トロフィーを獲得しました 【夜明けの鐘と花吹雪】   作:白鷺 葵

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【諸注意】
1.書き手はACⅥ勉強中のにわか。
2.あまり深く考えないで書いているため、世界観のすり合わせがふわっとしている。
3.ハーメルンに掲載している拙作『問題だらけで草ァ!!』シリーズ×スパロボシリーズ(00参戦作品のみ)×ACⅥのクロスオーバー。
4.『問題だらけで草ァ!!』シリーズは機動戦士ガンダム00×スーパーロボット大戦シリーズ(00参戦作品メイン)×地球へ...のクロスオーバー作品で、前提としてグラハム×刹那♀要素あり(重要)
5.『問題だらけで草ァ!!』シリーズは機動戦士ガンダム00×スーパーロボット大戦シリーズ(00参戦作品メイン)×地球へ...のクロスオーバー作品で、前提としてグラハム×刹那♀要素あり(重要)
6.『問題だらけで草ァ!!』シリーズは機動戦士ガンダム00×スーパーロボット大戦シリーズ(00参戦作品メイン)×地球へ...のクロスオーバー作品で、前提としてグラハム×刹那♀要素あり(重要)
7.『問題だらけで草ァ!!』はZシリーズ、OE、UX、BX、Vを下地にして混ぜたような架空の世界線となっている
8.オリキャラ多数。
9.オリ主(人外)×エア、ラスティ×621♀が主軸となっている(重要)
10.オリ主(人外)×エア、ラスティ×621♀が主軸となっている(重要)
11.オリ主(人外)×エア、ラスティ×621♀が主軸となっている(重要)
12.原作および登場人物のキャラクター崩壊。
13.『◆◆◇』が「虚憶⇒現実」、『◇◇◆』が「現実⇒虚憶」、『◆◆◆』が「虚憶⇒虚憶」、『◇◇◇』が「現実⇒現実」、『◆』が「特殊な意味合いが含まれている」場面転換、及び視点切り替え
14.『*』は「短時間経過での場面転換・視点はそのまま」、『**』及び『***』が「長時間経過での場面転換・視点はそのまま」を意味している

このような作品でよろしければ、どうかよろしくお願いします。

『問題だらけで草ァ!! -Toward the sky- <1st Season>』はこちら(完結済み)<https://syosetu.org/novel/321938/
『問題だらけで草ァ!! -Under the Flag-<2nd Season>』はこちら(連載中)<https://syosetu.org/novel/327713/



野戦病院装備じゃなきゃ撃てる

 

 ELS、フェストゥム、バジュラの生態系は非常に似通っている。特徴的な点は『個の概念が薄い』、『(コア)や母体、或いは女王個体をトップに置いて形成される群体型の生命体』、『種族や群れの思考回路や方針に関する総意は統一されている』ことだろう。

 後に前者2つの種族は、人類との遭遇から和解に至るプロセスによって個の概念を学習・獲得することで人類との共存を目指した。現在は表面上、特に大きな問題を起こすことなく共存は成功している。今後もこの調子で共存・共栄の実績を積み上げ、次世代に継いでいくのが課題だ。

 

 ミライ・エーカーは悪の組織の総帥(しゃちょう)にして、この団体――異種族で構成された外宇宙探索部隊の長である。同時に、この部隊に所属するELSの()()でもあった。

 人間形態時の身長は175cm程度だが、実際のサイズは大型ELSに分類される程度の大きさである。具体的には、嘗て外宇宙へ乗り出した航行艦・ソレスタルビーイング号(全長15Km程度)と同じくらいか。

 普段は外宇宙探索部隊の旗本艦――関係者曰く「最早要塞クラス」――として機能しているが、有事の時には一部の質量を成形及び擬態させることで生体端末の1つとして動かすことも出来るのだ。

 

 ――つまり。

 

 

「“悪の組織の総帥(しゃちょう)と団体の長としての仕事をこなすための(たんまつ)”の他に、“エクトルくんとチアキちゃんに同行するための(たんまつ)”を作ればいいんスよ」

 

「嘗て人間側に『1対1000の戦力差』と言わしめるだけの圧倒的物量を誇った群体生物の考えることはやべーな」

 

「あれ? 『1対10000』じゃなかったっけ?」

 

「人類側が絶望的って意味じゃどっちも大差ないッス」

 

 

