トロフィーを獲得しました 【夜明けの鐘と花吹雪】   作:白鷺 葵

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【諸注意】
1.書き手はACⅥ勉強中のにわか。
2.あまり深く考えないで書いているため、世界観のすり合わせがふわっとしている。
3.ハーメルンに掲載している拙作『問題だらけで草ァ!!』シリーズ×スパロボシリーズ(00参戦作品のみ)×ACⅥのクロスオーバー。
4.『問題だらけで草ァ!!』シリーズは機動戦士ガンダム00×スーパーロボット大戦シリーズ(00参戦作品メイン)×地球へ...のクロスオーバー作品で、前提としてグラハム×刹那♀要素あり(重要)
5.『問題だらけで草ァ!!』シリーズは機動戦士ガンダム00×スーパーロボット大戦シリーズ(00参戦作品メイン)×地球へ...のクロスオーバー作品で、前提としてグラハム×刹那♀要素あり(重要)
6.『問題だらけで草ァ!!』シリーズは機動戦士ガンダム00×スーパーロボット大戦シリーズ(00参戦作品メイン)×地球へ...のクロスオーバー作品で、前提としてグラハム×刹那♀要素あり(重要)
7.『問題だらけで草ァ!!』はZシリーズ、OE、UX、BX、Vを下地にして混ぜたような架空の世界線となっている
8.オリキャラ多数。
9.オリ主(人外)×エア、ラスティ×621♀が主軸となっている(重要)
10.オリ主(人外)×エア、ラスティ×621♀が主軸となっている(重要)
11.オリ主(人外)×エア、ラスティ×621♀が主軸となっている(重要)
12.原作および登場人物のキャラクター崩壊。
13.『◆◆◇』が「虚憶⇒現実」、『◇◇◆』が「現実⇒虚憶」、『◆◆◆』が「虚憶⇒虚憶」、『◇◇◇』が「現実⇒現実」、『◆』が「特殊な意味合いが含まれている」場面転換、及び視点切り替え
14.『*』は「短時間経過での場面転換・視点はそのまま」、『**』及び『***』が「長時間経過での場面転換・視点はそのまま」を意味している

このような作品でよろしければ、どうかよろしくお願いします。

『問題だらけで草ァ!! -Toward the sky- <1st Season>』はこちら(完結済み)<https://syosetu.org/novel/321938/
『問題だらけで草ァ!! -Under the Flag-<2nd Season>』はこちら(連載中)<https://syosetu.org/novel/327713/



運命の引き合わせ方

 

 独立傭兵レイヴン――本名はC4-621なので、以後は621と表記させてもらう――の再生手術は無事に完了。機能回復訓練やリハビリも問題なくひと段落し、彼女は医療部門のフロアを後にした。以後、彼女は入院期間のブランクを取り戻すが如く、様々な仕事を引き受けているらしい。

 最近聞いた話では、『解放戦線側の依頼で、ベイラム側が行った“壁越え”の捕虜になってしまった解放戦線のAC乗りの救助依頼を成功させた』とか。尚、その依頼を受ける前には『ベイラム側からの依頼で、陥落した壁のACやMTの残骸から情報を入手する』という依頼を受けていたそうだ。

 

 

「リモートでの経過観察は順調。近々また来院する予定になってるけど、今のところは特に問題は起きてないな」

 

「それは何よりッス」

 

「今はまだ表情は硬いままだが、喜怒哀楽を何となく察せる程度には動かせるようになってきたぞ」

 

 

 エクトルから聞いた情報に、ミライは心から安堵した。

 

 621のルーツについての情報はほぼ皆無。彼女を買い取ったウォルターや、ウォルターに彼女を売り渡したであろう人物でさえも『辿ることは不可能だ』と言っている。だが、そんな彼女が唯一有していたのが、ミライたちの銀河で語り継がれる過去の大戦/近代神話とよく似た虚憶(きょおく)

 話を聞く限り、彼女が所属していた団体名とミライたちの銀河で活躍した部隊名は同一のもの。話の内容とクロスアライズが辿った戦乱の行く末とは若干の差異が見られるものの、“ほぼ同一”と言ってもおかしくはない。

