トロフィーを獲得しました 【夜明けの鐘と花吹雪】   作:白鷺 葵

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【諸注意】
1.書き手はACⅥ勉強中のにわか。
2.あまり深く考えないで書いているため、世界観のすり合わせがふわっとしている。
3.ハーメルンに掲載している拙作『問題だらけで草ァ!!』シリーズ×スパロボシリーズ(00参戦作品のみ)×ACⅥのクロスオーバー。
4.『問題だらけで草ァ!!』シリーズは機動戦士ガンダム00×スーパーロボット大戦シリーズ(00参戦作品メイン)×地球へ...のクロスオーバー作品で、前提としてグラハム×刹那♀要素あり(重要)
5.『問題だらけで草ァ!!』シリーズは機動戦士ガンダム00×スーパーロボット大戦シリーズ(00参戦作品メイン)×地球へ...のクロスオーバー作品で、前提としてグラハム×刹那♀要素あり(重要)
6.『問題だらけで草ァ!!』シリーズは機動戦士ガンダム00×スーパーロボット大戦シリーズ(00参戦作品メイン)×地球へ...のクロスオーバー作品で、前提としてグラハム×刹那♀要素あり(重要)
7.『問題だらけで草ァ!!』はZシリーズ、OE、UX、BX、Vを下地にして混ぜたような架空の世界線となっている
8.オリキャラ多数。
9.オリ主(人外)×エア、ラスティ×621♀が主軸となっている(重要)
10.オリ主(人外)×エア、ラスティ×621♀が主軸となっている(重要)
11.オリ主(人外)×エア、ラスティ×621♀が主軸となっている(重要)
12.原作および登場人物のキャラクター崩壊。
13.『◆◆◇』が「虚憶⇒現実」、『◇◇◆』が「現実⇒虚憶」、『◆◆◆』が「虚憶⇒虚憶」、『◇◇◇』が「現実⇒現実」、『◆』が「特殊な意味合いが含まれている」場面転換、及び視点切り替え
14.『*』は「短時間経過での場面転換・視点はそのまま」、『**』及び『***』が「長時間経過での場面転換・視点はそのまま」を意味している

このような作品でよろしければ、どうかよろしくお願いします。

『問題だらけで草ァ!! -Toward the sky- <1st Season>』はこちら(完結済み)<https://syosetu.org/novel/321938/
『問題だらけで草ァ!! -Under the Flag-<2nd Season>』はこちら(連載中)<https://syosetu.org/novel/327713/



※作中の一部には、プロパガンダ的な表現が含まれています

 

 ゆっくり、ゆっくり、包帯が解かれていく。

 

 顔――特に目を覆うそれが取り払われたのを感じた直後、程なくして聞こえた「目を開けてごらん」という言葉。621はそれに従い、ゆっくりと目を開けた。

 目/視力は問題なく機能しており、自分の真正面に座っている医者やハンドラーたるウォルターの姿を肉眼できちんと捉えることができた。

 

 

「要望通り、目に関しては“ACでの戦闘に対応するための処置”を施させてもらった。どうだろう? 何か異常は?」

 

【問題ない。きちんと機能している】

 

「そうか。それなら良かった」

 

 

 621の返答を聞いた医者は、安堵したように表情を綻ばせた。隣で推移を見守っていたウォルターも――微々たる変化ではあるが――静かに目を細めたような気がする。心なしか、口元も緩んでいた。

 

 医者は621へ手鏡を差し出した。彼に促された621は、手渡された丸型の手鏡を覗き込む。医者曰く『元々の顔を再現した』とのことらしい。そこにいたのは1人の少女だった。

 元々の色彩だったのか、あるいは強化人間手術時に用いられたコーラル由来の技術の影響か、瞳は赤味を帯びたソレイユだ。()()()()()()()()()()()()色彩が目を惹く。

 髪は背中に付く程度のロングヘア。毛色はほぼ白に近いが、光の当たり方によっては薄っすらとペイルブルーを帯びているように見えた。これも、元々の色彩か手術の影響かは分からずじまいだ。

