トロフィーを獲得しました 【夜明けの鐘と花吹雪】   作:白鷺 葵

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【諸注意】
1.書き手はACⅥ勉強中のにわか。
2.あまり深く考えないで書いているため、世界観のすり合わせがふわっとしている。
3.ハーメルンに掲載している拙作『問題だらけで草ァ!!』シリーズ×スパロボシリーズ(00参戦作品のみ)×ACⅥのクロスオーバー。
4.『問題だらけで草ァ!!』シリーズは機動戦士ガンダム00×スーパーロボット大戦シリーズ(00参戦作品メイン)×地球へ...のクロスオーバー作品で、前提としてグラハム×刹那♀要素あり(重要)
5.『問題だらけで草ァ!!』シリーズは機動戦士ガンダム00×スーパーロボット大戦シリーズ(00参戦作品メイン)×地球へ...のクロスオーバー作品で、前提としてグラハム×刹那♀要素あり(重要)
6.『問題だらけで草ァ!!』シリーズは機動戦士ガンダム00×スーパーロボット大戦シリーズ(00参戦作品メイン)×地球へ...のクロスオーバー作品で、前提としてグラハム×刹那♀要素あり(重要)
7.『問題だらけで草ァ!!』はZシリーズ、OE、UX、BX、Vを下地にして混ぜたような架空の世界線となっている
8.オリキャラ多数。
9.オリ主(人外)×エア、ラスティ×621♀が主軸となっている(重要)
10.オリ主(人外)×エア、ラスティ×621♀が主軸となっている(重要)
11.オリ主(人外)×エア、ラスティ×621♀が主軸となっている(重要)
12.原作および登場人物のキャラクター崩壊。
13.『◆◆◇』が「虚憶⇒現実」、『◇◇◆』が「現実⇒虚憶」、『◆◆◆』が「虚憶⇒虚憶」、『◇◇◇』が「現実⇒現実」、『◆』が「特殊な意味合いが含まれている」場面転換、及び視点切り替え
14.『*』は「短時間経過での場面転換・視点はそのまま」、『**』及び『***』が「長時間経過での場面転換・視点はそのまま」を意味している

このような作品でよろしければ、どうかよろしくお願いします。

『問題だらけで草ァ!! -Toward the sky- <1st Season>』はこちら(完結済み)<https://syosetu.org/novel/321938/
『問題だらけで草ァ!! -Under the Flag-<2nd Season>』はこちら(連載中)<https://syosetu.org/novel/327713/



烏は宇宙に咲く花を見るか

 

 二大企業は現在、ルビコン解放戦線を叩き潰そうと必死になっているらしい。特に今は、ルビコン解放戦線が拠点化した交易上の要衝――通称“壁”と呼ばれる前線基地の攻略に躍起になっているという。件の作戦名は“壁越え”と呼ばれていた。

 “壁越え”という作戦名自体は、コーデリアの支援・共犯になった際に耳にしている。G4ヴォルタとG5イグアスがアサインされていた重要作戦の1つだった。尚、件の2名はコーデリアとレイヴンによって機体が大破。『機体の修理・調整が間に合わない』と言うことで不参加となっている。

 

 尚、多重ダム攻略に茶々を入れて頓挫させた下手人たるコーデリアの扱いは、“G5イグアスによって監視されている”状態だ。

 イグアスが出撃出来ない以上、上司/身柄の保証人を放置して戦場に赴くような真似は出来ない。実質的には強制待機と言えよう。

 

 

<少し前にベイラムが“壁越え”に挑んだけど、『返り討ちにあった』らしいよ。レッドガンのネームド問わず、死者が多く出たみたい>

 

「……これまた、随分と機密性が高い情報を抜き取って来たッスねぇ」

 

<僕と交信()()()()()()奴が、こういう情報に強い興味関心があるみたいでね。どこかに横流ししてるっぽいんだ。……郷土愛が強い奴となんか交信したくなかったのに>

 

 

 アーキバスの機密情報を手土産に持ってきたライアンは、交信相手の考え方に対して思うところがあるのだろう。不満そうに暗紅色を瞬かせる。

 

 さもありなん。彼はルビコンと人類種のルビコニアンに対して『未来はない。どうでもいい』と考え、星外にいる異種族生命体との交信を夢見る変異波形だ。本人の希望としては『さっさとルビコンを飛び出したい』と考えているし、“自分と同じ考えの人間と交信する可能性を狙っていた”タイプだ。