 何が由来でその虚憶(きょおく)を有しているのかは分からないが、彼女はその中の1つ――“宇宙(そら)に咲く花”に対して強い興味関心を抱いていることは確かだ。ミライの養母(はは)が旧いELSたちと対話・和解を成功させたときのもの。

 

 ソルジャー名義で協働したということもあってか、ミライは個人的に621のことを気にかけている。

 他の面々も類似の理由だろうが、一番の理由は“ミライがやけに621を気にかけているため”だろうか。

 

 

<……ミライは、随分と、彼女に執心しているようですが>

 

 

 不意に、不服そうな《聲》を漏らしたのは緋色のきらめき。現時点ではミライたち及び同胞以外の命との交信に成功しないエアである。

 ミライの脳量子波が読み取ったのは、彼女から漂う不平不満。エアに肉体があったなら、むすっとしたふくれっ面をしていそうな気配がした。

 養母(はは)がたまに養父(ちち)に見せる、どこか子どもっぽく寂しがりな一面とよく似ている。今なら、養父(ちち)の気持ちが分かる様な気がした。

 

 

「俺はエアちゃん一筋ッスよ。そもそも一目惚れしたのが人生初ッス」

 

<そういう話をしているわけではありませんし、そういう話を聞きたいわけでもありません。私はただ、何故彼女に執着しているかを訊きたいだけです>

 

(うーん、反応がまんまお袋殿ォ!)

 

 

 ルビコン3に迷い込む前に過ごした直近の休暇――及び、故郷での里帰りで見た養父母(りょうしん)の夫婦喧嘩が脳裏を過る。いつものように愛を語る養父(ちち)をジト目で見上げる養母(はは)の姿だ。周囲の気苦労など気にせずに刹那・F・セイエイへ愛を手向けるグラハム・エーカーという光景は、ミライにとっての日常茶飯事であった。

 養母(はは)の場合、ジト目で養父(ちち)を見つめつつも、時折『しょうがない』と言いたげに苦笑する。くすんだ金色の瞳には、グラハム・エーカーに対する深い愛情があった。彼女のソレが“人類という種族全体に向ける愛情”とは違うことに気づいたのはいつだっただろう? 閑話休題。

 

 今、ミライが対峙している相手――即ちエアのことだ――は、養父母(りょうしん)のような関係性を築いているわけではない。

 向けられた感情が嫉妬であることは分かるし、彼女がミライに向ける眼差しが養母(はは)とよく似ているのも理解している。

 だが、エアが持つ感情は養母(はは)養父(ちち)に向けていたものとは違うのだ。その上で、『対応を間違えばろくでもないことになる』のは共通している。

 

 個という概念を尊ぶタイプの種族とのコミュニケーションは難しい。自我を得て数百年の時が過ぎたミライであるが、後天的に学び始めた他種族の常識を全て噛み砕けたわけではないのだ。さてどうしたものか。

 

 

『思いを口に出すのは無粋になりがちだ』

 

『だが、時には口に出さねば、相手の心に想いが響かないこともある』

 

 

 そう言って笑った養父(ちち)のことを思い出す。

 

 元から言葉を惜しみがちだったところにイノベイターとして革新した養母(はは)は、脳量子波で相手の心を読み取るという力を得たこともあり、余計に言葉を惜しむようになったと聞く。対して、元から人と話すことに()()()()()()抵抗が少ない養父(ちち)は、人を繋ぐ力を得ても変わらず言葉を投げつけることを選んだ。特に養母(はは)へ手向ける愛に関しては。

 この銀河に迷い込む前の休暇――久々の里帰りで見かけた養父母(りょうしん)のやり取りが脳裏によぎる。養父(ちち)がだらしなく緩んだ幸せそうな笑顔で養母(はは)への愛を語っていたときの一件を思い出し――それにつられたのか、ミライの頬が緩んだ。それを見たエアはますます不平不満の色を強めたようだ。そのままへそを曲げてしまったらしい。