 

 621は改めて自分の顔を観察する。美醜への関心が薄い621にはよく分からないが、少なくとも、いつぞやの“戦勝会”のときのような出来事――自分を招待したラスティが見せた後悔の表情、彼が自分を呼び出した店の客から好奇と蔑みの眼差しや言葉を向けられて居心地が悪くなる等――は起きなくて済むだろう。

 ラスティはあの“戦勝会”で621を見世物にしてしまったことを非常に悔いていたし、621が楽しめないような出来事が起きてしまうような状況を作り出してしまったことで己を責めていたように思う。……ああいう顔はして欲しくない。上手く言葉に出来ないが、彼の悲しそうな顔を見ていると、何故だかこちらが申し訳ないような、重苦しい気持ちになってしまうのだ。

 

 

(これなら、きっと――)

 

「暫くは、手術で消費した体力を戻さなきゃな。顔の筋肉を動かすリハビリもしないと」

 

 

 「笑った顔、きっと綺麗だろうな」と医者は笑う。隣に居たウォルターも真顔で頷いていたが、すぐに普段通りの仏頂面に戻っていた。

 医者の言葉を思い返しつつ、621は鏡に映る自分の顔を改めて見つめる。ウォルターよりも固く、感情の色が希薄なソレ。人形と言われても頷けるような有様だ。

 試しに、621は自分の頬を無理やり押し上げてみた。口の形はいびつなV字型に変わる。自然な笑顔とは言い難いが、人形の様な面よりはマシになっただろうか。

 

 

「621……」

 

【どうしたんだ、ウォルター】

 

「お前は、そんな顔をしていたのだな」

 

 

 こちらの名前を読んだウォルターは、どことなく感慨深そうな様子だった。自分の顔に頓着しない621には分からないし、何がウォルターの琴線に触れたかも理解できないが、どことなく穏やかな雰囲気でこちらに接してくるハンドラーの様子に心がむずむずする。

 不快なものではない。何となくだが、心が温かくなるような感覚。人間としての機能があれば、これをきちんと言語化することが出来たのだろうか。621は小首を傾げる。そんな621の様子を見ていたウォルターは静かに目を細めた。

 

 

「焦らなくていい。お前のペースで、ゆっくり取り戻していけばいいんだ」

 

 

 ――多くの人々は、ウォルターのことを悪しきように言う。

 

 『旧世代の強化人間ばかりを買い集め、過酷な仕事を押し付けた挙句使い潰す』という悪評が蔓延していることは知っていた。その悪評をウォルター自身が否定しないで沈黙を保っていることもあって、悪評や汚名を雪ぐ機会がないことも。

 621は何度か反論を試みようとしたが、相手から――どのような感情が込められていたとしても――信じて貰えなかったり、ウォルター本人から止められたり遮られたりしてしまう。幾ら621が【ウォルターが酷いことを言われているのが許せない】と訴えても、彼は『いいんだ』としか言わない。

 強化人間の施術を受けた際の副作用か、或いはウォルターと出会う以前の所有者たちの意向か。ACを駆るための必要最低限の機能しか残っていない621でも、“廃棄寸前だった621を救ってくれた命の恩人を悪く言われて黙っていられない”程度の情緒はある。

 

 ウォルターはそれを『良い傾向だ』とは言うが、621がウォルターを慕っていると態度や言動で伝える度に悲しそうな様子で目を伏せるのだ。

 

 621はウォルターに褒められると胸がぽかぽかするし、ウォルターが621のために心を砕いてくれるのを見るとむず痒い気持ちになる。それは決して、悪いものではない。

 だから、621もウォルターへ同じものを返したいと願って真似をしてみる。だが、何故か――何となくだが――それが悉く失敗/彼を悲しませるような結果になっているような気がするのだ。不思議なことに。

 

 