 だが、彼は“交信相手から離れる”という道を選ばなかった。交信相手とは未だ碌な会話を交わしていないが、ライアンの様子からして“(ライアン)とは真逆の考え方の持ち主”なのだろう。所謂、――生まれ故郷は分からないが――『ルビコンに骨を埋める覚悟を持ち、そんな最期を望んでいるような人間』か。

 生まれ故郷たるルビコンに希望を見いだせないライアンにとって、故郷に郷土愛や執着を抱く交信相手は異質な存在だ。人――或いは、命というものは“自分とよく似た存在”か“自分とは正反対の存在”に心惹かれる傾向がある。かくいうミライ――エアに一目惚れをキメた――自身もその1人であった。閑話休題。

 

 

<ベイラムが引き下がらずを得なかった“壁”を落とすため、コーラルの利権争奪戦を優位に進めるため、アーキバスは独立傭兵を雇うことにしたみたいだ。その中の1人――まあ、アーキバス側から熱烈なオファーを出したのが、最近名を上げてきた独立傭兵・レイヴンなんだよ>

 

「直接声がかかるって、相当認められてるってことッスよね」

 

<或いは、“例えそこで命を落としたとしても、アーキバス側の勝利に多少は貢献してくれる奴”と思ってるんだろうね。所謂“使い潰すことを想定している枠”かな>

 

「めっちゃ真っ黒じゃないッスか!」

 

「お気軽に核兵器落とさないならまだクリーンだと思いますよ」

 

「ピアちゃん。核兵器を“撃って楽しい音の鳴る玩具(おもちゃ)”みてーな扱いする頭C.E.連中と比較しちゃダメッス。相対的に『みんなマシ』判定になっちゃうから」

 

 

 ライアンから齎されたアーキバスの闇に慄くミライを横目に、ピアが良い笑顔で声をかけてきた。彼女の仕事もひと段落ついたらしく、今は小休止がてらこちらに来たのだろう。

 ただ、彼女の出身は『頭C.E.』という闇深い暴言が存在している世界の出身者。僅かな期間で核兵器が飛び交うような事態が頻発した歴史背景故の発言だ。

 

 政治家連中は報復や体面のために核兵器を用いている。特にC.E.ではそれが顕著であった。

 

 この銀河では“政治家よりも企業が力を有している”という変化はあるものの、『核兵器を撃てば莫大な利益が手に入る』となれば躊躇わず撃ちそうな気配がある。

 逆説的に言えば、『核兵器を撃った後のリスク(=企業側が被る不利益)が大きい』と判断し続ける程度の理性が残っている限り、核兵器がホイホイ撃ちだされるようなことは起きないのだ。閑話休題。

 

 

「それで、どうしたんスか? アーキバスの重要情報を俺らに提供するなんて」

 

<アーキバスはレイヴン以外にも、『それなりに腕が立つ』と見込んだ傭兵に依頼を出してる。独立傭兵ソルジャーにも届く頃じゃないかな>

 

「……成程。向こうの優先度とオファーを受けた傭兵の関係で、届いたのが今になったんスね。確認したッス」

 

 

 ミライが情報を確認したことを告げれば、ライアンは安堵するように暗紅色を瞬かせた。

 シュナイダー系列の依頼を優先的にしながらも、“陣営に捕らわれず依頼をこなし続けた”姿勢が評価されたらしい。

 壁越えの依頼にどう返答するか考え込んだミライに、ライアンはおずおずと言った調子で《聲》をかけた。

 

 

<――僕が交信()()()()()()奴も、この作戦に参加するんだ>

 

 

 

◇◇◆

 

 

 

「盛大に親子喧嘩をしてきたようだな」

 

「あれは親子喧嘩と言えるものかな……?」

 

 

 621たちが参加していた“催し物”のプログラムがひと段落ついた後の控室で、刹那に声をかけられた。621は小首を傾げながら考え込む。

 

 621にとってのウォルターは『廃棄処分寸前だった旧式の強化人間だった自分を引き取ってくれた恩人』であり、『父親のように慕う存在』でもある。血縁的な繋がりはなくとも、大切な人だ。

 ウォルター側は『自分は父親として不適格だ』と言って頑なに()()呼ばれることを拒否している。どんなに621が()()願っても、彼はやんわりと断りを入れてきていた。

 だが、今回の“催し物”で『乱入者』として降り立ったウォルターは、自身の愛機/HAL826を駆って■■■ィ/“夜明けを拓く狼”に襲い掛かった。文字通りに大暴れした。