 

 

(ここは、素直に正直に話した方が良さそうッスね)

 

 

 脳量子波を使えば、エアに対して誤解なくミライの真意を伝えることは可能であろう。だが、それだけではいけないような気がした。

 Cパルス変異波形は交信相手の脳と繋がった意思疎通が可能な種族。そこはELSとよく似ているが、エア自身の自我と情緒は――ELS側から見れば――人間寄りだ。

 人間への知識や理解はミライより経験値が少なかろうと、個や言葉のやり取りを重要視するという土台が形成されているワケで。

 

 ミライはエアが瞬く方向に向き直り、言葉を尽くして伝えることにした。

 勿論、誤解が発生しないように、脳量子波も展開して。

 

 

「もしかしたらの段階ッスけど、621お嬢さんには“異種族との共生”に対する理解とその下地が形成されつつあるんスよね」

 

 

 実際、独立傭兵ソルジャー名義で彼女と話をした際、621は“異種族との共生”という話題に対して興味関心を示していた。この惑星で生きている人類の多くが『クロスアライズ』を与太話扱いしているのに、621だけは真正面から受け止めて考えているように思う。

 

 

「“虚憶(きょおく)を持っている可能性”というのも含まれてるッスけど、現状、621お嬢さんは『“宇宙(そら)に花が咲く”』という光景を大切にしてくれてる人ッス。なんで、このままエアちゃんの協力者になって貰えたらいいなあって思ってたんスよ」

 

<……確かに、コーデリアの交信相手は『クロスアライズ』や“異種族との共生”を与太話や創作物程度にしか認識していません。現時点でそういう話を仄めかしても、まともに耳を貸さないと聞きます。交信相手と会話を殆ど交わしていないライアンでも、『Cパルス変異波形の話をしても笑い飛ばされるだけで終わりそう』だと考えているようですし……>

 

「――俺は、621お嬢さんが共存の要になりそうだと思ってるんスよ。上に“現時点では”って言葉は付くんスけど」

 

 

 ミライは言葉を続ける。

 

 

「異種族と遭遇した人類の大半は、真っ先に“危険だから即刻排除”という方向に動き出すことが多いんスよ。だから、好意的に接してくれる相手は貴重ッス」

 

<そういう意味では、“異種族との共生”に対して強い興味関心を持っていると言う独立傭兵レイヴンは、ミライの言う“貴重な相手”ということになりますね>

 

「そういう相手とエアちゃんが接触することが出来れば、エアちゃんの理想や志に一歩近づけるかもしれないッスね」

 

<……独立傭兵レイヴンのような人間と、ですか……>

 

 

 ミライの話を聞き終えたエアは、鈍く瞬く。実体を有していたら、彼女は顎に手を当てて考え込むような所作をしていたのかもしれない。最も、Cパルス変異波形が人間と交信を成功させるには課題が山積みである。どんな人間と交信を成功させるかは、ランダム要素が大きかった。

 コーデリアのように“狭い世界を大切にする者同士”だが“異種族の存在をあまり信じていないタイプの人間”と交信を成功させる場合もあれば、ライアンのように“自分の考えや行動原理とは何もかもが正反対同士”で交信を成功させる場合もある。尚、その相手には“異種族との共生に関する話題への反応が鈍い”という共通点があった。

 現状、ミライたちが把握しているCパルス変異波形の中で交信を成功させていないのはエアとロダンの2名だけ。エアの理想――人とコーラルの共存の可能性――を実現するための足掛かりは未だつかめていない。可能性がありそうなのはコーデリアだろうが、本人と相手の適性上、エアが望むような結果にはならないだろう。

 

 エアの理想は、他でもないエアが“誰と交信するか”で大きく変わりそうである。

 まずはその一歩として、人間との交信を成功させるところから始めなければならないだろう。

 

 

<――成程。貴方はそういう意図があって、独立傭兵レイヴンに執着していたのですね>

 

「エアちゃん?」

 

<よく分かりました。ええ、大丈夫です。大丈夫ですよ、ミライ>

 

