トロフィーを獲得しました 【夜明けの鐘と花吹雪】   作:白鷺 葵

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【諸注意】
1.書き手はACⅥ勉強中のにわか。
2.あまり深く考えないで書いているため、世界観のすり合わせがふわっとしている。
3.ハーメルンに掲載している拙作『問題だらけで草ァ!!』シリーズ×スパロボシリーズ(00参戦作品のみ)×ACⅥのクロスオーバー。
4.『問題だらけで草ァ!!』シリーズは機動戦士ガンダム00×スーパーロボット大戦シリーズ(00参戦作品メイン)×地球へ...のクロスオーバー作品で、前提としてグラハム×刹那♀要素あり(重要)
5.『問題だらけで草ァ!!』シリーズは機動戦士ガンダム00×スーパーロボット大戦シリーズ(00参戦作品メイン)×地球へ...のクロスオーバー作品で、前提としてグラハム×刹那♀要素あり(重要)
6.『問題だらけで草ァ!!』シリーズは機動戦士ガンダム00×スーパーロボット大戦シリーズ(00参戦作品メイン)×地球へ...のクロスオーバー作品で、前提としてグラハム×刹那♀要素あり(重要)
7.『問題だらけで草ァ!!』はZシリーズ、OE、UX、BX、Vを下地にして混ぜたような架空の世界線となっている
8.オリキャラ多数。
9.オリ主(人外)×エア、ラスティ×621♀が主軸となっている(重要)
10.オリ主(人外)×エア、ラスティ×621♀が主軸となっている(重要)
11.オリ主(人外)×エア、ラスティ×621♀が主軸となっている(重要)
12.原作および登場人物のキャラクター崩壊。
13.『◆◆◇』が「虚憶⇒現実」、『◇◇◆』が「現実⇒虚憶」、『◆◆◆』が「虚憶⇒虚憶」、『◇◇◇』が「現実⇒現実」、『◆』が「特殊な意味合いが含まれている」場面転換、及び視点切り替え
14.『*』は「短時間経過での場面転換・視点はそのまま」、『**』及び『***』が「長時間経過での場面転換・視点はそのまま」を意味している

このような作品でよろしければ、どうかよろしくお願いします。

『問題だらけで草ァ!! -Toward the sky- <1st Season>』はこちら(完結済み)<https://syosetu.org/novel/321938/
『問題だらけで草ァ!! -Under the Flag-<2nd Season>』はこちら(連載中)<https://syosetu.org/novel/327713/



やっとキミに会えたね(はぁと)

 

 今回、621に与えられたミッションは『多重ダム襲撃』。

 ベイラムの精鋭部隊レッドガンの番号付き――G4・ヴォルタとG5・イグアスと共に、“解放戦線の重要な拠点であるガリア多重ダムを襲撃する”という内容(もの)だ。

 二大企業の片割れたるベイラム傘下の企業からのミッションは何度か受けたことがあるが、ベイラム本社及び精鋭部隊の番号付きとの協働任務は今回が初めてである。

 

 

『……G(ガンズ)13(サーティーン)か。名前が増えたな、621』

 

『レッドガンの流儀を堪能してこい』

 

 

 此度の任務を受けたことで、621はレッドガンの番号(コールサイン)・G13を貸与された。

 

 出撃前にウォルターから声をかけられた621は、彼の声に感情が乗っているような気がした。喜怒哀楽で分けるとするなら、喜や楽側のものだと思う。

 最も、旧世代の強化人間――ACのパーツとして最適化される過程で脳を焼かれた621では、相手の感情を察する機能はまともに残っていないのであるが。

 ただ、それでも、621の脳裏に焼き付いて離れない光景がある。『それは己の過去ではない』と理解していても尚、否定できない光景がある。

 

 

『この部隊も大所帯になって来たよね。折角だし、部隊名を決めようか』

 

『“交差する者たちの同盟”に因んで、“クロスアライズ”とか、どうだろう?』

 

 

 本来ならば有り得ぬ邂逅。所属も種族も目的もバラバラだった者たちが集った混成部隊。“交差する銀河で結ばれた同盟”の名を冠した混成部隊・クロスアライズが起こしてきた数多の奇跡。

 彼や彼女らは、時には悍ましい妄執と憎悪の輪廻を断ち切り、時には平和な未来を掴むために奔走し、時には星外からの侵略者を打ち払い、時には異種生命体との共生・共存の可能性を拓いてみせた。