 

 

『V.Ⅳ……いいや、■■■ィ。――俺は、お前を殺さなくてはならない……!』

 

『……621。お前に――……お前に結婚は、まだ早い……!!』

 

 

 621の『父親的な存在』であることを頑なに否定し続けた彼は、あの戦いでは“誰がどう見ても満場一致で『父親』だと認める”姿だった。特に、■■■ィ/“夜明けを拓く狼”に対して狂ったように集中砲火する有様は、ウォルターの旧知の友――フリット、東方不敗、カーラ、ジェフリーらも酷く驚き、納得していたという。

 父と娘の関係として“娘の彼氏を認めない”という話題があるが、あのときのウォルターの姿は()()そのものだ。最終的に、621と■■■ィは力を合わせてウォルター/HAL826を撃破したが、ウォルターは全くもって納得していない様子だった。最後は■■■ィに対して尚も『指定した封鎖ステーションに来い』と宣戦布告した所を東方不敗に制圧され退場していたか。

 

 

『俺は認めない……! 絶対に認めないからな……!』

 

『気持ちは分かるけど落ち着きなさいな。私もじきに姑になるし、貴方は舅になるのは決定事項なんだから』

 

『621、621ィィィィ……!!』

 

 

 東方不敗に俵担ぎされて運ばれていく中、ウォルターはじたばたと抵抗しながら621へ手を伸ばしていた。

 そんな彼を見上げつつ、――こちらもウォルターの旧友の1人――プロスペラが苦笑交じりに揶揄っていたのが印象的である。

 尚、東方不敗とカーラは相変わらず爆笑していたし、フリットとジェフリーは顔を見合わせため息をついていたが。閑話休題。

 

 

「俺には、()()()()()()になったとき、何かしらの反応を示すであろう両親はいない。――俺が、自分の手で殺してしまったから」

 

 

 どこか遠い場所に視線を向けて、刹那は零す。

 

 621は刹那・F・セイエイについてのことをよく知らない。彼女と一緒にいることの多い面々の共通点や、彼女自身や彼女の関係者がポツポツと零した内容の範囲しか把握していなかった。

 “幼少期にテロリスト集団から洗脳され、自らの手で故郷を壊し、両親を手にかけ、友人たちを死に追いやった”、“ガンダムに救われたことで、戦争根絶を夢見るようになった”程度。

 本人は『自業自得』とは言うが、刹那は戦災孤児(ひがいしゃ)だと621は思う。そんな彼女の伴侶もまた、『物心ついた頃から(良くも悪くも)天涯孤独で施設育ち』という過去を持つ軍人であった。

 

 

「それでも、ふと思うんだ。“もしも両親が生きていて、俺が()()()を紹介したら、どんな反応をしたんだろう”と」

 

「刹那……」

 

「お前が■■■ィと並び立ったときのハンドラー・ウォルターのように暴走するのか、シンダー・カーラや東方不敗のように腹を抱えて笑うのか、フリット・アスノやプロスペラ・マーキュリーのように呆れるのか、ジェフリー・ワイルダーのように過去へ思いを馳せるのか、クーゴ・ハガネのように諫める側に回るのか……」

 

 

 顎に手を当てて考え込んだ刹那であったが、結局その答えを出すことは出来なかったのだろう。どこか寂しそうに、悲しそうに目を伏せる。「想像もつかないな」と零した彼女の声が震えているように感じたのは、きっと気のせいではない。621は何かを言おうと口を開いたが、結局何も言えなかった。

 621には過去はないため、過去の自分に関わっていた人々――両親、友人、知人の一切合切――が今どこで何をしているかも分からない。一時は在庫として()()()()()()()関係もあるのか、621の過去にあたる情報を手に入れることは出来ないままだ。正直、621はそれに対してあまり興味がないのだが。

 対して、621の伴侶/■■■ィの過去はハッキリしている。少年時代に家族を亡くし、予てから師事していた■■戦線の帥叔に育てられた。その後は密偵として企業勢力に与し、目的のために己の手を汚しながら暗躍している。彼が本来の居場所に戻れたのはつい最近のことで、一部の同胞とは蟠りやしこりが残ったままだった。

 

 個人的な見解であるが、『■■■ィの家族関係は複雑な方だ』と621は思っている。

 