「そ、そうッスか……。誤解が解けたようで何よりッス」

 

 

 エアは念を押すように<大丈夫>と繰り返すので、ミライも納得することにした。脳量子波でも“誤解なくコミュニケーションできた”という結果が出るだけだ。それ以上を突き詰めれば、恐らく、個を重要視する種族に対する無遠慮に繋がりかねない。

 

 一番大事な部分――ミライがエアに心奪われている――ことは正しく伝わったようなので、それでよしとしよう。上機嫌で瞬くエアの姿を見つめながら、ミライはほっと息を吐いた。

 

 

「はあー……。やっぱり、“2312年の時点で9歳ウンヶ月のイノベイドに言葉攻めプレイをしていた”野郎を先祖に持つ人間は違いますね」

 

「よくも言いやがったな殺すぞ!」

 

「また始まったよ……」

 

 

「――何故お前がここにいるのかとか、いつの間に彼女ができたのかとか、9歳児に手を出したのかこのロリコン野郎とか、お前の性生活や性癖がそんなんだったのかとか……訊きたいことは沢山ある」

 

「あんたは今まで何してたんだとか、いつの間に彼女ができたのかとか、9歳差の女の子に手を出すつもりでいるのかこのロリコン野郎とか、場合によっては警察への通報も辞さないとか……俺も、兄さんに言いたいことが沢山ある」

 

「だが、詳細は後だ。まずはあの糞野郎を……!」

 

「ああ。そうさせてもらう」

 

()()()()()()()()()

()()()()()()()()()

 

「狙い撃つぜ!」

「乱れ撃つぜぇ!」

 

 

 近々行う予定のイベントの司会進行における段取りを話し合っていたオーリーとカーターが喧嘩を始める。仲間たちが彼らを止めに入ったのと、放映されていた『クロスアライズ』の一場面で、2人のロックオン・ストラトス(オーリーとカーターの先祖)に相当するガンダムマイスターの競演が始まったのはほぼ同時。

 この大河ドラマには――史実の正確性は高いと言えど――諸々の都合でプロパガンダが施されたこともあり、初代ロックオン(ニール・ディランディ)2代目ロックオン(ライル・ディランディ)共々偽名で置き換えられている。現代ではソレスタルビーイングも正義側の存在として語り継がれてはいるが、今後どうなるかは不明であった。

 尚、ミライの養父母(りょうしん)の名義にもプロパガンダが施されている。養母(はは)の名義は()()()()()()()()養父(ちち)の名義は()()()()()()()()だ。それは、2人が嘗て所属していた私設武装組織、及び施設武装組織の活動を中心に纏められたプロパガンダ映画『ソレスタルビーイング』でも同一だ。

 

 映像作品内でアリー・アル・サーシェス/アルケーをぶちのめしにかかる()()()()――否、ディランディ兄弟に対し、現実では2人の子孫で瓜二つの顔したオーリーとカーターが殴り合っている。先祖は戦闘員(ガンダムマイスター)、子孫は非戦闘員(オペレーター)。この対比を何と例えよう。

 尚、アリー・アル・サーシェスを撃退した後、諸々の事情で火花を散らすディランディ兄弟に対して『ガンダムファイトで決着付ければいいのでは』と発言した人物のおかげで、兄弟が“殴り合い宇宙(そら)”を始めるのだが、それは別の話であった。

 

 そんな光景を横目に、ミライは再びエアへ話しかける。

 

 

「今日も交信するんスか?」

 

<ええ。今回は、この施設のコーラルを利用しようと思っています>

 

 

 エアの言葉と共に、ミライの前にモニターが表示された。

 映し出されたのはどこかの施設。周囲は惑星封鎖機構の機動兵器がうろうろしている。

 

 

<嘗てはコーラルの流動制御を行っていた施設らしいのですが、今では惑星封鎖機構の制御下にあるようなのです>

 

「あ、この部隊知ってるッス。俺たちが1番最初に接触した人たちッスね。『個人としては静観、及び不干渉でいたい』って言ってくれた」

 

<そうなのですか……。なら、ミライたちのような異種族との対話や共生に関して、一定の理解が得られそうな団体の1つですね。独立傭兵レイヴン程ではなさそうですが、期待できそうです>

 

(何だろう。所々トゲがあるような――?)