 アマトとチアキが首を傾げるが、どの道“人類にとって、ELSの殲滅を行う場合の難易度が桁違いである”ことは変わらないのだ。

 来なかった未来――特に、今からでは想像つかないレベルでの“最悪の結末”――を想像した所でどうなるわけでもないだろう。閑話休題。

 

 

「ま、そういう生態系柄、大規模な並列思考は得意ッスよ。多用すると大惨事になるから、ルールやマナー的な方面で控えてるだけで」

 

 

 個と言う概念を知らなかった――滅びゆく母星を救う方法を求めて流浪の旅をしていた――頃のELSたちが()()()()()()()()()()結果の地獄絵図を、ミライは強く受け止めている。

 

 ELSが交信に成功した種族は、自分たちと同じような群体生物の生態系を有する者たちだけだった。フェストゥムやバジュラがその一例である。彼/彼女らとはスムーズに交流を行うことができたし、個という概念を重要視する種族――一例としては人類――相手で発生した誤解やすれ違いなどは発生しなかった。

 件の3種族が人類と対立することになった理由の大半が『“自種族にとっての常識は、相手種族に対する非常識だった”ことが原因で発生した誤解やすれ違いが原因で、そこへ更に憎悪や誤解が積み重なったせいで、報復の連鎖が形成されてしまった』ことにある。

 特に、ELSは人類と仲良くなりたい一心で、無自覚に大規模侵攻をやらかしたのだ。クロスアライズに所属していた何名かが『悪意が無いだけ(タチ)が悪すぎる』と零していたらしいが、ミライも渋い顔して頷きたくなる。これは、決して『知らなかった』では済まされないのだ。

 

 今となっては近代神話の一節にして笑い話みたいになりつつあるが、そんな扱いにしていいとは思えなかった。

 

 故に、人類との共存を成すために、ELSは自身の特性にある程度の制限をかけている。

 二度とあのような『やらかし』を起こさないために、人と共に歩んでいくと決めたからこそ受け入れた、大切な()()()であった。

 

 

<……これは、俗にいう『悪用』と言うものでは?>

 

「グラハムさんと刹那さんが知ったら渋い顔すんぞ」

 

「エアちゃん、アマトくん。これは業務の円滑化と効率化に伴う必要経費ってやつッスよ」

 

 

 今、ミライはその()()()のリミッターを外そうとしているのだ。大義名分はあるにしても、“人と共に生きるために受け入れた()()()に対してタブーを犯そうとしている”側面もあるワケで。

 その自覚があるから、エアとアマトの言葉を聞いたミライは視線を逸らした。口では平静を装って入るが、内心ではグレーゾーンであることも理解していたし、養父母(りょうしん)に対する申し訳なさもある。

 しかし、ミライの養父(ちち)は軍属時代から口八丁手八丁を駆使して自分の我を通した実績持ち。それは、グランドマザー『テラ』の駒として自我崩壊一歩手前まで追いつめられても変わらなかった。更に言えば、平常だろうが自我崩壊一歩手前(そんな)状態だろうが、勝利やそれに準ずる結果を叩き出す実力者でもある。

 

 ――そんな奴に()()()()()ミライがどういう人格構成/思考回路持ちになるかと問われれば、大体お察しなのである。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「そういえばクラヴズ4(エクトル)。要件がもう1つ増えたこと伝えたの?」

 

「勿論だクラヴズ3(チアキ)。だが、相手の返事は特に変わらなかったよ。『RaDの流儀で、最高の“おもてなし”をしてやる』の一点張りだ」

 

 

 パーティ会場たるグリッド086に足を踏み入れたエクトルとチアキは、互いのコールサインを呼び合いながら雑談に興じる。

 

 あの後、エクトルはRaDの頭目に『訪問するための用事がもう1つ増えた』こと――特殊な用途(Cパルス変異波形・コーデリア)の義体づくりに協力してほしい――を伝えたようだ。それでも対応は、連絡前と変わらなかったという。

 良くも悪くも、RaDの頭目は“悪の組織の実力試し”がしたいらしい。求められたのならば応えたくなるのは、ヒトに親しんで生きてきた命としての性である。コネクトフォースとノイヴェルター、双方共にやる気十分だった。

 勿論、やる気満々なのはエクトルとチアキ、及びその愛機たるノイヴェルターとコネクトフォースだけではない。彼らの同行者にして、悪の組織の頭目/総帥(しゃちょう)名義でアリーナ登録しているミライとその愛機――“ブライティクス”も同様である。

 