 

 

『未来への水先案内人は、このグ■■■・■■カ■が引き受けた!』

 

『ああもう、勝手に先に行くんじゃないよ! このおばか!!』

 

 

 ――暗闇を切り裂くような群青(あお)を見た。

 

 

『これが、ラストミッション!』

 

『この銀河(せかい)に生きるすべての命と!』

 

『人類の存亡を賭けた!』

 

『『『対話の始まり!』』』

 

 

 ――暗闇を照らすように輝く(みどり)を見た。

 

 

『だから、示さなければならない。世界はこんなにも、簡単だと言うことを……!』

 

 

 ――“分かり合う”という理想を最後まで貫き通した女性(ひと)がいた。

 ――そうして、彼女の想いを受けた異種族が咲かせた金の花を見た。

 

 

『――■■(■■■)が咲かせた花の色だ』

 

 

 ――異種族と融合して生還した男が、己の瞳を指さして笑っていた。

 ――木漏れ日の様な色合いは失われても、最愛の人が咲かせた花の色が宿っていた。

 

 

(ウォルターは『強化手術を受けたことによる後遺症』だと思っているようだけど、私はそうは思えない。あれは、もっと別の――)

 

「メインシステム、戦闘モード機動」

 

(――いけない。集中しなくては)

 

 

 COMのアナウンスによって、621は即座に思考を切り替えた。間髪入れず、G1・ミシガンの号令が響き渡る。

 

 

「これよりベイラムグループ専属AC部隊・レッドガンによる作戦行動を開始する。――突入しろ、役立たず共!」

 

 

 それを合図に、G4・ヴォルタ/キャノンヘッドとG5・イグアス/ヘッドブリンガーが先陣を切った。

 僚友に続いて、621もクロスアライズ――軽量2脚・近接戦主体の機体――のブースターを噴かせ、此度の戦場へと飛び出す。

 眼前に展開するMT部隊や固定砲台を二丁拳銃(ダブルトリガー)で撃ち抜く621だったが、そこへ通信が入った。相手はG5・イグアス。

 

 

「独立傭兵かよ。野良犬の世話をしろってのか。レッドガンも舐められたもんだ」

 

「関係ねぇ。俺たちで終わらせればいい」

 

 

 2人の声色から滲み出ているのは、621に対する嫌悪や不快感。“本来なら()()()()()()()()()、或いは()()()()()()()()を受け入れなければならない”という状況に対する不満が下地になっているのだろう。

 特にイグアスの態度からして、『ベイラム傘下の企業依頼をこなしただけの独立傭兵が、本社の精鋭部隊と協働にあたる』という事象は“相当なイレギュラー”であることが推測できた。同時に、協働相手は621のことを端から戦力としてカウントしていないことも。

 実際、ヴォルタとイグアスは独自に動き回っており、手慣れた様子で連携攻撃を繰り出して敵機を撃墜していく。()()()621の方にも気を配っているものの、こちらの援護をしようとはしない。621の実力を値踏みしているのだろうか。

 

 ――不意に621の脳裏を駆けたのは、“金一色の狙撃型MSを追い掛け回す花嫁たち”の光景。

 

 彼女たちの事情はよく分からないが、全員が金一色のMSを操縦する男――そこにいたイグアスからは『金髪サングラスノースリーブ野郎』と罵られていた――に対して愛憎を抱いていた。

 男は悪意の有無問わず、結果的に“花嫁風にアレンジされた自機を乗り回した女性たち”を弄び、苦しめ、泣かせている。文字通りの“女の敵”であり、文字通りの最低野郎だ。

 

 

(どうして今、そんなことを考えたんだろう)

 

 

 621は小首を傾げつつ、レーザーダガーで目標を破壊した。それを視認したウォルターは淡々と事実を告げ、彼の言葉を聞いた621は次の目標へ向かって進路を変える。通信越しから聞こえたのは、僅かながらの動揺と感嘆だ。

 

 周囲を見渡せば、621/クロスアライズはいつの間にかヴォルタ/キャノンヘッドとイグアス/ヘッドブリンガーを追い越していたらしい。最初とは違い、今度は621/クロスアライズが先陣を切る様な形となっていた。僚機はどこか慌てたような調子で621の後を追う。

 次の目標目指して進軍を続ける621の姿に何を思ったのかは知らないが、イグアスがやたらと絡んできた。621を木っ端傭兵扱いし、「自分たちは“壁越え”と呼ばれる特別な作戦への参加が決まっている」とべらべら喋り倒す。最終的にはミシガンに「舌を縫い付けておけ」と叱られていた。