【いつか、私が人生を買い戻せる日が来たならば、貴方やV.Ⅳラスティを喜ばせるような言葉や行動が出来るようになるんだろうか】

 

 

 621のタブレットに表示された文面を見たウォルターは一瞬目を見張った。

 が、文面の全てを読み終えた途端、雰囲気がガラリと変わる。

 最初が感極まったような調子で、今は疑問と困惑が前面に押し出されていた。

 

 重々しい空気を纏ったウォルターが、恐る恐ると言った調子で621に問いかける。

 

 

「…………何故、V.Ⅳの名前が出てくるんだ?」

 

【この前の“戦勝会”で、彼を困らせてしまった。その顔を見たとき、悲しそうな顔をしていたウォルターのことを思い出して、胸が苦しくなったんだ。それで、貴方のときと同じように、『そんな顔をして欲しくない』と思ったから】

 

 

 【何か問題があったのだろうか】と問うと、ウォルターは暫し難しそうな顔で唸っていた。621では聞き取れなかったものの、彼は「ああでもない」だの「こうでもない」だのと小声で呟き葛藤していたが、最後は渋い顔をして一言。

 

 

「………………悪い虫が付かなければいいが」

 

【虫?】

 

「……いいや、何でもない。こちらの話だ。お前は何も気にしなくていい」

 

 

 「V.Ⅳ、ラスティ」――“壁越え”で協働した僚友の名を何度も復唱していたウォルターの表情は、どこまでも険しく鋭かった。

 621の頭に焼き付いている光景の1つ――“ウォルターが謎のACを駆って、ラスティを強襲する”というものだ――で見たものとほぼ同じだった。

 

 

 

***

 

 

 

「やあ、レイヴン。――いいや、621()()()()と呼ぶべきかな」

 

 

 手術が終わり、顔を晒して歩き始めてすぐのこと。

 聞き覚えのある声に振り返れば、見知らぬ青年が立っていた。

 

 黒髪と浅黒い肌が特徴的な出で立ちは、何かのアーカイヴで“地球圏の中東で多く見られる民族的な外見だ”と記載されていたように思う。

 ただ、顔の右側からは金属部品らしきものが露出していた。どういう原理や経緯があったかは分からないものの、彼の右半分は金属製の義体に置換されているらしい。

 621やウォルターに対して親し気に手を振る様子からして、彼にとっての自分たちは好意的な印象を抱かれているのであろう。621がそう結論付けたのと、ウォルターが相手の名を呼んだのはほぼ同時。

 

 

「独立傭兵ソルジャーか」

 

「貴方が彼女のオペレーターのハンドラー・ウォルターか。2人揃って、生身では『初めまして』だなぁ!」

 

 

 ニコニコ笑顔を浮かべる独立傭兵ソルジャーの笑い方は、酷く既視感がある。

 

 621の脳裏に焼き付く光景の中に、彼とよく似た笑い方をしていた人物がいた。顔の左側を覆う傷跡――恐らく、怪我の種類は火傷だろう――が目立つ、金髪碧眼の白人男性。傷跡が無い頃から共に戦い続けている光景もあれば、621が出会った時点で既に傷を有していた光景もあった。

 木漏れ日の様な色彩を宿していた男性は、紆余曲折の末、美しい深緑の瞳を失っている。代わりに得たのは、彼の伴侶たる女性が宇宙(そら)に咲かせた黄金色の花と同じ色彩だった。傷跡や前髪の一部は、彼と融合した金属生命体の特色である銀色に変貌している。

 

 

『この髪と、顔と、瞳の色は、私の()()()()()だ』

 

『何と言っても、■■(■■■)が咲かせた花の色とお揃いなのでね!』

 

 

 自信満々に言い切った男性の名前を、621は《()っている》はずだ。だが、何故か今は、一歩手前でせき止められてしまったかのような感覚があった。――要するに、言葉にできないのだ。

