メイは自信満々に頷いて、移動を開始した。

 

〈おんみつこうどうは透に叩き込まれたからな! 楽勝だ!〉

〈……頼んだわ。くまちゃん、茜ちゃん! 私達も隠れながら急ぐわよ!〉

〈〈了解!〉〉

 

 那須隊が全員バッグワームをつけて動き始めた。

 観客席でそれを見守っていた太刀川は、

 

『うっわ、拙いにもほどがある隠密行動だな。奈良坂が泣くぞ』

 

 それっぽい動きこそしているが、全く中身が伴っていないメイの動きに、この幼女の教官の一人であるNo.2スナイパーを哀れんだ。

 

『まあ、那須隊員は入隊してから一ヶ月くらいしか経ってませんからね〜』

『じゃあ、同期入隊の空閑……はともかくとして、雨取が妙に様になってんのはどういうわけだよ? 迅、お前なんかした?』

『さあ?』

 

 実力派エリートはすっとぼけた。

 

『それよりほら、戦況が動くよ』

「ッ!?」

 

 解説席で迅がそう言った直後──西岸から大砲が撃ち込まれた。

 極太のレーザービームみたいな弾丸が橋に突き刺さり、唯一のまともな通り道を粉砕する。

 

『千佳ちゃん──雨取隊員の砲撃ですね』

『おお、大迫力。さすがメイと同じトリオンモンスター』

 

 スナイパー用トリガー『アイビス』。

 使い手のトリオン能力に比例して威力が上がる狙撃銃。

 それをメイと同じトリオンモンスターが使うと、地形を変えるほどの一撃となる。

 そして、

 

『大砲が飛んできたってことは──』

「うわっ!?」

 

 隠密行動もどきをしていたメイを、一人の襲撃者が襲った。

 メイと大して変わらない小柄な身長に、真っ白な頭髪。

 彼が不意打ちで振るったスコーピオンの斬撃を、メイはなんとか直感で感知し、ギリッギリでシールドの発動を間に合わせて防ぐ。

 

『玉狛の準備が整ったってことだ』

 

 不意打ちを防がれたことに少し驚きながらも、小さな襲撃者は冷静に奇襲用のバッグワームを解除し、ニヤリと笑った。

 

「久しぶりだな。リベンジしに来たぞ」

 

 ボーダーのトップランカー達に匹敵する歴戦の少年兵。

 玉狛第二の空閑遊真が、再びメイの前に立ち塞がった。




そろそろ痛い目見そうな予感。
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