 ミライの評価は『悪の組織の総帥(そうすい)名義で登録されているにも関わらず、個人的な趣味でシュナイダー製品を愛用している人物』、もしくは『シュナイダーの回し者』。

 実際、機体の構成もシュナイダー製品・NACHTREIHERフレームを中心に固められていた。自社が開発に関わった製品はジェネレーターのみ。ギリギリ最低限、企業所属の面目は保っている。

 こちらの名義では“何か1つは悪の組織が関わったパーツや武装を使う”という縛りを課しているが、本音としては『自社製品より良いものがあれば容赦なくそちらへ乗り換えたい』。

 

 

「……どこからどう見ても、悪の組織総帥(しゃちょう)という肩書からは遠い機体だよなぁ。総帥(しゃちょう)のブライティクス」

 

「何も知らない人が見たら『シュナイダーの回し者』にしか思えないだろうね。肩書と機体を見比べてドン引きする姿が目に浮かぶんだけど」

 

「機動兵器乗りは死と隣り合わせの職業だ。生存率確保のために“自身が信頼し、納得できる武装(もの)で身を固める”のは何もおかしなことではなかろう?」

 

「それが許されるのはフリーの独立傭兵、しかも上澄みのランカーだけなんだぞ。普通は」

 

「――そろそろ時間です。突入を」

 

 

 雑談に興じていた3人を現実に引き戻したのは、悪の組織――否、ミライ率いる団体のオペレーターだ。

 彼の言葉に従うようにして、ミライたちは雑談を切り上げてパーティ会場へと乗り込む。

 

 

「各所に固定砲台あり。追尾型ではないので、振り切れば突破は可能です」

 

「了解だ、オーリーくん」

 

 

 今回選出されたオペレーター――オーリーの言葉に従った3人/3機はブースターを噴かし、砲台の攻撃を回避する。割と重量がある射撃型――ノイヴェルターとコネクトフォースでも問題なく回避することが出来るあたり、侵入者の思考回路や性格等の分析するために配置されているのだろう。

 戦わずに済むのなら、余計な消耗は避けるが吉だ。接近戦主体であるブライティクスが切り込み隊長として先陣を切り、その後ろをノイヴェルターとコネクトフォースが追尾するような形となっている。役職を考えれば、本来最後尾に付くべきはミライなのだろう。最前線に出るべきは――いや、そんな話はいい。

 

 固定砲台を無視した先には、やや広めのスペースが広がっている。組み上げられた足場や機器の様子からして、何か出てきそうな雰囲気があった。

 間髪入れず、オーリーが機体反応を察知した旨を告げた。同時に、足場の上層部から()()()()()ACとMTの混合部隊。

 中央に陣取ったACには覚えがある。アリーナ最下位に属するRaD所属の傭兵であり、エクトルが会いたがっていたコーラル中毒者だ。

 

 

「なんだぁ、お前? この辺では見ない顔だな」

 

「お初にお目にかかります、RaDのラミー殿。僕は先日、貴方と貴方の上司にアポイントを取っていた悪の組織所属・医療班長官のエクトル・オルティス・イグレシアスと名乗るものです」

 

「……ああ、あんたが俺に『会いたい』って言ってた医者か! ボスから話は聞いてるぜ!」

 

 

 完全武装で()()()()()マッドスタンプとMTたちの前に踏み出したのは、この中で1番“戦闘能力が低い”機体と“ラミーを始めとしたヤク中系ドーザーに用事がある”当人たるエクトル/ノイヴェルター。

 

 エクトルから名指しされたことや上司たるカーラからトップダウンで連絡が行っていたのだろう。怪訝そうな様子だったラミーが、エクトルの名乗りを聞いて合点がいったように頷く。

 通信越しに響く声は上機嫌、且つ友好的である。だが、それは最初だけだった。機嫌と態度はそのままに、ラミー/マッドスタンプとMTたちがエクトル/ノイヴェルターに武器を向けてきた。

 

 

「それはそれとして、だ。歓迎するぜビジター御一行! 俺たちRaDの――無敵のラミーの“もてなし”、受け取ってくれよ!」

 

 

 放たれたのはショットガンだが、弾丸は飛び散る様な形でこちらに飛んでくる。ショットガンの弾速と散弾銃の特性を兼ね備えた武器は、企業製ではあまり見かけないタイプだ。企業に属さない技術屋集団であるRaDは武器開発にも手を出していることを考えると、この武器はRaDの独自開発かもしれない。

 