 

 

 エアの纏う空気の既視感を探ると、仁王立ちする養母(はは)に辿り着く。あれは確か、“ホワイトデーのお返しに養父(ちち)が彼女へ靴を贈ったとき”のことだったか。

 

 

「――エアちゃん」

 

<何でしょう?>

 

「もしかして、怒ってる?」

 

<――いいえ、ちっとも>

 

 

 ミライの問いに対し、エアが緋色の光を瞬かせる。

 “もしも彼女に肉体があったら、圧のある笑顔を浮かべている”ように思えたのは気のせいではない。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

『これは……“ある友人”からの私的な依頼だ』

 

 

 基本的に、621は“ウォルターが斡旋してきた依頼”を引き受けている。ここ最近は“621自身の意志でどの依頼を引き受けるのか”を選択させられていることも増えたが、交渉窓口に立って依頼を示すのはウォルターの仕事であった。

 彼が斡旋してくる依頼は、全てが公的な――企業や解放戦線等、()()()()()()()()()()()()()()()ものばかりだ。故に、仕事直前のブリーフィングでは、依頼者の所属をきちんと開示してくれている。

 

 

『【ウォッチポイント】と呼ばれる施設がある。地中に眠るコーラルの地脈を監視し、嘗てはその流量制御を行っていた施設だ。――お前には、そこを襲撃してもらう』

 

 

 だが、今回の依頼は今までとは違うらしい。ウォルターは621に対して、“ある友人”に対する詳細を一切明かしてはくれなかったためだ。

 

 

『当該施設は惑星封鎖機構のSGが警備に当たっている。企業たちも、表立っての手出しは避けるだろう。――つまり、この仕事は……俺たちだけで遂行しなければならない』

 

『……単騎での夜間潜入となる。気を引き締めてかかれ』

 

 

 ウォルターと621の関係は“ビジネスパートナー”。彼は必要以上に自身の過去を語らないし、諸々の事情から過去に対する執着が薄い621自身もウォルターの過去を穿り返すつもりはない。彼が己の口から語ってくれるのを待つことにした。

 難易度が高い任務に621を送り出す際は特に、彼はこちらを気にかけてくれる。その優しさや、『“廃棄寸前だった自分をビジネスパートナーに選ぶ”ことで救ってくれた恩に報いたい』と621自身が願ったのだ。

 『彼が何の意図で621を救い上げたのか』、『621に何をさせようとしているか』など些細なことに過ぎなかった。――今こうして、ウォルターの猟犬として戦場を駆り、彼の望みを叶えるために戦えるなら、それでいい。

 

 ――そう思いながら、621は雨降る夜のウォッチポイントを駆け抜けた。

 

 封鎖機構のSGを殲滅し、目的地である施設内へと侵入しようとしたとき。

 ウォルターの過去と関りある存在からの待ち伏せを受けたのだ。

 

 

『ウォッチポイントを襲撃するとは……、相変わらずだな。ハンドラー・ウォルター』

 

『また犬を飼ったようだが、何度でも殺してやろう』

 

 

 件の傭兵の名はスッラといい、第1世代の強化人間の生き残り。ウォルターとは旧知の仲らしく、嘗て彼が連れていた“猟犬(ハウンズ)”部隊の何名かを屠ってきたという。つい最近では、『621を()()する以前に所属していた強化人間――C4-618を惨たらしく手にかけた』とのことだ。

 621は“自分よりも先に()()された強化人間たちがいた”ことは把握している。だが、彼や彼女がどんな理由でウォルターに忠誠を誓い、どの戦場で、どんな風に死んでいったかまでは訊き出せていなかった。その断片に触れて沸き上がったのは、強い怒り。

 

 スッラ/エンタングルの方も621を獲物と見定めたらしい。奴が動き出す。

 

 