 

 621は強化人間手術を受けた際、体の機能の大半を失っている。その中には声帯も含まれていた。故に、相手側から話しかけられても口頭で返答することはできない。

 ACの身体拡張機能を用いればメッセージを送ることは可能だが、それ以外ではタイピングや筆談が主な手段である。最も、戦闘中にそれらを使ってコミュニケーションを行う余裕はないけれど。

 イグアスの世間話――“壁越え”の詳細について質問したかったのだが、それ関係のメッセージを送る間も無くミシガンによって話題を中断させられてしまった。

 

 

【“壁越え”についての話、もう少し聞いてみたかった】

 

「……無理だろうな。恐らく、その話題はベイラムの機密情報に当たる。今後の依頼次第だろう」

 

 

 2つ目の目標を破壊した後、僅かな小休止の時間を使ってウォルターへメッセージを送る。それを読んだウォルターは、淡々と返事をしてくれた。

 現時点の621は“壁越え”と何ら関係ない部外者だ。ならば、“壁越え”に関わる様な事態にならない限り、詳細が明かされることは無いだろう。

 

 こちらがそんな会話に興じている間に、ヴォルタがミシガンから「批評家はレッドガンに要らない(要約)」等と叱られていた。

 

 

「前線のMT部隊は片付いたようだな」

 

「準備運動は終わりだ。続けるぞ、役立たず共!」

 

「――待て、621。暗号通信が入った」

 

 

 ミシガンの号令に従って飛び出そうとした621であるが、ウォルターに呼び止められた。進軍を止めた621を横目に、ヴォルタ/キャノンヘッドとイグアス/ヘッドブリンガーが追い抜いていく。2人は621が動きを止めたことに気づいたようだが、何も言わずに自分たちの職務を果たすことを選んだ様子だった。

 秘匿通信を送って来た主はルビコン解放戦線。ガリア多重ダムに拠点を置いている陣営であり、二大企業とは敵対している団体である。ベイラムの依頼を受けている621もまた、この団体にとっては敵であろう。そんな621――独立傭兵レイヴンに対して接触してくる理由は何か。

 

 

「単刀直入に言おう。こちらに付き、レッドガン2名を排除して貰いたい」

 

 

 裏切りを唆してきた解放戦線は、『報酬はベイラムの提示した金額の2倍出す』という条件を提示して通信を切った。

 621がウォルターに確認を取ろうとしたとき、今度は別の人間から暗号通信が入る。

 解放戦線がサウンドオンリーだったのに対し、次の暗号通信を送って来た相手は顔と声の両方が表示された。

 

 

「初めまして! あなたが今回、イグ――レッドガンの協働相手をやってる“独立傭兵のレイヴン”ですね? 私の名前はコーデリアといいます!」

 

 

 画面に表示されたのは、誰もが目を見張る様な美女であった。621の目を惹いたのは、ゆるくウェーブがかかった灰桜色の髪と鮮やかなシグナルレッドの双瞼。快活に微笑むコーデリアははきはきとした調子で話を続ける。

 

 

「私、前はイグア――G5の元に押しかけて、非公認でオペレーターをしていたんです。でも、今は色々あって仲違いしちゃって、別行動を取っているんですけどね」

 

 

 だが、話しているうちに、コーデリアの表情と声色が曇り始める。俯き彷徨うシグナルレッドは頼りなげに揺れ、声に僅かな震えが混じった。

 恐らく、明るい調子だったのは空元気だったのだろう。話を続けるうちに、取り繕う余裕も無くなったらしい。何かを躊躇うような沈黙が広がる。

 

 俯いていた顔を上げたコーデリアは話しかけてきたとき同様、笑顔ではあった。だが、それは段々と瓦解していく。

 

 

「イ――G5ったら酷いんですよ!? この前の演習では私のサポートとレッドガン拳法で危機を乗り越えて大活躍したってのに、『お前が勝手なことしたせいで酷い目に合った』って怒ったんです!!」

 

 

 頬を大きく膨らませて、声を荒げて、不服そうに――けれどどこか不安そうに、コーデリアはペラペラと喋り続けた。

 もしかしたら、コーデリアは“感情が高ぶれば高ぶる程口が回りやすくなる”タイプなのかもしれない。

 

 