 満面の笑みを浮かべ、ありったけの熱意や想いを込めた口調で、伴侶との思い出を語る男性の姿。あまりの勢いに数歩後ずさる人々と、ため息をつく彼の副官の姿が脳裏を過る。

 水を得た魚のようにワンマントークショウを続ける男性を窘めたり止めたりするのは、副官の東洋人男性や男性の伴侶たる革新者の女性だった。彼や彼女らのやり取りは、自軍部隊の恒例行事と化していたっけ。

 

 

(そういえば、件の男性が話をしているとき、彼から距離を置いていた人間の中にはウォルターやラスティも含まれてたな)

 

「――舐めて貰っては困るな」

 

 

 621がそんなことを考えたのと、放映中の『クロスアライズ』に該当者が映し出されたのはほぼ同時。

 

 “彼”の姿を唖然と見守ることしかできない機械の申し子たちなど目もくれず。

 予期せぬ乱入に目を丸くしていた革新者に対し、蕩けるような微笑を浮かべた後。

 己の在り方を――或いは己が掲げるモノを誇るかのように、盛大に叫んだ。

 

 

「私の愛は、()()()だ!!」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「――『カガリの誕生日まで、あと3日しかない』だと!?」

 

 

 数か月前に放送されてからルビコンで大人気の映像作品へとのし上がった『クロスアライズ』は、アーキバスの食堂でも放送されている。

 今回の話は、【ガンダム】と称されるMSを操る軍人の1人/アスラン・ザラを主軸にした与太話(イベント)(パート)の単発ものだ。

 

 ガンダムというMSの定義は機体を所持している人間や組織によって大きく違う。唯一の共通点は“件の機体名を冠したMSは、パイロットと共に、世界を変える程の偉業を成す/成した”ことだろうか。とある銀河では“救世主となった機体が冠していた名前”だったし、別の銀河では“太陽炉が搭載されていたMS”だったし、別の機体は“憎い相手を族滅させるための剣として生まれた機体”だった。

 アスランが搭乗しているガンダムは3番目の系譜から生まれ、発展してきた機体である。彼の世界は『クロスアライズ』側からはC.E系列――遺伝子非操作人間(ナチュラル)遺伝子操作人間(コーディネーター)が憎しみ合って殺し合いを演じていた世界だと認識されていた。実際、映像作品を見ていたラスティもそう思っている。

 憎いあん畜生を殲滅するためならば、比較的お気軽に核兵器を投下する連中ばっかりだ。“遺伝子操作人間(コーディネーター)と強化人間のアレコレを比較し、良いところを取り込むことで企業に貢献できないか”と思案していたスネイルでさえ頭を抱え『馬鹿の極み』、『無能な上層部でもここまでではない』、『こういう手合いは排除しなければ巡り廻って企業が滅ぶ』と唸るレベル。

 

 ラスティがそんなことを考えている間に、『クロスアライズ』の与太話パートは進行していく。アスランの乗るMSが八面六臂の活躍を見せながら、敵機体を文字通り一掃していた。

 

 

「『恋人の誕生日を忘れる』ってのはよくあることですけど、あの人の恋人っていち国家元首でしょ? 『国家元首の誕生日を忘れる』ってあり得ます? カレンダーに記載されたり、テレビで大々的に取り上げられてるはずじゃありません?」

 

「大分厳しいことを言うね、ペイターくん。私はどちらかと言えば、立場上近しいアスランくん側に寄ってしまうなあ……」

 

 

 良くも悪くも素直過ぎるペイターの発言に対し、裏方の長として多忙なホーキンスが苦笑する。

 

 

「なまじ、アスランくんは良くも悪くも()()()()()。どれ程の激務を突っ込まれても、それを片付けてしまえるだけの能力があるんだ。故に、そこを見込まれて仕事が増える。アスランくんはさらに、増えた分の仕事を問題なく片付け完遂できてしまえるから――とまあ、文字通りの堂々巡りになってしまうワケだ」

 