 ()()()()()()()なら余裕で躱せる代物だが、今の彼/ノイヴェルターはギリギリで避けた。機体の特性を考えると、充分『素早く』対応できたと言えるだろう。

 勿論、仲間が攻撃されて黙っていられる程、ミライ/ブライティクスとチアキ/コネクトフォースは甘くない。即座に攻撃態勢を整えた。

 

 

「相手側からの攻撃を確認、っと」

 

「オーリーくん、映像記録は取れてるな?」

 

「ばっちりです総帥(しゃちょう)。これで裁判になっても勝てますよ」

 

 

 相手側の攻撃を視認したので、こちらも正々堂々『正当防衛』を掲げて殴りに行ける。

 ついでに映像記録もきちんと残っているため、裁判になっても証拠はばっちりだ。

 ……最も、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の話であるが。閑話休題。

 

 

「へへっ、見ててくださいよボス! この無敵のラミーが、客人をもてなしてやりますんで!」

 

 

 ラミーの言葉は、このグリッド086のどこかに潜むRaDの頭目に向けたものだろう。彼の言葉が正しければ、頭目はここで行われるであろう戦いの動向を見守っているに違いない。こちらに襲い掛かって来たラミーに合わせるかの如く、MTたちも駆動を開始した。耳障りな駆動音を鳴り響かせながら武装を展開する。

 ラミー/マッドスタンプは散弾式のショットガンとチェーンソーを振りかざして前線に飛び出してきた。MTの武器が実弾式のマシンガンであることや、マッドスタンプが有する武器の共通点――“近接で使えば最大限の効果を発揮する”代物だと考えると、前衛がラミーでMTは彼のサポートを行うためのものだろう。

 

 その采配は、多分、正しい。接近戦が得意なAC乗りと、後ろからそれをサポートするMT。戦術的には何ら問題ないと思う。

 

 問題があって、その問題が何かを挙げるとするならば。

 “ミライたちがその戦術を冷静に分析できる程度の余裕がある”という()()()()()()だろうか。

 

 

「とりあえず、タレットいっぱい出しときますねー」

 

「そんな『お薬出しときますね』みたいなノリで言う言葉ですかそれ」

 

「……クラヴズ3が言うと卑猥な言葉に聞こえるのは何故だろうな」

 

クラヴズ4(医療従事者)とは違って、クラヴズ3(彼女)が年齢指定モノの同人作家だからではないかね」

 

 

 チアキの言葉を聞いたオーリーとエクトルが眉間の皴を深める中、ミライは淡々と事実を述べる。その横で、戦いは着実に進んでいた。

 

 ラミー/マッドスタンプの散弾式ショットガンをゆったりと躱しながら、チアキ/コネクトフォースはビームタレットをばら撒いていく。マッドスタンプとその取り巻きを取り囲むように設置されたタレットは、機械的にレーザー光線を打ち放った。

 両肩にタレットを装備し、且つ、弾が切れる度に次々と新しいものを設置していくためか、ある種の宇宙戦争を連想させるような光景が広がっている。アリーナの団体戦で『全員の両肩装備をレーザータレットにする』という縛りで行った模擬戦の光景が脳裏を過ったが、あそこまではいかない。

 だが、件の模擬戦では“足や動きを止めたACが、配置されたタレットによってハチの巣orダメージが蓄積され撃墜”なんてケースはざらにあった。更に言えば、ラミー/マッドスタンプやその取り巻きたちの動きは、重量寄りのコネクトフォースより――控えめに言って――ゆっくりであった。

 

 ――そう。

 

 周囲から常々“射撃適性皆無”と言われている男の射撃が()()()()()()()くらいには。

 牽制用に撃った攻撃が次々に命中していくのを見たエクトルが、思わず声を上げる。

 

 

「嘘だろ!? 何か滅茶苦茶当たるんだけど!?」

 

「調子が良いなクラヴズ4(エクトルくん)。今日は珍しく、キミの()()()が拝めそうだ!」

 

「変なフラグを建てるのやめて貰えないか!?」

 

「キミの場合、射撃で戦うと“普段より命中すると嬉しくなってつい撃っちゃう”タイプだろうに」

 

 

 各種ブーストを噴かしてこの場を飛び回るミライ/ブライティクスを見上げながら、エクトルが噛みつくように叫んだ。そんな彼に対し、ミライは「ははは」と笑いながら敵の攻撃を回避していく。

 元々ブライティクスは“機動力に特化した近接戦闘”のためにアセンが組まれた機体である。拘りポイントは各種ブースト――特に、クイックブーストに力を入れている点だろう。