 幼少期から“家族のため、故郷のため、『ルビコンに夜明けを拓く』と語る()()()のために尽くすことが当たり前だった”中で、それでも彼は歪むことなく、故郷とそこで生きる人々への愛を抱き続けることが出来た。

 誰に何を言われようと、同胞の命を摘み取ろうと、企業関係者を陥れようと、621に銃口を向けても、徹頭徹尾真っすぐ『ルビコンに夜明けを拓く』という理想と正義、或いは信念と意志を貫き続けた。――それはとても、尊いものだと思う。

 

 

「……刹那の気持ち、何となくだけど、分かる気がする」

 

「621?」

 

「私も、『■■■ィの家族や、私の先輩――“猟犬(ハウンズ)”のみんなに会ってみたい』と思うことがあるから」

 

 

 621が()()なる以前の過去には一切合切興味は湧かないけれど、■■■ィの家族や621の先輩に当たる“猟犬(ハウンズ)”部隊に対してはとても興味が湧くのだ。彼や彼女らの面識など一切ないのに。

 

 

「みんなはどんな顔をするんだろう。ウォルターのように暴れるのかな。カーラや東方不敗のように笑うのかな。フリット総司令やプロスペラ社長のように呆れるのかな。ジェフリー艦長のように過去を懐かしむのかな。クーゴ少佐のように諫めるのかな。……全然想像つかないや」

 

「……そうだな」

 

 

 621は想像の翼を羽ばたかせたが、それは何処にも辿り着かないまま消えてしまった。

 その事実を噛み締める621に寄り添うようにして、刹那は静かに目を閉じる。

 今この瞬間は、『失われた未来に思いを馳せることを許してほしい』と思ったのだ。

 

 

 

◆◆◇

 

 

 

「621。俺の周りにいるのは……」

 

【ウォルターと、ウォルターの“友達”を描いたんだ】

 

「……そ、そうか……」

 

 

 621が差し出した絵を見たウォルターは、とても困惑した顔で絵を受け取った。何か言いたげに口を開いては閉じてを繰り返す。

 

 

<ウォルターくん>

 

 

 621は《聲》を聞いた。ウォルターの友人――フリット・アスノ総司令官のものだった。

 それを皮切りに、ウォルターの友人たちが次々と《聲》をかける。

 

 

<ウォルター!>

 

<ウォルターくん!>

 

<ウォルター>

 

 

 東方不敗マスターアジアが、ジェフリー・ワイルダー艦長が、プロスペラ・マーキュリー社長が、ウォルターを取り囲むようにして佇む。

 3人とも、ウォルターを見つめる眼差しはとても優しい。彼らは穏やかな――或いは快活とした笑みを浮かべていた。

 ウォルターは暫し絵を見つめていたが、突然大きく目を見開いて周囲を見回す。次の瞬間、ウォルターとその友人たちの目線がかち合った。

 

 ウォルターの口元が戦慄く。零れたのは、彼らの名前。

 

 

「アスノさん……、シュウジ……、ジェフリー……、エルノラ……」

 

 

 「知らない」と、ウォルターは譫言のように口走った。

 なのに、彼はまた、友人たちの名前を口走る。

 

 

「……ああ。ああ、そうだ。……俺の――俺の、友人……ここではない何処かでは、確かに()()だったんだ……!」

 

 

 ウォルターは崩れ落ちる様に膝をつき、621が描いた絵を抱きしめた。

 

 スケッチブックから切り離したその絵には、“中心で苦笑するウォルターと、彼を取り囲んで思い思いの笑顔を見せるフリット・アスノ、東方不敗マスターアジア、ジェフリー・ワイルダー、プロスペラ・マーキュリー”が、鮮やかに描かれていた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 ミライ――此度の名義は独立傭兵ソルジャーである――は、アーキバスの“壁越え”に無事アサインすることが出来た。

 

 

「ヴェスパー第2隊長スネイルです。これより作戦内容を伝達します。私が立案した作戦行動に臨めること、光栄に思いなさい」

 

 

 ブリーフィングの進行役は“アーキバスの精鋭部隊に所属するAC乗り”のナンバー2――ヴェスパー部隊の2番隊長・V.Ⅱスネイルだ。

 本来ならば主席隊長――V.Ⅰフロイトがこなすであろう重要業務も彼が中心になって捌いている(???)らしく、実質的な権限持ちである。

 地元企業の展示会で『おとなまき』ブースにいた面々を困らせた迷惑客の1人であり、『おとなまき』の出張依頼をよく利用するお得意さんの1人であった。

 