「『お前に出会ってからずっと碌な目に合ってない』だの『疫病神』だの『耳鳴り女』だのと散々言ってきた挙句、『お前が本当に存在してるってンなら、今すぐ俺たちの前に姿を現せ』って言うんですよ!? 『それが出来ないなら、お前は“何処にもいない”架空の存在なんだ。さっさと俺の頭の中から消えろ』って……!!」

 

 

 コーデリアの言葉に込められた真意は、イグアスから存在否定をされたことに対する悲嘆で満ちていた。それ以上に、コーデリアが仲良くなりたいと声をかけていた人物から『お前は架空の存在』と断じられたことに対する悔しさもあるのだろう。

 会話の内容からして、コーデリアは今の今まで“イグアスと直接的なやり取りをしたことがなかった”ようだ。オペレーターならば『直接相手と顔を会わせられない事情があろうとも、発声機能と分析能力さえあれば、仕事をこなすことは可能』である。

 どのような事情があって“声だけの交流”をしていたのかは分からない。だが、“声だけの交流”で築かれた関係が何らかの理由で拗れてしまい、仲違いへと至ってしまったのであろう。コーデリアにとっては、この仲違いは望まぬ結果だったようだ。

 

 

「……そりゃあ、私、オペレーターとしての適性はそこまでよくないです。良かれと思って武装をパージすれば毎回怒られるし、私がオペレートすると毎回辛勝ですし。そのことを馬鹿にする連中も沢山いますよ!」

 

 

 ヤケになったのか、それとも開き直ったのか。コーデリアは自分の『やらかし』を派手にぶちまけた。コーデリアの話を聞いていたウォルターが何か言いたげに口を開き、躊躇いがちに吐息を漏らしてはため息をつく。一連の動作を何度も繰り返していたが、最後は沈黙してしまった。彼も621のオペレーターとして指示出しする側の人間なので、色々思うところがあるようだ。

 

 思い返せば、ウォルターは“621に対して指示出しはするが、621の選択や行動に対して必要以上に介入しない”タイプだった。特に、621の選択した事象に関しては、非常に尊重しているように感じる。

 旧世代の強化人間など、ろくな扱いを受けないのが当然だと言うのに。ウォルターは621をビジネスパートナーと称しているが、実際は廃棄処分寸前だった621を買い取った“飼い主”だ。どう扱っても問題ないはずなのに。

 

 

「でも、こんなの悔しいです」

 

 

 自身の『やらかし』を列挙していたコーデリアが、震える声で零した。

 それを画面越しから――それでも真正面から見た621は目を丸くする。

 

 

(――あ、泣いてる)

 

 

 画面に映し出されたコーデリアは、くしゃりと顔を歪めただけ。

 涙も鼻水も、体液に類するものは何一つとして流れていない。

 だけれど、621は見た。そうして思ったのだ。“コーデリアが泣いている”と。

 

 

「私が『ここにいる』ことを証明できないから、イグアスに陰口を叩いた連中を黙らせることが出来ない。イグアスも、私が『ここにいる』ことを信じてくれない……!!」

 

 

 ――不意に621の脳裏を駆けたのは、“金一色の狙撃型MSを追い掛け回す花嫁たち”の光景。

 

 彼女たちの事情はよく分からないが、全員が金一色のMSを操縦する男――そこにいたイグアスからは『金髪サングラスノースリーブ野郎』と罵られていた――に対して愛憎を抱いていた。

 男は悪意の有無問わず、結果的に“花嫁風にアレンジされた自機を乗り回した女性たち”を弄び、苦しめ、泣かせている。文字通りの“女の敵”であり、文字通りの最低野郎だ。

 

 

「だから、沢山の人に協力して貰ったんです。イグアスや、イグアスを馬鹿にした奴らに『ぎゃふん』と言わせるため! ――『私はここにいるんだ』って、イグアスに示すために!!」

 

 

 コーデリアは、イグアスのせいで泣いている。同時に、コーデリアはイグアスのために泣いているのだ。

 どのような理由があろうと、経緯があろうと、イグアスは“自分のために心を痛める相手”を傷つけている。

 これに対して何かを思うのは、部外者である621には不相応な行為だ。それは充分自覚している。だけど、それでも――

 

 

(――どうして、彼は、気づかないのだろう)

 

 