「でも、彼の職業は軍人です。自分が所属する組織や団体だけではなく、各国の世界情勢も把握しておく必要があるでしょう。彼の恋人であるカガリ・ユラ・アスハは国家元首だし、オーブ国民の熱狂っぷりからして、彼女の生誕祭を取り上げないでいるわけがない。3日前まで気づかない方が問題なのでは?」

 

「ペイターくん。アスランくんはまだ10代後半だ。幾ら軍人でエリート街道を突き進んできたとはいえ、まだまだ若い。スケジュール管理や優先順位を間違えてしまうことだってある」

 

「能力的にも行動的にもやりたい放題してるから忘れてましたけど、そういえば彼、私より大分年下でしたね。――うっわ、凄いな。スパイアクションでRTAでもしているのか?」

 

「だとしたら、バグ技禁止のルールだろうね」

 

 

 ホーキンスとペイターが雑談に耽っている間にも、アスランの機体は文字通りの無双を繰り広げている。画面端に表示されたタイマーもまた、無常にカウントダウンを進めていた。

 敵機全滅からの任務完了時点で、残り時間は12時間を切る。後始末をすれば間に合わないのは確定だが、このままMSをかっ飛ばして現地に降り立てばギリギリ間に合いそうだ。

 

 

「見事な対応だったぞ、アスラン一佐!」

 

「ご協力感謝します、()()()()少佐。それでは俺はこれで!」

 

「ああ。武運を祈らせて貰おう!」

 

「お互いに!」

 

 

 アスランの乗ったMSは、紆余曲折の末協働することになった僚機――地球連邦軍の所有する可変機・ブレイヴ指揮官用試験機に対して小さく手を振った後、そのままオーブへ進路を取った。対して、ブレイヴは空を切り裂くようにして反対方向へと飛んでいく。

 アスランが『カガリの誕生日パーティに間に合うため』に全力でスパイアクションRTAを走っていたとするならば、彼の僚友は『ホワイトデーで恋人に靴を贈って喧嘩になった+恋人の誕生日をまともに祝えなかったことの埋め合わせをするため』にアクションRTAを走っていた。更に言えば、他にも何名かを巻き添えにしている。

 地球圏の文化の一つに“ホワイトデーに靴を贈ることの意味は、『(自分の元から)飛び立って自由になってほしい(意訳)』”というものがあることをラスティが知ったのも、この与太話(イベント)(パート)が由来である。件の話を零したのも、アスランと共闘した僚機を操るパイロットだった。

 

 

『私は捨て置かれても構わないんだ。――()()()が前に進むために、私を切り捨てる必要があるのなら』

 

『“未来への水先案内人”として彼女の一助になれたのなら、これ以上ない喜びだ』

 

 

 ラスティは、『クロスアライズ』を熱心に視聴している側の人間ではない。故に、作中登場人物に関する知識もそこまで多くはない。

 ただ、今回の与太話(イベント)(パート)から目に留まった登場人物がいた。仕事がひと段落したら、改めて彼の背景を追いかけてみようと思うくらいには。

 

 しかし、彼の出番はここで終了らしい。今回の与太話(イベント)(パート)の主役はアスラン・ザラ。恋人の誕生日に間に合うよう、『潜入任務を僅か2日で片付けて、国家元首の誕生日という記念式典に間に合うよう帰還する』と言う馬鹿みたいな難易度のミッションを達成するため奮戦する話だ。

 場面はクライマックス。オーブの国家主席・カガリの誕生日を祝う式典が始まる直前、彼女の命を狙ったテロリスト部隊が展開する。彼女の警護を行っていた軍人たちが迎撃のために動き出そうとしたその瞬間――残りタイマーが15分を切ったタイミングで、アスランの乗るMSが会場に乱入した。

 切った張ったの大立ち回りの末、アスランは単騎でテロリストを鎮圧。転がり出るような調子でコックピットから飛び出した。アスランがカガリの元に駆け寄り彼女を抱きしめたのと、タイマーが0になったのはほぼ同時。彼が己に課した過酷なミッションは成功したのだ。