 搭載している『自社提供技術が施されたジェネレーター』――CALADRIUSフレームと合わせて運用することを想定したものだ――は、EN系のパラメータが高水準で安定しているのがウリだったこともあり、安定して高速戦闘が行えるという特徴があった。

 

 正直な話、ミライは“自社提供技術が施されたジェネレーターで満足している”ワケではない。それよりもいい感じのジェネレーター、及び他のパーツや武器が出て着次第、そちらに乗り換えるのもやぶさかではないのだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()。閑話休題。

 

 チアキ/コネクトフォースがタレットをばら撒いて中距離狙撃をし、エクトル/ノイヴェルターの牽制が次々とヒットしていく様を見ていると、前線役として出てきたミライ/ブライティクスの出番はほぼ皆無である。

 高速機動を使った攪乱などしなくとも、ラミー/マッドスタンプの動きは非常にゆっくりであった。多分、『この中で彼/マッドスタンプが1番動きが遅い』まであり得る。一応、前線役としてラミー/マッドスタンプの周囲を飛び回ってはいる。飛び回ってはいるのだが――ただそれだけで、充分な気がしてならない。

 

 ……ならないのだが。

 

 

「……我々は、ルビコンで生きる命を嬲りたいわけではないからな。ここでのんびりするワケにもいくまい」

 

「殺さないでくれよ。彼は“悪魔の証明”に必要な存在だ」

 

「――勿論。承知しているとも、クラヴズ4(エクトルくん)

 

 

 「そのためにここに来た」と告げれば、エクトルが満足気に笑った。チアキ/コネクトフォースもタレットのばら撒きと狙撃の手を止める。それを合図に、ミライ/ブライティクスが飛び出した。

 

 此度の出撃――前衛役を務めるための接近戦特化型アセンとして採用した戦闘スタイルは“ブレード二刀流”である。左側にパルスブレードとレーザーブレードを装備したブライティクスは、クイックブーストを用いて一気に距離を詰めた。

 突然攻撃態勢に移行した高速2脚の強襲。ラミー/マッドスタンプは咄嗟にチェーンソーを構えようとしたが、それまでだった。彼が構えた左腕をパルスブレードが切り落とし、追撃のレーザーブレードが右腕を切り落とす。そこから更に連撃を叩き込めば、マッドスタンプはものの見事に達磨となった。

 

 チアキ/コネクトフォースがばら撒いたタレットと狙撃、エクトル/ノイヴェルターの牽制用射撃が命中し続けたこともあって、機体にダメージが蓄積していたのであろう。手足から黒煙を上げるマッドスタンプは完全に無力化できたと言える。

 それを確認したエクトル/ノイヴェルターは即座にマッドスタンプのコックピットをこじ開けた。パイロットのラミーが怯えたようにこちらを見上げる。ノイヴェルターのコックピットが開き、飛び出してきたエクトルによってラミーは野戦病院用装備の中に連れて行かれた。

 呆気に取られるラミーをよそに、エクトルは野戦病院用装備内部に同行していた医療従事者たちと共に彼へ治療を施していた。ついでに、コーラルを吸っているときのアレコレについても訊ねるあたり、当初の目的を果たしているとも言えよう。

 

 

「今回は聴き取り調査に協力して貰っただけでなく、怪我までさせてしまったからな。これくらいの謝礼と治療費を出そう」

 

「マッドスタンプを修理してもおつりが来るじゃねえか!?」

 

「因みに、“コーラル吸飲に関する実験や治験、及び聞き取り調査に協力してくれた場合”はこれくらい、“協力者の斡旋をしてくれた場合”はこれくらいだな。どうだろう?」

 

「やべえ。こんだけ金ありゃコーラルキメ放題じゃねえか……。いや、RaD(ウチ)の開発費に回した方がいいか……?」

 

「つい最近ルビコンに出てきた零細企業故、そこまで大規模な金額は出せないが……」

 

「怖い怖い怖い怖い! コイツら札束で殴って来るぅ!! 俺、数時間前に吸ったコーラルヌケてねえのかなぁ!?」

 

「バイタルが著しく悪くなったな。仕方がない、彼を医療用ポッドへ」

 

「待て待て待て待て! とりあえず、とりあえずだ! その……医療用ポッド? とやらに入る前に、ボスに連絡させてくれ!!」

 

 