「待て、621。背後からも狙われている」

 

「ハンドラー・ウォルター。お前には後で消えてもらう。まずは猟犬からだ」

 

 

 621はスッラ/エンタングルの喉元を噛み千切らんと愛機/クロスアライズのブーストを吹かせたが、ウォルターの警告を聞いて思い留まる。

 背後からの攻撃の回避に専念しつつ、パルスガンやレーザーの射線を追うと、見知らぬ機体が621/クロスアライズに向かって襲い掛かって来た。

 所属不明機からの通信は無言のままだが、奴らはスッラ/エンタングルを援護するかのように狙撃や遠距離攻撃を繰り出している。

 

 

「暗号通信……周りの機体もスッラの制御か」

 

(成程。多勢に無勢か)

 

「……やれ、621。さもなくばお前が死ぬことになる」

 

 

 声帯機能があったら、621はウォルターへ二つ返事を返していただろう。声を出す代わりに、スッラ/エンタングルごと所属不明機を迎え撃つことで応える。

 元よりこの依頼はウォルターの私的な用事。封鎖機構絡みの施設を襲撃するということもあり、企業や独立傭兵のような協力者は期待できそうにないことは聞かされていた。

 

 ――けれど、それはそれとして、数が多い。

 

 動きを止めればこちら/クロスアライズがハチの巣にされる。だが、ターゲットを定めて攻撃をしようとすれば、スッラ/エンタングル含んだ所属不明機たちが連携攻撃を繰り出してくるため集中攻撃ができない。この場を飛び交う10機近い狙撃特化型ACを単騎で捌くのは容易ではなかった。

 所属不明機を撃破して敵の数を減らしたいのだが、なかなかうまくいかない。そんな621/クロスアライズを見ていたスッラ/エンタングルは、楽しそうに嗤いながらこちらをいたぶりにかかる。今のところはどうにか回避できているけれど、長期戦になれば621/クロスアライズが圧倒的に不利だ。

 

 

(こんなところで死んでいられない)

 

 

 スッラの発言――621/クロスアライズを()()したら、次はウォルターを殺す――を思い返した621は、操縦桿を強く握りしめる。

 

 確かにウォルターは621のビジネスパートナーであるが、それ以上に、命の恩人であり大切な人なのだ。その人に害を成すと公言する人間を野放しに出来るはずがない。

 だが、大量の所属不明機による遠距離狙撃やスッラ/エンタングルからのバズーカ攻撃によって、奴への道のりは阻まれる。

 機動力を駆使して攪乱しようにも、降り注ぐ弾丸すべてを回避できるはずがない。じりじりと追い込まれていく。今までで一番過酷な戦場に、621は眉間の皴を深くした。

 

 

「……スッラ。何故この仕事を知っている」

 

「あまり手を煩わせるな、ハンドラー・ウォルター。余計だ、その犬もな……」

 

 

 何故かはわからないが、スッラは621のことを危険分子と認定しているらしい。621とスッラは今回が初対面であることを考えると、何者かを経由してスッラに621の情報が渡っているとしか思えなかった。

 勿論、スッラはそれを口に出すような真似はしない。恐らく、自分が討たれようとも、その全容を語ることは無いだろう。何故かはわからないけれど、621はそう思えてならなかった。

 

 そんな風に、余計なことに気を取られていたためだろうか。スッラ/エンタングルが放ってきたミサイルが621/クロスアライズに直撃する。間髪入れず鳴り響く、スタッガーの警告音。追い打ちと言わんばかり、所属不明機たちが遠距離狙撃の態勢に入る。回避は、間に合わない――!!