 旧世代の強化人間――しかも、ACのパーツとして使い潰すことを想定した調整を行われた第4世代でありながら、イグアスは多くのものを持っている。過去も、名前も、共に歩んできた馴染みの相棒も、何も失っていない/今まで積み上げてきた“イグアス”という人間を取り囲む人々も、彼や彼女たちから向けられる優しい眼差しも。ウォルターに出会うまで何もなかった621とは正反対だ。

 己の過去の一切合切を失くし、強化人間になってまで何をしたかったのかすらも思い出せず、ACのパーツとして使い潰されそうだった621。体の機能の大半を失い、女性としての価値も失くし、型落ち品として廃棄寸前というないない尽くしの中、運よくウォルターに拾われた621。

 

 ――あの“飼い主(ハンドラー)”に見出されたことがどれ程恵まれていたのか、621は知っている。奇跡の価値を知っている。

 

 

「独立傭兵レイヴン。あなたにこんなことを頼むのはお門違いだって分かってます。本当だったら、イグアスのパートナーとして、レッドガンに協力することを勧めるべきだって」

 

 

 コーデリアは通信越しから、真っすぐに621を見つめていた。

 何処までも真剣で真摯な眼差しに射抜かれる。

 

 

「ですが、今の私は“独立傭兵のコーデリア”。1人のAC乗りとして、ひとつの命として、イグアスに喧嘩を売ることを選びました。そのために解放戦線の依頼を受けた」

 

 

 シグナルレッドに込められた感情(モノ)は、いつか見た“花嫁たち”の瞳の中で燃えていた情念とよく似通っている。

 けれど、コーデリアの瞳の奥には、爆ぜるような思慕と情熱が煌めいていた。この世の中で尊いものを宿していると思ったのだ。

 

 

「あなたがよろしければで構いません。ベイラムを裏切り解放戦線側について、私と一緒に戦ってください!」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

【G5イグアス。私はお前が羨ましい】

 

「は? 急に何を言い出すんだお前」

 

「どうした。どこかで頭でも打ったか?」

 

 

 “先陣を切っていた独立傭兵レイヴンが動きを止め、突然妙なメッセージを送って来た”――今頃、メッセージを受け取ったレッドガン2名は混乱の渦に叩き込まれたことだろう。

 実際、このメッセージを受け取ったイグアスが素っ頓狂な声を上げ、ヴォルタは酷く困惑しながらもこちらを気遣う所作を見せる。だが、それに構うことなく621はメッセージを続けた。

 

 

【お前は私に無いものすべてを持っている。過去も、名前も、共に歩んできた馴染みの相棒も、何も失っていない――今まで積み上げてきた“イグアス”という人間を取り囲む人々も、彼や彼女たちから向けられる優しい眼差しも、お前のために心を砕いてくれるパートナーだっている】

 

「うわ怖っ!? いきなりどうしたんだお前!?」

 

【男性としての機能も無事なのだろう? 『“ピー(ドスケベ本のタイトル/年齢指定)”』、『“ピー(ドスケベビデオのタイトル/年齢指定)”』、『“ピー(ドスケベなお店のお姉さん/年齢指定)”』をオカズにしていると聞いた】

 

「お゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!? ななななな、なんでお前がそれを!? ってか、そんな話誰から聞いた!?」

 

「えぇ……」

 

 

 コーデリアから提供された情報をそのまま出力した瞬間、前線でMT部隊と戦っていたイグアス/ヘッドブリンガーの挙動がおかしくなった。彼とその愛機は奇声を上げ、621の方へ向き直る。

 イグアス/ヘッドブリンガーからは羞恥交じりの殺気が向けられ、メッセージを読んでいたヴォルタ/キャノンヘッドは621/クロスアライズとイグアス/ヘッドブリンガーを視界に収めながらじりじりと後退し始めた。

 

 

【私には何もなかった。強化手術を受けた影響で、自分の名前を含めた過去の一切合切を失くした。女性としての価値も、子を産む機能も、過去の“私だったもの”を取り巻いていた人々との縁もだ。ウォルターと出逢わなければ、私は型落ち品として廃棄処分されていただろう】

 

「はァ!? ま、待て待て待て! 情報量が、情報量が多い!」

 

【故に、私は理解できない。何故お前は、お前を大切に想っている人のことを大切に出来ないんだ? ――コーデリアは、お前のために泣いていたのに】

 

 

 そのメッセージを送った瞬間、イグアスは鋭く息を飲む。だが、それも一瞬のこと。イグアスは即座に噛みつくように叫んだ。

 

 