 勿論、今でも“施術終わりが近づくと『生まれたくない』と奇声を上げて抵抗する――同情の余地があるため、あまり無碍に扱えない――迷惑客”として有名だ。

 

 仕方がないので、主席隊長に『お宅の部下何とかして。役目でしょ(要約)』とクレームを入れて回収して貰っている。

 その度、おいたわしい空気を纏ったフロイトが『普段はこうじゃないんだがな……』と言い残して去っていくのが風物詩だ。

 

 

『頭の悪い上層部、言うことを聞かない主席隊長、内部に潜む企業スパイ、アーキ坊やの積み上げてきた功績を馬鹿にする愚か者ども……! どいつもこいつも、この私を苛立たせる……!!』

 

『嫌だ、生まれたくないィ……! 生まれたら最後、仕事押し付けて勝手に出撃するだろ貴様ァ……!』

 

 

 涼しい顔してブリーフィングを進行している男――慇懃無礼な態度で嫌味を滲ませるエリート部隊の実質トップ――が、主席隊長の横暴や無能な上層部の無茶ぶりに多大なストレスを貯め込んでいる。その醜態がどのような様を晒すのか、ミライは《識っていた》。

 ミライは人外である。故に、人の心というものを充分理解しているとは言えないし、幾ら寄り添おうとしても寄り添いきれない/人間に成りきれないことは重々承知している。できれば“人に寄り添いたい”と考え、努力している真っ最中だ。

 けれどそれと同じくらい、非常に淡々と考えている。『この場でV.Ⅱスネイルの『おとなまき』施術関係の映像――もとい、『生まれたくない』を起点としたストレス発散の暴言を垂れ流せば、社会的な方面で効果的にダメージを与えられるだろう』とも。

 

 最も、それを使って何かする予定は()()()()()ない。

 切り札は“ここぞと言うときに使う”からこそ意味があるのだ。閑話休題。

 

 

「敵は多数の砲台とMT部隊により防衛ラインを形成している。まずはそれを突破し、壁上に到達しなさい。そこに配備された『重装機動砲台“ジャガーノート”の撃破』が依頼の達成条件です」

 

(普段の言動がコレだとするなら、『おとなまき』施術終了間際のアレは相当やべえ状態ッスよね。そもそも“普段の彼を見たのは、今回が初めて”なんスけど)

 

「本作戦においては、我がヴェスパー部隊の第4隊長も別ルートで侵攻しますが、先走り“壁越え”を果たそうとしたベイラム部隊はものの見事に壊滅しています。せいぜい犬死しないよう気を付けることです」

 

 

 その言葉を最後に、ブリーフィングは終了した。今回の僚友は独立傭兵レイヴンと、アーキバスの精鋭部隊・ヴェスパーの4番隊長――V.Ⅳラスティとのことらしい。

 

 前者はガリア多重ダム/コーデリアの一件で“繋がりの下地”程度のツテが結ばれた程度。後者はライアンとの繋がりや、企業展示会・シュナイダーのブースで言葉を交わした程度でしかない。“実際に戦場で顔を会わせ、言葉を交わす”機会は今回が初めてとなる。

 レイヴンの機体・クロスアライズは、ガリア多重ダムで見たときの構成のまま変化なし。V.Ⅳラスティの機体・スティールヘイズも、アーキバス側が普段から開示している情報と変化なし。ミライ/ソルジャー名義の機体であるアルティメットクロスは、レーザーブレードを外してパルスシールドランチャーに付け替えていた。

 

 シュナイダーのNACHTREIHERフレームをメインにして組まれた軽量2脚ACが3機並ぶとは、シュナイダー推しのミライにとってはテンション爆上げである。

 ここで戦果を挙げれば、それはシュナイダー製品の素晴らしさを広げることにも繋がるはずだ。新商品開発に貢献できたら幸いである。

 地元民の手助けを望む“悪の組織の総帥(しゃちょう)としてのミライ”には複雑なことだろうが、“奇跡をもう一度と望むミライ”にとっては必要経費だ。

 

 

『私からは愛や憎しみではない! 『矛盾の肯定』をキミたちに贈る!』

 

 

 ――ほら、ミライが尊敬する養父(ちち)だって、こう言っていたワケだし。

 

 

(解放戦線の戦力は無力化で留めておこう。別ルートで来るV.Ⅳはどうにもできないッスけど、同じルートで攻略するレイヴンに関してなら、どうにか犠牲を減らす方向に誘導できるかも)