 

 ――成功、したのだが。

 

 

「ところでアスラン。カガリへの誕生日プレゼントは?」

 

「あっ」

 

 

 見事なオチがついた。恋人の誕生日に帰還することを優先した結果、プレゼントのことをすっかり忘れていたのである。狼狽して謝り倒すアスランに対し、彼の恋人は「お前が無事に帰ってきてくれただけでいい」とはにかんだ。

 それを聞いた関係者たちが黄色い声を上げ、或いは穏やかに笑ってその光景を見守る。EDテーマソングが流れ始める中、この与太話(イベント)に登場した『クロスアライズ』関係者の後日談が表示されていった。

 

 その中には勿論、アスランとは全く別の理由でアクションRTAを全速力で駆け抜けていた軍人の姿もある。

 

 木漏れ日を思わせるような色彩を持つ白人男性が、待ち人である女性に向かって大きく手を振り駆け出す。文字通り着の身着のまま来た上に、アスラン同様プレゼントを用意する時間もなかったようだ。彼も伴侶に謝り倒すが、女性から手を差し伸べられて破願した。そうして2人は手を繋ぎ、煌びやかな街の中へと姿を消す。

 声が付いていないためどのようなやり取りをしたかは分からないが、彼は伴侶に許して貰えたのだろう。それをぼんやりと眺めていたラスティは、自分の抱えている個人的な案件を思い出して頭を抱えた。脳裏に浮かんだのは、“壁越え”で出会った独立傭兵レイヴンと、この間の“戦勝会”。――本当に、本当に、苦い経験だった。

 

 

「……はぁ……」

 

「どうした、ラスティ」

 

 

 深々とため息をついたラスティの隣に座ったのは、ヴェスパー部隊の第3隊長オキーフ。曲者ぞろいの中でも、ラスティとは比較的親しい相手だ。上手くは言えないし詳細を語ることもできないが、それなりに心を許せる数少ない存在であると言えよう。

 

 

「そういえば、“壁越え”の英雄(独立傭兵レイヴン)と“戦勝会”をしたらしいな。どうだった?」

 

「…………あまり、上手くいかなかった」

 

「――珍しいな。百戦錬磨のお前が、そんな顔をするだなんて」

 

 

 ラスティの返答を聞いたオキーフは目を丸くする。ラスティ自身は自分の顔がどんなものか分からないが、オキーフが素っ頓狂な調子になってしまうのだから相当であることは辛うじて予想できた。

 だが、自分の情けない面など今はどうでもいい。自分が晒してしまった醜態を――それ以上に、彼女を晒し物にして傷つけてしまったことを挽回しなければ。ただ、ラスティの経験則は役に立たないのが難点である。

 

 “全身包帯を巻いたナニカ”としか形容できない女性――それが、独立傭兵レイヴン/強化人間C4-621の姿だった。最も、ラスティは彼女がどのような姿でも構わないし、焦がれてやまない相手であることは変わらないのだが。閑話休題。

 621は『人間的な機能は、強化人間の施術を受けた際に殆ど失くしてしまった』と言う。名前も過去もない第4世代の強化人間にとって、趣味趣向や好みなど皆無に等しいだろう。今後、彼女自身が経験を積み上げることで形成していくものだ。

 彼女のために何かをしたいと願っても、そのために必要な情報は一切ない。そんな情緒がまだ未発達である女性を喜ばせるにはどうしたらいいだろう。企業や古巣のためのハニートラップではなく、1人の男としての自由意志で、だ。

 

 ――そんな経験、一度もないが故に。

 

 

「――オキーフ」

 

「何だ」

 

「諜報部隊の長官を務める貴方に助力を頼みたい」

 

 

 物々しい空気を察したオキーフは、ラスティの必死さに呼応するかのように姿勢を正した。

 尚、その数分後には、肩を震わせて笑うだけに成り下がってしまうのだが。

 

 

 

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