「テメェ、あの“耳鳴り女”の何を知っていやがる!? その名前をどこで聞いた!?」

 

【お前を想う彼女の眼は、とても綺麗だった】

 

 

 【感情を失った私でさえ、『それは尊いものだ』と思ったし、『尊ばれるべきものだ』と思った】とメッセージを続ければ、イグアスは奇妙な唸り声をあげて沈黙する。ヴォルタ/キャノンヘッドは先程よりも速度を上げて後退し、イグアス/ヘッドブリンガーと621/クロスアライズから更に距離を取った。

 

 

【だが、お前はコーデリアを傷つけた。お前を想い、お前のために心を砕き、涙さえ流す女性を】

 

 

 ――621の脳裏を駆けたのは、“金一色の狙撃型MSを追い掛け回す花嫁たち”の光景。

 

 彼女たちの事情はよく分からないが、全員が金一色のMSを操縦する男――そこにいたイグアスからは『金髪サングラスノースリーブ野郎』と罵られていた――に対して愛憎を抱いていた。

 男は悪意の有無問わず、結果的に“花嫁風にアレンジされた自機を乗り回した女性たち”を弄び、苦しめ、泣かせていた。文字通りの“女の敵”であり、文字通りの最低野郎だ。

 

 

【G5イグアス。お前とコーデリアの間に何があったかは知らない。けれど、こんな私でも分かることがある】

 

 

 コーデリアは、イグアスのせいで泣いていた。同時に、コーデリアはイグアスのために泣いていたのだ。

 どのような理由があろうと、経緯があろうと、イグアスは“自分のために心を痛める相手”を傷つけている。

 これに対して何かを言うのは、部外者である621には不相応な行為だ。それは充分自覚している。だけど、それでも――

 

 

【コーデリアを泣かせたお前は、シャア・アズナブルやクワトロ・バジーナと並ぶ“女の敵”だ】

 

 

 故に、621/クロスアライズは二丁拳銃の銃口をイグアス/ヘッドブリンガーへと向ける。

 

 

【――“女の敵”は、ぶちのめさなければならない】

 

 

 今この瞬間、独立傭兵レイヴン/強化人間C4-621の任務内容は変更された。変更後のミッション名は『多重ダム防衛』、雇い主は解放戦線である。

 敵はレッドガンの番号付き――G4・ヴォルタ/キャノンヘッドとG5・イグアス/ヘッドブリンガー。協働相手は機体不明の独立傭兵・コーデリアだ。

 

 

「G4、G5、応戦しろ! G13は貴様らと遊びたくなったようだ!」

 

 

 621の裏切りを察知したミシガンが怒号を飛ばす。その瞬間、解放戦線から齎された情報――こちらに接近する友軍機のマーカーが表示された。位置は丁度、イグアスとヴォルタの真後ろ。

 ミシガンも敵機の乱入に気づいたようで、再びイグアスたちに怒号を飛ばそうと口を開いたようだが、彼の言葉は紡がれなかった。敵機の来襲に気づいたイグアスとヴォルタが振り返る。

 

 ――そこにいたのは、ヘッドブリンガーとよく似た機体だった。

 

 機体のカラーリングは淡い紫色。差し色やデカールに鉄紺色とシグナルレッドが使われている。前者はイグアスの機体の色、後者はコーデリアの瞳の色が由来なのだろう。だが、機体に使われた追加の拡張パーツの影響か、そのシルエットはドレスを着た女性のようだ。デザイン的に、『カラードレスを身に纏っている花嫁』に見えなくもない。

 よく見れば、件の機体の左手薬指だけ違う色――金色――が使われていた。621がそのことに気づいたとき、ウォルターとミシガンが「ひっ」と短い悲鳴を上げた。それから一歩遅れるような形でヴォルタがそれに続き、621・イグアス・コーデリアらの機体を視界に入れながら後退する。

 イグアスの心境を現すかのように、ヘッドブリンガーは呆然と立ち尽くしていた。カメラアイは乱入してきたAC――機体名は“メリノエ”/コーデリアに釘付けになっている。コーデリア/メリノエはブーストを噴かせながらゆっくりと雪原へと降り立ち、左手を大きく振りながら叫んだ。

 

 

「やっと貴方に会えましたね、イグアス!!」

 

「「うわあーッ!!?」」

 

 

 現状を理解したイグアスと、つい先程まで何も言えずにいたミシガンが、2人同時に素っ頓狂な悲鳴を上げた。

 

 

 

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