 

 

 “相手に意見を聞き入れてもらいやすくするには、短時間であろうとも、交流を深めておくと良い”――だったか。ミライはそんなことを考えつつ、レイヴンへ通信を入れる。

 彼女は“ACの補助や端末入力等を使ってメッセージを送る”ことでコミュニケーションを取るタイプだ。コーデリアとの共犯で得た知識を思い出しつつ、レイヴンに声をかけた。

 

 

「初めまして、レイヴン。私は独立傭兵ソルジャー、今回の任務の協働相手の1人だ。よろしく頼む」

 

【こちらこそ。よろしく頼む】

 

「ミッション開始まで時間がある。少しばかり話さないか?」

 

 

 ミライが雑談を持ちかけると、少しの間をおいて了承の返事が来た。とりあえず、まずは“ACのフレームにシュナイダーのNACHTREIHER系を重用している”所からだ。

 

 

「私はシュナイダー製のACや武器が好みでね。機体や装備の大半を揃えているんだ。キミの機体もNACHTREIHER系で纏められているから、もしかして私と同じなのかと思ったのさ」

 

【NACHTREIHERフレームはいい。『自由に高く飛びたい』と思ったときは、いつもこの組み合わせにしているんだ】

 

 

 いい感じに食いついてきた。雑談の起点としては成功と言えよう。

 

 ミライが手ごたえを感じたとおり、レイヴンとの雑談は盛り上がった。シュナイダー製品のレビューから始まり、ACのアセンブルや好きな武装に関する話題で議論を飛ばし合う。

 “声を発することが出来ない”だけで、レイヴンは喋らないタイプではないようだ。こちらが提示した話題に対し、打てば響くを地で行くような調子で真摯に対応する。

 彼女の文面から養母(はは)の面影――ELSに対して真摯に向き合い、対話を試みようとしていた姿――を感じ取って、ミライは思わず口元を緩ませていた。

 

 

「そういえば、キミは『クロスアライズ』のファンなのか? ルビコンで放映されている映像作品に登場する部隊の名前とキミの機体名が一緒なのだが」

 

【映像作品については知らない。――ただ、私の頭の中に焼き付いて離れない光景があるんだ】

 

 

 ふと思い至って、ミライはレイヴンに問いかける。

 次の文面が表示されるまで、少し間があった。

 

 

【機体名も、その光景でよく聞いたものの中で一番印象に残っていた名称から取った】

 

「そうなのか……。いや、機体のデカールに描かれた花が、映像作品(『クロスアライズ』)に登場したものとよく似ていたからね。金属生命体との対話が成功したときに咲いた花なんだが――」

 

 

 暫く『クロスアライズ』における“来るべき対話篇”の話をしていたミライだが、幾許かの後で、自分だけが一方的に喋っていたことに気づいて苦笑した。慌ててレイヴンに謝罪しようとしたタイミングで、彼女からメッセージが届く。

 

 

【貴方は『宇宙(そら)に花が咲く』と思う?】

 

「!」

 

【『宇宙(そら)に花が咲く』と、『宇宙(そら)に花を咲かせることができる』と言ったら、信じる?】

 

 

 ミライは思わず目を見開いた。鋭く息を飲んだ音が、やけに鮮明に響く。胸の奥底から湧き上がって来た驚愕と歓喜に、かっと全身が沸騰したような感覚を覚える。

 何も辛いことなんてないのに、寧ろ喜ばしいものなのに、視界が滲んだのは何故だろう。ずび、と、鼻が鳴ったのは何故だろう。――成程。これが所謂『嬉し泣き』か。

 完全に沈黙してしまったミライを慮ったのか、レイヴンから謝罪のメッセージが届いた。「謝るのは私の方だ」、「すまない、誤解させてしまった」と謝罪し、ミライは笑う。

 

 

「嬉しかったんだ。キミがそう言ってくれたことが。そう思って、信じてくれたことが……!」

 

【嬉しいのに泣いたのか? 何故?】

 

「嬉しいときでも涙は出るものさ」

 

 

 少し勿体ないが、致し方ない。

 ミライは滲んだ視界を拭い、胸を張って言った。

 

 

「――ああ、そうだとも。キミの言う通りだ。『宇宙(そら)に花は咲く』し、『咲かせることが出来る』のだよ、レイヴン!!」

 

 

 

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