 

 

「――ッ!?」

 

 

 次の瞬間、こちら/クロスアライズを狙撃しようとした所属不明機たちに向かい、ビーム兵装が降り注いだ。黄色に近いオレンジ色の光は、621/クロスアライズの一番近くにいた2機を穿つ。

 文字通り爆散した友軍機に気を取られたのか、所属不明機たちが攻撃してきた相手を探して視線を巡らせる。その間に、今度は3機が得体の知れない虚無に引きずり込まれて消滅した。

 621が把握している限りのACの武装からでは考えられない攻撃の数々に息を飲めば、この場に謎の機体と得体の知れないナニカが降り立つ。――それは、621/クロスアライズを守るかのように陣取った。

 

 

「な、なんだ、アレは……!?」

 

「AC……ではないな。そもそもの段階で、生物と呼べるのかも怪しい存在もいるようだが……」

 

 

 621/クロスアライズを嬲っていたスッラが、今までの調子を全て投げ捨てたみたいな震えた声を上げた。ウォルターも困惑しているのか、同じように言葉尻が震えているように思う。

 

 この場に乱入したのは、2機の機動兵器と得体の知れないナニカによる計3体。そのうち2体の機動兵器は同型だが、片方――真空色の機体はACより一回り近く大型である。ACと同じくらいのサイズと思しきダークブルーの同型機共々、飛行機を思わせるフォルムから人型へ変形していた。ACやSGに可変機構はないため、分類は全くもって不明である。

 もう片方のナニカは、文字通りよく分からないナニカとしか形容できなかった。ACやSG、若しくはこの場に現れて621を守るように立ちはだかる機動兵器とは全く違う。血のように真っ赤な体躯は異形としか言いようがなく、不気味な光沢を放っていた。ナニカが触手の様な部分を無人機たちに向けると、その先が見る見るうちに変形していく。生み出されたのは、実体剣を模したモノ。

 621には覚えがある。頭の中に焼き付いた光景の中に、該当する存在がいたからだ。前者2機は、疑似太陽炉と呼ばれるブースターが搭載された可変型MS・ブレイヴ試験機。真空色は特殊な改造を施された一般機であり、ダークブルーは特殊な改造を施された指揮官用の機体だった。後者の異形は――恐らくであるが――ケイ素生命体である異種族・フェストゥムのエウロス型であろう。

 

 彼、或いは彼女らは一言も言葉を発しなかった。だが、621/クロスアライズを守るかのように展開する姿からは、敵意らしきものは一切感じない。

 2機と1体はスッラ/エンタングル率いる無人機を敵と定め、一斉に襲い掛かった。そのおかげで、文字通りの一騎打ちとなる。

 

 

(――これなら、負けない)

 

 

 621/クロスアライズは動揺するスッラ/エンタングル目掛けて攻撃を仕掛ける。謎の乱入者によって味方機を失い、精彩を欠いたスッラ/エンタングル。奴の動きは、先程こちらを嬲って来たのが嘘みたいなものになっていた。

 力関係は逆転し、621/クロスアライズの2丁拳銃(ダブルトリガー)の一撃を受けたスッラのエンタングルから火花が上がる。こちらから距離を取った奴は、思わずと言った調子でウォルターに呼びかけた。

 

 

「ハンドラー・ウォルター……! こいつは……この猟犬はやめておけ……! あんな奴らと繋がりを持つ存在は危険だ……! 到底お前の手に負えるものではない!! 早々に手を――」

 

 

 だが、スッラは最後まで言葉を紡げなかった。奴/エンタングルの眼前には、推定エウロス型フェストゥムが降り立つ。スッラが息を飲む音が通信越しに響いた。

 奴が何を思ったのかは分からないが、自分の敗北を察したのだろう。最後のあがきと言わんばかりに、機体のジェネレーターを暴走させた。選んだのは――自爆。

 機密保持か、或いは『異形に嬲り殺されるぐらいならば道連れにする』という意地か。超近距離からの自爆攻撃を喰らったら、幾らフェストゥムでもただでは済まないだろう。

 

 

「目を覚ませ。このルビコンは、何者かに侵略を受けている――」

 

 

 次の瞬間、フェストゥムの腕が爆発鉄鎚――いや、どちらかと言えばゴルディオンハンマーだろうか――を模した形状へ変形。文字通り、スッラ、及び彼の断末魔諸共エンタングルを『光にした』。

 