 最終的に、ラミーは野戦病院用装備に付随していた医療ポッド――西暦における再生医療技術の極致――の中に放り込まれた。

 彼の怪我の大半は打撲だが、肉体的なものよりも精神的な打撃が大きいが故の処置。少し休めば、肉体もバイタルも落ち着くことだろう。

 しかしこの場合、エクトル/ノイヴェルターはラミーを背負った状態で先に進むことになる。戦力としての価値は大きく下がることは必須だ。

 

 

「――ビジターども! アンタたち、好き放題やってるようじゃないか!」

 

 

 そのことについて話し合っていたら、突然、この場一帯に通信が響き渡った。

 快活とした女性の笑い声がひとしきり響く。後に、彼女は余韻を引きずりながら言葉を続けた。

 

 

「特にそこの医療用AC乗り。アンタ、本当に変わった奴だよ! ラミーの何が気に入ったかは分からないが、こいつにそこまで入れ込むなんてね!」

 

「訪問する前にも言いましたが、『コーラル関連でどうしても調べたい事象があり、そのためには、彼らの力が必要』なので!!」

 

 

 コックピットに戻ろうとしていたエクトルは、ハッチを閉める前に思いっきり叫んだ。

 

 彼は割と肺活量が多く声が大きい。多分、グリット086のどこかに潜むRaDの頭目にも聞こえていることだろう。

 それを肯定するかのように、女性が感嘆の声を漏らした。間髪入れず、彼女は言葉を続ける。

 

 

「まあいい。私らRaDは“来るものは拒まない”のがモットーだ。予告通り、最高の歓迎をしてやろうじゃないか!!」

 

 

 

***

 

 

 

 ――RaDの頭目が用意した()()()()()は、巨大なMT(?)兵器“スマートクリーナー”だった。

 

 大きさ的に、ミライたちが駆るACの2.5~3倍程度。脚部はキャタピラ式のタンク型で、両腕には物々しい破砕機が装着されており、刃の部分は超高温なのか真っ赤に染まっていた。元々は解体用の重機だったものを、RaDに所属する技術者が大型MTへと改造したらしい。

 スマートクリーナーの名前とは正反対の特徴を有した兵器は、侵入者である悪の組織所属の傭兵たちに容赦なく襲い掛かって来た。門番役として3人/3機を迎え撃ったラミー/マッドスタンプなど比較にならない。文字通り、力比べの番人に相応しかろう。

 

 ――もしも、この現状に対して、悪の組織側が()()()()()()()()()()()()があるとするならば。

 

 

「あ、まずい!」

 

「どうしたクラヴズ4(エクトルくん)

 

「武装の弾全部なくなった」

 

「ほらな。私の言った通りだろう!」

 

 

 牽制用の攻撃が結構な頻度で当たったため、エクトルが――無自覚なまま――普段以上に、レーザーライフルとリニアライフルの弾を消費してしまったこと。

 そのため、スマートクリーナーとドンパチの真っ最中に、エクトル/ノイヴェルターのレーザーライフルとリニアライフルが弾切れしてしまったこと。

 

 

クラヴズ4(エクトル)、下がって。幾ら従手空拳の手段があっても、医療用装備に関係者と患者乗ってる状態で肉弾戦は危険でしょ」

 

「だな。勝てる見込みは出てきたから、キミが抜けても――」

 

「――医者(ぼく)には、患者と医療従事者の安全を守る義務がある」

 

 

 エクトルの肩書が『戦うお医者さん』であったこと。

 実は射撃の適性よりも、従手空拳に対して適性が高かったこと。

 嘗ては護身術の一環として“とある流派”を学んでいたこと。

 

 

「ノイヴェルターでは、()()に耐えられまい。……ならば――」

 

 

 両肩及び背中に背負っている医療用装備/野戦病院の中には、悪の組織の医療従事者と医療カプセル内に患者(ラミー)がいたこと。

 彼のAC――ノイヴェルターで()()を撃った場合、ノイヴェルターが野戦病院として機能できなくなってしまうこと。

 

 

 ――そうして、RaD側にとっては()()()()()()()()()()()()があるとするなら。

 

 

 

「ボス。医療用ACのハッチが開いた」

 

「あの医者、一体何をするつもりなんだい? ヤキでも回った――」

 

 

 

「流派、東方不敗が奥義――」

 

 

 この医者にとっては、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のを知らなかったことだろう。

 

 

「――超級、覇王、電影弾!!」

 

 

 結果として、スマートクリーナーは第2形態に移行する前に木っ端微塵になったし、RaDの頭目は腹抱えて笑った。

 

 

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