 スッラが引き連れていたと思しき無人機は、件の機体――MSとフェストゥムによって殲滅されていたらしい。彼、或いは彼女らは暫し621/クロスアライズを見つめていたが、一番小型の機体がひらひらと手を振る動作を合図に、この場から飛び立っていった。

 それを見送った621はその余韻に浸っていたが、呆けた調子から正気に戻ったウォルターに促されるような形で施設内に侵入する。程なくして発見した中央のデバイスに向かって、621はニードルガンの照準を合わせた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

『未来への水先案内人は、このグラハム・エーカーが引き受けた!』

 

『ああもう、勝手に先に行くんじゃないよ! このおばか!!』

 

 

 ――暗闇を切り裂くような群青(あお)を見た。

 

 

『これが、ラストミッション!』

 

『この銀河(せかい)に生きるすべての命と!』

 

『人類の存亡を賭けた!』

 

『『『対話の始まり!』』』

 

 

 ――暗闇を照らすように輝く(みどり)を見た。

 

 

『だから、示さなければならない。世界はこんなにも、簡単だと言うことを……!』

 

 

 ――“分かり合う”という理想を最後まで貫き通した女性(ひと)がいた。

 ――そうして、彼女の想いを受けた異種族が咲かせた金の花を見た。

 

 

『――刹那が咲かせた花の色だ』

 

 

 ――異種族と融合して生還した男が、己の瞳を指さして笑っていた。

 ――木漏れ日の様な色合いは失われても、最愛の人が咲かせた花の色が宿っていた。

 

 

<レイヴン>

 

<“地球外変異性金属体”との対話は成され、共存への道は開かれました>

 

<異なる種族同士であっても、分かり合い、共に生きることが出来る……>

 

<ならば、私たちも――>

 

 

 ――戦場から帰還し、黄金の花が咲くまでの顛末を見届けたのは、緋色のきらめき。

 ――共存という希望を垣間見た女性は、嬉しそうに言葉を続ける。

 

 

<コーラルの問題には解決の目途が立ち、“観測者”たちとも和解が成立しました>

 

<後はその手段を、みんなと一緒に実行へと移すだけです>

 

<そのためにも、貴女はウォルターの依頼を――彼が改めて“私たち”へ出した依頼を、完遂させなければ……!>

 

 

 女性の言葉に、少女は頷いた。間髪入れず、地球連邦軍の戦線補助に駆り出されていた友人たちからメッセージが入る。

 少女の目に留まったのは、ひとつのマーク。少女のことを『■■(とも)』と呼び、かねてから親しくしている企業所属のAC乗り――V.Ⅳラスティ。

 彼から届いた音声メッセージは、少女たちを含んだ特務部隊――クロスアライズたちの活躍と偉業を褒め、労うものだった。

 

 それが嬉しくて、自然と口が緩む。――少女に“いとおしい”を教えてくれた人。

 数多の秘密を抱えながらも、それでも、彼から手向けられた■は本物だった。

 

 ――彼は今頃、どこでこの花を見ているのだろうか。

 

 

 

◆◇◇

 

 

 

 第4世代、旧型の強化人間。名前は、独立傭兵レイヴン/C4-621。エアの交信が届いた唯一の人間であり、ミライが執着していた『同志となりうる可能性を有する人類』の1人だ。

 彼女との交信が成功したエアは、その副産物として、彼女が有する虚憶(きょおく)に触れる。異種族の共生に希望を抱かせる光景が、エアの眼前に広がった。

 

 そうして、エアは理解する。何故ミライが()()()()()のかを。

 

 

「――エア?」

 

 

 脳裏に焼き付いていた光景を辿るように、少女が目をいっぱい見開く。伝わって来たのは、驚きと喜びに満ちた感情だ。

 顔は仏頂面のままだけれど、エアは確かに、621/レイヴンが口元を綻ばせているように思えた。

 大切な友人に手を伸ばすような少女の姿を見たエアもまた、同じ気持ちで瞬きを返す。

 

 

<はい。私はルビコニアンのエア。――あなたと交信できて、本当に嬉しいです。レイヴン>

 

 

 ――運命は、ここから始まった。

 

 

 

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